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演奏会その46: funky airport night

毎夏恒例のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭。ドイツに来て今年で3年目なので、この音楽祭に立ち会うのもこれで3度目ということになる。ちなみに今まではこんな演奏会に出かけた。

2009年

2010年

  • ポーランド・レクイエム(ペンデレツキ自作自演)←あ、これブログに書いていない …

そして今年は、誰が思いついたのか知らないが、空港でファンクを聞けるコンサートに行って来た。今までは、いわゆる「クラシック」に属する演奏会にしか足を運んでいないが、例えば小曽根真さんやボビー・マクファーリンなどもこの音楽祭のシリーズの中で演奏会を行っている。

空港とは言ってもターミナルビルの中でコンサートをするわけではなく、滑走路の端に仮設ステージを作ってそこでやる。こんな感じになる。

仮設ステージのレイアウトといい、会場のまわりにたくさん出店されている数々の食べ物屋といい、一昔前の野外ジャズフェスティヴァルの雰囲気を思い出す。(野外ロックフェスは行ったことがないのでその雰囲気はわかりません …)

開演は午後9時、この時間だとハンブルクはまだまだ明るい。まずはメイシオ・パーカー・バンド。

ジェームズ・ブラウンのバックバンドに参加したところからキャリアが始まる(MCによると)「もっともファンキーなサクソフォニスト」。ちなみに教授のアルバム「未来派野郎」のオープニングを飾る《Broadway Boogie Woogie》でサックスを吹きまくっているのが、このメイシオ・パーカーである。あとで Wikipedia で調べてみたら今年で 68 歳。とてもそんな風には見えない若々しい。

MC 専門の女性がいてステージのオープニングとエンディングはその人が仕切るスタイル、曲中のソロの長さなどもリーダーが仕切る、など JB のステージのスタイルを踏襲している(らしき)部分も多い。ちなみにオープニングは JB のレパートリーである《Papa’s got a brand new bag》。途中ではバンドメンバーを休ませるために、サングラスをかけて体をくねらせて(もうおわかりですね(笑))ピアノのみの伴奏でレイ・チャールズのカバーを披露した。あ、この人ヴォーカルもやります。

特にベースとドラムがうまい。きっちりアンサンブルされているので、ノリがとてもシャープ。

次はタワー・オブ・パワー。メイシオ・パーカーがイーストコーストのファンクなら、タワー・オブ・パワーはウェストコーストのファンクである。こちらも MC によると1968年結成で今年で43年目とのことらしい。

まあ、人数も多いせいか、メイシオ・パーカー・バンドに比べるとアンサンブルはいくらか荒い。大人数での迫力あるサウンド、それからヴォーカルのうまさからか、こちらの方が盛り上がっていた。

ちなみに滑走路に仮設ステージを建てただけなので、いわゆる「オール・スタンディング」形式。それでも比較的年齢層の高いお客さんがそれぞれに体を揺らしながら聞いていた。

この2つのバンドが終わった時点で午後11時30分。さすがに立ちっぱなしはしんどくなってきたし、最後に出るバンド「The Nils Landgren Funk Unit」はよく知らないし、帰りの渋滞に巻き込まれるのも嫌だし、ということで帰ることにした。

帰り道、長い案内路を通って駐車場まで戻りながら、なぜ滑走路の上でコンサートが行われたのか、ふとひらめいた。ここなら、こんなに遅い時間まで野外で大音量で騒いでいても誰にも怒られないからだろう(笑)。

演奏会その45: 北ドイツ放送交響楽団特別コンサート

前のブログでもお知らせした北ドイツ放送交響楽団の日本救援チャリティコンサートへ行って来ました。

よくよくスケジュールを確認したら、この日は定期演奏会のマチネがあったので、おそらく午後1時くらいに終演、その後あらためて午後3時から同じ会場(ライスハレ)でチャリティコンサートが行われたわけです。

Konzert für Japan

Datum: 27.03.2011, 15:00 Uhr
Laeiszhalle

NDR Sinfonieorchester

Alan Gilbert, Dirigent
Lisa Batiashvili, Solo-Violine

Streichsextett:
Motomi Ishikawa, Violine
Sono Tokuda, Violine
Jan Larsen, Viola
Aline Saniter, Viola
Christopher Franzius, Violoncello
Yuri Christiansen, Violoncello

