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演奏会その14: グバイドゥーリナ作品展(その1)

金曜日はカリーブルストの日 … なのですが、Dwenger の日替わりメニュー「アヒルの胸肉」がおいしそうだったので、それにしてみました。脂身が少ないけど柔らかくて、とてもよかったです、量も適度で。ヘビーメタルとワーグナーが好きな(笑)ボスと一緒に行ったのですが「来年になったら一緒にワーグナーのオペラを見に行くか?」みたいなお誘いを受けました。地元ローカルの新聞によると、今週初演されたハンブルク歌劇場の《ジークフリート》が大盛況だったそうです。生で見てみたいのですが、やはり十分に予習しないと(何年も前に DVD を買ったのに《ラインの黄金》しか見ていないし …)。

4日連続の演奏会行脚。初日はロシア生まれの女流作曲家ソフィア・グバイドゥーリナの作品展です。これは2日連続で行われる予定で、初日は管弦楽作品、2日目は室内楽作品が演奏されます。

そういえば、会場のロルフ・リーバーマン・スタジオのまわりにはあまり食事ができるところがないのです。前に行ったイタリア料理のレストランはけっこうおいしかったのですが、自宅を出たのが少し遅れたせいでゆっくり食事をするには時間がありませんでした。結局、会場内で売っていたプレッツェルとコーヒーだけ。

Freitag, 23. Oktober 2009, 20.00 Uhr
Rolf-Liebermann-Studio, Hamburg
Konzert 1

NDR Sinfonieorchester
Leitung: Stefan Asbury
Solist: Ivan Monighetti, Violoncello

Sofia Gubaidulina:
Märchenpoem für Orchester (管弦楽のためのメルヘン・ポエム)
“Und: Das Fest in vollem Gang” für Violoncello und Orchester (チェロ協奏曲《Und: Das Fest in vollem Gang》、「そして、宴たけなわ」みたいな意味でしょうか …)
“Stimmen…verstummen…”, Sinfonie in zwölf Sätzen (12楽章の交響曲《声 … 沈黙 …》)

ええと … 最初の2曲は途中で気を失いました … 《メルヘン・ポエム》は前半の弦楽器のピチカートが作り出すリズムがスウィングっぽくて面白かったです。

《声 … 沈黙 …》はこういうタイトルですが声楽は使われていません。かなり多数の打楽器、サクソフォン、オルガン、チェレスタまで入るかなり大規模な編成です。打楽器はオーケストラを取り囲むように配置され、弦楽器と金管楽器は左右2群に分かれて配置されています。大雑把に言ってしまうと、まず奇数楽章では明確に D dur の和音が響きます。当然普通に鳴らすわけではなくて、弦のスル・ポンティチェロとか分散和音とか、あるいは管楽器の点描的な発音によって構成されています。偶数楽章は弦楽器や木管楽器が主体の室内楽的な響き。時おり音色旋律のようなアイデアが聞かれます。最初の方の楽章ではこういった特徴が明確なのですが、だんだんお互いの特徴が浸食し合ってきます。そういえばグバイドゥーリナのヴァイオリン協奏曲《オッフェルトリウム》は、バッハの《音楽の捧げもの》で使われている「王の主題」が繰り返されるたびにだんだん音を抜かれているのだったと記憶しています。ある楽想が繰り返されるたびに少しずつ変容していくというアイデアは似たようなものなのかなあ、と、ふと思い出しました。この作品は指揮者のゲンナジー・ロジェストヴェンスキーに献呈されたのですが、ロジェストヴェンスキーがロシアのオケを振ったらさぞかしすごいことになりそうだなあ、と思ったら CHANDOS からロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団との録音が出ているようです。買ってみようかなあ、この曲はまたじっくり聞いてみたいです。

しかし、どの作品もクライマックスでのすさまじい暴力性には圧倒されます。これは以前聞いた(そして明日も演奏される)金管アンサンブル作品でも感じたことなのですが。グバイドゥーリナ本人も会場に来ていたのですが、率直に言って普通のおばさんでした。このおばさんが内に秘めた衝動とかエネルギーを想像するとちょっと怖いものがあります。3曲ともに感じたことなのですが、この作曲家特有のソノリティは非常に個性的なのだと思うのですが、時としてそれの時間的変化が乏しい、あるいは同じパターンが繰り返されるように思うことがありました … というのが気を失った言い訳なのですが …

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隣に座った老婦人が話しかけてくれました。「ドイツ語話せないんです。英語話せますか?」と言ったら、何とか英語で会話を始めてくれました。私も何とか知っているドイツ語で答えてみました。「何か楽器をやってらっしゃるの?」「あ、トランペット吹いています。」「今も吹いてらっしゃるの?」「あ、まだこちらに住んで4ヶ月なので今は吹いていないです。」「ミセス・グバイドゥーリナの音楽は前から知ってらしたの?」「もちろん、知っていました。」みたいな感じで。

演奏会その13: ベルリン・ドイツ交響楽団

Dienstag, 13. Oktober 2009, 19:30 Uhr

Deutsches Symphonie-Orchester Berlin

Ingo Metzmacher, Dirigent
David Fray, Klavier
Ligeti: Lontano
Beethoven: 3. Klavierkonzert op. 37 c-Moll
Bartók: Konzert für Orchester Sz. 116

指揮者のインゴ・メッツマッハーは2004/2005 年シーズンまでハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者とハンブルク歌劇場音楽監督を兼任していました。特に20世紀音楽については定評があります。ハンブルク・フィルのジルヴェスター・コンサートで企画していた「20世紀音楽なんか怖くない」シリーズとか、カール・アマデウス・ハルトマンの交響曲全集とか、ベルクの《ヴォツェック》やノーノの《プロメテオ》などの現代オペラとか、アンサンブル・モデルンとの諸作品とか。一度生で聴いて(見て)みたかった指揮者です。

ピアニストのダヴィッド・フレイは1981年フランス生まれのピアニスト。第5回(2003年)浜松ピアノコンクールで奨励賞を受賞しています。バッハとブーレーズを組み合わせたアルバムを出していたりします。

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いつものように早めに退社→着替え→電車(Sバーン)で Jungfernstieg まで→そこからライスハレまで徒歩というパターンです。夕食は、最近ほとんどライスハレとペアになっている「EDEL CURRY」のカリーブルストを食べました。

