月別アーカイブ: 2004年9月

「10ミニッツ・オールダー」視聴(その1)

10ミニッツ・オールダー コレクターズ・スペシャル [DVD]

少し時間が出来たので、先週購入した 「10ミニッツ・オールダー」 のDVDを見る。短編集だとこういう時に「つまみ見」ができるので助かる。8編が収録された第1部「トランペット」から見始める。収録順にアキ・カウリスマキ、ヴィクトル・エリセ、ヴェルナー・ヘルツォーク、ジム・ジャームッシュまで。

(ヘルツォークの作品だけは違うのであるが)上記の他の作品は基本的には作品の長さと等しい10分間の物語である。日常的な時間の流れから10分間だけを切り取り、そこに小さなドラマを提示している。ストーリーはあってないようなものなのだが、それぞれの監督が切り出す10分間のシチュエーションにも個性があって楽しめる。

カウリスマキの作品は、そこはかとなく漂うユーモアがジャームッシュの作風に近いところも感じる。エリセの作品はある家族の物語。内容はちょっと怖い。様々な情景をモンタージュしながら時間を進行させてゆく。モノクロームでありながら美しい映像である。ヘルツォークの作品は、ブラジルの未開民族を発見するというドキュメンタリー形式で取られているのだが、そもそもこれが事実なのかフィクションなのかよくわからない。ジャームッシュの作品は、ある女優が撮影の合間にトレーラーハウスの中で過ごす10分間の休憩シーン。グールドが弾くバッハの《ゴルトベルク変奏曲》(ちなみに死の直前に録音された新盤)をBGMに様々な関係者が訪ねてくるエピソード。

会社にて

演奏会に来てくれた同僚から感想を聞く。吹奏楽経験者で、学生時代に《コーラル・ブルー》を演奏したことがあるらしい。さすが吹奏楽経験者、バンドが抱えている技術的な問題点を痛すぎるくらいズバリとついてきた。こういう指摘も参考になる。

たまの最期!! [DVD]

「たま」の解散ライブの模様を収録したDVD。

イカ天で放送された「らんちう」や「さよなら人類」で衝撃を受けて以来「たま」にはかなりはまった。私にしては珍しくファンクラブに入ったりした。おかげで最前列中央でライブを見たこともあった。メジャーデビュー前にナゴムレコードから出ていたEP「でんご」やLP「しおしお」も買った。

インディーズ時代からすでに確立された世界を持っていたので、メジャーになってからの「のびしろ」が少なかったのだろう。単なるエキセントリックな集団として流行の波にさらわれていってしまったのはそういう理由があるのだと思う。

定期演奏会前夜

ということで、定期演奏会前最後の練習が終わった。

例年以上にやり残してしまったことが多いような気がするが、それはそれでやるしかない。

とはいえ、「うまくいきそうだ」という感触はあるのでいい演奏ができると信じている。
実はこういう「感触」を共有することが演奏会を成功させる大きな要素だと思うのである。

乞うご期待。

馬鹿買い

緊張感の反動か?気付いたら馬鹿買い。

ジム・ジャームッシュ(私のもっとも好きな映画監督)の新作をウェブで探していた時に発見。他にもアキ・カウリスマキ、ビクトル・エリセ、ヴィム・ヴェンダース、スパイク・リー、ベルナルド・ベルトルッチ、フォルカー・シュレンドルフ、ジャン = リュック・ゴダールなど、名前を聞くだけでわくわくする映画監督たち15名がそれぞれ手がけた10分間の短編映画のコンピレーション。

冨田勲の一連のシンセサイザー・アルバム。待望のリマスタリングCD。紙ジャケよりもリマスタリングされたことの方が意味が大きい。

上記のラインナップは年代順。「ダフニスとクロエ」までくるとかなり洗練されてくるのであるが、それは「斬新さ」が消えつつあることを意味する。

「月の光」に収録されているドビュッシーの諸作品や、「展覧会の絵」などは、シンセサイザーでなければ表現し得ない音色の魅力にあふれていた。まあ、これらは原曲がピアノ曲であるから、かなりイマジネーションを広げることができたのだろう。しかし、「ダフニスとクロエ」の場合、相手はオーケストレーションの魔術師と言われるラヴェルである。制作者である冨田勲さんにしろ、聴衆である我々にしろ、すでに完成された作品の呪縛から逃れることは難しい。

「惑星」や今月発売される「宇宙幻想」「バミューダ・トライアングル」など宇宙へ思いをはせるコンセプト・アルバムが続いたのは、時代だったのかシンセサイザーという楽器がそういう思いへ向かわせたのか?