TORU TAKEMITSU Requiem für Streicher
JOHANNES BRAHMS Streichsextett Nr. 2  G-Dur op. 36
I: Allegro non troppo
GIYA KANCHELI V&V für Solo-Violine, Tonband und Streicher
FRANZ SCHUBERT Sinfonie Nr. 7 h-Moll D 759 “Unvollendete”

まず、武満徹の《弦楽のためのレクイエム》、日本人3名を含んだ弦楽六重奏によるブラームスの《弦楽六重奏曲第2番》の第1楽章、マチネでもソロを務めたヴァイオリンのリサ・バティアシュヴィリによるギヤ・カンチェリの《V&V》(ソロ・ヴァイオリン、テープ、弦楽のための)、そしてラストはシューベルトの交響曲第7番《未完成》というプログラムでした。

ちなみに《未完成》は第1楽章のロ短調から第2楽章のホ長調へ移調することを「未来への希望」としてとらえたい、ということからプログラムのメインになったようです。(余談ですが、指揮者のアラン・ギルバート本人の説明は英語で、それをドイツ語の通訳を介して聴衆に伝えられました。私的には英語でしゃべってもらって助かりましたが(笑)。)

昨日の反原発デモでも感じたし、今日のコンサートでも感じたのですが、参加者(演奏者と聴衆)に「日本を支援しなければ」という大きな、あるいは深刻な気負いはありません。しかし、そういう旗の下に集まることによって自分の意思を表明しているのだと思います。

まったくの余談ですが … この地において(「この地」というのがハンブルクを指すのか、ドイツを指すのか、ヨーロッパを指すのか、あるいは日本以外を指すのかはよくわかりませんが …)この「自分の意思を表明する」ということの大切さは、ふだんの仕事の中でも感じています。また、幼稚園でも「子供はこの地では自分を主張することの大切さを覚える。しかし、日本に帰った時にかの地で学んだ態度と、日本で必要とされる態度のギャップに悩む」とも聞かされました。

それはさておき、シューベルトの《未完成》をちゃんと聞いたのはおそらく初めてのような気がしますが、かなり面白かったです。最近、聞く音楽が古典派以前と現代音楽に二極化してきているので、こういう音楽も受け付けるようになって来たのかも。全般的には柔らかな流れを持った曲という印象があったのですが、この演奏はフレーズの節々が折り目正しくてちょっとイメージが変わりました。

以前から気になっていたノット/バンベルク響のペアによるシューベルトを聞いてみたくなりました … と自分で自分に言い訳(笑)。

チャリティコンサート in ハンブルク

ハンブルク日本人会から以下のような連絡をいただきました。

ちなみに指揮者のアラン・ギルバートは母親が日本人です。

なお、申し込みは24日の午後6時までとなっていますが、それ以降でも席があれば予約は可能だそうです。

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http://www.ndr.de/orchester_chor/sinfonieorchester/konzerte/sonderkonzerte/benefizkonzert103.html

このサイトにチャリティーコンサートの詳細がのっています。
日本人とドイツ人のメンバーを混ぜて、室内楽もします。

3月27日 日曜日 午後3時開演
場所 Laeiszhalle
住所 Johannes-Brahms-Platz 1, 20355 Hamburg

演奏:ハンブルク北ドイツ放送交響楽団
指揮 アラン・ギルバート
ヴァイオリン独奏 リサ・バティアシュヴィリ

弦楽六重奏
第一ヴァイオリン 石川素美
第二ヴァイオリン 徳田その
第一ヴィオラ Jan Larsen
第二ヴィオラ Aline Saniter
第一チェロ Christopher Franzius
第二チェロ Yuri Christiansen

曲目
武満徹 弦楽のためのレクイエム
ブラームス 弦楽六重奏曲第2番から1楽章
GIYA KANCHELI V&V
シューベルト 交響曲7番「未完成」

入場無料ですが、客席確保の為に電話かメールで3月24日の夕方6時までに申し込みをしてください。

電話番号 (01805) 637 222
(14 Cent/Minute aus dem deutschen Festnetz, maximal 42 Cent pro Minute aus Mobilfunknetzen.)