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(飲みかけで見苦しくて申し訳ありませんが …)ビールはシェーファーホッファー(Schöfferhofer)のヴァイツェン。これもヴァイツェンの中では好きな銘柄です。Franziskaner 同様、ヴァイツェン特有の濁り感がおいしいのです。

ライスハレまでの歩きながら気がついたのですが、時間に余裕があるときはライスハレの近くにある日本料理屋の「小紋」で夕食を食べるという手もありました。今度からそうしようと思います。

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この演奏会は、ハンブルクを本拠地とする楽団の自主公演ではなく、ProAlte というプロモーターが招聘している演奏会です。そのせいなのかどうかわかりませんが、プログラムが無料で、クロークも無料でした。まあ、どうでもいい話ですが …

《ロンターノ》は「明るい部屋から真っ暗な部屋に入った時、最初は何も見えないが目が慣れてくると少しずつモノが見えてくる」というイメージの曲ら しいのですが、ピアニシモの堆積のような作品です。デュナーミクとか音色とかも含めて緊張感とのせめぎあいがキモだと思うのですが、緊張感を持続させるだ けの緻密さが感じられませんでした。オープニングには適さない曲じゃないかなあ …

レパートリーから想像するに、メッツマッハーは端正な指揮をするのかと思っていたのですが、かなり踊ります(笑)。ちなみに指揮棒は持っていませんでした。現代モノではおそらくそんなに目 立たないのだと思いますが、これまた意外に表現の彫りが深いです。ベートーヴェンのピアノ協奏曲のフレーズのアーティキュレーションとか、アゴーギクと か、「そこまでしなくてもいいだろう」というくらい濃密です。こういうアプローチは聴き手の好みとあった場合には効果的なのでしょうが、どうも私には合わなかったようで、フレイのピアノも相まって全体的に違和感ばかりを感じていました。前日リファレンスとして聞 いていたエマールとアーノンクールの演奏が非常にすっきりしていたせいもあるかも知れませんが。第2楽章はよかったと思います。

予想通りというか期待通りというか、やはりバルトークの《管弦楽のための協奏曲》が楽しめました。ベートーヴェンで感じた違和感もこの曲ではいい方に作用したのだと思います。全曲を聴くのはえらく久しぶりのような気がするのですが(そういえば浜松交響楽団の演奏会は予定が合わなくていけなかったんだなあ …)、久しぶりに聴くと新鮮ですね。この曲は、なぜか生涯2冊目に購入したフルスコアで(1冊目はもちろん《春の祭典》)、その昔、スコアを見ながらショルティ/シカゴ響の演奏を一所懸命聴いていました。

メッツマッハー自身も、そして聴きに来ているお客さんもメッツマッハーの「凱旋」であることは意識していたようで、拍手の大きさからもそういう雰囲気が感じられました。アンコールで行進曲を1曲(曲目不明、何だろう?)やったのですが、もうほとんどサービスのような感じでギミックだらけでした(笑)。

ほぼ毎回聴いている席が違うので、席が原因なのか、オケが原因なのかよくわかりませんが、今日の席(フロア席のほぼ中央)ではバランス的に弦がかなり聞こえていて、管楽器があまり飛んできませんでした。やはり、2階以上の席の方がいいのかなあ?

演奏会その12:北ドイツ放送交響楽団

So, 11.10.2009 | 11 Uhr
Hamburg, Laeiszhalle

Alan Buribayev Dirigent
Alice Sara Ott Klavier

MODEST MUSSORGSKI / NIKOLAJ RIMSKI-KORSAKOW
Eine Nacht auf dem kahlen Berge
SERGEJ RACHMANINOW
Rhapsodie über ein Thema von Paganini a-Moll op. 43
FRANZ LISZT
Totentanz für Klavier und Orchester
SERGEJ RACHMANINOW
Sinfonische Tänze op. 45

そもそもこの演奏会へ行こうと思ったのはラフマニノフの《交響的舞曲》が聴きたかったからなのですが、よくよく考えると、この《交響的舞曲》、同じくラフマニノフの《パガニーニの主題による幻想曲》、リストの《死の舞踏》には有名な「怒りの日(Dies Irae)」のモチーフが使われています。(いちばん有名な引用はベルリオーズの《幻想交響曲》の第5楽章でしょうか。ちなみに吹奏楽でもフランク・ティケリの《ヴェスヴィアス》に一瞬登場します。)で、《死の舞踏》同様、ムソルグスキーの《禿山の一夜》もデモーニッシュな雰囲気を持つ作品、ということで、あまり昼間から聴きたくない雰囲気の音楽ばかりですが(笑)、まあ出かけました。

(後日付記)《禿山の一夜》の冒頭の低音楽器によるモチーフも、「怒りの日」のモチーフを変形させたものとしてとらえられているようですね。

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演奏者についてはまったく予習していかなかったのですが、ピアニストのアリス=紗良・オットさんはドイツ人と日本人の間に生まれたそうで(会場で買ったプログラムには1988年ミュンヘン生まれとしか書かれていなかったのでわかりませんでした)。例によって休憩時間にサイン会があったのでサインをもらってきたのですが、「こんにちは」と言われてちょっとびっくりしてしまったのでした。綺麗な方です。日本語が通じるんだったらもうちょっとお話しすればよかった(笑)。

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指揮者はアラン・ブリバエフ。1979年にカザフスタンで生まれたそうで、こちらもまだ若い指揮者です。

さて、演奏会ですが、ブリバエフの Allegro でのリズム感は非常によかったと思います。ただ、ゆったりとしたテンポ、その中でも特にルバートの部分でオーケストラを完全にコントロールできていない部分がかなりありました。《禿げ山の一夜》の後半とか、《パガニーニ》のクライマックスである第18変奏のあたりとか。特に《パガニーニ》はオケもよかったしソロもよかったので、それらがうまくアンサンブルできなかったのでちょっと残念でした。

プログラムの後半。《死の舞踏》はオットのピアノがうまくオケを引っ張っていった感じです。ブリバエフの指揮もうまくオケからメリハリの効いたリズムを引き出しています。いやあ、この人のリズム感覚はかなり気に入りました。北ドイツ放送交響楽団ってとても重厚な(腰の重い)響きというイメージがあるのですが、とてもシャープです。オットのピアノもパワフルです。今日の演奏会では抒情的な弾き方よりも力強さの方が印象に残りました。

