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  • 広島BCL日記(その2)

    広島での二日目。 宿泊したホテルが平和公園の近くだったため、朝の散歩を兼ねて原爆ドームやら平和公園を見て回る。原爆ドームから道路をはさんだすぐ向かいに広島市民球場があったのが意外といえば意外であった。 私などはこの年にして初めて広島を訪れたので、原爆ドームや平和公園や随所にある追悼のモニュメントなどを見るたびに、いちいち「ズシ」「ズシ」と 日本が歩んできた歴史というものを思い返してしまう。それにしても、依然として原爆ドームは静かに立っているわけだし、平和の灯はともされ続けているし、 観光バスは毎日やって来て団体旅行客やら修学旅行生やらは原爆死没者慰霊碑の前で手を合わせている。そういうことを「日常の隣で行なわれ続けていること」 として捉えるのはどんな気分なんだろう、とふと思う。 その後、ブレーンの営業の方がホテルに迎えに来てくれて宮島観光。当然のことながら厳島神社へも始めて行くわけだ。この営業の方は天理高校から近畿大学を経てブレーンに就職したそうで、言わば吹奏楽のエリートのような方である。コンクールや演奏旅行などで私などが得難い経験をされているわけで、道すがらそういう話をお聞きするのは非常に楽しい。 午後1時30分頃に録音会場である廿日市市文化センターに到着。ちょうど《呪文と踊り》(チャンス)のレコーディングが始まるところであった。結局、夕方まで《ノヴェナ》(スウェアリンジェン)と《ジュビラント序曲》(アルフレッド・リード)の録音を聞かせていただく。 ホールは1階席と2階席の間の間仕切りを閉めていたようなので1階席のみで800席ほどのスペース。吹奏楽を演奏するには少しライヴ過ぎる響きかなとも思うが、床や壁には木が多く使われているし、天井も高いので柔らかい残響が残る。 (以下、素直な感想なので提灯記事だと思わないでね …..) 録音に立ち会いながら、このシリーズを聞いて感じていたことをスタッフの方々といろいろ話していたのだが、私と同じような考えを持っている方が多かったことに今さらながら驚いた。「新鮮な発見がある」ということである。このバンド・クラシックス・ライブラリー・シリーズの一連の演奏を聞いていると、自分の頭の中にイメージとしてある演奏との違いに「はっ」とする瞬 間がある。例えばテンポ設定だとか各パートのバランスについてである。そこで、その部分をフルスコアで確認してみると、確かにスコアにはそう書かれている のである。(非常に具体的な例で恐縮であるが、《呪文と踊り》は4年ほど前に指揮したことがある。今回の録音にもその時に使ったフルスコアを持って行ったのであるが、それでも録音を聞きながらスコアを追っているといくつかの新しい発見があった。) 木村吉宏先生がおっしゃるには「彼ら(広島ウィンドオーケストラ)にとって、ほとんどの曲が新曲なんですよ。」ということらしい。実際、ほとんどのメンバーはかなりお若い。固定観念がない分、純粋に楽譜に向き合えるのではないかという気がする。 あ、そうだ。ラインナップはこんな感じです。 序奏とファンタジア(レックス・ミッチェル) 呪文と踊り(ジョン・バーンズ・チャンス) マスク(フランシス・マクベス) チェスター序曲(ウィリアム・シューマン) 狂詩曲「ノヴェナ」(ジェイムズ・スウェアリンジェン) ウェールズの歌(アルバート・オリヴァー・デイヴィス) ジュビラント序曲(アルフレット・リード) コラールとカプリチオ(シーザー・ジョヴァンニーニ) 序奏とカプリス(チャールズ・カーター) ***** で、帰りの新幹線の中で読んだ本。ふと KIOSK で見つけたので買ってみた。 東大生はバカになったか (文春文庫) なんか、立花隆さんの文章を読むのも久しぶりだ。自分の知識欲を刺激するという意味で、立花さんの旺盛な知識欲とそれをどんどん突き詰めていくプロセスを読むのは非常に楽しい。 基本的には、文部省による教育システムの失敗についての指摘と、高等教育を受けるものが習得しなければいけない「教養」とは何かという話題が主である。これらの具体的な事例を示すキーワードとして「東大生はバカになったか」という題名がつけられている。 漠然と大学進学を考えている高校生あたりが読むと面白い内容なのではないかと思う。 ***** 帰宅したら amazon.co.uk から以下の CD/DVD が届いていた。 DVD は国内未発売のタイトル、CD は全て日本国内では CCCD でリリースされているタイトルである。(こういうタイトルを輸入禁止にするのは止めて下さいね。) 歌劇「兵士たち」 ちょっと前にベルント・アロイス・ツィマーマンが作曲した管楽アンサンブル曲《ユビュ王の晩餐のための音楽》について調査していたところ、同じ作曲者のこのオペラが目に止まったので買ってみた。本命の《ユビュ王》よりも先に届いてしまったのであるが。 こういう作品が存在すること自体は知っていた。 LD で国内盤が発売されていた(廃盤。しかも未 DVD 化)頃にはかなりの反響があったように記憶しているし、ゴールデンウィークに《ユビュ王》のCDを探した時も、このオペラのCDは見つけることができた。 錻力の太鼓 (CCCD) ジャパンの最終作にして最高傑作と言われている作品。以前、CDで聞いたときにはあまりいい印象を持たなかったのであるが、リマスタリングされた音源はかなりいい感じである。 […]

