ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会は月に1回(正確に言うと同じ演目で日曜日と月曜日に2回開催されますが …)行われますが、今日は今シーズン2回目の公演です。
軽い夕食は、昨日見つけた「am Gänsemarkt」というお店で。ハンブルクではなかなかお目にかかれないケルシュを頼んでみました。「ケルシュ」と名乗れるのはケルン地方で醸造されたビールだけなのだそうです。
シュタンゲと呼ばれる、くびれのないビアグラスに注がれます。これで300mlです。(ヴァイツェンなどの)上面発酵系の酵母を使って(ピルスナーなど)下面発酵系並みの低温で熟成させて作るのだそうで、爽やかというよりは後からコクが広がってくるような味でした。
一応、軽く頼んだつもりです。グラーシュズッペ(グヤーシュ)とサラダ。やはりグヤーシュは本場ハンガリーのようにこってりとは作らないのがドイツ風なのかなあ?牛肉の細切れがたっぷり入っているので、それなりにお腹にはたまります。
軽く酔ったような気がしたので、食後にラテ・マキアートを飲んで少し落ち着けました。
2. Philharmonisches Konzert
Montag 26. Oktober 2009, 20:00 Uhr
Alfred Schnittke – (K)ein Sommernachtstraum
Sergej Rachmaninow – Paganini-Rhapsodie für Klavier und Orchester op. 43
Dmitri Schostakowitsch – Sinfonie Nr. 5 d-Moll op. 47
Dirigent: Dmitrij Kitajenko
Klavier: Rudolf Buchbinder
会社から帰る車の中であらためて気付いたのですが、シュニトケもラフマニノフもショスタコーヴィチもロシア(あるいは旧ソ連)生まれですね。イメージされる曲想は三者三様なので全然注意していませんでした。
1曲目はシュニトケの《夏の夜の夢(ではなくて)》。今シーズンの第1回定期演奏会のメインだったメンデルスゾーンの《夏の夜の夢(ein Sommernachtstraum)》の冠詞 ein (英語だと a)を否定を表す kein (英語だと no)に変えた作品名です。こういう外国語での言葉遊びは日本語に訳すのが難しいですね。
メンデルスゾーンの《夏の夜の夢》はほとんど忘却の彼方なので、ここからの引用があるのかどうか不明なのですが、ハイドンやモーツァルトあたりのメヌエットを思わせる楽想(3拍子)から始まります。このあたりは折衷主義のシュニトケならでは。この楽想が繰り返されるたびにいろいろな現代的な要素が混じってきて「ぐにゃり」と屈折した音楽になります。これ、笑っていいんですよね(笑)?弦楽器の各プルトの右の人と左の人が別々に演奏する、つまり1列ごとにボウイングが違う箇所があります。これ、初めて見ましたがかなり異様です。その他、ほとんどクラスターに聞こえるアイヴズを思わせる混沌、突然金管と打楽器が行進曲を始めてしまう脈絡のなさ、面白いです。確か、クレーメルが弾いた《コンチェルト・グロッソ》の CD を持っているのですが、この《コンチェルト・グロッソ》がかなり深刻な曲想だったのに対して、明るさに満ちた音楽でした。
2曲目はラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》、この間も聞いたばっかりなのですが、前回のコンビに比べると「老練」という感じの演奏でした。アリス=紗良・オットがかなりきらびやかなピアノを弾いてオケとの対照が強調されていたのに比べると、ルドルフ・ブーフビンターはオケと相まって音楽を作っているように感じました。キタエンコのオーケストラ・コントロールもうまく、決めるところはしっかり決めた、という感じです。
ショスタコーヴィチの交響曲第5番は、特に第1楽章の前半や第3楽章の緊張感が見事でした。キタエンコは極力無駄な動きを排して、演奏者はもちろん、聴衆の緊張感も途切れないように指揮していました。あんな緊張感の中で演奏する演奏者も大変だと思いますが、演奏者の集中力も素晴らしかったと思います。第1楽章の後半、ホルンや弦楽器がユニゾンで演奏するところ(ああ、スコアが手元にあれば …)で今まで聞いたことがないくらいにテンポを落としていたのがかなり衝撃的で印象に残っています。正直、ロシアの指揮者って「どっかーん」系が多いと思っていたので多少の先入観があったのですが、キタエンコの指揮はとても気に入りました。今まで聞いた限りでは、常任指揮者のシモーネ・ヤングの音楽は比較的自由な感じが多いのですが、今日のキタエンコのような厳しい音楽だからこそ、このオケの底力が垣間見えたような気がしました。
あ、前回は都合により月曜日→日曜日に変更したので別の席だったのですが、今シーズンはここが定期会員としての私の席になります。