演奏会その33: ウィーンフィル

ProArte • Wiener Philharmoniker • Lorin Maazel
Fr, 19:30 – ca. 21:30 Uhr / Laeiszhalle / Großer Saal

Wiener Philharmoniker
Dirigent Lorin Maazel

Ludwig van Beethoven: Symphonie Nr. 6 F-Dur op. 68 «Pastorale»
Anton Bruckner: Symphonie Nr. 3 d-moll

やはり、音の鳴りは他のオケとは別次元です。今まで聞いたオケの中では(何回も書いていますが)シュターツカペレ・ドレスデンの音がとても気に入っているのですが、ウィーンフィルの音はドレスデンの音をぴかぴかに磨き上げて音のエッジを鋭角にしたようなイメージです(どちらがいい悪いと言っているわけではありませんので、念のため)。飛んでくる音も途中で減衰せずにベクトルをしっかり維持しているように聞こえます。管楽器だと「隅々まで息の通った張りのある音」みたいな表現ができるのですが、弦楽器の場合はどう言えばいいのかちょっとわかりません。

指揮者はロリン・マゼール。来月80歳を迎えるようですが、まだまだ元気です。指揮の振りはとても軽いのですが、それでもオケから的確な表情を引き出せるのはさすがだと思いました。そして指揮者用の譜面台が用意されていないことに驚きました。ベートーヴェンの《田園》はともかく、どうやったらブルックナーの交響曲を暗譜できるのでしょう?

そういえば、マゼールの暗譜能力についてこんなエピソードを聞いたことがあります(人から聞いたんだっけ?本で読んだんだっけ?)。マゼールは弟子にスコアを完全に暗記させて、そのあとに「何小節目のこのパートは何を演奏している?」といった質問をするのだそうです。なぜそんなことをするのかというと、マゼールがそれを必要だと思っていて、マゼールにはそれができるから、なのだそうです。

で、演奏の方ですが、まずブルックナーは圧倒的に素晴らしかったです。このオケの隅から隅まで鳴らし切るソノリティはブルックナーの作品にベストマッチだと思います。げっぷが出そうな濃密な音圧に圧倒されました。スコアを見ると金管の編成は4-3-3-0(実はテューバを使っていない)なのですが、それぞれ1本ずつアシを追加していたようです。それにしてもこれだけの中庸な編成でこんなに充実した響きが出てくるとは、ブルックナーのオーケストレーションがすごいのか、ウィーンフィルがすごいのか。

ただ、同じような方法論をベートーヴェンの《田園》に持ち込むと少し違和感を感じます。一言で言うと「過剰」。序盤こそ弱音や細かい部分でも音符がしっかりと聞こえてくることに感心していたのですが、だんだん疲れてきました。例えるならば、極端に解像度の高い映像を見続けた時の疲れみたいなものでしょうか、情報量の多さについていけなかったのかも知れません。

アンコールはブラームスの《ハンガリー舞曲第5番》。《田園》も(いい意味で)このくらい手を抜いてくれればよかったのになあ、と思わせるリラックスした演奏でした。

いろいろなオケを同じホールで聞けると違いがわかって面白いです。良くも悪くもウィーンフィルの個性はワン・アンド・オンリーだと感じました。

2 thoughts on “演奏会その33: ウィーンフィル

  1. isaogermany

    こんばんは。
    ウィーンフィル&マゼール、非常に面白かったですね。
    マゼールが80歳とは思えない身のこなしで、音楽も非常に若々しく聞こえたのが驚きでした。
    この分ならあと10年くらいは現役で頑張れそうです。笑

    ウィーンフィルも、マゼールの要求に的確に答えていたと思います。独特の音の輝きみたいのが忘れられません。

  2. musicabella 投稿作成者

    isaogermany さま:

    そうですね。私はヤンソンス/コンセルトヘボウの演奏で予習したのですが、ヤンソンスのカチカチとした演奏に比べてマゼールは幾分速めのテンポで、曲に流れがあったように思います。
    しかし、ハンブルクはやたらブルックナーを聞く機会が多いような気がしますが、気のせいでしょうか(笑)?

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