  • 広島BCL日記(その1)

    ブレーン株式会社から発売予定の「バンド・クラシックス・ライブラリー3」の録音のため広島へ。せっかくお誘いいただいたことだし、貴重な機会でもあるので遠路はるばる出かけることにした。レコーディングは18日からなのであるが、担当の方々と親睦を深めるため(わかりやすく言うと「飲み」(笑))前日から広島入りする。 世界の中心で、愛をさけぶ ふだんはなかなか本を読むための時間を取れないので、新幹線の中で読む本を探した。なんでも村上春樹さんの「ノルウェイの森」より売れたらしいので読んでみた。あえてネタばれにならないような記述にするが ….. まず思ったのは、誰にでも演繹可能なストーリー展開だなということ。つまり、ああいう状況に置かれれば、きっと誰でもああいう考え方をして、ああいう行動に走りたくなるのではないか。そのことが「誰でも感情移入できる」という意味で、多くの共感を得、その結果ベストセラーになったのであろう。しかし、ああいう状況というのはそうそう身近に起こることでもないと思うし、それを単に「お涙ちょうだい」とか「純愛」とかのシチュエーションとして選んだの だとしたら、ものすごく表層的だと思う。 まあ、お手軽なカタルシスというところか。結局、このタイトルはどこから来たのだ?

  • カレル・フサの本

    とりあえず無事帰宅。郵便局に留め置きにしていた郵便物を取りに行ったら、年賀状などと一緒にカレル・フサの伝記が届いていた。 Karel Husa: A Bio-Bibliography (Susan Hayes Hitchens / Greenwood) という本である。伝記とは言っても短めのバイオグラフィが載っているだけで、内容の多くは参考文献、作品リスト、演奏記録などに費やされている。研究のとっかかりに便利なリファレンスといったところだろうか。

  • 放送禁止歌

    放送禁止歌 (知恵の森文庫) たまたま書店で見つけて面白そうだったので買ってみた。ちょうどハードカバーから文庫化されたばかりのようである。 このタイトルを見た限りでは、単に「放送禁止歌」(この本を読めばわかるが「放送禁止歌」というものはそもそも存在しないのである。)を紹介した雑 学的な本だと思っていた。前半は確かにそれに近い内容なのであるが、読み進むにつれ、どんどん横道に逸れていくというか、どんどん深い方へ進んでいくので ある。 詰まるところ、それは岡林信康の《手紙》や赤い鳥の《竹田の子守唄》が(いわゆる)「放送禁止歌」となった根拠にもあげられる部落問題にいきつくの である。この本は「放送禁止」に代表され、いろいろなシチュエーションに演繹可能なタブーについて、極めて誠実に分け入ったルポルタージュである。読み始 めたら途中で止めることができなくなり、最後まで一気に読んでしまった。 幸か不幸か、私は自分の人生の中で直接的にも間接的にも、いわゆる「部落問題」に関わったことがない。責められるかもしれないが、それについて私は いかなる意見も表明することができない。しかし、ソクラテスではないが、自分が何も知らないということを自覚することは必要なのだと思う。 この本を読みながら、インターネットの黎明期にある方が発言された文言を思い出した。私はこの主張に100%賛同している。 「差別用語などというものは存在しない。存在するのは、ある用語を差別的に使う人です。」

