不覚。
毎日毎日似たような積雪情報をブログに書き綴っていたにも関わらず、今日はわざわざいちばん滑らない靴を選んで履いたにも関わらず、車に乗る時に滑ってすっ転んでいまい、左ひざを思い切り地面にぶつけてしまいました。シャーベット状の雪がつるつるの氷の上に積もっていたようです。すぐにでもその場にうずくまりたい気持だったのですが、さすがに雪の中に倒れこむわけにもいかず、何とか車の中に入って数分呻いていました … しばらくしたら痛みも治まったので今のところは大丈夫そうです。
*****
さて、昨年に引き続き、2回目のシュターツカペレ・ドレスデンの演奏会です。「ノルディック・コンサート」と題された北欧をまわるツアーのようで(ハンブルクは北欧かい!)、ノルウェーのオスロ(2/2)、デンマークのコペンハーゲン(2/3)、ハンブルク(2/4)、スウェーデンのストックホルム(2/6)という予定です。
ライスハレ周辺は意外に空いていたので、車は余裕で路上駐車できました。夕食はいつもの「Am Gansemarkt」で。アプフェルショーレ、サラダ、グヤーシュスープと控えめにしていた(前はこれにハンバーガーを注文していたりした)のですが、いい具合にお腹にたまります。
Sächsische Staatskapelle Dresden • Frank Peter Zimmermann • Neeme Järvi
Nordic Concerts
Thu, 08:00 PM / Laeiszhalle / Großer Saal
Sächsische Staatskapelle Dresden
Frank Peter Zimmermann Violine
Neeme Järvi Dirigent
Johannes Brahms: Konzert für Violine und Orchester D-Dur op. 77
Richard Strauss: Also sprach Zarathustra / Tondichtung frei nach Friedrich Nietzsche op. 30
残念ながら音楽監督のファビオ・ルイージは健康上の理由でキャンセルということで、代わりにネーメ・ヤルヴィが同じプログラムを振ることになりました。印刷物も全てヤルヴィに差し替わっていたので、代役は比較的前から決まっていたのかも知れません。ホール前で「チケット売ります」の人が多く見受けられたのは、ルイージ期待のお客さんが多かったからなのでしょうか。ホールの入りも7〜8割といったところで、ちょっと淋しいです。
演目はブラームスのヴァイオリン協奏曲と、リヒャルト・シュトラウスの交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》です。ヤルヴィというと「やるときゃやるぜ」といった感じの爆音系指揮者という印象があるのですが、さあ、どうなりますことやら。
ブラームスのヴァイオリン協奏曲はカラヤンとアンネ=ゾフィー・ムターの演奏で予習していました。実はこの演奏、ブラームス箱とグラモフォン箱の両方に収録されています。ムターの多少ごつごつした演奏(録音マイクが近いのかなあ?)に比べるとフランク=ペーター・ツィマーマンの演奏はとてもまろやかに響きます。第2楽章の冒頭、オーボエの美し過ぎる(笑)ソロにからむ(ホルンも含めた)木管合奏は素晴らしいアンサンブルでした。ドレスデンの木管楽器はそれぞれの奏者の音が非常に立っていてものすごく存在感があります。それでいながら、まとまると束になった何とも言えない芳醇な音色になります。ヴァイオリン・ソロはちょっとポルタメントの使い過ぎが気になりました。第3楽章は前に前に行きたいツィマーマンと、どっしり行きたいヤルヴィの指揮があまり噛み合っていませんでした。まあ、それも些細な問題でしたが。
アンコールは知らない曲でしたがバッハのように聞こえます。無伴奏ソナタの中の1曲かな?ここであらためてツィマーマンの音色の存在感にびっくりしました。協奏曲の中で演奏している音の何倍も豊かに聞こえました。弱音部は、本当にホール全体が息を飲んでいるような緊張感でした。
後半は《ツァラトゥストラはかく語りき》。2管編成だったブラームスに比べると、4管編成になって(しかもテューバ2本、ハープ2台、パイプオルガンつき)ステージ上の人数もかなり増えます。弦も増えていたかな?この曲、冒頭の存在感があまりにも大きいせいか、ぶっちゃけそれ以降の音楽にそんなに魅力を感じません。まあ、曲想などは「いかにもシュトラウス」という感じなので、その雰囲気を楽しむことにしました。
前回同じオケでファビオ・ルイージの指揮で聞いた《アルプス交響曲》は端正に作りこまれた印象があったのですが、ヤルヴィはやはり隅々まで鳴らしてきます。それにしても、このオーケストラが「シュトラウス・オーケストラ」と言われている所以がわかります。音色といい、突出してきてほしい時に出てくる楽器のバランス感とか、「これしかない」というくらいリヒャルト・シュトラウスの作品にふさわしい感じがしました。途中、ステージの上でカラフルな流動体がうごめいていて、それが刻一刻と形を色を変えているようなイメージが頭に浮かびました。
ひょっとして、ルイージだったらここまで奔放な響きを聞けなかったかも知れません。綺麗にまとまる飽和点からほんのちょっとはみ出した奔放さはヤルヴィの指揮のおかげでしょう。まったくもってブラヴォーです。
さてアンコール。ヤルヴィが一言目に何と言ったのか聞き取れなかったのですが、二言目は「Andante Festivo」。シベリウスの《アンダンテ・フェスティーヴォ》です。弦楽合奏とティンパニのために書かれた小品で、「Festivo」というくらいなので一応祝祭的な意味合いの曲なのですが、懐想的で、どこかしんみりする雰囲気の荘厳な曲です。ものすごく大好きな作品で、しかもヤルヴィ指揮エーテボリ響の演奏を愛聴していて(以下の交響曲第5番のカップリングで収録されています)、しかもシュターツカペレ・ドレスデンの弦の響きでこの曲を聞けるなんて、想像だにしていませんでした。最初の音を聞いた瞬間、涙が出てきてしまいました。(分かる人には分かっていただけるかと思いますが、教授のコンサートのアンコールでいきなり《Aqua》が始まった時のような感覚です。)相変わらず彫りの深い演奏で、メインプログラム以上におおらかな表情の演奏でした。コントラバスが唸るような音は他のオケで聞けない音だと思います。
アンコール2曲目は知らない曲でした。《Andante Festivo》と違って曲目紹介をしませんでしたし、隣に座った夫婦は曲に合わせてリズムを取っていたりしていたので、一般的には有名な曲なのかも知れません。
ますます、このオケが好きになりました。ドレスデンまで聞きに行くか?(笑)