放送禁止歌

放送禁止歌 (知恵の森文庫)

たまたま書店で見つけて面白そうだったので買ってみた。ちょうどハードカバーから文庫化されたばかりのようである。

このタイトルを見た限りでは、単に「放送禁止歌」(この本を読めばわかるが「放送禁止歌」というものはそもそも存在しないのである。)を紹介した雑 学的な本だと思っていた。前半は確かにそれに近い内容なのであるが、読み進むにつれ、どんどん横道に逸れていくというか、どんどん深い方へ進んでいくので ある。

詰まるところ、それは岡林信康の《手紙》や赤い鳥の《竹田の子守唄》が(いわゆる)「放送禁止歌」となった根拠にもあげられる部落問題にいきつくの である。この本は「放送禁止」に代表され、いろいろなシチュエーションに演繹可能なタブーについて、極めて誠実に分け入ったルポルタージュである。読み始 めたら途中で止めることができなくなり、最後まで一気に読んでしまった。

幸か不幸か、私は自分の人生の中で直接的にも間接的にも、いわゆる「部落問題」に関わったことがない。責められるかもしれないが、それについて私は いかなる意見も表明することができない。しかし、ソクラテスではないが、自分が何も知らないということを自覚することは必要なのだと思う。

この本を読みながら、インターネットの黎明期にある方が発言された文言を思い出した。私はこの主張に100%賛同している。

「差別用語などというものは存在しない。存在するのは、ある用語を差別的に使う人です。」

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