ダ・ヴィンチ・コード

結局、夏休み中にちゃんと読んだ本はこれだけ。

マトリョーシカ人形のように次から次へと出てきてなかなか収束しない謎解き、どんでん返しの連続、細かい章立てによるスピード感など、全体的にハリウッド映画的な構成が見て取れる。(だからこそロン・ハワードが映画化を決めたのか、もともと映画化を前提に書いたのか?)

いわゆる「トンデモ本」などでよく取り上げられる「死海文書」をめぐる争奪戦と謎解き。表象学や宗教学についての知的エンタテインメントが楽しめる。キリスト教の教義に思い入れがない人ほどニュートラルに楽しめるのではないかと思う。ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」にあんなものやこんなものが隠されていたとは全然気付かなかった。前作も読んでみたくなった。

アテネ・オリンピック

アテネ・オリンピックの開会式を見る。入場行進とか聖火リレーとかは別にどうでもいいのであるが、最初にあるショーがなかなか見逃せない。案の定、再放送ではかなりばっさりカットされていた。

1984年のロサンゼルス・オリンピック開会式は高校の吹奏楽部の合宿最終日と重なっていて、確か合宿所の後片付けをしながらテレビを見ていたような記憶がある。大量のトランペット隊と打楽器隊によるファンファーレ(もちろんジョン・ウィリアムズのアレ)や、コープランドのバレエ組曲《ロデオ》の「ホー・ダウン」などがかなりかっこよかったような覚えがある。

シルエットを使って古代オリンピア競技をうまく表現していたのはアトランタ大会(1996年)だったっけ?

この手のショーはコンセプトだけが大仰で一人歩きしていたり、何となく間延びして途中で飽きてしまうことが多いのだが、今回のは舞台芸術としてかなり面白かった。

テレビ番組「アッコにおまかせ!」で和田アキ子さんがいみじくも指摘していたように、メインステージにプールを配して水を諸物の根源とするコンセプトや、ワイヤーアクションによる三次元的な空間の使い方などはシルク・ドゥ・ソレイユの「O(オー)」を思わせる。それとは対照的に、あえて二次元的な造形で古代からの歴史をたどる山車(とでも言えるのか?)なんかも非常に楽しめた。

入場行進に DJ を使うのも面白いアイデア。バーバーの《弦楽のためのアダージョ》とかアルビノーニの《アダージョ》とか妙に重苦しい曲が使われていたのが印象に残るのであるが、DJ の真意は如何に?

チープ・スリル(紙ジャケット仕様)

パール

キャロル・キングに続きジャニス・ジョプリンもリマスター盤が再発された。特に「チープ・スリル」あたりはジャケットデザインも楽しいのでぜひ紙ジャケで再発して欲しかったのであるが、残念ながら遺族の意向でプラケでの再発になったらしい。(とはいえ、「チープ・スリル」は一度紙ジャケ化されているのであるが …..)

ジョン・レノン写楽

夏休みのど真ん中に東京出張。

最近出張は新宿近辺が多いので、用件前後に新宿のタワーレコードやディスクユニオンを回るのだが今回はCDの収穫なし。東京出張でCDを買わなかったのは初めてではないか(笑)。

その代わりといってはなんだが、今はなき写真雑誌「写楽」の1981年1月号を見つけたのでゲット。こんなに安くていいんだろうかというくらいの価格で購入することができた。

この号では篠山紀信が撮影したジョン&ヨーコの特集が組まれているのだが、1981年1月号ということは1980年12月つまりジョンが射殺された月に発行されているのである。雑誌ではジョンが音楽活動を再開したことは語られているのだが、もちろん射殺されたことには触れられていない。当時小学館に問い合わせてバックナンバーを入手しようとしたが、版元品切れで入手できなかったという懐かしい記憶がある。付録のポスターがついていることが重要。

明和電機

MECHATRONICA [DVD]

ふと立ち寄ったCDショップで売っていたので。パリの日仏文化会館でのライブを収録したDVDと、時を告げる時計(!?)「ジホッチ」の特別限定色バージョンがセットになった限定版。《君に、胸キュン。(YMO)》《淋しい熱帯魚(ウィンク)》《マイム・マイム》という収録曲にも惹かれた。

