およそ2カ月に渡って開催されてきた Schleswig-Holstein Musik Festival もそろそろ大詰め。最後の最後に著名なオーケストラの客演があります。今日はハンブルクのライスハレで行われたシュターツカペレ・ドレスデンの演奏会に行ってきました。ちなみに来週の金曜日(9/4)にはリューベックでラトル/ベルリンフィルの演奏会があります。金曜日の仕事が終わった後に午後8時からのリューベックでの演奏会にはとても間に合いそうにないと思っていたのでチケットを取らなかったのですが、リューベックまでは車で1時間もかからないことがわかったので行けばよかったなあ、と今さらながらに思っています。ちなみに演目は今日ベルリンで開催されたオープニングコンサート(ネットで視聴できるはずだった …)と同じです。
会社から早めに帰って着替えてから車で行くことにしました。そもそもライスハレ周辺に車を停められるかどうかわからなかったのですが、幸運にもライスハレまで歩いて3分くらいのところでちょうど駐車スペースから出ようとしている車があったので、そこに入れることにしました。縦列駐車はまだまだ修行の余地あり。3回ほど車を降りて前後のスペースを確認して、やっとスペースに収まりました。
ライスハレ周辺には食事するところがないのでカイザー・ヴィルヘルム通りを歩いて探すことにしました。ハンブルクに来たばかりの頃に連れて来てもらった日本料理店「小紋」もこの通りにあるのですが今回はパス。歩いて行くと独日センターがあるあたりまで出てしまったので(そうか、道がこうつながっているのか)、その近くにある、以前食べておいしかったカリーブルストのお店に入ることにしました。軽く食べようと思って、カリーブルスト、Schöfferhoferのアルコールフライ、サラダを注文したのですが … サラダでか過ぎ。けっこうお腹いっぱいになってしまいました。
7時30分ちょっと前に会場入り(開演は午後8時です)。前半と後半の間の休憩中に、今日のソリスト(ピアノ)のラン・ランくんがサイン会をやるというのでCDを買ってみることにしました。彼のCDは現在ドイツ・グラモフォンからリリースされているのですが、その前はテラークからリリースされていたようです。その時期に録音されたラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を買ってみることにしました。(予習用に買ったショパンのピアノ協奏曲集があったのでそれを持ってくればよかったなあ。)
Hamburg Laeiszhalle
Freitag 20 Uhr K 129
Gipfelstürmer
Lang Lang Klavier
Sächsische Staatskapelle Dresden
Fabio Luisi Dirigent
Frédéric Chopin / Klavierkonzert Nr. 2 f-Moll op. 21
Richard Strauss / Eine Alpensinfonie op. 64
まずはショパンのピアノ協奏曲第2番。ソリストのラン・ランは1982年生まれの中国人ピアニスト。最近かなり「売れっ子」のようです。予習用CDとこの演奏を聴く限り、タッチの粒立ちがとてもはっきりしていると思いました。流れるようなパッセージでもそれぞれの音が明確に聞こえます。かといって、メカニカル一辺倒というわけでもない。ピアニストを幅広く聞いているわけではないので大きなことは言えませんが、このタッチはかなり特徴的なのではないでしょうか。ファビオ・ルイージの指揮はオーケストラをコントロールするのに注力していたようで、振りは控えめだったように思います。第3楽章のルバートの処理(オケとソロを合わせる部分)などはわかりやすい振り方で、さすがと思いました。
で、休憩時間のサイン会。別にCDを買わなくても希望者はサインをもらえたようです。チケットにサインしてもらっている人もいました(いいのか?それで?)。私はプログラムにしてもらいました。信じてもらえないかも知れませんが(笑)これが直筆サインです。ラン・ランは漢字で「郎朗」と書くらしいので、それらのどちらかの字のように読めますね。隣の画像はサイン中のラン・ランくんを上から写したところ。オフステージの彼は演奏している姿よりもずっと若く感じました。
後半はリヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲。ちなみにアルプス交響曲は作曲者自身の指揮で、このオーケストラによって初演されています(1915年)。ショパンとは打って変わってルイージは積極的にオーケストラをドライブします。「日の出」とか「登山」のあたりはイメージよりテンポが速めだったのでちょっと戸惑いましたが、それも全体を見通してのテンポ設定だったのだと思います。「頂上」「哀歌」「終末」などではかなり旋律を歌わせますが、重たい感じではなくかなりすっきりしています。アルプス交響曲の実演は小沢征爾指揮ウィーンフィル(@アクトシティ浜松大ホール)以来なのですが、かなり湿度の高い小澤の音楽と比べると、ルイージの音楽は乾燥しているけど掘りが深い、といった感じでしょうか。各場面の特徴のコントラストを楽しむことができました。この曲を聴く時に毎回思うのですが、最後の「夜」の主題が聞こえてくると旅行を終える時のような淋しさがこみ上げてきます。
しかし、ルイージはオーケストラ・コントロールがうまいです。今回は前から3列目の席だったので管楽器がほとんど見えず、必然的に指揮者ばかりを見ていたのですが、計算し尽くされた絶妙なフレージングを見たように思います。それから初めて聞くシュターツカペレ・ドレスデンの音がほぼ想像していた通りだったのがうれしかったです。弦の少しくぐもった美しい響き、マッシブでもうるさくならない管楽器の音色、鮮やかではないのですが深みのある音です。大満足の演奏会でした。
ちなみにこういう席に座っていました。
細かいことですが、
- 金管のパンダはおらず、ステージ上の演奏者がミュートをつけて代用していました。
- 画像でもわかりますが、オルガンは上の画像のようにステージ上に用意されているので、音にもかなり存在感がありました。
- ヘッケルフォンは残念ながら拝むことができませんでした。本当に管楽器奏者はほとんど見えませんでした …