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電子音楽 In The (Lost) World

電子音楽 In The(Lost)World

電子音楽イン・ジャパン 1955~1981)」や「電子音楽in JAPAN)」(こちらは前者の増補版で CD もついている)の著者である田中雄二の新刊。究極の電子音楽レコードガイド。前著の充実ぶりを考えれば、この本もいい出来だろうと考え、さっそく購入。

例えば YMO やその周辺のテクノポップ・ムーヴメントはもちろんのこと、冨田勲、ジョン・ケージ、ウェンディ(ウォルター)・カーロス、YES … いちいちアーティスト名を挙げていっても挙げ切れないほどの広い分野をカバーしている。オールカラーでジャケット写真が見られるのもうれしい。

吹奏楽関連の人では、《ディスコ・キッド》の東海林修さんのシンセサイザー・アルバムはもちろん紹介されているのであるが、天野正道さんが所属していた「TPO」というグループのアルバムも紹介されている。そういえば、その昔「うる星やつら」の音楽担当のクレジットで天野さんの名前を見つけた時にはびっくりした覚えがあるなあ。

そういや、天野さんの経歴を見ると「卒業後、豪州に赴き日本人で初めてCMIをマスター …」と書かれているが、これだけだと普通の人には意味不明だろう。「CMI」はフェアライト社が作ったシンセサイザーで、今で言うサンプラーの走りのようなもの。坂本龍一さんなども1980年代前半に使っていた。天野さんはフェアライト社があるシドニーへ行って、その使い方をマスターしたということなのである。

(後日付記:シンセサイザー奏者としても著名な藤掛廣幸さんの作品も載っていました。)

 

遺された声

録画しておいた「遺された声〜録音盤が語る太平洋戦争」(2005年3月19日放送 NHK教育テレビ)を見る。もともとは昨年の夏に NHK スペシャルとして放送されたものの再放送らしい。

旧満州の新京放送局に残されていたラジオ番組のための録音盤2200枚(当時はテープがなかったのでSP盤にそのまま録音していたらしい)をめぐるドキュメンタリーである。

こういう番組ではどうしても「神風特攻隊」などに焦点が当たってしまうのは仕方がないのだろうか。確かに特攻隊員の(おそらく出陣直前の)吹き込みは心を打つし、それを聞く遺族たちから出るコメントもやはり悲痛である。しかし、そういう過去の断罪ばかりに話を持っていく作為的な演出もどうかなと思う。

王道楽土の交響楽―満洲―知られざる音楽史」に書かれているように、当時の満州には本土に勝るとも劣らない音楽文化があったらしい。そういった「明」の部分に着目した番組を作っても面白いのではないかと思う。音楽ファンも驚くような貴重な音源が含まれているのではないかと思うのだが。

満州の文化向上に寄与した甘粕正彦(映画「ラスト・エンペラー」では坂本龍一が扮していた)の講演がかろうじて放送された。残っている唯一の肉声らしい。

日本の童謡

親子で読んで楽しむ日本の童謡 (CDブック)

最近、戦前・戦中に日本でどういう音楽(基本的に吹奏楽なのだがそれに限らず)が演奏され、聞かれていたのかに興味があり、いろいろ資料を集めている。そこでいろいろ調べているうちに見つけた興味ある本である。

大正・昭和に作られた50曲の童謡が掲載されており、歌詞や作られた背景などが紹介されている。そのうちのおよそ半分の作品については付録のCDに音源が収録されているのであるが、これが SP レコードから取られているものなのである。

著者の郡修彦さんという方は SP レコードの再生に関してかなり著名な方なのだそうだ。「親子で読んで楽しむ日本の童謡」という一見ほのぼのとした企画の裏に、そういった SP レコードの再生にかけるマニアックな情熱が隠されているあたりがなかなか面白い。

郡さんが書かれているように、昔の(ひょっとして今も?)日本には大衆文化を保存しようという考えがなかったらしく、ここに収録されている音源も原盤はほとんど廃棄されているのだそうだ。つまり現存する音源は、壊れやすく、しかも再生するたびにどんどん音質が劣化していく SP レコードそのものの中にしかないのである。それを考えると SP レコードの愛好家がたくさんおられるというのがわかるような気がする。

(私はさすがにそこまで手を出せませんが …..)

付録 CD を聞いてみると意外に音質がよいのに驚く。もちろん、何度か再生されているものには避け難い定常的なノイズがのっているし、ダイナミックレンジの狭さも仕方がないことだとは思うが、音源によってはノイズもほとんど目立たずにいいバランスでまとまっている。(もちろん物資が不足していた戦争末期や終戦直後よりは昭和初期の音源の方がずっと状態がよい。)

ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

復活スルヤ演奏会’97

「スルヤ」といってもお店ではなくサンスクリット語で「太陽神」を意味する。 1927年に諸井三郎を中心に結成されたアマチュア音楽集団の名称である。 中原中也は「スルヤ」のメンバーではなかったが、非常に近しい存在であった。

最近、「昭和の作曲家たち―太平洋戦争と音楽」という本を読んでいるのだが(しかし分厚いなあ、読み終わるのはいつになることやら …..)、この本に「スルヤ」のことが書かれており、中原中也の詩に諸井三郎が詩をつけていたということを知って興味を持った。

このCDは1997年に中也の生誕90年没後60年に際して行われた演奏会の実況録音盤である。中也の詩による歌曲が集められているが必ずしも同時代の作曲家ばかりではない。また、スルヤの第一回発表演奏会で取り上げられた諸井三郎の《ピアノソナタ》も収録されている。

