バーンスタイン/マーラー《巨人》

せっかく買ったので、ドイツ・グラモフォンの111周年記念ボックス第2弾からひとつまみ。バーンスタインによるマーラーの交響曲第1番《巨人》である。ちょうど自宅から会社までの所要時間がこの交響曲の長さと同じくらい(笑)。

1980年代(だからバーンスタインの晩年と言っていい)にニューヨーク・フィル、コンセルトヘボウ、ウィーンフィルという3つのオケを振り分けて録音されたバーンスタインにとって2回目のマーラーの交響曲全集の一つ。(正確に言うと交響曲第8番《千人の交響曲》はこの全集としては録音されずに1970年代に録画された全集の音源を借用しているのだが …)

この《巨人》はコンセルトヘボウによる演奏。この全集の第9番(オケは同じコンセルトヘボウ)がリリースされた時にそれを買った友人が狂喜していたので私も借りて聞いてみたのだが、あまりピンと来なかった記憶がある。まあ当時は(今もそうだが)同曲異演にのめり込むよりは未知の曲をたくさん聞きたいと思っていたので、演奏そのものにはあまり注目していなかったのかも知れない。

それ以降も「晩年のバーンスタインはくどい」という耳年増的先入観があったので、この全集には興味があったものの積極的には聞こうと思っていなかった。ありがたいことにボックスの中に収録されていたのでちょっと聞いてみようと思ったしだい。

おそらくスコアを見ながら聞けばテンポの揺れとかダイナミクスの処理とかがわかるのだろうけど、ざっと聞いてみたところそんなに違和感はない。「表現が濃い」という風評からさぞかし感情的な演奏だろうと想像していたのだが、雑ということはなく細かいところまで注意がいきとどいている用に思える。長年リファレンスとして聞いてきたインバル/フランクフルト放送響の淡白な演奏よりむしろ楽しめる。

確固たるヴィジョンがあるから大胆な解釈があっても不自然さを感じないのだろう。以前、指揮者の汐澤安彦さんに指導いただいた時にスコアを深く読んだ上で大胆なダイナミクスの変更をされたことを思い出す。

《巨人》はマーラーの交響曲の中でも淡白な方だと思うので、もっと濃厚な交響曲でバーンスタインの「濃さ」がどのくらい表出されているのか聞いてみたい気もする。《復活》とか第5番とか。

(まあ、先日買った新ウィーン楽派録音集成が面白かったので、シノーポリが振ったマーラーもさぞ面白かろうと思っていたところなのですが …)

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