最近、戦前・戦中に日本でどういう音楽(基本的に吹奏楽なのだがそれに限らず)が演奏され、聞かれていたのかに興味があり、いろいろ資料を集めている。そこでいろいろ調べているうちに見つけた興味ある本である。
大正・昭和に作られた50曲の童謡が掲載されており、歌詞や作られた背景などが紹介されている。そのうちのおよそ半分の作品については付録のCDに音源が収録されているのであるが、これが SP レコードから取られているものなのである。
著者の郡修彦さんという方は SP レコードの再生に関してかなり著名な方なのだそうだ。「親子で読んで楽しむ日本の童謡」という一見ほのぼのとした企画の裏に、そういった SP レコードの再生にかけるマニアックな情熱が隠されているあたりがなかなか面白い。
郡さんが書かれているように、昔の(ひょっとして今も?)日本には大衆文化を保存しようという考えがなかったらしく、ここに収録されている音源も原盤はほとんど廃棄されているのだそうだ。つまり現存する音源は、壊れやすく、しかも再生するたびにどんどん音質が劣化していく SP レコードそのものの中にしかないのである。それを考えると SP レコードの愛好家がたくさんおられるというのがわかるような気がする。
(私はさすがにそこまで手を出せませんが …..)
付録 CD を聞いてみると意外に音質がよいのに驚く。もちろん、何度か再生されているものには避け難い定常的なノイズがのっているし、ダイナミックレンジの狭さも仕方がないことだとは思うが、音源によってはノイズもほとんど目立たずにいいバランスでまとまっている。(もちろん物資が不足していた戦争末期や終戦直後よりは昭和初期の音源の方がずっと状態がよい。)