《交響的舞曲》も期待通りの演奏。第2楽章は今まであまり印象に残っていなかったのですが、この演奏は《死の舞踏》のイメージを引きずるような、濃密でグロテスクなワルツでした。実は第3楽章は吹奏楽で演奏したことがあるのですが、あのアクロバティックな主部のリズム感が好きです。一聴すると複合拍子だらけのように聞こえるのですが、実は9/8拍子と6/8拍子の組み合わせです。だからこそ難しいのかも知れませんが。CD の演奏ではかなり危なっかしいのもあるのですが、これもブリバエフがうまくコントロールしていたように思います。

後半2曲はとにかく素晴らしかったです。

北ドイツ放送交響楽団は、おそらくハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団よりうまいと思うのですが、首席指揮者であるドホナーニのレパートリーとか、テレビ放送で見る限りでの彼の音楽の作り方が私の趣味と合わなそうだったので、実はちょっと敬遠していました。ドホナーニ以外の演奏会を聴きにくればいいのかな(笑)。

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昼食は中央駅近くのお気に入りの店「Nagel」へ。この店では Franziskaner が飲めます。ヴァイツェンの中では今のところこれがいちばん好きかな。

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それからグヤーシュスープ。ここのハンガリー(あるいは南ドイツ?)っぽいグヤーシュも気に入っています。

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ウィンナーブルスト。いわゆるウィンナーソーセージですね、それのポテトサラダ添え。そういえば初めてこの店に来た時にこのメニューを注文したことを思い出しました。今いる会社に初めて出張した時に、同行者5〜6名と一緒に来ました。2年くらい前になるのかな?

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空きっ腹にヴァイツェンを飲んだのでけっこうベロベロ。アパートに帰って来たら眠り込んでしまいました。年とってきたせいか(苦笑)休日でも早く起きてしまうので、なかなか週末に寝だめができませんでした。起きたらちょっとすっきり。

夕食は昨日買ってきたカレイのオリーブオイル焼き。そろそろ、もうちょっとバリエーションを考えないと。

演奏会その11: ギャラクシー・ホテル

しかし、週末になると雨が降りますなあ。朝からずっと降り続いています。

とはいえ、今日は買い出しに行かないといけないので洗濯をして午後から車で出かけることにしました。ちなみにドイツでは(特にアパートでは)基本的に部屋干しです。なので、雨が降っていようと晴れていようと特に構わず洗濯しています。一年を通して湿度が低い(というか日本のように異常に湿度が高くなることがない)ので、部屋干しでもすぐに乾いてしまいます。

ということでお昼過ぎに出発。まずガソリンを補給してからいつものアルスター湖沿いの有料駐車場に停めました。そして買ったもの。

  • 来週初めてスタジアムに行くので、ハンブルガー SV のマフラーを買ってみました。

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  • 明日聴きに行く演奏会の予習用。マリス・ヤンソンス指揮サンクト・ペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団、ミハイル・ルディのピアノによるラフマニノフの交響曲/管弦楽曲/ピアノ協奏曲集。なぜかチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番も収録されています。

Rachmaninov: Orchestral Works Symphonies 1-3 / Piano Concerto 1-4 / Isle of Dead

  • ASIA MARKT で食材いろいろ。韓国海苔を買いだめしました。それから「エバラ焼き肉のたれ」だけではなくて、韓国製の焼き肉のたれも試してみようと思い、一つ買ってみました。

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さて、昼食を食べるところを探してうろうろしていたところ、タイ料理のお店があったので入ってみることにしました。「CHA CHA」というお店で「ハンブルガー・ホフ」というショッピングモールの中にあります。(例によって)アルコールフライのビールと、エビとパイナップルのカレーを注文してみました。ちなみにこのカレーの辛さは3段階の2です。

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このアルコールフライは初めて飲んだような気がしますが、かなり甘みが特徴的です。普通の食事の時にはあまり飲みたくありませんが、こういう辛いものを食べる時にはいいのかも知れません。カレーはドイツ基準の辛さではなく、普通に辛いです(笑)。対面に座っていたドイツ人も似たようなものを食べていたのですが、汗ダラダラでした。場所柄、価格は少々高めで味はかなり洗練されています(=量も中庸)が悪くはないです。メニューも豊富でライスヌードル系もあるので、また来てみようかなと思っています。

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夜は《ギャラクシー・ホテル》という音楽劇を見にカンプナゲル(Kampnagel)へ。以前の演奏会でわりと気に入ったブルクハルト・フリードリヒが音楽をつけるということで見に行きました。

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カンプナゲルはこんなところで、倉庫を改造したようなホールがいくつもあります。いかにもアンダーグラウンドとかサブカルチャー的なイベントが行われそうな場所です。軽い夕食は隣接しているレストランで。

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ベックスのアルコールフライ(車で行ったので)は特徴のない味なんですよねえ。ピッツァ・マルゲリータはなかなかいい感じ。そういえば、日本にいた頃、同期で昼食を食べていると、よくピッツァの「パリパリ派」と「モチモチ派」で討論になったことを思い出しました。私は「パリパリ派」なので、このピッツァは OK です。

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《ギャラクシー・ホテル》は 20:00 開演でしたが、直前まで開場されませんでした。中に入ってみると中央にステージがあり、それを取り囲む三方が客席、残りの一方が演奏者の席になっていました。演奏者はヴァイオリン、チェロ、フルート、クラリネット、キーボード、打楽器の6名、それらの音をライブエレクトロニクスとしてコントロールするエンジニアがいます。

中央のステージはホテルの一室を石膏細工で復元したような舞台。ベッド、浴槽、ソファ、デスクなど全てが真っ白で、全ての輪郭が手作りのように曖昧になっています。この中で大人2名と子供1名が劇を繰り広げるわけですが …

まあ、そもそもドイツ語もわからずに見に行くということに無理があったのですが、ドイツ語がわかってもあまり面白くなかったようです。当日の物好きな(笑)観客は50〜60名くらいだったのですが、少なくとも2名は途中で退場しました。

劇の半分くらいは「Stop」「Start」という合図ともに3人がステージの中を将棋やチェスの駒のように動き回ります。この劇は村上春樹さんの小説もモチーフにしているということは事前に知っていたので、青白く映し出される非現実的な部屋の中を動き回る様子は「TV ピープル」みたいだなあ、とか考えてみたりもしました。

