バイオフィリア

最近、新譜が出るごとにアルバムを買うアーティストがめっきり減ってしまったのだが、ビョークはそんな数少ないアーティストのうちの一人。

前作「ヴォルタ」から4年ぶりのアルバム「バイオフィリア」が届いた。

バイオフィリア

タイトルは「生を愛する」という意味であるが、もともとこういう言葉(概念)はあったらしい。こういうタイトルの本もあるみたいだし。

£500(約60000円)もする究極のパッケージもあったようだが、今回は3トラックが追加された普通のデラックス・エディションを買ってみた。

第一印象はかなり地味。「メダラ」の時に感じた印象と似ている。「メダラ」はその前の傑作アルバム「ヴェスパタイン」の余韻を、この「バイオフィリア」は開放的な「ヴォルタ」の余韻を引きずっているような感じ。音数が少なくテンションもそれほど高くない省エネなサウンドプロダクションである。

「ヴェスパタイン」の研ぎ澄まされた冷たいサウンドが極北の地に置いていかれるような感覚だとすれば、この「バイオフィリア」の控えめなサウンドはしんとする宇宙空間の果てまで連れて行かれるような感覚である。(女声合唱がフィーチャーされているので、ホルストの《惑星》(海王星)のその先を連想してしまうのかも)

個人的な評価としては、すぐに飽きてしまった「メダラ」よりは繰り返しに耐えそうだけど、「ヴェスパタイン」や「ヴォルタ」ほどの愛聴盤にはならないかな、という感じである。意外にライブで見ると面白いのかも知れない。

iPhone / iPad 用のアプリケーションも出るようだがどうなんだろう?とりあえず様子見。

 

10/16の徒然

日曜日だというのに平日と同じスケジュールで起床。妻が日本人学校で開催される「英検」の手伝いに行くためである。日本では業者によって運営される(んでしたっけ?)「英検」だが、こちらでは運営主体がないし、受験生はほとんど日本人学校(もしくは日本語補習校)の児童/生徒なので、教員と父兄が協力して運営にあたっているらしい。

ところで、ヨーロッパ/アフリカをカバーする日本語放送のJSTVでは日曜日の朝から「ケロロ軍曹」(第2シリーズ)が放送されている。息子は純粋に楽しんでいるし、私は小ネタ満載で(妻も息子もついてこなくても)ひとりで笑っている。このJSTVでは番組ごとのスポンサーがつかないので基本的にはオープニング→本編1→本編2→エンディングは連続しているし、しかもこの番組は2週分続けて放送される。正直、日曜日の朝に「ケロロ軍曹」を1時間(CMが入らないので正味50分くらいですが)続けて見ると結構疲れます(笑)。

息子が以前から「ホワイトシチューを作りたい」と言っていたので、午前中から仕込む。「作りたい」とは言っていても、90%くらいは私が作って、息子には野菜や肉を炒めたり味見をさせたり、と簡単な仕事をやらせる。

学校の宿題と、通信教育を済ませた後、例によってガブリエルの家へ遊びに行く。サッカーをしていたようで、あっという間に泥だらけになって帰ってくる。(サッカーするんだったら、白じゃなくてもっと泥が目立たないような服装で行けよな …)

その後も、うちでベイブレードをやったり、エムレの家へ行ったり、ガブリエルの家へ行ったりしていたようだ。

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今日は午後からハンブルガーSV対フライブルクの試合がある。アウェイなので例によってウェブ上の Live Ticker でテキストで試合を眺める。比較的早い時間にソンのゴールで先制。1-0で前半を折り返す。

ちょうどハーフタイムあたりで「試合どうなっている?」と3人がどやどやと帰って来た。妻も帰って来て、HSVのフラッグやらタオルマフラーやらを振り回して応援する。ウェブ上のテキストを見ながら応援するのもかなりおかしい図かも知れないが(笑) …

