以前の日記でも取り上げた、1985年に起きた御巣鷹山のジャンボ墜落事故に関する本である。最近この事故に興味がわいたのは、このジャンボに搭乗していて犠牲者となってしまった方の遺書をとある雑誌で見かけたからである。
http://www.nomusan.com/~essay/essay_03_osutakayama.html
単身赴任の会社員が久しぶりに家族と過ごし、赴任先へ戻る飛行機で事故に遭遇した。 飛行機は「バーン」という爆発音の後、およそ30分間迷走した後に山腹に墜落する。 極限の恐怖の中で書かれた内容であることは疑う余地はないと思うが、そこに書かれているのは家族への感謝と励ましである。 そういう恐怖の中で、なぜこれだけの愛に満ちたメッセージを残すことが出来るのだろう?と思った。
私が、この事故について知りたいというモチベーションは、このような疑問によるものなのだと思う。
事故調査委員会の報告では、機体後部の隔壁が修理ミスによって飛行中に破損、それによって客室内の減圧が起き、客室内の空気が猛烈な勢いで隔壁から 流出して機体の尾翼を破損、それによって操縦不可能になった ….. ということなのだが、上記の本を読むとその報告の矛盾点がいろいろ指摘されている。
前者は事故からおよそ1年後に書かれた本。 生存者へのインタビュー、遺体の確認作業の様子など、事故の全容についてバランスよく取材されているが、時期的にも早かったせいか事故調査委員会の報告に対する検証は突っ込みが浅い。
後者は事故調査委員会の矛盾を丁寧に説明している。 隔壁の修理ミスによる減圧(つまり内的なエネルギー)ではなく、機体構造のゆがみから尾翼が破壊された(つまり外的なエネルギー)とする著者の推論は、一応納得できるものであるが、こちらについてももう少し説明した方が説得力が増すのではないか。