音楽も伴奏に徹しているような感じであまり面白くありませんでした。マルチチャンネルで音像を移動させるライブエレクトロニクスは初めてだったような気がするので、その部分は新鮮でしたが。

ううん … まあ「こういうのもあるのか」と意味では勉強になりましたが … 正直、お金を払って見るものではないなと …

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帰り道、なにげに NDR (北ドイツ放送)のクラシック番組を聞いていたら、ハノーファー国際ヴァイオリンコンクールで優勝した三浦文彰さんに関する番組を放送していました。

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今週末はヨーロッパ各地でワールドカップ予選が行われているため、ブンデスリーガはお休み。ドイツはロシアに勝って本選出場を決めました。

演奏会その10:ハンブルク歌劇場(トスカ)

適当にチケットを取ったら、昨日と今日で連チャンになってしまいました。

Sonnabend, 26. September 2009 19:30 Uhr

Tosca

Floria Tosca Adrianne Pieczonka

Mario Cavaradossi Yonghoon Lee

Scarpia Carlos Almaguer

Angelotti Kyung-Il Ko

というわけで今日はハンブルク歌劇場の《トスカ》です。思い返してみると確か日本で2回見ているので、《トスカ》を見るのはこれで3回目ということになります。(そもそも、これ以外にオペラ見たことあるんだっけ?)

ストーリーがわかりやすいし、主要登場人物は少ないし(とりあえず、主人公の歌姫トスカ、その恋人の画家カヴァラドッシ、悪役のスカルピアを押さえておけばOK)ということでオペラ初心者には適しているのかも知れません。

今日も昨日と同じように電車で行きました。昨日の教訓を踏まえて電車は確認したので、公演前にグビッといけました。Erdinger のヴァイツェンとジャガイモスープ。ジャガイモスープは裏ごししたジャガイモのスープを想像していたのですが、ほとんどポトフのような感じです。まあ、それはそれでよかったですが。

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今日はグダグダしていたので入場したのが開演ギリギリ。2階(日本でいうところの3階)バルコニー最前列中央なのにほとんどいちばん最後に着席してしまいました。昨日は1階バルコニーのちょっと下手よりに座ったのですが、今日の方が少し遠く見えるだけでほとんど違いは感じられません。チケットの値段を考えると2階でもいいかなあ。

で、《トスカ》ですが、カヴァラドッシ(テノール)◎、スカルピア(バリトン)◯、オーケストラ◯、トスカ(ソプラノ)△という感じでしょうか。

とにかくカヴァラドッシは素晴らしかったです。Yonghoon Lee という方(韓国人かな?)ですが、全般的に安定していましたし、クライマックスでオケを突き抜けてくる高音も豊かでした。それとは対照的にトスカ役の Adrianne Pieczonka はリズム/音程ともに不安定。このへんの不安定さをビブラートでカバーしようとしているというか、ごまかそうとしているというか、ちょっと物足りませんでした。この主役2人の声のキャラクターが全く違うわけで、第3幕クライマックスのデュエット(「新しい希望に魂は勝ち誇って」)のユニゾンもいまいちでした。

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サッカー(ブンデスリーガ)の話です。今日はハンブルガー SV のホームでバイエルン・ミュンヘンとの試合があり、1-0 でHSVが勝ちました。帰りは Jungfernstieg まで歩いて S バーンで帰ったのですが、地下鉄の中やホームで少々暴走している人がいました(笑)。機会があったらサッカーも見に行きたいんですけどね。

演奏会その9: ハンブルク・バレエ(バレエ・リュスへのオマージュ)

今日はハンブルク歌劇場デビュー戦。念願のハンブルク・バレエの公演です。ドレスデンに出張した時に見たジョン・ノイマイヤー振り付けによるドレスデン・バレエが面白かったので、ぜひ本場のハンブルク・バレエを見てみたかったのです。

ライスハレでの演奏会などは午後8時から始まることが多いのですが、この公演は午後7時開演。なぜならば、全公演時間が休憩込みで3時間を超えているからです。午後5時に退社して、アパートで着替えて、電車でハンブルク歌劇場に向かいました。今さらですが、ライスハレやハンブルク歌劇場で行われる多くの公演ではチケットが切符代わりになっていて、往復分の電車/バスの料金は公演チケットに含まれています。特にハンブルク歌劇場は駐車場を見つけにくいし、そもそもSバーン/Uバーンの駅に近いし、今日はビールを飲みたいし、ということで電車で行くことにしました … が、急いでいたので電車を間違えてしまいました。S1 に乗らなければいけないところを S11 に乗ってしまい、中央駅を過ぎたら別の駅(Dammtor)に。地図を見るとそこからでも歩いていけそうなのですが、初めての道はちょっと心配。リスクを減らすためにちゃんと中央駅まで戻り、U2 で最寄り駅の Gänsemarkt まで。グビっとやろうと思ったのですが、全然時間がありません。とりあえずカプチーノとブラウニーをお腹に入れて空腹をしのぐことにしました。(ベルリンフィルの時と同じパターン)

Hommage aux Ballets Russes

DER VERLORENE SOHN
MUSIK: Sergej Prokofjew
CHOREOGRAFIE: George Balanchine
BÜHNENBILD UND KOSTÜME: Georges Rouault

LE PAVILLON D’ARMIDE
MUSIK: Nikolai Nikolajewitsch Tscherepnin
CHOREOGRAFIE: John Neumeier
BÜHNENBILD UND KOSTÜME: John Neumeier

LE SACRE DU PRINTEMPS
MUSIK: Igor Strawinsky
CHOREOGRAFIE: Millicent Hodson, inspiriert von Vaslaw Nijinsky
BÜHNENBILD UND KOSTÜME: Nicholas Roerich rekonstruiert von Kenneth Archer

まずはプロコフィエフ作曲の《放蕩息子》。プロコフィエフの交響曲第4番はこのバレエ音楽の素材に基づいているそうです。また、このバレエは1928年にバレエ・リュスの主宰者であるセルゲイ・ディアギレフが没する3ヶ月前に初演され、結果的にバレエ・リュスが上演した最後の作品になりました。振り付けはジョージ・バランシン。後に書くように、もうバレエ・リュスにニジンスキーはいません。