メールアドレス konzertfuerjapan@ndr.de

募金先は2つから選ぶことができます。
Deutsches Rotes Kreuz e.V.
Bank für Sozialwirtschaft
Kto 414141
BLZ 370 205 00
Stichwort: “NDR Konzert für Japan”

ChildFund Deutschland e.V.
Bank für Sozialwirtschaft
Kto 778 00 06
BLZ 601 205 00
Stichwort: “NDR Konzert für Japan”

皆様のお越しをお待ちしています。

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演奏会その43: ハンブルク・フィル特別コンサート「Viva la France!」

Summertime: “Vive la France!”
Sonntag 4. Juli 2010, 11:00 Uhr

Dirigentin: Simone Young
Klavier: Di Wu

PROGRAMM

Paul Dukas: Der Zauberlehrling
Darius Milhaud: aus »Suite française«
Hector Berlioz: Königliche Jagd und Sturm aus »Les Troyens«
Camille Saint-Saëns: »Africa«, Fantasie für Klavier und Orchester op. 89
Camille Saint-Saëns: Danse macabre
Gabriel Fauré: aus »Pelleas et Mélisande«
Henri Duparc: Aux Étoiles
Claude Debussy: L’Isle joyeuse
Erik Satie: Nr. 3 aus »Trois Gymnopédies«
Jacques Offenbach: Ouvertüre zu »Pariser Leben«
Emmanuel Chabrier: España

und Encores…
ジュール・マスネ/タイスの瞑想曲
コール・ポーター(?)/I love Paris(?)

ハンブルク・フィルの2010/2011シーズン終了後の特別コンサートです。昨年は「黄金の20世紀」ということで20世紀に書かれた作品を集めたコンサートだったのですが、今年のテーマは「フランス万歳!」、フランスの作曲家の作品を集めたコンサートになりました。

比較的有名な作品が集められるだろうし、比較的演奏時間の短い作品が多いので息子の集中力も続くだろうと思い、妻や息子の分のチケットも予約しておきました。妻と息子にとってはハンブルクでの演奏会デビューでした … が、私自身も今まで体験したことがないくらいの過酷な条件でした。とにかく暑い。ドアは完全に締め切られるので空気はこもるし、天井の擦りガラスからは日光が差し込むし、指揮兼進行役のヤングはスコアでパタパタあおぎながら次に演奏する曲の紹介をするし、男性演奏者は途中からみんな上着を脱ぎ出すし、で大変でした。というわけで演奏者も聴衆も集中力を保つのがきつかった演奏会でした。

以下、各曲ごとの簡単な感想など。

デュカスの《魔法使いの弟子》は映画「ファンタジア」でミッキーマウスが文字通り魔法使いの弟子に扮したショートフィルムでも有名な作品です。息子にもかろうじてこの作品だけ予習させていました。いみじくも「全然違う曲だった」と息子が指摘したように、ヤングが振るとずいぶん腰が重い音楽になってしまいます。

ミヨーの《フランス組曲》は最初に吹奏楽編成で書かれ、後に作曲者自身によって管弦楽編曲が行われた作品なのですが、一般のクラシックファンにはどのくらい認知度があるんでしょうね?演奏会では全5曲中、最初の3曲が演奏されました。吹奏楽編成での演奏に比べるとオーケストレーションは全体的にすっきりしているように思います。吹奏楽だとまとまった楽器群で演奏されているフレーズが、例えば管楽器のソロと弦楽器のテュッティの対比など置き換えられていました。第3曲「イル・ド・フランス」は何かの間違いではないかと思われるくらい早めのテンポ指定がある(スコアは日本に置いたままなので具体的な数値は忘れてしまいましたが …)のですが、果敢にそのテンポに挑戦していました。で、崩壊しました …

ベルリオーズの歌劇《トロイの人々》より「王の狩りと嵐」は初めて聞きました。今回のプログラムの中に混じるとベルリオーズの音楽はかなり古典的な響きに聞こえます。今回のプログラムの中ではいちばんヤングの個性に合っていた作品かも知れません。堂々とした金管の鳴らしっぷりが印象的でした。

サン=サーンスのピアノと管弦楽のための幻想曲《アフリカ》ではソリストにディー・ウーが登場しました。後で調べてわかったのですが、ディー・ウーは日本で開催された「のだめ」関連のコンサートでショパンのピアノ協奏曲を弾いたらしいですね。ジャズ(あくまでもクラシックの範疇でいうところのジャズ)っぽいリズムとエキゾチックな旋律が印象に残っています。同じくサン=サーンスが書いた歌劇《サムソンとデリラ》の「バッカナール」を思わせるような曲想も登場します。

