日別アーカイブ: 2010 年 3 月 19 日

演奏会その37: ウィーン・フィル+ブーレーズ

Pierre Boulez dirigiert Werke des 20. Jahrhunderts

Konzert der Gesellschaft der Musikfreunde in Wien
Datum: 2010-03-19, 19:30
Ort: Musikverein, Großer Saal (Wien, Österreich)
Dirigent: Pierre Boulez
Steve Davislim, Tenor
Singverein der Gesellschaft der Musikfreunde in Wien

Karol Szymanowski: Symphonie Nr. 3, op. 27, “Das Lied von der Nacht”
Claude Debussy: “Jeux”. Poéme dansé für Orchester
Pierre Boulez: Notations (I, VII,IV,III,II)

「ブーレーズ、20世紀作品を振る」と題された特別演奏会です。ポーランドの作曲家シマノフスキの交響曲第3番《夜の歌》、ドビュッシーの管弦楽のための舞踏詩《遊戯》、そしてブーレーズ自作自演の《ノタシオン》です。

今回の演奏会は3月26日に誕生日を迎えるブーレーズの85歳の誕生日(1925年生まれ)を祝うという意味合いもあるようです。楽譜出版社の Universal Edition の広告が貼られていました。

さて、私の席ですがこんな感じでした。前から10列目、中央エリアの右から10番目、ほとんど真っ正面です。

《夜の歌》は期待通り(予想通り)繊細な響きが楽しめました。月曜日にハンブルク・フィルで聞いたシモーネ・ヤングの指揮がかなりドイツ的というか重厚な雰囲気だったのに対して、ブーレーズはやはり細かい動きを明確に聞かせるような感じです。あえて言うと細かい動きに拘泥するあまりに、曲全体としてのダイナミズムが停滞してしまうのかなあ、という懸念もありました。まあ、この特徴は1990年代以降のブーレーズのアプローチの諸刃の剣なのではないかと思っているのですが。

ドビュッシーの《遊戯》は、そのスタティックさがちょっと苦手(率直に言うと退屈)な作品だったのですが、今回の演奏はカットアップ的な音楽の変化が面白く聞けたように思います。こういうのは(上記の懸念とはまさに表裏一体なのですが)安易に曲の雰囲気に流されないブーレーズのアプローチの優れたところなのではないかと思ったしだいです。

《ノタシオン》はいわゆる「ワークス・イン・プログレス(進行中の作品)」。まずIからIVが書かれ、後年にVIIが書かれました。演奏する順番を演奏者が任意に決めてよい、という作品だったように記憶しています。本番の演奏直前に上記のような順番(I→VII→IV→III→II) に演奏されることが会場に説明されました。この並びだと大まかには「急―緩―急―緩―急」というテンポになります。特にIVやIIは細かい音符が速いテンポの変拍子の中でかけめぐる作品で、これが決まるとかなりかっこいいのですが、IIの後半からずれが気になってしまったのがちょっと残念でした。

しかし、ブーレーズはもうすぐ85歳とは思えない元気な指揮ぶりです。ビデオなどでは何度も見ていますが、曖昧さがなく無駄を排した指揮はとても美しいです。ご存知の方も多いと思いますが、ブーレーズは指揮棒を持ちません。それでいて鋭い打点がちゃんと打てるあたり、まだまだ長生きしそうです(笑)。

ウィーンフィルの音も、ハンブルクのライスハレで聞いた時のような過剰な音圧による息苦しさはほとんど感じられず、ホール中に綺麗に響きます。そして決して飽和しません。

念願だった、ムジークフェラインザールでウィーンフィルを聞く、という夢は達成されたわけですが、何と言うか麻薬的快感ですね(笑)。何度でも足を運びたいです。今度はマーラーの交響曲とかを聞けるとうれしいなあ。

ウィーン日記その1: ウィーンはいつもウィーン

そういうわけで、今日から2泊3日でウィーンヘ出かけます。

オーストリア航空の直行便。フォッカー100なんて初めて乗りました。順調に2時間ほどでウィーンに到着。気温17℃ということですっかり春らしい天気です。空港で「ウィーン・カード」を購入。3日間ウィーン市内の交通乗り放題+各種美術館の割引 … なのですが、空港は「ウィーン市内」ではないらしいので、このカードだけでは中心部へ行けません(不正乗車になります)、1.80ユーロの差額を購入するように、と言われました。空港からウィーン・ミッテ駅までは30分弱といったところでしょうか。そこから地下鉄U3に乗り換えると観光の中心である Stephansplatz 駅まで行けます。そこで地上に出るとシュテファン教会のすぐそばです。

このシュテファン教会から国立歌劇場までの目抜き通りがケルントナー通り (Kärntner Straße) です。今回のホテル「ホテル・カイゼリン・エリーザベト」はこのケルントナー通りから少し脇道に入ったところ。歌劇場まで徒歩圏内という立地に関わらず意外に安い値段で出ていたので予約してみたのでした。あとから「地球の歩き方」を見てみたら非常に由緒あるホテルで、リストやワーグナーなども泊まったことがあるのだそうです。まあ「王妃エリーザベト」という名前をホテルに冠する許可を正式にもらったらしいので言わずもがななのですが。部屋は改装したばかりのようですし、フロントのスタッフも気さくだったし、よくある「由緒あるホテル」のデメリットを全く感じなかったホテルでした。

チケットのピックアップを兼ねて、念のため国立歌劇場と楽友協会ホール(ムジークフェラインザール)の下見へ。歌劇場は通りをまっすぐ南下したところにあります。

国立歌劇場の近くには地下のモール、というかトラム乗り場へ行くための地下通路に売店がいくつかあるようなところがあるのですが、その公衆トイレは「オペラ・トイレ」ということで《美しく青きドナウ》が鳴り響いていました。あいにく中には入ってみませんでしたが …

さて、国立歌劇場のすぐ裏には「ザッハー・トルテ」で有名なホテル・ザッハーがあります。なので、ちょっとお茶を。カプチーノとザッハー・トルテをいただきました。

まあ、混んでいるのはわかりますが「牛丼屋か?」というくらいの客のさばき方です。ちゃんとしたカフェの方に行けばよかったかなあ … 私が入ったのは売店に付随している方でした。

さて、歌劇場からもうちょっと南下して東に行くとムジークフェラインザールがあります。それから帰りに見つけた広告塔。今日の公演も告知されています。

ホテルへ戻ってくる道すがら、寄ってみたかったのが楽譜屋さんの「ドプリンガー」です。

さすがにフルスコアの蔵書は多く、ずっと見ていても飽きません。おそらくウィーンゆかりかと思われる知らない作曲家の作品も多数ありました。さすがにウィーンの出版社である Universal Edition のスコアは比較的安いのでそのあたりを中心に「ウィーン記念」ということで、《シンフォニエッタ》(ヤナーチェク)、《ヴァイオリン協奏曲》(ベルク)、《パシフィック231》(オネゲル)のミニスコアを買ってみました。

ちょっと早い夕飯はホテルの隣りのレストランで。さすがに午後5時だと誰もいませんが(笑)、ちゃんとサーヴしていただきました。待望のヴィーナー・シュニッツェルを。ドイツでもシュニッツェルは食べられるのですが、多くの場合牛肉ではなく豚肉ですし、比較的厚めですし、何かしらのソースがかかっています。牛肉を薄く叩いたものにレモンを絞って … というやつを食べたかったのです。

かなりイメージ通りのものが食べられて満足でした。あ、ちなみに演奏会前に満腹になるのも嫌だったのでシュニッツェルはハーフポーションです。

演奏会については次のエントリーに続く。