日別アーカイブ: 2009 年 12 月 8 日

予習復習

前にも書きましたが、基本的にドイツに住み始める時にはCDを持って来ないという方針を立てました。そもそも全部持って行けるわけがないので、「仕分けが面倒くさい」「仕分けたところで持ってきて聞かないCDもあるし、持って来なくて聞きたくなるCDもあるだろう」ということで、頭に浮かんだものからできるだけMacに取り込んで日本を離れたわけです。今のところ持って来るのを忘れた(Macに取り込む時に思いつかなかった)もので激しく後悔しているのはバルトークの管弦楽作品(《管弦楽のための協奏曲》、《中国の不思議な役人》、《弦チェレ》、《かかし王子》など)くらいなので、何とかなっているのかなと。

で、ドイツに来てからも「CD買うならコンサートへ行こう」という方針で、なるべくCDは買わないようにしていたのですが、やはり予習と復習(特に予習)はしっかりやっておいた方が楽しいわけで、少しずつCD購入枚数が増えつつある今日この頃です。まあ、以前のように「所有したいCD」を買うのではなくて「聞きたいCD」を買っているので、いわゆる「未聴の山」が少ないのはいいことです。(余談ですが、読書で言うところの「積読(つんどく)」に対応する言葉ってないんですかね?)

ということで、当面予習したいと思っているのはベートーヴェンとブラームスのヴァイオリン協奏曲です。前者は意外と入手できる演奏が限られているんですね。個人的好みからクレーメルの演奏にしてみました。

Violinkonzert/Violinromanze Nr

ネヴィル・マリナーとの共演による1980年の録音。amazon.deだと5.95ユーロで買えました。例の奇天烈作曲家アルフレート・シュニトケが書いたカデンツァを弾いているということで気になっています。

111 Years of Deutsche Grammophon/Various (Coll)

ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、この55枚組に含まれているアンネ=ゾフィー・ムターとカラヤン/ベルリン・フィルのものにしました。ドイツ・グラモフォンレーベルの創立111周年を記念して作成されたボックスです。74.95ユーロだったので今のレートだとちょうど10000円くらいですね。このレーベルのベストセラーを俯瞰できることを考えれば安い買い物なのかなと。アッバード/ウィーンフィルによるブラームスのハンガリー舞曲集とか、クライバー/ウィーンフィルによる《運命》とか、ヨッフム/ベルリン・ドイツ・オペラの《カルミナ・ブラーナ》とか、気にはなっていたものの長い間手を出しあぐねていたものをまとめて聞けるのも魅力です。幸いというか、やはりというか、手持ちのCDとのダブりはありませんでした。微妙にかすったものはありました(笑)。ミケランジェリによるドビュッシーの前奏曲集。私は同じピアニストの《映像》《子供の領分》は持っていたので。

演奏会その22: フレットワーク

Di, 08.12.2009 | 20:00
Hamburg, Rolf-Liebermann-Studio

Fretwork
Solistin Clare Wilkinson, Mezzosopran

John Joubert „The Fellowship of the Stretched String“
Peter Sculthorpe „Djililie“
Elvis Costello „Put away forbidden playthings“
Henry Purcell Fantazia No. 8
Tan Dun „A Sinking Love“
Orlando Gough „Birds on Fire II“
Michael Nyman „If“
Henry Purcell Fantazy upon one note
Barry Guy „Buzz“
Stephen Wilkinson „The Garden“,  „At the Manger“
Henry Purcell „In Nomine“ in 6 parts
Gavin Bryars „In Nomine“ after Purcell
Duncan Druce „Three Poems of Henry Vaughn“

encore:

Benjamin Britten „O Waly, Waly“

北ドイツ放送(NDR)はいろいろなジャンルの演奏会を企画しています。お抱えオーケストラである北ドイツ放送交響楽団の演奏会はもちろん、ジャズ・バンド、合唱、室内楽、家族向け(つまりは子供も聞ける)演奏会などがあります。それらの中でも異色というか独自色を出しているのが、古楽を演奏する Das Alte Werk (古い作品という意味です)シリーズと、逆に新しい作品ばかりを演奏する das neue werk(新しい作品という意味です)シリーズです。先日聞きに行ったソフィア・グヴァイドゥリーナの個展も、実は後者に属する演奏会でした。

今日行ったのは、そのどちらにも属している演奏会です。今年はヘンリー・パーセルの生誕350周年だそうで、それにちなんだ演奏会なのですが、演奏曲目をみていただくとわかるように、マイケル・ナイマンあり、タン・ドゥンあり、ギャヴィン・ブライアーズあり、エルヴィス・コステロ(!)ありということで新旧入り混じった多彩さがあります。というか、パーセルの作品以外は20世紀~21世紀の作品ばかりだったのですが …演奏は教授の最新アルバム「out of noise」に参加し、その教授が主宰するcommmonsレーベルからアルバム「The Silken Tent」もリリースしたイギリスのヴィオール演奏グループのフレットワーク、ソリストはこの「The Silken Tent」でも共演しているメゾソプラノのクレア・ウィルキンソンというメンバーです。ヴィオールはヴァイオリンの兄弟というか従兄弟というか、の古楽器で、現在ではヴィオラ・ダ・ガンバがいちばん知名度があるのかな?大小さまざまな音域のヴィオールによるアンサンブルです。

チューニングがずれやすいのか、あるいは過度のヴィブラートを使わないのでヴァイオリン属の演奏に比べてピッチのずれが目立ちやすいのか、曲間でも頻繁にチューニングをしていました。ヴァイオリン属とは違っていちばん低音の楽器が基準音を出します。(関係ないけど、「リュート奏者は人生の半分をチューニングに費やし、残りの半分をピッチの狂った演奏に費やす」というジョークを思い出してしまいました。)

さて、作品ですが、近現代のものについては、この楽器属が活躍していた時代、つまり16世紀~18世紀の作風の換骨奪胎を意図したもの、それからあくまでも自分の作風をこの編成で表出しようと意図したもの、の2種類に大別されるように思いました。マイケル・ナイマンやタン・ドゥンの作品は明らかに後者に属する作品で、どこから聞いても彼らの作品に聞こえます。ナイマンの、四分音符による和声進行に朗々とした旋律がのるところとか、タン・ドゥンの平均律にとらわれない民族楽器風の扱いとか、お得意の叫び声(笑)とか。

気にいったのはピーター・スカルソープの《Djililie》(なんて読むんだ?《ジリリエ》?)とオーランド・ガフの《バーズ・オン・ファイアII》です。前者は「換骨奪胎」の部類に入る作品で、アルヴォ・ペルトの諸作品や吉松隆さんの《朱鷺によせる哀歌》のような静謐な響きが気に入りました。後者はそれとは対照的にビートの効いたリズミカルな音楽。ときおりブルーノートを使ったメロディも聞こえます。

あとはアンコールの《O Waly, Waly》。イギリスの古い民謡を編曲したものらしいです。想像できるように、とても親しみやすいメロディなのですが、繰り返されると全く違う和声がつくのが面白かったです。

他の作品はあまりピンときませんでした。ヴィオールのアンサンブルならではの響きがあまりいかされていないというか、この編成である必然性がないというか。これらの楽器が活躍した同時代の作品をもっと聞きたかったかな、という気がします。