ピアニストのアンコールは何だったんだろう?曲目不明。ほぼ全編に渡ってトリルが演奏される、いささか暑苦しい曲でした(笑)。

休憩をはさんでサン=サーンスの《死の舞踏》。私はこの作品がパロディ的に引用されている《動物の謝肉祭》の方ばかり聞いていたので、この作品の方がパロディに聞こえてしまいます。休憩明けで少しすっきりしたのか、のれるリズムだったのか、息子はこの曲も気に入ったようでした。

フォーレの組曲《ペレアスとメリザンド》からは有名な「前奏曲」とフルートソロで有名な「シシリアーノ」が演奏されました。あまり印象に残っていません。フルート奏者である妻は「プロでもあんなところでブレスするんだ」とか言っていましたが、詳細は不明。

デュパルクの《星たちへ》は作曲者も作品も初めて聞いた作品です。ドビュッシーにつながる印象主義的な作品で、とても繊細なオーケストレーションが印象に残りました。この作品は CD を買ってまた聞いてみたいです。

ドビュッシーの《喜びの島》。最近、近所でこの曲を練習している音が聞こえてきていたのは微妙にシンクロニシティ?もともとはピアノ曲で、これはドビュッシーに指示によってイタリア人指揮者のベルナルディオ・モリナーリが管弦楽編曲したものらしいのですが、まあ、派手な編曲はこの作品には向かないですね。確かに作品自体にもラテン的な雰囲気はあるのですが、私は原曲のまどろむような色彩感が好きです。(確か、マルティノンのドビュッシー管弦楽全集にも収録されていなかったような …)次に演奏されたドビュッシー編曲によるサティの《ジムノペディ第3番》のミニマムなオーケストレーションの方にセンスを感じます。

このあたりで集中力もほぼ限界 … オッフェンバックの《パリの喜び》から「序曲」、シャブリエの狂詩曲《スペイン》あたりはいい意味で力が抜けていてよかったのではないかと思います。

演奏会その42:ハンブルク・フィル第10回

さて、今シーズンのハンブルク・フィルの定期公演も最終回となってしまいました。どこのオーケストラもそうですが、7月と8月は夏休みに入り、9月からまた新しいシーズンが始まります。

10. Philharmonisches Konzert / Drums and Dreams

Martin Grubinger, Manuel Hofstätter Schlagwerk
Dirigent Pietari Inkinen

Dmitri Schostakowitsch: Festouverture op. 96
Avner Dorman: “Spices, Perfumes, Toxins!” für Percussion-Duo und Orchester
Nikolai Rimski-Korsakow: Scheherazade / Suite symphonique op. 35

(おそらく吹奏楽編成の方が原曲の管弦楽編成よりもずっと演奏回数が多いであろう)ショスタコーヴィチの《祝典序曲》、イスラエル生まれの35歳の作曲家アヴナー・ドーマンの作品で2人の打楽器奏者をフィーチャーした《スパイス、香料、毒!》、それからリムスキー=コルサコフの交響組曲《シェエラザード》というプログラムです。全般的な印象としては、ドーマンの作品に時間をかけたのか、ショスタコーヴィチとリムスキー=コルサコフはあまり練られていない演奏でした。

ドーマンの打楽器協奏曲は、タイトルから想像するに難解な現代曲を想像していたのですが、とてもわかりやすくて楽しめました。明確な調性感、少しミニマルっぽい雰囲気もある鍵盤打楽器のパルスによるオスティナート、といった作風は吉松隆さんの初期の作品(というか最近の作品はちゃんと聞いていないのでコメントできませんが …)を彷彿させます。曲は急―緩-急の3楽章構成、第1楽章はアラブというか中東のスケールが使われており、2人の奏者が変拍子の中でシロフォンとマリンバ、それからドラムセットを演奏します。第1楽章は以下の作曲者のホームページで聞けます。

http://dormanavner.com/music/orchestra/spices.php

第2楽章はロドリーゴの《アランフェス協奏曲》のような雰囲気で、これはヴィブラフォンとマリンバが活躍します。第3楽章はドラム中心の激しい楽章。席のせいか、2人のソリストの音にかき消されてバックのオーケストラはほとんど聞こえませんでした。ちょっと残念。

打楽器奏者が2人いるのですが、2人の掛け合いよりはユニゾンに力点が置かれているように思いました。細かいドラムセットのパターンでときおり「おかず」に入るシンバルなどが2人でピッタリ合うとかっこよいです。

