遅ればせながらブレーンの新譜をまとめて入手。とても一度に聞いている時間がないのでぼちぼちと。
とりあえずは、やっぱりこれ。
中澤忠雄氏が指揮をした野庭高等学校吹奏楽部のコンクール音源と定期演奏会の音源を集めた4枚組。先着で最後の全日本吹奏楽コンクールでのステージを記録した DVD がついている。
ちなみに野庭高の全国大会での成績はこちら。
何を隠そう、この CD の最初に録音されている《サンライズ・マーチ》(岩河三郎)と《海の歌》(レックス・ミッチェル)の年(1982年)には高校生だった私も関東大会のステージに乗っていた。確か、この年のうちの高校の指揮者が「Eb クラリネットとファゴットがなくて関東大会に出場しているのはうちと野庭高くらいだろう」と冗談交じりに言っていたのを覚えている。(確かにうちの学校にはこれらの楽器がなかったのだが、本当に野庭高にもなかったのかどうかは定かではない。)
次の年も無事関東大会に出場でき、またもや野庭高と同じ土俵に上がった。この時にはもう引き合いに出すのが恐れ多いほどサウンドが違っていた。《アルメニアン・ダンス・パートI》の冒頭の「パパパーーーーン」が素晴らしく鮮やかだったことを覚えている。
正直、私は野庭高のアンバランスなアゴーギクやダイナミクス、不自然なカットは支持しない。しかし、時おり聞かれる安定した柔らかな響きはものすごく完成されていると思うし、それがいわゆる「野庭高サウンド」の肝なのだと思っている。
そう考えると、上記の《アルメニアン・ダンス・パートI》や《ハムレットへの音楽》(これ、確か須川展也さんがバンドジャーナル誌上で絶賛していた)であっという間に頂点まで上り詰めてしまったあとでの、《サンタフェ物語》や《ルイ・ブルジョワの賛歌による変奏曲》でのサウンドの試行錯誤は興味深い。サウンドは荒いがかなり鳴らしまくっている。この《サンタフェ物語》が関東大会に進めなかった(いわゆる県落ち)というのは信じ難い。
そういう時期を経て、《アパラチアの春》(アーロン・コープランド)や《吹奏楽のためのファンタジー》(夏田鐘甲)などの透き通るようなハーモニーを完成させたのではないか。おそらくこういうサウンドでは全国大会で金賞は取れないだろう(実際取れなかった)が、このあたりが野庭高の到達点なのだと思う。