家族との生活に不満を持つ「放蕩息子」が家を飛び出し(第1幕)、異国で妖精に誘惑されて全てを失い(第2幕)、自分の愚かさを思い知って家に帰り、父親の腕の中に抱かれる(第3幕)というあらすじです。ストーリー的に、第1幕はかなり奔放、第2幕はコミカル、第3幕は厳か、という感じです。ほとんど妖精役のダンサー(アンナ・ラウデレ(Anna Laudere))の演技を見ていました。素晴らしかったです。

演目2つ目はニコライ・チェレプニン作曲の《アルミードの館》。ちなみに伊福部昭さんなどと関連が深いアレクサンドル・チェレプニンはニコライの息子です。この作品は1909年のバレエ・リュス旗揚げ時(@パリ・オペラ座)に初演された作品です。この作品は初演時のオリジナル版ではなく、ジョン・ノイマイヤーが新しく振り付けを行い、今年の6月に初演したばかりのものです。

ノイマイヤーはこれ以前にショパンやリムスキー=コルサコフの音楽を使ってニジンスキーの生涯を描いた《ニジンスキー》というバレエも作っていますが、この《アルミードの館》はその続編に当たる作品です。

ニジンスキーは1909年のバレエ・リュス旗揚げ時から参加して名声を得ますが、1913年の《春の祭典》初演後にバレリーナであるロモラと結婚したことからディアギレフの怒りを買い、バレエ・リュスを解雇されます。(ディアギレフとニジンスキーは同性愛の関係があったという説もあります)その後、精神衰弱によって1919年から精神病院に入院することになり、結局それ以降バレエ・ダンサーとして復帰することなく亡くなります。結局、ダンサーとしてのキャリアは10年あまり、60年の人生のほぼ半分を精神療養に費やしたことになります。

このバレエの舞台はニジンスキーが入院しているサナトリウムなのですが、その現実世界とニジンスキーが回想する過去とが複雑に交錯する構成になっています。初演時のオリジナル版《アルミードの館》はその回想の中の劇中劇のような形で登場します。この時、ニジンスキーは主役ではなく奴隷役のパ・ドゥ・トロワの一員だったそうで、もちろんこのパ・ドゥ・トロワも登場しますし、このバレエでなく他のバレエ《オリエンタル》でニジンスキーが踊った「シャムの踊り」も登場します。また、バレエ学校に通っていた頃の少年ニジンスキーも登場します。

その他にも、現実世界ではニジンスキーの妻であるロモラが回想の中ではバレエの主役のアルミードとして登場したり、現実世界でのサナトリウムの医師が回想の中ではバレエ・リュスの主宰者ディアギレフとして登場したりして、微妙に現実と回想がオーバーラップしています。

… と、後から調べて以上のようなことがわかりましたが、他にもいろいろなネタが仕込まれているのではないかと思います。

とても複雑な構成を全て消化できているわけではないのですが、とにかく、輝かしい過去を回想しながらも、過去の自分と全く噛み合うことができないニジンスキーに、とても切ないものを感じました。過去の自分の踊りに加わろうとしてなかなか加われない、というか、全く別物としてしか機能していないのがうまく踊りで表現されていたと思います。

ラストシーンでは、自分が着ているジャケットを脱いでバレエ学校時代の自分に着せ、ほとんど何も身につけていない姿で静かにゆったりとしたソロを踊ります(これもきっと何かのバレエからの引用なのでしょうね)。そして《春の祭典》の冒頭のファゴットソロが流れる中で幕となります。

これを見ると《ニジンスキー》も見たくなります。

そして最後の演目はストラヴィンスキーの《春の祭典》。この作品はニジンスキーの振り付けによるものなのですが、上に書いたようにその直後にニジンスキーがバレエ・リュスを解雇されたために、このバレエは8日間しか上演されませんでした。ほとんど忘れ去られていた振り付けをミリセント・ホドソンが復元したものが1987年に蘇演されました。詳細は Wikipedia をご参照下さい。また上演に際しては、このページにあるニコライ・リョーリフの背景画が使われました。もちろん、今日の上演でもそうです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%A5%E3%81%AE%E7%A5%AD%E5%85%B8

ベジャールやノイマイヤーの振り付けによる《春の祭典》を見てしまうと、この初演版は何とものどかです。(日本に持ってきたら小山清茂さんや伊福部昭さんあたりの曲が似合いそうな題材です。)ロシアの民族衣装を着たダンサーたちが踊り、第1部では敵の部族との争いを、第2部では神に捧げる生け贄の乙女の選出と、その生け贄の踊りが描かれます。まあ、当たり前ですがストラヴィンスキーによる表題通りのストーリーが展開されます。最後の生け贄の踊りだけがソロで、それ以外はほとんどグループによる踊りになっています。

いや、しかし、フルート(アルト・フルートかな?)は派手に間違えましたな(苦笑)。最後の tutti の一撃の前にフルート属だけが上昇形のパッセージを演奏するのですが、一人出遅れて時間差で演奏してしまいました。そのために最後の tutti までに微妙な間が空いてしまいました。指揮者が何とか合わせようとしたんでしょうね。(第1部「春のきざし」でもアルト・フルートのソロが1〜2小節飛び出していたような気がします。)あと、何だっけ?第1部「敵の部族の遊戯」のクライマックスでギロが使われているはずなのですが、これも聞こえませんでした。版の違い?

ということで、ちょっと締まらない公演になってしまいました。

演奏会その8: ベルリンフィル

ベルリンフィルの演奏会を聞くためにベルリンへ出かけました。ドイツに来てからは初めての「お泊まり」になります。

前の日にビールを飲んで早く寝たからなのか、ベルリンフィルの演奏会ということでワクワクしていたからなのか(笑)、夜中の3時頃に目が覚めてしまい、それから明け方まで眠れませんでした。それでもいつもの週末のように8時30分頃に起床、用意をして11時くらいにアパートを出ました。

12時頃の ICE を予約して、約1時間30分ほどでベルリンへ到着。まずは昼食ということで駅構内の簡単なシーフードのお店で鮭のソテーを食べました。もちろん、さっそくベルリンのピルスナーを。わりとドライな感じです。

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ベルリンを最初に訪れたのは1998年でした。その時のベルリン中央駅はまったく記憶に残っていないのですが、今の駅は新しい建物で、かなり機能的に作られています。(その時はプラハからベルリンに入ったのでひょっとして中央駅まで行かなかったのかも知れませんが。)