アンコールでは、それぞれにスネアドラムでの妙技を披露。石川直さんとかがよくやるやつですね。ロールをやりながらスティックを放り投げたり、片方の手を背中から回してロールをしたり。アンコール2曲目では一転して鍵盤打楽器のデュオによる《ペール・ギュント》から《オーゼの死》(だっけ?)。鍵盤打楽器のロールで「ここまでできるか」というくらいの最弱音で演奏していました。すごい。

で、後半。実は《シェエラザード》はあまり好きな曲ではないのです。各楽章で登場する旋律は確かにどれも美しいのですが、ただそれだけかな、という気がします。それらの旋律の展開の仕方が優等生的というか、聞いてて飽きてきてしまうというか。それならそれで、毎夜繰り返されるおとぎ話のように、全編を通してたゆたうような流れを作るというアプローチもありかな、と考えていたのですが …

やはり繰り返されるそれぞれの楽想がうまくつながらないと、音楽がぶつ切りになってしまいます。特に第2楽章はいろいろな楽器がソロをとるわけなのですが、それぞれのソロのメロディの奏で方はもう少し統一させた方がよかったのではないかと思いました。あとで現れるトゥッティも含めて同じ旋律が現れるたびに違う表情を見せてしまうと、ちぐはぐな印象がぬぐえません。

全編のカギを握るヴァイオリンのソロも全般的にせわしなかった(もっと落ち着いて優雅に弾いて欲しい)のと、若干のピッチの不安定さがあったのが惜しかったです。

演奏会その41: ハンブルク・フィル(第9回)

9. Philharmonisches Konzert

Mon, 20:00 / Laeiszhalle / Großer Saal

Philharmoniker Hamburg
Deborah Polaski Sopran
Dirigentin Karen Kamensek

Sergej Rachmaninow: Die Toteninsel / Symphonische Dichtung op. 29
Arnold Schönberg: Sechs Orchesterlieder op. 8
Peter I. Tschaikowsky: Symphonie Nr. 5 e-moll op. 64

全然予習する暇がなくて臨んだハンブルク・フィルの第9回定期公演だったが、期待以上に楽しめた。プログラムはラフマニノフの《死の島》、シェーンベルクの《6つの管弦楽歌曲》、それからチャイコフスキーの交響曲第5番だった。

指揮者のカレン・カメンセクは1970年アメリカ生まれの女性指揮者。2000年ごろからドイツやオーストリアの主に歌劇場で活躍していて、ハンブルク歌劇場でも何度か振っているようである。レパートリーを見ると比較的現代ものが多い。

とにかく、この指揮者のオーケストラコントロールのうまさに惚れ惚れしてしまった。指揮法の的確さと、全体を見据えた構成力のバランスがとてもいい。ハンブルク歌劇場でも指揮経験があるということなので、このオーケストラとの付き合いも長いのだと思うが(ハンブルク・フィルはハンブルク歌劇場での演奏も担当している)、「オーケストラからこういう音を引き出したい」という明確な意思がある棒と、それに応えるオーケストラ、という構図がとても説得力のある演奏を生み出したように思える。

細かいところまで逐一コントロールしようとする姿勢はチャイコフスキーの交響曲のようなある意味大ざっぱな作品だと聴衆に息苦しさを感じさせる懸念もあるし、時としてその精密さがあざとさに聞こえてしまう可能性もあるが、まあこれも個性のうちなのだろう。いままであまり魅力的に思えなかったチャイコフスキーの交響曲第5番をここまで感動的に聞かせてくれたことがいちばんの収穫だったかも。

演奏会その40: ハンブルク・フィル(第8回)

8. Philharmonisches Konzert

Joseph Haydn – Sinfonie G-Dur Hob. 1:100 “Militär-Sinfonie”
Mauricio Kagel – Zehn Märsche, um den Sieg zu verfehlen
Richard Strauss – Ein Heldenleben op. 40

Sonntag 18. April 2010, 11:00 Uhr

Dirigentin: Simone Young

本来、行けるはずのなかったハンブルク・フィルの今シーズン8回目の定期公演なのですが、図らずも聞きに行くことができました。

ハイドンの交響曲第100番《軍隊》、カーゲルの《勝ちそこないのための10の行進曲》、リヒャルト・シュトラウスの《英雄の生涯》というプログラムで、テーマは「戦い」ですかね?