ほとんど「ジャケ買い」のUAのマキシシングル。DVDもついている。ジャケットだけでなくプラケースに特殊印刷を施した意匠も素晴らしい。ジャケット写真やDVDに収録されているビデオ・クリップはわが浜松の中田島砂丘で撮影されたらしい。

NAXOSの日本人作曲家選輯の一枚。最近リリースペースが早くなってきてうれしい。ショスタコーヴィチと伊福部昭(と時々プロコフィエフ)を彷彿とさせる作風はかなり聞きやすいのではないか。

期末処分で安く売っていたので買ってみました。

《落葉》の司会原稿

所属する吹奏楽団の定期演奏会前の最後の一仕事。 司会の方にお願いする曲目紹介の原稿作成である。 プログラムの内容をそのまま読んでいただくのもつまらないので、プログラムには書かれていなくてお客さんの興味を引くようなネタを探す。

要するに、これは曲目紹介を2回考えるようなものである。 まあ、司会原稿の方がはるかに短いし、文脈とか文章校正がちゃんとしていなくても司会の方が適切に補正してくれるので多少は楽なのであるが、それでも想像以上のエネルギーを使った。 英気を養うために早く寝ようと思っていたのに …..

以前、プログラムのネタ探しにウェブをさまよっていた時に「ウォレン・ベンソンの《落葉》にケネディ暗殺が影響を与えていることは明白である」というような評論を見つけた。 特に根拠がなさそうなことをもっともらしく説明するのも憚られると思いながら、今さらながらにフルスコアの冒頭にあるベンソンの文章を読み直してみたらその根拠を見つけることが出来た。 なぜ、今まで気がつかなかったんだろう …..

《落葉》の冒頭はもともと全く違う構想をもって作曲されたもので、その先がうまく展開しなかったのでしばらく放置されていたらしい。これに当時の教 え子だったルース・コマノフ(後にフランク・ザッパのバックでマレット・パーカッションを担当する)から贈られたリルケの詩のイメージを重ね合わせ、後半 に讃美歌を挿入することで詩そのものを音楽的に表現することができたという経緯になっている。

こういった成り立ちがありながら、ベンソンは実際に《落葉》の作曲を開始した日としてはっきり「1963年11月22日」(つまりケネディが暗殺された日)と記していたのであった。

ビフォア・アフター・ダーク

新作 「アフター・ダーク」 の発売が間近ということで、にわかに村上春樹さんの周辺が慌しくなっている。氏はなかなかインタビューを受けないことで有名なのであるが、 「PAPER SKY」 という雑誌の最新号(Vol.10)にインタビューが載っているということを聞いたので購入してみることにした。そういえば、ずっと前に買った 「キャッチャー・イン・ザ・ライ」 はまだ読んでいないんだっけ …

村上作品との出会いは高校2年のときだったと思う。何もすることがない夏休みを過ごしていたら、友人が薦めてくれた。その頃は、まだ「風の歌を聴け」や「1973年のピンボール」くらいしか文庫化されていなかったので、とりあえずその2冊を読んでみた。

当時の印象はそれほどいいものではなかった。どうも、主人公である「僕」の物の見方にホールデン・コールフィールドに近いものを感じて(今になって読み返してみるとまったくそんなことはないのであるが)、何かサリンジャーを意識しているようで素直に入り込めなかったような気がする。

で、大学に入ってこれまた暇を持て余していて、その頃に出版されたのが「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」。村上春樹メーリングリストでのやり取りを見ていると、この作品をベストに推す人が多い。私も同感である。村上作品の中ではこの作品がいちばん好きだ。ご存知の方も多いだろうが、この作品は「世界の終わり」と「ハードボイルド・ワンダーランド」という2つの物語が同時進行する。この「世界の終わり」の世界観が、オールドファンが共感する「村上春樹の世界」をもっとも端的に表しているのだと思う。この作品ではまり込んでしまい、その後は新作が出るたびに購入している。

だから「ノルウェイの森」も予約をして発売日に買った(のはちょっと自慢)。この作品も実は最初に読んだときは、それまでの村上作品とは違うリアリズムを指向した文体に違和感を覚えて、さほど感動しなかった覚えがある。今から考えると、この作品は近作である「ねじまき鳥クロニクル」や「少年カフカ」で確立された作風に向かって、確実にハンドルを切った作品なのだと思う。最近の確固たる作風に入ってからの作品では、確かに根底にしっかりとした思想が横たわっていることがわかるのであるが、以前の作品、例えば上記の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」や短編集「回転木馬のデッドヒート」に見られるような不安定さに共感を覚える私にとっては、少し距離が開いてしまった作家である。まあ、相変わらず好きな作家であることには変わりないのであるが。

作家デビュー25周年を記念して「風の歌を聴け」「ノルウェイの森」の文庫本がオリジナル装丁で再発売されるらしい。このへんの発想は昨今の紙ジャケブームに似ていなくもない。リマスタリングされているとかボーナストラックがついているとかということはないと思うが。

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ついでに購入した 「天使と悪魔」 も到着。「ダビンチ・コード」に先立つダン・ブラウンの日本デビュー作。

しかし、こんな日にアマゾンからの小荷物を受け取ると、はたからは「ハリー・ポッター」の新作を買ったように見られるのかも知れない(笑)。