月別アーカイブ: 2012年3月

3/5 の徒然

例によって職場でバースデイがあってケーキが振る舞われた。

その時に教えてもらったのであるが、ドイツでは「33」とか「44」とかゾロ目の年齢になることを「シュナップス」と言うらしい。シュナップスはそもそもアルコール度数の高い食後酒である。(ぐらっぱなどを想像していただければいいかと。)

ということで、ケーキと一緒にこのシュナップスも振る舞われたのであるが、さすがに午後4時からしかも社内でこんなに強いお酒を飲むわけにはいかないので、こちらは遠慮した。

*****

1月に漢字検定を受験した息子のところに合否通知が届いた。漢検10級を無事に合格したようだ。

以前から同級生の間で争うように漢字を覚えていたので10級(小学校1年生で習う漢字の範囲)は楽勝だったようだが、やはりケアレスミスがあったのが息子らしい。

 

演奏会その51: 《ヴァルキューレ》(ハンブルク歌劇場)

さて、《ニーベルンクの指環》第1夜(第2作)の楽劇《ヴァルキューレ》である。3幕のオペラで Wikipedia によると総演奏時間は約3時間40分(第1幕60分、第2幕90分、第3幕70分)、そして各幕間には30分の休憩が入るので、トータルでは5時間近く歌劇場にいることになる。実際、この日は午後4時から始まり、最終的に歌劇場を出たのは午後9時過ぎであった。

前に上司である Ralf と話したことがあるのだが、(例えば《ラインの黄金》のように)全1幕で2時間30分ぶっ続けのオペラと、間に休憩をはさんだ5時間のオペラのどちらがいいかというのはかなり答えるのが難しい問いである。《ヴァルキューレ》は各幕ともほとんどの場面が1対1の対話なので、これをぶっ続けだとかなりしんどい気がする。

ところで、世の中には《指環》について書かれた本はたくさん出ているが、「いかにして《指環》を最初から最後まで聞き通すか(あるいは見通すか)」という点については、以下の本が非常に参考になった。

[tmkm-amazon]4276352126[/tmkm-amazon]

この本には、(あくまでも最初から最後まで聞き通すという意味において)音楽的に冗長なので気を抜いてもいいところ、それから聞き逃してはいけないところが書かれている。

具体的には、《ヴァルキューレ》においては第2幕でのヴォータンの自分語りが長過ぎるとある。確かに今まで挫折したのはこのあたりが多いなあ、と今さらながらに思う。

幕間にこの本を読んで、次の幕で何が起こるかを頭の中に叩き込み、そして1時間ちょっとの間、舞台に集中する、ということを繰り返すと、(そりゃ長いことは確かに長いが)何とか「楽しめる」ことができたのではないかと思う。

第3幕などは、おそらくちゃんと見るのは初めてだったと思うのだが、ヴォータンとブリュンヒルデが別れるところ、すなわちブリュンヒルデが炎に取り囲まれ、いわゆる「まどろみの動機」が延々繰り返されるところは率直に感動してしまった。

全般的にブリュンヒルデにはパワフルな歌唱が要求され、それは一般的にはパワフルなキャラクターに通じるのだが、この第3幕のブリュンヒルデはかよわい。強さに加えて、そのかよわさを表出するということは難しいのではないのかと思ったしだい。

自宅に帰った後、最近お気に入りの、いわゆるヴァレンシア・リング、デザイン集団であるラ・フラ・デルス・バウスの演出による公演を見直してみたのであるが、やはり恰幅のいいブリュンヒルデ役がギラギラした甲冑の衣装に身を包みながらこの第3幕を演じるのは少々違和感がある。

ちなみにこの第3幕の舞台は廃墟の地下室。冒頭の《ヴァルキューレの騎行》で彼女たちは馬ではなく簡易的な2段ベッドに乗っているので、病院の地下なのかも知れない。

*****

座席は4階(日本式に言うところの5階)のバルコニー席。一番前だし、バルコニー自体は斜め前を向いている。高いところにあるため、ステージの奥の方が見えないのは仕方がないとは思ったが、音響的にはちょっときつかった。オーケストラが演奏しているピットを上からのぞきこむような配置なので、バランス的に歌手よりもオーケストラの方が大きく聞こえてしまう。

 

ハンブルガーSV対シュトゥットガルト

岡崎、酒井を擁するシュトゥットガルトとの試合。

結果は0-4で完敗。4点中2点をPKで決められてしまったのは運が悪いというべきなのか必然というべきなのか。

ドイツ代表での疲れからか左サイドバックのアオゴがベンチスタート(で、結局試合には出なかった)。ということで左サイドからの展開ができない。

その結果、右サイドからの展開が多くなるのだが、こちらは左サイドよりもコンビネーションや個人の能力に問題があり、まったく点が取れる気がしない。シュトゥットガルトの左サイドである岡崎や酒井がボールに触れる機会が多かったのはそのせいかも知れない。岡崎も代表戦の疲れからかあまり動きがよくなく、途中で退いた。