前半はハイドンの交響曲とカーゲルの行進曲が交互に配置されるという構成でした。カーゲルの行進曲はご存知の方はご存知かと思いますが、弦楽器を一切使わない、いわば吹奏楽曲です。そういえばハンブルク・フィルとメッツマッハーのコンビがやっていた「20世紀音楽なんか怖くない」シリーズでも取り上げられていました。タイトルからもわかるように少々諧謔的な作品で、ハイドンの交響曲の雰囲気に見事に「水を差していた」と思います。まず、トランペット奏者がファンファーレを演奏しながら入場したり、フルート奏者とクラリネット奏者がステージを歩き回りながら演奏したり、ピッコロ奏者が退場してしまったり、視覚的な要素もある作品です。

ハイドンの方は、第1楽章でヤングの指揮に演奏者がついていけないところがあって、少々ぎくしゃくした感じで始まりましたが、徐々に修正されてきたと思います。ちょっともっさりした重めの響きがヤングっぽかったかな。

《英雄の生涯》はかなり人数も増えていますので響きも充実するのですが、強奏の部分でバランス的にトランペットや打楽器が突出してしまうところが気になりました。いわゆる「流している部分」の自然な響きの方が今日はよかったかなあ。「英雄の戦場」のテンポはかなり早め。リファレンスにしていたケンペ/シュターツカペレ・ドレスデンの演奏も早めだと思うのですが、それ以上に前のめりのテンポです。上記のようなバランスの不具合による荒さはありましたが、このアグレッシヴさはよかったと思います。

あとは必死に睡魔と戦っていました …

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ちょっと前に郵送でハンブルク・フィルの来シーズンの案内が来ていましたが、どこのオケも来シーズンのお客さん獲得の動きが出てきたようです。ハンブルク交響楽団のパンフレットがありました。メシアンの《峡谷から星たちへ》とか、ブラームスのピアノ協奏曲第1番と RVW の交響曲第5番を組み合わせたプログラムとか、このオケの選曲も個性的です。

それから、いよいよ2011年の3月と4月(ほぼ1年後ですが)にハンブルク歌劇場による《ニーベルンクの指環》の連続上演があります。どちらは聞きに行きたいのですが、まずは妻との交渉と、フランクフルト・ムジークメッセとの兼ね合いの調整だなあ …

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昼食は久しぶりに「EDEL CURRY」のカリーブルストを。電車で行ったので今日はビールを飲むことができました。早く家族と一緒にこのお店に来たいんですけどね。

演奏会その39: ハンブルク・バレエ

(演奏会その38 が欠番になってしまっていますが、これはウィーン国立歌劇場の《ラインの黄金》(ワーグナー)になります。いつ書けるんだろう …)

オーケストラの演奏会が行われるライスハレよりも、オペラやバレエが行われるハンブルク歌劇場の方が少しドレスコードが高いような気がするので、歌劇場に行く時はいつも一旦アパートに戻って着替えてから電車で行っていました。これからはさすがにそういうわけにもいかないので会社から直接車で。そんなわけで歌劇場近くの駐車スペースをよく知らないのでライスハレ近くの中央分離帯に車を停めました。

Ballette von John Neumeier
Daphnis und Chloë / Der Nachmittag eines Fauns / Le Sacre

6. April 2010 19:30 Uhr

MUSIK:
Maurice Ravel (Daphnis et Chloé)
Claude Debussy (Prélude à l’Apres-midi d’un faune)
Igor Strawinsky (Le Sacre du Printemps)

ということで「独身生活」最後のコンサートになってしまいました。ハンブルク・バレエの公演で、《ダフニスとクロエ》(ラヴェル)、《牧神の午後への前奏曲》(ドビュッシー)、《春の祭典》(ストラヴィンスキー)という、20世紀初頭の重要作品ばかりを集めたプロダクションです。

実は、ジョン・ノイマイヤーの振り付けによるこれらのプロダクションは、ちょうど4年前にドレスデンに出張した時にドレスデン・バレエで見ることができました。

《ダフニスとクロエ》は前回見た時の印象とは大きく変わりません。ただ、吹奏楽的な観点だと「夜明け」と「全員の踊り」にはさまれて、いまいち地味な印象のある「パントマイム(無言劇)」が実はこのバレエのクライマックスであることを再認識しました。

