日別アーカイブ: 2010 年 2 月 26 日

演奏会その33: ウィーンフィル

ProArte • Wiener Philharmoniker • Lorin Maazel
Fr, 19:30 – ca. 21:30 Uhr / Laeiszhalle / Großer Saal

Wiener Philharmoniker
Dirigent Lorin Maazel

Ludwig van Beethoven: Symphonie Nr. 6 F-Dur op. 68 «Pastorale»
Anton Bruckner: Symphonie Nr. 3 d-moll

やはり、音の鳴りは他のオケとは別次元です。今まで聞いたオケの中では(何回も書いていますが)シュターツカペレ・ドレスデンの音がとても気に入っているのですが、ウィーンフィルの音はドレスデンの音をぴかぴかに磨き上げて音のエッジを鋭角にしたようなイメージです(どちらがいい悪いと言っているわけではありませんので、念のため)。飛んでくる音も途中で減衰せずにベクトルをしっかり維持しているように聞こえます。管楽器だと「隅々まで息の通った張りのある音」みたいな表現ができるのですが、弦楽器の場合はどう言えばいいのかちょっとわかりません。

指揮者はロリン・マゼール。来月80歳を迎えるようですが、まだまだ元気です。指揮の振りはとても軽いのですが、それでもオケから的確な表情を引き出せるのはさすがだと思いました。そして指揮者用の譜面台が用意されていないことに驚きました。ベートーヴェンの《田園》はともかく、どうやったらブルックナーの交響曲を暗譜できるのでしょう?

そういえば、マゼールの暗譜能力についてこんなエピソードを聞いたことがあります(人から聞いたんだっけ?本で読んだんだっけ?)。マゼールは弟子にスコアを完全に暗記させて、そのあとに「何小節目のこのパートは何を演奏している?」といった質問をするのだそうです。なぜそんなことをするのかというと、マゼールがそれを必要だと思っていて、マゼールにはそれができるから、なのだそうです。

で、演奏の方ですが、まずブルックナーは圧倒的に素晴らしかったです。このオケの隅から隅まで鳴らし切るソノリティはブルックナーの作品にベストマッチだと思います。げっぷが出そうな濃密な音圧に圧倒されました。スコアを見ると金管の編成は4-3-3-0(実はテューバを使っていない)なのですが、それぞれ1本ずつアシを追加していたようです。それにしてもこれだけの中庸な編成でこんなに充実した響きが出てくるとは、ブルックナーのオーケストレーションがすごいのか、ウィーンフィルがすごいのか。

ただ、同じような方法論をベートーヴェンの《田園》に持ち込むと少し違和感を感じます。一言で言うと「過剰」。序盤こそ弱音や細かい部分でも音符がしっかりと聞こえてくることに感心していたのですが、だんだん疲れてきました。例えるならば、極端に解像度の高い映像を見続けた時の疲れみたいなものでしょうか、情報量の多さについていけなかったのかも知れません。

アンコールはブラームスの《ハンガリー舞曲第5番》。《田園》も(いい意味で)このくらい手を抜いてくれればよかったのになあ、と思わせるリラックスした演奏でした。

いろいろなオケを同じホールで聞けると違いがわかって面白いです。良くも悪くもウィーンフィルの個性はワン・アンド・オンリーだと感じました。

but I got two!(承前)

朝5時(日本時間午後1時)に起きて、女子フィギュアスケートのフリースタイルを見ました。まあキム・ヨナにあれだけの演技をされたら届きませんね。真央ちゃんと順番が逆だったら(そして細かいミスがなかったら)プレッシャーをかけられたのに … というのは結果論ですが。前回のトリノオリンピックでは荒川静香の演技がよかったためにそのあとにすべったスルツカヤにプレッシャーをかけたように思いますし。そういえば、トリノオリンピック(もう4年前ですね)が開催されたのはちょうど息子が言葉を覚え始めた時期で、オリンピックのことを「おぴんく」と言っていたことを思い出しました。ドイツでもちゃんと Eurosport というチャンネルが生中継してくれていたのですが、日本での放送と違い、演技中にはアナウンサーや解説が全く口をはさまずにただ会場の音が流れているだけでした。

さて、ブーレーズ指揮ウィーンフィルの演奏会チケット入手の顛末です。背景はこちらのブログエントリーをご参照ください。発売開始時刻の前から PC に張り付いて、発売開始と同時にいちばんいいチケットを取る、という目論見だったのですが、開始時刻になっても「あなたは会員じゃないからもうちょっと待ってね」というメッセージが出てなかなかチケットを予約できない大らかさが日本と違いますね。

まあ、そんなに急がなくても比較的いい席が取れました。ちなみにプログラムは、

  • シマノフスキ/交響曲第3番《夜の歌》
  • ドビュッシー/遊戯
  • ブーレーズ/ノタシオン(I, II, III, IV, VII)

です。どんな曲だったかはすぐに思い出せませんが、確か音源は全部持ってきたはずなのでこれから予習に励みます。… が、ノタシオンのVIIはなかったかなあ … シマノフスキの交響曲は来月ハンブルク・フィルも取り上げるので、年末に帰国した時に発掘してMacに取り込んできたところです。

この演奏会が3/19(金)の夜なので、金曜日から日曜日にかけて2泊3日でウィーンに行けばいいわけです。ということは3/20(土)にある演奏会も聞けるわけで、目ぼしいものがないか探してみました。

「まさか、今からチケット取れないよなあ …」と思ってウィーン国立歌劇場のウェブサイトを見てみたのですが、まだ残っていました。ワーグナーの楽劇《ラインの黄金》。指揮は今年から小澤征爾に代わってこの歌劇場の音楽総監督に就任するフランツ・ヴェルザー=メスト。(ちなみにヴェルザー=メストは来年のウィーンフィルのニューイヤーコンサートを振ることも決まっています。)

《ラインの黄金》は4部作《ニーベルンクの指環》の序夜にあたる作品です。私は何度も「指環制覇」にチャレンジして挫折しているので(笑)、この《ラインの黄金》だけはたくさん見たり聞いたりしています。ストーリーもほとんど頭に入っていますし、4部作の中でいちばん短いし(それでも2時間30分ほどですが)、まあ、いけるのではないかと。

さすがに安い席はほとんど残っていませんが、3階バルコニー席の比較的中央に近い席が中庸の値段で残っていました。さすがにそれほど安くはありませんが、このレパートリーを日本で見ることを考えると安いです … という意味の中庸です。

「第二の独身生活」最後のイベントとして、ほんのちょっとパーっとやってきます(笑)。