結局、2-1で何とか勝利したのだが、それでも得失点差で最下位 …

A3

ということで、ゆっくり休養、ゆっくり読書。

A3【エー・スリー】

今年の講談社ノンフィクション賞を受賞したということで読みたかった本。1ヶ月くらい前に日本から取り寄せてちまちま読んでいた。やっと読了。

著者の森達也さんは著作「放送禁止歌」を読んだ時から気になっていたノンフィクション作家である。この作品もそうなのだが、意図的に、多くのマスコミが「右へならえ」的に報道する視点とは別の視点から事実に切り込んでいる。平たく言えば「タブーへの挑戦」なのだろう。

そういえば、これは雑誌「プレイボーイ」に連載されていたのを一度チラッと見たことがあったような気がする。この「A3」と同じようにオウム真理教に取材した「A」も読んでいたのであるが、その時点よりもかなり深く取材されている。

大きな軸は麻原彰晃こと松本智津夫(ささいなことだけど「しょうこう」も「ちづお」も簡単に漢字変換されることにちょっとびっくりした)の訴訟能力の有無。ここで大事なのは法的概念としての「訴訟能力」と刑法上の「責任能力」を明確に区別しなければいけないということである。事件を起こした時点での「責任能力」と、裁判を進める上での「訴訟能力」は別物である。筆者は被告(松本)が「訴訟能力」を喪失しているのが明らかであるまま裁判を進めるのがおかしいと指摘しており、その(オウムであるが故の)「例外」がいずれ「前例」として運用されてしまうだろうことに危惧しているのである。

このあたりはある程度客観的に事実のみ(多少主観は入っているがやむを得ない)を伝えている。マスコミでは報道されない事実として知っておくべきだろう。

後半に出てくる「弟子の暴走論(=麻原は悪くない)」説は興味深いが、証言が偏っている点(確定死刑囚とは面会できないらしい)や、何よりも麻原本人の証言が聞けないことには説得力を持たない。このあたり「A4」とかでもっと掘り下げて欲しい気もするが。

「マスコミが視聴者の不安を煽ってコントロールしているのではないか」「麻原の側近が麻原の不安を煽って麻原をコントロールしたのではないか(これが暴走論のロジック)」というロジックはマイケル・ムーアが映画「ボーリング・フォー・コロンバイン」でも披露している。そういえば森達也という人の立ち位置はマイケル・ムーアと似ているのかなあ?

 

ベネルクス旅行記(その5)

最終日。昨夜からの体調不良は少しは良くなったかな?

チェックアウト時間ギリギリまでホテルで休み、それから中央駅のコインロッカーにスーツケースを預けてコンセルトヘボウに向かう。

コンセルトヘボウは、その名の通りロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の本拠地。ここでは毎週水曜日の12時30分から30分程度のランチタイムコンサートが催されている。もちろん無料。入場するために多くの人たちが雨の中で列を作っている。

場内はこんな感じ。

この日の夜にはイヴァン・フィッシャーの指揮によるラヴェルの《ボレロ》を含む演奏会が予定されていたので、ゲネプロ代わりに《ボレロ》を演奏してもらえるといいなあ、と思っていたのだが、予想通り(期待通り)ラヴェルの《亡き王女のためのパヴァーヌ》と《ボレロ》が演奏された。

やはりゲネプロ的な意味合いがあるのか、かなり大胆に曲に色をつけていたように思える。例えば《パヴァーヌ》。3回繰り返される主部はかなりすっきりした表情だったのだが、それらにはさまれる2つのエピソードは多少テンポを速めて主部とはかなり対照的に演奏されていた。それから《ボレロ》。それぞれのソロ奏者はかなりアーティキュレーションを強調していた。とはいえ、全体の盛り上がりは旋律ではなく伴奏が支配する感じ。特にティンパニはほとんどやりたい放題という感じであった。それでも暴走しないのがこのオケの特色なのか?