やはり、明和電機の音楽はCDで聞くだけでは面白くない。

吹奏楽クリニック

汐澤安彦先生による2度目のクリニック。

比較的仕上がっていると思われている《パンチネルロ》と、いまいちリズムに乗り切れていない《メキシコの祭り》の第3楽章を見ていただく。

その後、金管奏者を中心とした飲み会。以前、金管五重奏で引き受けた「お仕事」の報酬が手つかずだったのでそれを還元するのが目的ということである。我々のバンドは議論好きが多いので(笑)、アルコールが入るとかなり議論が熱くなる。喧嘩腰になることもあるが、こういう席でいろいろ建設的な話ができるのはコミュニケーションがうまくいっている部分なのではないか。

やはり、汐澤先生という日本でもトップレベルの指揮者にご指導いただいて、演奏者が刺激を受けているのを感じる。指揮者として(もちろんいい意味での)演奏者からの突き上げをひしひしと感じる今日この頃である。

キャロル・キング/ブライアン・イーノ

つづれおり

1970年代の名盤と言われるアルバム。《アイ・フィール・ジ・アース・ムーヴ》《ホーム・アゲイン》《ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ》あたりがよく知られている曲か?《ホーム・アゲイン》は最近、卓球の福原愛ちゃんが登場するCM(富士フィルムだったっけ?)でかかっている曲である。

ソウルフルなナンバーである《アイ・フィール・ジ・アース・ムーヴ》はもともと好きだったのであるが、少し前にリマスター再発されたことだし、名盤としての評価も高いしということで、ちょっと聞いてみようかと思い購入したしだい。

もともと、シンガー・ソング・ライターとして活躍していたということは知っていたのであるが、ビートルズもカバーしていた(ファーストアルバム所収の《チェインズ》など)コンビであるキング=ゴフィンの「キング」の方だとは知らなかった。(「ゴフィン」は夫君であるジェリー・ゴフィン)ちなみに、レノン=マッカートニーという連名は、このキング=ゴフィンを意識してつけたクレジットだそうである。

紙ジャケ再発ブームとかのおかげで、個人的にも(おそらく業界的にも)ちょっと昔の洋楽の再評価が進んでいると思うのだが、何というか、しんみりと癒される。

ヒア・カム・ザ・ウォーム・ジェッツ(紙ジャケット仕様)

これは全然癒されない(笑)。ロキシー・ミュージックを脱退した(というか辞めさせられた?)ブライアン・イーノのソロ・ファースト・アルバム。

ブライアン・イーノというと「アンビエント・ミュージックの祖」ということで、非常に落ち着いたイメージが強いのであるが、ロキシー・ミュージックにいた頃は気恥ずかしいくらい過剰なコスチュームやサウンドを指向していたのである。

そういうわけで、このソロ・アルバムもロキシー・ミュージックのファースト・アルバムなどの「過剰な部分」をさらに煮詰めたようなサウンドになっている。

熱闘甲子園(までもうちょっと)

高校時代は吹奏楽部に所属していたにも関わらず、なぜか一度も高校野球の応援に行ったことがなかった。もっと勝ち上がってから行けばいいということでお呼びがかからなかったのか、吹奏楽コンクールが近いということで顧問が密かに断っていたのかわからないが、まあ野球部の実力も1回勝てば上出来というような感じだったと思うので、全校挙げて応援に行くような雰囲気もなかったような気がする。

生涯最初(でおそらく最後)の野球応援は大学2年くらいの時で、大学の先輩が赴任した高校の応援をした。確か謝礼は昼食1回だったような気がする。

先日、ふと新聞の地方大会の結果を見たところ母校の勝利が載っていた。たいていの年は気にも留めないでいるか、気がついたときにはすでに負けてしまっていたりだったのだが、どうも今年は様子が違うようだ。見るたびに勝っている。いつまで経っても校名が紙上から消えない(笑)。何と決勝まで勝ち上がってしまったようだ。

ひょっとして甲子園で母校の応援をすることになるのではないかという想像だにしなかった事態を少し期待したのであるが、残念ながら本日決勝で負けてしまったようだ。相手は何度も甲子園に出場している実力校だったので無理もないか。

数日間の出来事とはいえ、まったく予期していなかった密かな興奮を与えてくれた母校の野球部員たちをねぎらいたい。将来、万が一甲子園に出場することがあったらトランペット持って駆けつけます(笑)。

定期演奏会プログラム書き(ベンソン/落葉)

定期演奏会のプログラムノート執筆開始。さすがに全ての曲について考えている時間はないので、書きたい作品を選んでそれ以外は他の団員に担当してもらうことにした。

ウォレン・ベンソンの《落葉》はぜひ自分で書きたかったし、ベンソンにインスピレーションを与えたリルケの詩「秋」もぜひプログラムノートに載せて、聞きに来ていただく方に読んでいただきたいと思っていた。もちろん、いくつか邦訳はあるのだが、個人的には新潮文庫「リルケ詩集」に収められている富士川英郎さんの訳が気に入っているので、ぜひこれを載せたかった。