(後日付記:気になったので調べてみました。現在のベルリン中央駅はドイツワールドカップの開催に合わせて2006年に開業したのだそうです。見たことなかったわけだ。)

ドイツに持ってきた観光ガイドを見ると、ベルリン中央駅からブランデンブルク門まで行けるUバーン55号線は工事中ということになっていたのですが、2009年8月(つい先月ですね)に開業したそうです。今はまだベルリン中央駅→国会→ブランデンブルク門と3つの駅しかないのですが、今まで中央駅からブランデンブルク門まで行くにはちょっと迂回する路線しかなかったので、かなり便利になったようです。

ブランデンブルク門駅でSバーンに乗り換えると、次の駅がポツダム広場になります。ホテルはこのポツダム広場駅の一つ先のアンハルター駅の近くにあります。とりあえずチェックインして、部屋に荷物を置き、身軽になったところでまた電車に乗り、ポツダム広場周辺やブランデンブルク門周辺を歩いてみることにしました。

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11年前にポツダム広場を訪れたときは「ドイツ再開発のシンボル」のような形で大規模な工事が行われていました。近くに「INFO BOX」という建物があって、この工事計画を説明する展示がありました。ここも現在ではソニーセンターをはじめとする近代的な建物ばかりになっています。ポツダム広場駅からソニーセンターを抜けて行くと、その先にベルリンフィルハーモニーホールがあります。演奏会は8時からなので、明るいうちに行って写真を撮っておくことにしました。

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その後、また一駅戻ってブランデンブルク門駅へ。ここはかつて「ウンター・デン・リンデン(「舞姫」風に言うとウンテル・デン・リンデン)駅」と呼ばれていました。駅構内にもその名残りがあります。また、駅構内の壁ではブランデンブルク門にまつわる歴史もいろいろ書かれています。

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ブランデンブルク門から東にのびる通りがウンター・デン・リンデン通りです。実は11年前にはこの通り沿いのホテルに泊まったので、そのホテルを再確認しようと思って通りを歩いてみることにしました。
ということで、通りの東端の「博物館島」まで歩いてみたのですが、どうも見つかりません。あとで妻にその話をしたら「あんな、いかにも「東ドイツです」という雰囲気のホテルじゃ商売できるわけないからつぶれたんじゃない?」とのこと。そうなのかなあ?

バスで最寄りの駅まで行ってそこからホテルに戻ろうとしたのですが、なかなかバスが来ません。同じようにバスを待っていた人と話をしてみたところ「いろいろなところでデモをやっているからバスが遅れているみたいだ」とのこと。そういえば、ポツダム広場駅前でも何かやっていました。ドイツでは月末に総選挙があるようなので、そういうデモとか集会とかが多いのかも知れません。ということで、もう一度ウンター・デン・リンデン通りを逆方向に戻ってブランデンブルク門駅へ。なんか無駄に体力を使ったような …
ホテルで仮眠してからいよいよベルリンフィルハーモニーホールへ。軽く腹ごしらえということでポツダム広場駅近くのアーケード内でブラウニーとカフェラテをいただきました。

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7時30分くらいに入場。ロビーがとても広いです。キャパは2440席ということなのでホール自体はアクトシティ浜松より少し大きいという感じなのですが。また自分の席に通じる入り口がどこかよくわかりません。席は前から4列目で壁から7席目でした。ちょっと前かな。でも指揮者を見るにはいい席です。

Sat  12. September 2009  8 pm

Philharmonie

Berliner Philharmoniker

Sir Simon Rattle Conductor
Angela Denoke Soprano
Lars Vogt Piano

Alban Berg Lulu Suite: Adagio
Paul Dessau Les Voix for soprano, piano and orchestra
Dmitri Shostakovich Symphony No. 4

もう何と言ったらいいのでしょう?最高の体験でした。とにかくオーケストラの機動性の高さを感じます。ショスタコーヴィチの《交響曲第4番》。一所懸命予習しました(笑)。とにかくどの楽器も本気を出さないと曲にならない作品だと思うので熱演になるのは必然なのですが、だからこそベルリンフィルの底力を見ることができたのだと思います。特に4管編成にピッコロ2本とEbクラリネット、バスクラリネットを加えた(つまり総勢20人)木管セクションのアンサンブルが聞き物でした。

超細かい話で恐縮ですが、この曲はクライマックスのあと、弦楽器が弱音で演奏するハ短調の響きの中でチェレスタが分散和音を演奏しながら消えゆくように終わります。このチェレスタが最初はハ短調の構成音(C-Es-G)を演奏しているのですが、最後は(G→A→D)とハ短調から離れていったままで終わってしまいます。この放り出された感覚がものすごく後を引きます。

ワインヤード型のコンサートホールで聞くのはすごく久しぶりのような気がするのですが、いつも聞いているライスハレ(こちらは古式ゆかしいシューボックス)に比べると弱音の粒立ちがはっきり聞こえます。演奏者が発した音が空中に放り投げられてそれがそのまま自分のところに落ちてくるような。逆にフォルテが若干つぶれたというかマスクされた感じで聞こえるのは席がちょっと前だったからかも知れません。今度はもう少し後ろで聞いてみたいと思います。

やはり、ウィーンフィルもムジークフェラインザールまで聞きに行こうかなあ …..

余韻を楽しみたいと思ったので、ソニーセンターの中にあるビアレストランへ。しかし、ここは午後10時過ぎでも人がたくさんいます。自家醸造というヴァイツェンとジャガイモのスープを注文しました。

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ベルリン一日目の感想。やはりハンブルクと比べるとはるかに都会です。ハンブルクはドイツ第二の都市と言われますが、街の規模を見ればその差はものすごく大きいように思います。

おいでませハンブルクへ(その1)

今日と明日、日本からエンジニアが出張してきて打ち合わせを持ちます。私が海外出張に行った時にもいろいろな土地で現地駐在員のお世話になったのですが、今回は初めて海外駐在員として出張者のサポートをすることになりました。

まず、朝はホテルまで迎えに行って会社まで連れて行き、午後からの打ち合わせ兼デモンストレーションのための準備をサポートします。午後からは何件かの打ち合わせに出席して説明を受けたのですが、今までほとんど関わっていなかった業務なので非常に勉強になりました、というか久しぶりに長い講義を聞いたような感じで疲れました。