最近の評価ではウィーンフィルやベルリンフィルに勝るとも劣らない評価を受けているこのオケをぜひ実演で聞いてみたかった。まず、第一の印象はアンサンブルがしっかりしているということ。それぞれの奏者が自律していながら全体がうまく調和しているように聞こえる。だからどこかのパートが突出してしまうわけでもなく全体のバランスがとてもよい。あと、これはホールのせいなのかも知れないが、ドイツのオケ(例えばシュターツカペレ・ドレスデンやバンベルク交響楽団を例に挙げようか)に比べると音色がきらびやかに聞こえる。

個人的に体調が悪くなると涙腺が弱くなってしまうのだが(そういえば昔、医学部の先輩に「『病は気から』じゃない。『気は病から』だ。」と言われたことがある。)、《ボレロ》で初めて第1ヴァイオリンが旋律を弾き始めるところで、その美しさに涙してしまった。

 

ベネルクス旅行記(その3)

ベネルクス旅行3日目は月曜日。月曜日はブリュッセルの主要な美術館などが閉館してしまうので、この日は近くの街への日帰り旅行を考えていた。結局、手近なところでアントワープへ行ってみることにした。ブリュッセルからは近郊鉃道で40分ほどである。

ちなみにアントワープ駅自体も美しい造形で有名である。

アントワープといえば「フランダースの犬」に登場するノートルダム大聖堂がある。

ここにはもともとルーベンスの絵画が多数展示されているのだが、ちょうどルーベンスとその周辺の画家たちの作品が集められて展示されていた。

 

ベネルクス旅行記(その1)

現地の学校のスケジュールに合わせて、ハンブルク日本人学校も10/10〜10/14に秋休みになる。

お子さんがいる社員はこの秋休みに合わせて短めのバケーションを取ることもある。ということで私も短い休みを取ることにした。これから冬になると遠出はおっくうになるし、とはいえ今年度の有休は今年度中に(できれば12月までに、最悪でも来年3月までに)取得しないといけないので、ということで。

当初予定していた、行きたい優先度の高い国、例えばイタリア、イギリス、フランス、スペインあたりは行くことができたので、今回は近場のベネルクス三国を駆け足で周遊することにした。

まず、ハンブルクからルクセンブルクまで飛行機で飛び、それから陸路でブリュッセル(ベルギー)、アムステルダム(オランダ)と移動し、最後にアムステルダムから空路ハンブルクに帰ってくる、というルートである。ブリュッセルからアムステルダムへの移動には、鉄ちゃんである息子念願の高速鉄道「タリス(Thalys)」に乗ることにした。

ということで初日はルクセンブルクまで。ルフトハンザ系列のルクスエアで飛ぶことになっていたのだが、なんとボンバルディアのプロペラ機。我々も通常の空路でのプロペラ機は初めての体験だったが(ちなみにスカイダイビングをした時に小さいプロペラ機には乗ったことがあった)、息子はもっと興奮している。

9時のフライトでお昼前にはルクセンブルクに到着。

 

One more thing …

当然というか何と言うか、ランチを食べに行ってスティーブ・ジョブズの話になった。

Ralf 曰く「特にITの分野のエポックメイキングなできごとは2人の人物によってなされているんだけど、そのうちの一人は忘れられるんだよねえ …」と。

確かにマーク・ザッカーバーグにはクリス・ヒューズがいたし、ビル・ゲイツにはポール・アレンがいた。

そしてスティーブ・ジョブズにはスティーブ・ウォズニアックがいた。確かにジョブズがいなければ Apple がここまで大きくなることはなかったと思うが、ウォズがいなかったらそもそも Apple 自体が存在していなかったかも知れないのである。

ということで、この機にスティーブ・ウォズニアックについても目を向けてみましょう。

 

白雪姫

入手しにくくなるととたんに欲しくなる性分なので、アンジュラン・プレルジョカージュ (Angelin Preljocaj) によるバレエ《白雪姫 (Blanche Neige)》の DVD を購入。

バレエ・プレルジョカージュのホームページからも購入できなくなっているようだし、amazon.fr でも在庫なしとのことだったので、入手可能なフランスのオンラインショップを探して送ってもらった。

グスタフ・マーラーによる音楽、ジャン=ポール・ゴルティエによる衣装。