伊藤康英・藤井亜紀ピアノ連弾コンサート

2000年4月29日(土) 19:00 ユーフォニアム・ロッジ(長野県・飯綱高原)

バンドジャーナルに告知があったのでご存知の方も多いだろう。 4月28日から30日にかけて、飯綱高原のユーフォニアム・ロッジ(かのユーフォニアム奏者三浦徹さんの別荘である)で「マエストロ・フェネルのコンダクターズ・クリニック」というセミナーが開催された。 このコンサートは、そのプログラムの中で行われたもので、4月28日の夜、参加者/主催者合わせて30人ほどの聴衆の前で、きわめてアットホームな雰囲気で行われた。 もちろん、その聴衆の中にはマエストロ・フェネルもいらっしゃった。

伊藤康英/《ケニアン・ファンタジー》よりスピリチュアル
グスタフ・ホルスト(伊藤康英)/《吹奏楽のための組曲第一番》(ピアノ連弾版)

今回のセミナーのために康英さんが編曲したもの。康英さん自身も、なかなかうまく出来たと気に入っておられた。演奏後はマエストロから「ブラヴォー」の声も。

カール=マリア・フォン・ウェーバー/ピアノ連弾曲集より

  • 「八つの小品」作品60 第1曲 Moderato
  • 「六つの小品」作品10 第2曲 Andantino con moto
  • 「八つの小品」作品60 第7曲 Marcia

このコンサートの中で康英さんは「ピアノによる吹奏楽コンサート」をやってみたいとおっしゃっていた。康英さんが編曲したホルストの《第一組曲》のピアノ連弾版もそうだし、このコンサートで披露されなかったが《ディオニソスの祭》(シュミット)や《リンカンシャーの花束》(グレインジャー)なども作曲者自身によるピアノ連弾編曲がある。

そこで、このウェーバーのピアノ連弾曲集である。ここで演奏された3曲は、ヒンデミットの《ウェーバーの主題による交響的変容》のそれぞれ第1・第3・第4楽章のもとになった曲である。康英さん曰く「これを聞くとヒンデミットがいかに何もしなかったかわかる」ということである。確かに和音や構成に若干の違いがあるものの、これらの曲をそのまま管弦楽に編曲したと考えていい。

伊藤康英/抒情的「祭」ファンタジー

もともと吹奏楽曲として作曲された抒情的「祭」であるが、作曲者自身の編曲によるピアノ連弾版も存在する。そのピアノ連弾版からピアノ独奏版を作成しようとしたところ、新しい曲想が沸いていて別の曲として再構成したのがこの曲である。抒情的「祭」の作曲から10年以上経過して、ある程度客観的に向き合えるようになったからかも知れない、と康英さんはおっしゃっていた。

「津軽じょんがら節」から始まり、「津軽ホーハイ節」から「ねぶた」を経て再び「じょんがら」に戻って曲を閉じるという吹奏楽版の形式は踏襲しているものの、即興的なニュアンスが強くなっている。「じょんがら」における力強いシンコペーションのリズム感や、キース・ジャレットあたりを彷彿させる「ホーハイ節」の変奏などは、まさにジャズのアドリブに近い雰囲気がある。近年、康英さんはガーシュインの《ラプソディー・イン・ブルー》について研究を重ね、オリジナル編成に基づく編曲を完成させた。上記の即興的な部分には、この成果が反映されているのであろう。

伊藤康英/古典組曲(ピアノ連弾版)

  • 前奏曲
  • タンゴ風アルマンド
  • ハヴァネラ風ガヴォット
  • サパテアード風ジーグ

もともとは4本のユーフォニアムとアコーディオンのために作曲されたもの。各楽章のタイトルからも分かるとおり、古典的な組曲の形態を取りながら比較的新しい舞曲のスタイルを取り入れた、一種のパロディ的な面白さがある。

アンコール

伊藤康英/琉球幻想曲(ピアノ連弾版)

「吹奏楽版」「吹奏楽とピアノ版」「ピアノ独奏版」と聞いたことはあったが、ピアノ連弾版は初めて聞いたような気がする。やはり、ピアノ独奏版に比べるとダイナミクスの幅が大きくなり表現力が大きくなる。もともとは2台のピアノの8手連弾のために書かれたものなので、これにピアノ1台と演奏者2人が加わるわけである。ううん、何か凄そうだ。

伊藤康英/たんじょうびおめでとう

アンコールの最後は康英さんが歌を披露。数多い康英さんの歌曲の中で唯一ご自身の詩に曲をつけた作品で、二人目のご子息の誕生を祝って作られた曲である。シンプルな曲であるがメロディからも詩からも優しさが感じられる作品で、個人的にはとても好きな作品である。

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