  • ロンドンBBCポップスオーケストラ

    そういうわけで、「コンプリート・モントルー」を買って以来、少しマイルスにはまっています。マイルス・デイヴィス本人あるいは共演者など周辺にいた人へ のインタビューを通してマイルスの生涯を追うという本。クインシー・トループの「自伝」より本当のことが書かれているかも知れないという罠(笑)。 マイルス・デイヴィスの真実 ロンドンBBCポップスオーケストラを聴きに行く。全く聴きに行くつもりはなかったのだが、妻の知人が急遽行けなくなったということでチケットを譲ってもらった次第。席はバラバラだったのだが、私の隣に座ったのは同じ吹奏楽団の団員だった(笑)。 第1部はジョン・ウィリアムズの作品を中心とした映画音楽(《利家とまつ》も)、第2部はプロムスの再現ということで、ウォルトン、エルガー、RVWからビートルズまでイギリスの作曲家を中心としたプログラム。 率直に言って期待していた以上に楽しめた。よくよく考えてみると、オーケストラの演奏会でよく取り上げられる古典的なレパートリーに比べれば、映画 音楽などの方が遥かに管楽器が活躍するのである。弦楽器奏者も少ないので(例えば第1ヴァイオリンは8人だったので通常編成の半分?)、それぞれの管楽器 の音色を楽しむことができた。金管の強奏はかなり鳴らしていたのであるが、決してうるさくなく包み込むようなやわらかい響きだったのはイギリスならではの 鳴らし方だったのかな?木管は3管、金管はそれぞれトップにアシをつけていたようだ。木管はアルト・フルートやコントラ・バスーンがかなり活躍し、木管だ けのアンサンブルの部分でも充実した響きがあった。 吹奏楽的にはウォルトンの戴冠式行進曲《王冠》や、RVWの行進曲《海の歌》を聴けたのが収穫。このあたりの曲や《威風堂々第1番》などはもっと厳かに演奏されるのかと思ったら、行進曲っぽい拍子感を大事にし、あっさりとしたフレーズの歌わせ方だった。 あと、日本(というか浜松かな?)では、こういうセミ・クラシック的なコンサートに対して聴衆がどう振舞えばいいのか戸惑いがあるように思える。コ ンサートの後半では演奏者もリラックスしてきて(トロンボーン奏者は小さなユニオン・ジャックを振りながらスライドを動かして演奏していたし(笑))手拍 子なんかも自然に起こってきたのであるが、それまでは「一緒に演奏を楽しむべきか」「神妙に演奏を聞くべきか」という葛藤に多少居心地の悪さを感じた。日 本人の司会者を立てるだけで、このへんはかなり楽しいステージになると思うのだが。 5年くらい前にロンドンでロンドン交響楽団のニュー・イヤー・コンサートを聞いたことがあるのだが、指揮者はいろいろなおしゃべりをするし、子供は指揮台にあがるし、聴衆は歌を歌わせられるしで、演奏者と聴衆が一体になっていたということを思い出した。

  • 今日買ったもの(ショスタコーヴィチ/クセナキスなど)

    久々に上京したので買出し。 ショスタコーヴィチ:交響曲全集(11枚組) ショスタコーヴィチの交響曲全曲(全11枚)が国内盤1枚ほどの価格で買える。(新宿TOWERでの購入価格は2850円) まだ 1、2、5 しか聞いていないが概ねよい。全体的な楽器バランスを考えると木管楽器(特に高音)がかなり大きめなのだが、金管も出るところは出ているし大きな問題ではない。端正にまとめられているので「圧倒的な音量感」を期待すると少し物足りないかもしれないが、しっかり作品に向かい合っているという意味では好感が持てる。とりあえずショスタコーヴィチの交響曲を全部聞いてみたいという人には投資するだけの価値があるコストパフォーマンスだと思う。 Xenakis: Metastasis; Pithoprakta; Eonta いわゆる「ユージエオンタ」の再発盤。ちょっと前にYahoo!オークションで出品されていたが落札しなくてよかった(笑)。(新宿TOWERでの購入価格1190円だったかな?) 金管五重奏とピアノのための「エオンタ」が収録されている。クセナキスの弟子でもある高橋悠治はこの曲の初演者でもある。 ***** 御茶ノ水オーディオユニオンでレイカのレコードクリーナーお試しセットを購入。「高い」という人はいるが「効果がない」という人はいない優れもののレコードクリーナーらしい。とりあえず藁にもすがる思いで買ってみる。これで中古レコードの音がよくなればよいのだけれど。 ***** 銀座・山野楽器で今はなき Rene Gailly の吹奏楽CDを4枚購入。全部で何枚あるのかな? ***** ヤマハ銀座店では、地元ではなかなか見つからない「ブラスバンドの社会史」を購入。ヴァン=デル=ローストの「シンフォニア・ハンガリカ」のミニチュア・スコアが意外な安値で売っていたのでこれも購入。たまたま外囿祥一郎さんのインストアライブがあったのでのぞいてみる。 ブラスバンドの社会史―軍楽隊から歌伴へ (青弓社ライブラリー)