夕食は日本食レストラン「あかり」へ。JEVER のアルコールフライと、海老フライカレー(ここのカレーは本当にうまい)、牛タン、シメサバを食べました。複数で行くと、こういうサイドディッシュを頼むことができるのでいいですね。牛タンなんて何ヶ月ぶりに食べたんだろう?出張者さんは一所懸命食べ物をデジカメに収めていました(そういえば昼食の社員食堂の食事も撮っていたなあ)が、私は車の中に iPhone を忘れてしまったので撮れませんでした。まあ、また食べに行くと思いますが。

無事(あ、実はあまり無事じゃないか …)ホテルへ送り届けて今日のミッションは終了。

アパートへ帰ったら演奏会チケットの振込案内メールが届いていました。昨日のハンブルク・フィルの演奏会へ行った時にライスハレでもらってきたパンフレットにあった外タレ(ハンブルク以外の演奏者)の演奏会が魅力的だったので予約したのでした。

Dienstag, 13. Oktober 2009, 19:30 Uhr

Deutsches Symphonie-Orchester Berlin

Ingo Metzmacher, Dirigent
David Fray, Klavier
Ligeti: Lontano
Beethoven: 3. Klavierkonzert op. 37 c-Moll
Bartók: Konzert für Orchester Sz. 116

2005年までハンブルク・フィルの音楽監督を務めていたインゴ・メッツマッハーとベルリン・ドイツ交響楽団の組み合わせ。「20世紀音楽なんか怖くない」シリーズ、カール・アマデウス・ハルトマンの交響曲全集、アンサンブル・モデルンとの録音などで興味を持っていたので、ぜひ聞いてみたかった指揮者です。バルトークの「オケコン」が生で聴けるということでこれも楽しみです。

Mittwoch, 16. Dezember 2009, 19:30 Uhr

Bamberger Symphoniker

Jonathan Nott, Dirigent
Vadim Repin, Violine
Beethoven: Violinkonzert D-Dur op. 61
Schostakowitsch: 10. Sinfonie e-Moll op. 93

ジョナサン・ノット指揮のバンベルク交響楽団。ノットはベルリンフィルとのコンビでリゲティの管弦楽作品を録音しています。こちらはショスタコーヴィチの《交響曲第10番》を聞きたかったので。

Dienstag, 26. Januar 2010, 19:30 Uhr

Mnozil Brass

“Magic Moments”
Virtuose Blasmusik und großes Komödiantentum

いろいろ評判を聞くムノツィル・ブラス。面白そうなので行ってみることにしました。

マゼール指揮のウィーンフィルも来るのですが(ちなみにブルックナーの《交響曲第3番》です)、他のオケの倍のチケット価格なのでちょっと検討中です。

演奏会その7: ハンブルク・フィル第1回

いよいよ今日からハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団の 2009/2010 シーズンが開幕です。定期公演は全10回、毎月1回のペースで来年の6月まで行われます。各演奏会の演奏予定曲目は以前のブログを参照して下さい。定期公演以外にも特別演奏会がいくつか予定されています。大晦日にあるジルヴェスターや、今年は「黄金の20世紀」というテーマで行われたシーズン最後の演奏会(ちなみに来年は「フランス万歳(Vive la France)」というテーマでフランス音楽を集めるようです)などがあります。

定期公演の各回の演目は、日曜日の昼間の公演と翌日の月曜日の公演の2回開催されます。私は毎回月曜日の公演の定期会員になっているのですが、明日は会社の用事が入ったため、明日の分の席を今日の席に振り替えてもらいました。実は今日の方がいい席なのですが(苦笑)。

ちょっと早めにアパートを出て、会場のライスハレ近くに車を停めようと考えていたのですが、寝過ごしたり、支度に手間取ったりして結局出発したのは午前10時頃(開演は11時)。さらに運の悪いことに、通り道である中央駅周辺で交通規制があって大幅な回り道を強いられました。そんなギリギリに駐車スペースが簡単に見つかるはずもなく、結局3ブロックほど離れたところに停めました。そんなわけで会場に着いたのは10時57分頃、プログラムを買う暇もなく席に着きました。席は「バルコニー席1列目の右11番」。最前列の外側から11番目です。番号は12番まで(つまり左右から12席ずつなので横は24席あります)なので、ほとんどステージ真っ正面ですね。

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1. Philharmonisches Konzert

Johannes Brahms – Konzert für Violine und Orchester D-Dur op. 77
Felix Mendelssohn Bartholdy – Ein Sommernachtstraum op. 61. Schauspielmusik nach Shakespeare

Sonntag 6. September 2009, 11:00 Uhr
Dirigentin: Simone Young
Violine: Midori
Sopran: Trine W. Lund
Mezzosopran: Ann-Beth Solvang
Solist: Gustav Peter Wöhler
Chor: Vocalconsort Berlin

実は来週のベルリンフィル公演の予習にかまけていて、今日の演目は全く念頭にありませんでした …

Midori(五嶋みどりさん、両親の離婚を機にファミリーネームを外したそうです)独奏によるブラームスの《ヴァイオリン協奏曲》と、メンデルスゾーンの《夏の夜の夢》。演奏会に出かける直前に気付いたのですが、二人ともここハンブルクで生まれた作曲家です。

五嶋みどりさんというと「神童」というイメージが強いのですが、もう立派な大人です(当たり前か)。足を踏ん張り、上体を少し前に倒して演奏する姿は、かなりエモーショナルです。特に第1楽章の重厚な音楽とは相性がよかったように思います。最初の方はオケのピッチが不揃いだったのがちょっと気になりましたが。

休憩中はロビーに出てきて、気さくにサインや会話などに応じていました。

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後半はメンデルスゾーンの《夏の夜の夢》。《真夏の夜の夢》は誤訳だそうで、最近は《夏の夜の夢》という訳が主流なのだそうです。シェークスピアの戯曲のための音楽ですが、まず序曲が書かれ(メンデルスゾーン17歳の時)、その17年後に序曲の素材を用いて劇付随音楽としての12曲が書かれたのだそうです。今日の演奏会でも序曲のあとに劇付随音楽が演奏されました。オーケストラの他にソプラノ、メゾソプラノ、女声合唱が加わりますが、ナレーションによって劇のストーリーが語られ、その合間(時にナレーションにかぶさって)曲が進行するような構成です。当然ナレーションはドイツ語で、時おり笑いを誘いながら進行していきます。当然聞き取れません(涙)。かろうじて “Tod ich bin.” とか “Tod er ist.” くらいはわかりましたが …