《春の祭典》は1970年代に作られたというノイマイヤーの初期のプロダクション。バレエの柔らかい動きの美しさとは対極にある踊りで、誰もが人間工学的に無理があるようなぎこちない動きをします。舞台セットは何もなし、ダンサーの衣装も最小限のものです。例えばベジャールの振り付けは人間としての原初的/根源的な動き(まあ、ありていに言ってしまうとセックスなんでしょうなあ …)を示していてわかりやすかったのですが、ノイマイヤーの振り付けはさらに突き進んで、ひたすら非人間的な、無機的なものを志向しているように思えました。まあ、「こういうのもありかなあ?」と思いつつ見ていたのですが、面白いかと言われると …

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備忘。

息子のための「こどもちゃれんじ」(なんと海外でも受講できるんですねえ)と、日本語衛星放送 JSTV の申込書を送付。

申込書が PDF ファイルで送られてきたので、それをプリントアウトして、必要事項を記入して、スキャンして再度 PDF にして、それをメールに添付して返送するというパターン。前に住んでいた方が置いていって下さった多機能プリンターが大活躍でした。

演奏会その37: ウィーン・フィル+ブーレーズ

Pierre Boulez dirigiert Werke des 20. Jahrhunderts

Konzert der Gesellschaft der Musikfreunde in Wien
Datum: 2010-03-19, 19:30
Ort: Musikverein, Großer Saal (Wien, Österreich)
Dirigent: Pierre Boulez
Steve Davislim, Tenor
Singverein der Gesellschaft der Musikfreunde in Wien

Karol Szymanowski: Symphonie Nr. 3, op. 27, “Das Lied von der Nacht”
Claude Debussy: “Jeux”. Poéme dansé für Orchester
Pierre Boulez: Notations (I, VII,IV,III,II)

「ブーレーズ、20世紀作品を振る」と題された特別演奏会です。ポーランドの作曲家シマノフスキの交響曲第3番《夜の歌》、ドビュッシーの管弦楽のための舞踏詩《遊戯》、そしてブーレーズ自作自演の《ノタシオン》です。

今回の演奏会は3月26日に誕生日を迎えるブーレーズの85歳の誕生日(1925年生まれ)を祝うという意味合いもあるようです。楽譜出版社の Universal Edition の広告が貼られていました。

さて、私の席ですがこんな感じでした。前から10列目、中央エリアの右から10番目、ほとんど真っ正面です。

《夜の歌》は期待通り(予想通り)繊細な響きが楽しめました。月曜日にハンブルク・フィルで聞いたシモーネ・ヤングの指揮がかなりドイツ的というか重厚な雰囲気だったのに対して、ブーレーズはやはり細かい動きを明確に聞かせるような感じです。あえて言うと細かい動きに拘泥するあまりに、曲全体としてのダイナミズムが停滞してしまうのかなあ、という懸念もありました。まあ、この特徴は1990年代以降のブーレーズのアプローチの諸刃の剣なのではないかと思っているのですが。

ドビュッシーの《遊戯》は、そのスタティックさがちょっと苦手(率直に言うと退屈)な作品だったのですが、今回の演奏はカットアップ的な音楽の変化が面白く聞けたように思います。こういうのは(上記の懸念とはまさに表裏一体なのですが)安易に曲の雰囲気に流されないブーレーズのアプローチの優れたところなのではないかと思ったしだいです。

《ノタシオン》はいわゆる「ワークス・イン・プログレス(進行中の作品)」。まずIからIVが書かれ、後年にVIIが書かれました。演奏する順番を演奏者が任意に決めてよい、という作品だったように記憶しています。本番の演奏直前に上記のような順番(I→VII→IV→III→II) に演奏されることが会場に説明されました。この並びだと大まかには「急―緩―急―緩―急」というテンポになります。特にIVやIIは細かい音符が速いテンポの変拍子の中でかけめぐる作品で、これが決まるとかなりかっこいいのですが、IIの後半からずれが気になってしまったのがちょっと残念でした。

しかし、ブーレーズはもうすぐ85歳とは思えない元気な指揮ぶりです。ビデオなどでは何度も見ていますが、曖昧さがなく無駄を排した指揮はとても美しいです。ご存知の方も多いと思いますが、ブーレーズは指揮棒を持ちません。それでいて鋭い打点がちゃんと打てるあたり、まだまだ長生きしそうです(笑)。

ウィーンフィルの音も、ハンブルクのライスハレで聞いた時のような過剰な音圧による息苦しさはほとんど感じられず、ホール中に綺麗に響きます。そして決して飽和しません。

念願だった、ムジークフェラインザールでウィーンフィルを聞く、という夢は達成されたわけですが、何と言うか麻薬的快感ですね(笑)。何度でも足を運びたいです。今度はマーラーの交響曲とかを聞けるとうれしいなあ。

