第9回響宴を聞きに池袋へ。
その前に巣鴨のCDショップに取り置きをお願いしていた「豊島の響」3点セットを引き取りに行く。統廃合により「豊島区立第十中学校」がなくなってしまったことや、指導者であった酒井正幸さんが喜寿を迎えたということで、豊島十中吹奏楽部の活動をまとめたものである。3点セットというのは、
である。様々な音源を集めたCDは一般的な吹奏楽モノとしての資料価値は高いが、記念誌やDVDは当事者の記録としての意味合いの方が強い。しかし近藤久敦さんがOB(しかも当時はホルンではなくトランペット)だったとは知らなかった。日経エンターテイメントの発行人である品田英雄さんがOBというのも意外。
その後、池袋に着いたところでミッテンヴァルトへ。ホームページを見ると、また移転していた(苦笑)。まあ、前のお店より芸術劇場に近くなったし、わかりやすい場所になったし、それは歓迎すべきことである。地図で指し示されている雑居ビルを見上げると、窓ガラスを通してCDラックらしきものが見えた。間違いない。
今回は店長さんが店にいた。初めてこのお店を訪れたときにも、店長さんから試されるような質問があって身構えてしまったのだが、今回も来た。邦人作品のCDが並べられている棚を見ていると、いきなり「大木、入りましたよ。」と来た。これは、もちろん NAXOS から出ている「日本作曲家選輯」シリーズの「大木正夫:交響曲第5番」のことである。
「これ、確か発売が延期されたんですよね?」と答えると、「そう、解説が遅れたんだって。」という返事が返ってくる。
とりあえず第一関門を突破したらしく、ミッテンヴァルトが制作したCDの説明や、今後リリースされるCDの案内をいろいろしてくれる。やはり、伊福部さんの追悼アルバムも作るらしい。とりあえず今回はウェブで下調べして興味を持った「中野稔 ヴァイオリンとピアノのための作品 第1集」を購入することにした。
「あれ?大木はいいの?」と聞かれたのだが(笑)、近くのCDショップに予約してあるので …
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さて、響宴。都合により前半の3団体しか聞けなかったが、今年も昨年と同じように面白い作品を聞くことができた。数年前に比べて意識的に多様な作風の作品が取り上げられているせいかも知れない。この「響宴」自体がだんだんいい方向へ向かってきているように思える。
というわけで、協賛会員になりましたとも。
《「かごめかごめ」の主題による幻想曲》(露木正登)は17人編成のために書かれている。以下のようにシンメトリカルな配置で演奏された。
Perc Timp Perc
Tuba Contrabass
Hr Hr Tb Tb Tp Tp
Cl Cl Fl Fl Sax Sax
譜面の難易度はそんなに高くなさそうだったが、吹奏楽的なマインドから脱却しないとちゃんとした演奏はできなさそう。ときどき三善晃を思わせる響きが聞こえる。
《吹奏楽のための「風の身振り」》(金井勇)は、同じ作者の今年の課題曲と同じように緻密なオーケストレーション。クロテイル、ピアノ、ハープ、木管の高音域を使った硬質な音色が印象に残る。
《相授譚》(長生淳)。この人の作品を聞くといつも感じるのだが、リヒャルト・シュトラウスなどを思わせる芳醇な響きがする。ただ、全曲を通して「鳴り過ぎている」感じがするので聞き通すのがちょっとしんどい。
《あのときすきになったよ》(飯島俊成)は同名の絵本から題材を得た吹奏楽とナレーションのための作品。ちなみに原作はこちら。
吹奏楽界では数年前に話題になった《窓際のトットちゃん》と同じような構成である。音楽はあまりでしゃばらずにナレーションを支えているという感じ。とはいえ、音量的にはナレーションを消してしまう部分もあった。私が座っていた席のせいかも知れないけど録音では大丈夫だったのかな?こういう子供の視点ならではの、残酷でいて、なおかつあまりにも純真な描写には涙腺が緩む。
… というわけで、いちばん楽しみにしていた、神奈川大学による NAPP さんの《科戸の鵲巣》は残念ながら聞けず …
NAPP さんといえば、ガレリアウインドオーケストラの第4回定期演奏会はすごい内容。ぜひ聞きに行きたいものだ。
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展示ブースでは、例によって久しぶりにお会いする知己の方々と挨拶やら近況報告やら。(そういえば5月にはバンド・クリニックでまたお会いすることになるのかな?)買いそびれていたゲイブリエル/アメリカ空軍バンドの復刻CDや、デ=ハスケの邦人作品集第2弾などを買う。