日別アーカイブ: 2011 年 5 月 27 日

2つで十分ですよ(でも5つ買いました)

amazon.com に注文していたブルーレイディスクが到着。

ブレードランナー アルティメット・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

ブレードランナーの「ファイナル・カット」「ワークプリント」「オリジナル劇場公開版」「インターナショナル劇場公開版」「ディレクターズ・カット」の5バージョンに特典映像が入った5枚組。

珍しくアメリカでも日本語字幕が入っているそうだし、安かったし(アメリカからの送料含めて $33 くらいだったから今のレートだと3000円弱)、未だにどのバージョンを個人的な決定版とするか判断に迷っているし、でこのセットを買ってみたわけである。

個人的にいちばん思い入れのある映画かも知れない。さすがに製品版ビデオテープは買わなかったが、レーザーディスク(これは「オリジナル劇場公開版」?)は買ったし、DVD も買ったし、今回のブルーレイディスクも買った。最初の劇場公開版(これは「インターナショナル劇場公開版」?)も見に行ったし、ファイナル・カットの劇場公開も見に行った。

古い映画をブルーレイディスクで見るのは初めての体験である。冒頭の、未来都市を遠巻きに眺めるシーンはなかなかのものなのだけど、今までの解像度の低い画面と比べると特撮部分と背景のマットペインティングの部分の境界がはっきり見えてしまう。まあ、映画を見進めてストーリーに没入していけばだんだん気にならなくなるのだけれど。

そういえば、「ファイナル・カット」を映画館で見た時には、それまであったデッカードのモノローグや後日談として実はレイチェルが死ななかったという説明がなかったことに違和感を感じたのであるが、今回はそんなに気にならなかった。どうやらファイナル・カットを個人的な決定版としてもよさそうだ。

さて、この映画、何といっても素晴らしいのは、ルトガー・ハウアー扮するレプリカント、ロイ・バティが死ぬ際のモノローグである。(ちなみに、それまで仲間の敵としてハリソン・フォード扮するブレードランナー、デッカードを追い詰めていたのであるが、最後の最後にあわや転落死、というデッカードの命を救うのである。)そして、このセリフ。一説によるとルトガー・ハウアーのアドリブなのだそうで。

I’ve seen things you people wouldn’t believe. Attack ships on fire off the shoulder of Orion. I’ve watched C-beams glitter in the dark near the Tannhauser Gate. All those moments will be lost in time, like tears in rain. Time to die.

俺はお前ら人間が信じられないものを見てきた。オリオン座の近くで燃えた宇宙船や、タイホンザー・ゲートのオーロラ。そういう思い出も … やがて消える … 雨の中の涙のように。その時が来た。

(これもいろいろな人が意見しているが)なぜ「雨の中の涙のように (like tears in rain)」という素晴らしい比喩が、字幕では「雨のように 涙のように」になってしまうのだろう?これはブルーレイでも変わっていなかった。

レプリカントが感情を持つという象徴としての涙、そのような涙も雨という自然現象(ひいては大きな時間の流れという象徴ととらえてもいいだろう)の中にあっては何の意味もなくなってしまうという儚さを言っているのではないか。また、この言葉を吐き出しているロイ・バティも夜明けが近い古アパートの屋上で雨に打たれているのである。

それから、デッカードを助ける直前にロイ・バティは脈絡なく鳩を手にする。ロイ・バティの寿命が尽きると当然この鳩は黎明の空に放たれるわけなのだが、このシーケンスも非常に美しい。