プログラムには子供用の解説も挟み込まれていたので、子供も楽しめるような構成だったようですが、ドイツ語もストーリーも知らない日本人にはちょっときつい内容でした …

11時から始まった演奏会は1時45分くらいに終了。昼食は結局前回も行った独日センター近くのカリーブルスト専門店「EDEL CURRY」でとりました。ここはカリーブルストもフライドポテトもシンプルであっさりしていて気に入っています。

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演奏会その6: シュターツカペレ・ドレスデン

およそ2カ月に渡って開催されてきた Schleswig-Holstein Musik Festival もそろそろ大詰め。最後の最後に著名なオーケストラの客演があります。今日はハンブルクのライスハレで行われたシュターツカペレ・ドレスデンの演奏会に行ってきました。ちなみに来週の金曜日(9/4)にはリューベックでラトル/ベルリンフィルの演奏会があります。金曜日の仕事が終わった後に午後8時からのリューベックでの演奏会にはとても間に合いそうにないと思っていたのでチケットを取らなかったのですが、リューベックまでは車で1時間もかからないことがわかったので行けばよかったなあ、と今さらながらに思っています。ちなみに演目は今日ベルリンで開催されたオープニングコンサート(ネットで視聴できるはずだった …)と同じです。

会社から早めに帰って着替えてから車で行くことにしました。そもそもライスハレ周辺に車を停められるかどうかわからなかったのですが、幸運にもライスハレまで歩いて3分くらいのところでちょうど駐車スペースから出ようとしている車があったので、そこに入れることにしました。縦列駐車はまだまだ修行の余地あり。3回ほど車を降りて前後のスペースを確認して、やっとスペースに収まりました。

ライスハレ周辺には食事するところがないのでカイザー・ヴィルヘルム通りを歩いて探すことにしました。ハンブルクに来たばかりの頃に連れて来てもらった日本料理店「小紋」もこの通りにあるのですが今回はパス。歩いて行くと独日センターがあるあたりまで出てしまったので(そうか、道がこうつながっているのか)、その近くにある、以前食べておいしかったカリーブルストのお店に入ることにしました。軽く食べようと思って、カリーブルスト、Schöfferhoferのアルコールフライ、サラダを注文したのですが … サラダでか過ぎ。けっこうお腹いっぱいになってしまいました。

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7時30分ちょっと前に会場入り(開演は午後8時です)。前半と後半の間の休憩中に、今日のソリスト(ピアノ)のラン・ランくんがサイン会をやるというのでCDを買ってみることにしました。彼のCDは現在ドイツ・グラモフォンからリリースされているのですが、その前はテラークからリリースされていたようです。その時期に録音されたラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を買ってみることにしました。(予習用に買ったショパンのピアノ協奏曲集があったのでそれを持ってくればよかったなあ。)

Hamburg Laeiszhalle
Freitag  20 Uhr   K 129

Gipfelstürmer

Lang Lang Klavier
Sächsische Staatskapelle Dresden
Fabio Luisi Dirigent
Frédéric Chopin / Klavierkonzert Nr. 2 f-Moll op. 21
Richard Strauss / Eine Alpensinfonie op. 64

まずはショパンのピアノ協奏曲第2番。ソリストのラン・ランは1982年生まれの中国人ピアニスト。最近かなり「売れっ子」のようです。予習用CDとこの演奏を聴く限り、タッチの粒立ちがとてもはっきりしていると思いました。流れるようなパッセージでもそれぞれの音が明確に聞こえます。かといって、メカニカル一辺倒というわけでもない。ピアニストを幅広く聞いているわけではないので大きなことは言えませんが、このタッチはかなり特徴的なのではないでしょうか。ファビオ・ルイージの指揮はオーケストラをコントロールするのに注力していたようで、振りは控えめだったように思います。第3楽章のルバートの処理(オケとソロを合わせる部分)などはわかりやすい振り方で、さすがと思いました。

で、休憩時間のサイン会。別にCDを買わなくても希望者はサインをもらえたようです。チケットにサインしてもらっている人もいました(いいのか?それで?)。私はプログラムにしてもらいました。信じてもらえないかも知れませんが(笑)これが直筆サインです。ラン・ランは漢字で「郎朗」と書くらしいので、それらのどちらかの字のように読めますね。隣の画像はサイン中のラン・ランくんを上から写したところ。オフステージの彼は演奏している姿よりもずっと若く感じました。

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後半はリヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲。ちなみにアルプス交響曲は作曲者自身の指揮で、このオーケストラによって初演されています(1915年)。ショパンとは打って変わってルイージは積極的にオーケストラをドライブします。「日の出」とか「登山」のあたりはイメージよりテンポが速めだったのでちょっと戸惑いましたが、それも全体を見通してのテンポ設定だったのだと思います。「頂上」「哀歌」「終末」などではかなり旋律を歌わせますが、重たい感じではなくかなりすっきりしています。アルプス交響曲の実演は小沢征爾指揮ウィーンフィル(@アクトシティ浜松大ホール)以来なのですが、かなり湿度の高い小澤の音楽と比べると、ルイージの音楽は乾燥しているけど掘りが深い、といった感じでしょうか。各場面の特徴のコントラストを楽しむことができました。この曲を聴く時に毎回思うのですが、最後の「夜」の主題が聞こえてくると旅行を終える時のような淋しさがこみ上げてきます。

しかし、ルイージはオーケストラ・コントロールがうまいです。今回は前から3列目の席だったので管楽器がほとんど見えず、必然的に指揮者ばかりを見ていたのですが、計算し尽くされた絶妙なフレージングを見たように思います。それから初めて聞くシュターツカペレ・ドレスデンの音がほぼ想像していた通りだったのがうれしかったです。弦の少しくぐもった美しい響き、マッシブでもうるさくならない管楽器の音色、鮮やかではないのですが深みのある音です。大満足の演奏会でした。

ちなみにこういう席に座っていました。

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細かいことですが、

  • 金管のパンダはおらず、ステージ上の演奏者がミュートをつけて代用していました。
  • 画像でもわかりますが、オルガンは上の画像のようにステージ上に用意されているので、音にもかなり存在感がありました。
  • ヘッケルフォンは残念ながら拝むことができませんでした。本当に管楽器奏者はほとんど見えませんでした …