中也の詩というとどこか翳りのあるイメージがあるのだが、《サーカス》(清水脩作曲)あたりは妙に晴れ晴れとしていて違和感がある。やっぱり、あの 秀逸なオノマトペ「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」はほの暗いサーカス小屋の中で聞こえる音でなければいけないと思うのである。高らかに歌い上げてはいけないと思うのである。

中原中也記念館(http://www.chuyakan.jp/)からのみ購入可能。

蛇足ではあるが、諸井三郎は最近話題の西武グループ経営改革委員会委員長である諸井虔の父親である。作曲家諸井誠は諸井虔の弟。

ラブ・ユー・フォーエバー

ラヴ・ユー・フォーエバー

出産祝いにいただいた絵本。 物語の中で歌われる詩に伊藤康英さんが曲をつけたミニCD付き。

実は以前から買おうと思っていたのだが、まだ買っていなかった。 子供が生まれてきたこのタイミングに読むことができてよかったと思う。

(私のような新米パピーが言うのもなんですが) 子供が生まれたばかりの方はぜひ読んでみて下さい。 子供がいない方は子供ができてから読んでみて下さい。

 

 

フェネルに捧げる本

朝っぱらから宅急便が届く。

Fennell: A Tribute To Frederick Fennell

フレデリック・フェネルの写真や手紙などを集めた本である。緻密な資料集といった感じではなく、フェネルの業績を視覚的にとらえるための本と考えた方がいいだろう。

2004年の夏に発行されたようなので「追悼」という雰囲気はない。(結果的にそうなってしまったが …..)

フェネルが2000年に来日した際に、ユーフォニアム奏者の三浦徹さんの別荘で開催された「コンダクターズ・クリニック」の集合写真が178ページに載っている。
フェネルはもちろん、三浦徹さん、伊藤康英さん、等身大のフェネルの立て看板(笑)も写っているのだが、私もちゃんと写っている。ちょっと感激。

このときの様子は2000年4月29日の日記にちらっと書かれています。

本漁りなどなど

今日はル・ショコラティエ・タカギのマロン・ショコラをいただく。主役の栗が非常に繊細。

そういえば、高木康政さんプロデュースのキットカット「パッションフルーツ味」(期間限定版)もなかなかよかった。甘酸っぱさはかなり好みが別れるのではないかと思うが、これだけ個性がはっきりしているのも面白いのではないか。

ちょっと、戦前・戦中の邦人作品について目ぼしい情報がないかとネット上を探し回っていたら軍楽隊関連の面白そうな書籍を発見。さっそく発注してみることにした。(これも届いたらご紹介します。)

あそこのアッコちゃん

髪の毛を切りに行く。カットされている間に読んだ本。

ふしぎな図書館

ごく初期の短編集「カンガルー日和」に収められていた「図書館奇譚」の改作に村上作品ではおなじみの佐々木マキによるイラストを加えた絵本。図書館、羊男、ドーナツという、これまた村上作品ではおなじみのモチーフが散りばめられている。同じコンビによる「羊男のクリスマス」を思い出す。

(そういえば、「羊男のクリスマス」は1985年のクリスマス・イヴに買ったんだった。懐かしいなあ …..(遠い目))

「図書館奇譚」は読んだはずなのだが全然覚えていない。読み直すべし。

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そのあと、最近浜松にできたらしい「浜松鑑定団」というリサイクルショップをのぞいてみる。こういう新しいものに群がるのは浜松人の特質。やたら人がたくさんいる。

あそこのアッコちゃん

CD は基本的にレンタル落ちなどの中古が多いのであるが、こういうデッドストック品もあった。アッコちゃんの初期5アルバムからのピックアップと、CD初収録の《行け柳田》のシングル・ヴァージョンとそのB面を集めたベスト盤。ジャケットは玖保キリコ。

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一足早く、GODIVA のトリュフと、Veuve Clicquot-Ponsardin のイエローラベルをいただく。美味。チョコレートを食べながら飲むにはこのくらいドライな方がよい。

偶然の音楽

風邪ひいた。英気を養うために医者に行って薬をもらった以外はほとんど寝ていた。

偶然の音楽 (新潮文庫)

この機に乗じて(?)、ちびちび読んでいた小説を一気に読む。年末に購入した雑誌「ユリイカ」をきっかけに買ってみたオースター/柴田元幸コンビの小説である。

ちょっとした偶然から人生が二転三転してしまう主人公、その理不尽さはほとんど喜劇である。主人公をめぐる状況の変化が喜劇的であるにもかかわらず、その内面の葛藤には非常にリアルなものを感じる。

近年のアメリカ文学には、ふと同じような匂いを感じることがあるのだが、その中に「諦念」という概念があるのではないかと思う。肯定でも否定でもなく、ある状況をあるがままに受け入れようという虚脱感を感じるのである。

この小説の結末はある意味掟破りなのかもしれないが、何とも言えない余韻が残る。他の作品も読んでみたくなった。

マイルスとコルトレーンの日々

マイルスとコルトレーンの日々 (植草甚一スクラップ・ブック)

かつてのサブカルチャーの担い手 ….. と言っていいのかな、植草甚一さんの著作が晶文社から一気に復刻される。

とりあえず、目に留まった一冊を買ってみた。

まだ「マイルスの日々」の途中なのだが、マイルスの激動の時代(アコースティックからエレクトリックへの移行期)をリアルタイムに聞いていた強み、またその中での批評眼の確かさが非常に興味深い。