確かに序盤は多少シュトゥットガルト寄りかなともジャッジがあったのだが、これでイライラしてはいけない。目に見えていらだっていたゲレーロが後半の早い時間にラフプレイで一発退場。もうこれで試合は決まったも同然になってしまった。次から次へとお客さんが帰ってしまう。

*****

今年のハンブルガーSVはホームよりもアウェイで勝ち点を挙げている。今年の観戦記録を振り返ると、実はハンブルガーSVの勝ち試合を目にしていないことに今さらながらに気付いた。

今シーズンのこれ以降の試合は予定が合わないので見に行けそうにない。

自分の中では今シーズンは終わってしまった気がする。

 

演奏会その50: 《ラインの黄金》(ハンブルク歌劇場)

久しぶりのハンブルク歌劇場。今回は2週間で一挙上演されるワーグナーの歌劇《ニーベルンクの指環》である。《指環》をまとめて見られる機会はそうないので、家族の理解を得て聞きに行かせてもらうことになった。

序夜として演奏される第1作《ラインの黄金》は実演/レコード/CD/レーザーディスク/DVD/ブルーレイで何度も見たり聞いたりしているのでいちばん馴染みのあるオペラである … というか、意を決して全編制覇を試みるとだいたい第2作《ヴァルキューレ》の途中で挫折して、また別の機会に最初から … ということが多いので《ラインの黄金》だけが視聴回数が多いのである。

(そういえば一昨年もウィーンまで行ってウィーン国立歌劇場の《ラインの黄金》を見たのだが、すっかりレビューを書く機会を失してしまっているなあ …)

かなり安い席を買ったのであるが、ステージ全体を見渡せるし、いちばん前なので自分の見やすい体勢で見ることができるし(普通に座ると目の前に手すりがきてしまうポジションなので少し疲れる)悪くない。

演出は … 奇をてらった部類に入るのかな?冒頭ではラインの乙女たちが巨大なベッドに寝ていて清掃人の格好をしたアルベリヒが何とかベッドに登って乙女たちをモノにしようとする、ヴォータンをはじめとする神々はちょっと羽振りがいい家族経営の中小企業のようないでたちで、強面の兄ちゃんたち(神々の居城ヴァルハラを作るファーゾルトとファーフナー)に恐喝されている、ローゲは怪しいマジシャンのようないでたち …

もともとそういう設定だと言えばそうなのだが、ほとんど全ての登場人物が身勝手で軽薄である。誰もがはたからみたら「突っ込みどころ満載」の主張を朗々と唱える。演出の意図なのかどうかはわからないが、そういった軽薄さが明確に浮き彫りになっていることが面白い。奇をてらったなりの必然性を感じられたので演出が独り歩きしている、という印象にはならなかった。

歌手もおしなべて及第点というところか。アルベリヒとエルダがいい感じだった。

ハンブルク・フィル(ハンブルク歌劇場の演奏も担当している)の音は久しぶりに聞いたが、かなり音がまろやかになっていて驚いた。ますますシモーネ・ヤングとのコンビが充実してきたということなのだろうか。

*****

期待以上に楽しめたので今後も楽しみなのであるが、《ヴァルキューレ》と《ジークフリート》はほとんど未開の地である。あらすじだけでもいいからもう少し頭に入れておかないと。

 

ヤナーチェク/歌劇《利口な女狐の物語》

「祝・ブルーレイプレーヤー新規購入」ということで。一枚だけ遅れて到着したヤナーチェクの歌劇《利口な女狐の物語》のBDである。

[tmkm-amazon]B001U1L9O4[/tmkm-amazon]

チェコで人気があった、新聞に連載されていた絵物語をオペラ化したものらしい。人間と動物(あるいは昆虫など)が登場する。当然、それらの間に言葉での会話はなく、人間は人間同士、動物は動物同士で話をする。しかし、その間には確かにコミュニケーションが存在しているのである。かみ合うようでかみ合わず、微妙に交錯する関係が面白い。

舞台美術は、さすがフランスという感じ。半ば擬人化された動物たちが色鮮やかなコスチュームをまとい、ひまわり畑の中でストーリーが展開する。

原作は第2幕の主人公の女狐ビストロウシュカと雄狐が結婚するところでハッピーエンド、なのだが、ヤナーチェクが言いたかったことは、書き足した第3幕にある輪廻というか生命の再生らしい。

結局、ビストロウシュカは行商人に悪さをして撃ち殺されてしまう。

ラストシーンでは冒頭と同じく、森番がひまわり畑の前に寝そべっているシーンが再現されるのであるが、冒頭で登場したビストロウシュカに代わって、ここでは死んだビストロウシュカと瓜二つの子ぎつねが登場して幕となる。こういうフラッシュバックは何とも言えないやるせない気持ちになる。