というわけで、転載について新潮社に問い合わせ。もちろん、リルケ (1875-1926) の原文については著作権が消滅しているのであるが、富士川英郎さんの訳文については著作権が残っているとのこと。富士川英郎さんは亡くなられているので、ご遺族が著作権を管理されているということをお聞きした。ご遺族の許可が得られれば新潮社の許諾は必要ないということらしい。ご遺族の連絡先を聞いて、無事許諾をいただくことができた。

あらためてリンカンシャー

威風堂々(The Best of British Vol.1)

オーディオ機器の配置換えをしたので、久しぶりにちゃんとした環境で CD を聞いてみた。この CD はかなり前に買ったのだが、封を切っていなかった …

さて、《リンカンシャーの花束》。全体的にかなり遅めのテンポで、特に第2・第3楽章などの緩徐楽章にその傾向が顕著である。細部の表現にはかなりこだわっているようで、各楽章の決めの和音や第3楽章の最後の複調の掛け合いなどは今までの録音にはない面白さが聞ける。しかし、切れ味に乏しい。この曲にあまり馴染みのない人が聞いたら、少し腰の重い聞き栄えのしない演奏ととらえてしまうのではないかと思う。(ただでさえ、この曲の「渋い魅力」はとっつきにくいものがあると思うし …..)

例えば、レイニッシュの RNCM ウィンドオーケストラ盤(CHANDOS)や、フェネルのクリーヴランド管楽器セクション盤(TELARC)などを聞いてから、この録音を聞いた方がこの録音の魅力を味わえるのではないだろうか。

オリンピック

東京オリンピック [DVD]

アテネオリンピックに合わせてか、市川崑監督による東京オリンピック (1964年) の記録映画が発売された。海外ではかなり前から発売されていたのに、日本ではなぜこんなに時間がかかってしまうのだろう?

「必ず全ての競技を映像に盛り込まなければいけない」という制限があったため、劇場公開版は監督の本意ではなかったらしい。そのため、劇場公開版とは別にいくつかの競技をカットしたディレクターズ・カット版も収録されているのだが、正直言って、そこまでしなくてもいいような気もする。劇場公開版はオリジナル音声で、一方のディレクターズ・カット版はドルビー・デジタル 5.1ch 化されているので、劇場版はよほどのことがなければ見ないのではないかと思う。

音楽は全編黛敏郎、どこかで聞いたことがあるような音楽や、開会式のために書かれた《オリンピック・カンパノロジー》を聞くことができる。

ジョージ・マーティン・ボックス・セット

ビートルズのプロデューサーとして知られるジョージ・マーティンが関わった様々なレコーディングを網羅した6枚組のボックス・セット。 2001年にリリースしたときには躊躇していたのであるが、そろそろ買わないと廃盤になってしまうのではないかと思い購入。

ビートルズの音楽的な成功は、このジョージ・マーティンの存在を忘れるわけにはいかない。例えば《イエスタディ》の弦楽四重奏の編曲とか、様々な管楽器の導入とかに関するクラシックの素養を持っていたのはもちろん重要であるが、リベラルな実験精神を持っていたこともビートルズが突き抜けるための大きな要因だったのである。

ビートルズとタッグを組む前にピーター・セラーズ(映画「ピンク・パンサー」のクルーゾー警部とかキューブリックの「博士の異常な愛情」の圧倒的な一人三役などで有名な)と一緒に作ったコメディでは、すでにテープの逆回転などのレコーディング・テクニックのギミックを使っていたらしい。

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(追記)とりあえず4枚ほど聞いてみた。2枚目は上記のピーター・セラーズなどが関わったコメディの音源が収録されているのだが、ピーター・セラーズがカバー(?)したビートルズの2曲《ア・ハード・デイズ・ナイト》と《シー・ラブズ・ユー》が面白い。(歌っているわけではなく歌詞を朗読しているだけなのだが。)前者は司教の演説のような詩の朗読、後者は上にも挙げた映画「博士の異常な愛情」のマッド・サイエンティストになり切っての一人芝居。スネークマン・ショーみたいな雰囲気もあり、バカバカしくて笑える。

3枚目は、いわゆるマージー・ビート・インベンションのグループの作品が中心。レノン=マッカートニーの作品を他のグループが演奏しているのが興味深い。《ハロー・リトル・ガール》とか《バッド・トゥー・ミー》とか。