演奏会その36: ハンブルク・フィル(第7回)

朝から不測の事態が続いて大変な一日でしたが、まあ何とか夕方までには収束させることができて無事演奏会へ。

7. Philharmonisches Konzert

Wolfgang Amadeus Mozart – Serenade G-Dur KV 525 “Eine kleine Nachtmusik”
Arnold Schönberg – Verklärte Nacht op. 4
Claude Debussy – Nocturnes
Karol Szymanowski – Sinfonie Nr. 3 op. 27 (Das Lied der Nacht) für Tenor, Chor und Orchester

Montag 15. März 2010, 20:00 Uhr

Dirigentin: Simone Young
Tenor: Stig Andersen
Chor: Tschechischer Philharmonischer Chor Brno

ハンブルク・フィルの今シーズン第7回目の定期演奏会です。わかりやすくテーマは「夜」。モーツァルトの《アイネ・クライネ・ナハトムジーク(直訳すると小夜曲)》、シェーンベルクの《浄められた夜》、ドビュッシーの《夜想曲》、シマノフスキの交響曲第3番《夜の歌》というプログラムでした。

プログラムが進むにつれて、だんだんステージ上の演奏者の人数が増えていくのが面白かったです。

《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》は小さめの弦楽合奏、それにさらに弦楽器が加わって《浄められた夜》は大規模な弦楽合奏、休憩後はそこに管楽器とハープと女声合唱が加わって《夜想曲》、最後はさらなる管楽器、オルガン、男声合唱、テノール独唱が加わって《夜の歌》となりました。

演奏の方は、最初の3曲があまりぱっとしませんでした。曲の作り込みが足りずに「手癖で何とかしてみました」といった感じの演奏。先週の歌劇場の初演などがあって、これらの曲への時間が足りなかったのかな?とも邪知してみたくなります。(ハンブルク・フィルはハンブルク歌劇場の伴奏も担当しているので)

《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》は意図的かどうかわかりませんが、各音のアタックを柔らかめにして真ん中をふくらませるようなサウンドの作り方でした。音の重なりは聞き取りやすくなると思うのですが、軽快さは失われてしまいます。私は軽快な溌剌としたサウンドを期待していたのですが …

《浄められた夜》は前半こそ大規模な編成ならではの彫りの深さ、例えばソロイスティックな部分と全合奏の部分の対照や少々誇張されたアゴーギクなど、が劇的でよかったのですが、曲の作り方というかアプローチが一本調子だったように思います。後半の長調が支配的になってくるあたりではちょっと辟易してきました。

《夜想曲》は編成的にも曲調的にもわかりやすいので上記の2曲よりは聞いていて面白く感じました。金管はいまいちでしたが全編を通して木管のソロが安心して聴けました。最終曲の「シレーヌ」はもう少し落ち着いて厳かな鳴りの方がよかったのではないかと思います。

で、やはりシモーネ・ヤングにはシマノフスキの《夜の歌》のような重厚な作品の方が合っているように思いました。(席のせいもあるかも知れませんが …)オケが飽和したようなサウンドで線的な動きが聞き取りにくい箇所もありましたが、この曲の雰囲気ではあまり違和感はありません。少々病的な雰囲気のある曲調にヤングが作り出すマッシヴな響きはよく合います。プログラムにはマーラーの《大地の歌》やツェムリンスキーの《叙情交響曲》に影響を受けたと書かれていましたが、個人的にはスクリャービンやシェーンベルクの《グレの歌》あたりとの距離の方が近いのではないかと感じます。

(余談ですが、この曲はカンタータ風の両端楽章と、それらにはさまれたスケルツォ的な楽章が切れ目なく演奏されます。このスケルツォ楽章のモチーフの一つが《ミシシッピ組曲》(グロフェ)の「ハックルベリー・フィン」に似ています。「アメリカ横断ウルトラクイズ」の勝ち抜けの音楽で使われていたのですが。)

一週間以内に同じ曲を別々のオケで聞く機会というのもなかなかないと思うのですが、今週の金曜日はウィーンフィルの演奏でこの《夜の歌》を聞きます。ウィーンフィルの密度の高い音色はこの作品に合っていると思うので楽しみです。