Category: CD/DVD

  • 衝動買い:ギーレンのマーラー

    ミヒャエル・ギーレンが南西ドイツ放送(SWR)交響楽団を振ったマーラーの交響曲全集の評判がよろしいということでウェブをつらつら見ていたら、ドイツのCDショップjpc.deでダウンロード販売が9.95ユーロだった。(第1番から第9番まで全曲ですよ!) この値段だったら「ちょっと聞いてみたい」というモチベーションで買うのも全然OKである。(CD棚のモノが増えるわけでもないので妻にもばれないし) よく考えたら、このオーケストラは昨年買ったカンブルランの《春の祭典》でも最近聞いている「モダンを回想する」でも耳にしているオケである。 とりあえず第9番から聞き始めてみるが、醸し出される音色の多彩さに驚く。私のマーラーのリファレンスは主に(淡白と言われている)インバル/フランクフルト放送響のコンビなのであるが、それと比較して表現の幅が広い。とはいえバーンスタインのような感情的な表現ではなく、徹底的に客観的に意味付けを行っているように聞こえる。指揮者が語っているのではなく、音楽そのものに語らせているというか。 それから、このオーケストラで《春の祭典》を聞いた時にも感じたのであるが、オーケストラ自身が異質なものを異質なまま表現できる資質を持っているのではないかと思う。例えば楽器間のバランスとか、ソロで演奏する場合の音色とか、20世紀音楽が持っている「前時代の音楽とは違うもの」を慣習に抗ってそのまま提示できる能力を持っているのではないかと思う。 このオケが「現代音楽を得意にしている」というのは後付けの理由になってしまうかも知れないが、ふだんからそういう音楽に触れる機会が多いことで、マーラーの音楽が持つ分裂症的なところやグロテスクなデフォルメなどが説得力を持つのかなあ、と思ったしだい。

  • デュティユーかなりよい

    というわけで、ヤン・パスカル・トルトゥリエ指揮BBCフィルハーモニー管弦楽団によるアンリ・デュティユー管弦楽作品全集を聞いている。 ちなみに「管弦楽作品全集」と銘打たれているものの、1916年生まれのデュティユーは存命で、この作品集は1992年から1998年にかけて録音されたものなので、それ以降に書かれた作品は収録されていない。最新作(らしい)《Le Temps L’horloge》いたっては90歳を超えてから書かれた作品である。 それはさておき、ディティユーの音楽はかなり気に入った。もちろん「ゲンダイオンガク」に属する音楽なのだが、作風は保守的といっていだろう。鍵盤打楽器も含めた打楽器の多彩さが特徴になっている部分はあるが、内容的にも形式的にも奇をてらうようなことはやっていない。 特徴的だな、と思ったのは和音の美しさとリズムの先鋭さ。 もちろん機能和声的な動きはほとんど聞き取れないのであるが、刹那刹那の響きと、それの移ろいゆくさまが官能的である。「旋律の美しさ」を聞くのではなく「組み合わせられた音の美しさ」を聞くという意味で、無調であることの必然性を感じる。しいて挙げればアルバン・ベルクに通じるところがあるのかな。 あと、最近何となく現代音楽ばかり聞いているのだが、多くがドイツの作曲家による作品である。ドイツの作曲家だけの傾向ではないのかも知れないけれど、作品が持っている律動(端的に言ってしまうとスピード感といえるのか?)があまり感じられない。かなりスタティックに音が推移していくような印象がある。デュティユーの作品には時間的に前へ前へ進もうとするダイナミズムが感じられるのである。 ***** ちなみにモーツァルト大全集170枚組の方はというと、内容をチェックしながらMacに取り込み中。昨年買ったホグウッドのモーツァルト交響曲全集(11枚組)でダブりがあったので、やはりチェックせずにはいられないのである。 「今までにもそんなこと(ボックスでのダブり)があったの?」と聞いて、少し考えた後「あ、全部聞いてなきゃ分かんないよね」と鼻で笑った妻。はいはい、DG111枚もブラームス大全集46枚組もCHANDOS30枚組もDHM50枚組もちゃんとチェックしますよ(そのうち)。

  • モーツァルト/デュティユー/ツィマーマン

    届くときはまとめて届くの法則。 Complete Edition 予想通り手を出してしまったモーツァルト大全集170枚組。 ヨーロッパのamazonではおよそ100ユーロ弱で売られていたのだが、amazon.deのマーケットプレイスで送料込み79.80ユーロで出ていたのでついポチッ。 2006年に発売されたものの内容を少し入れ替えて2010年に再リリースされたもの。 Complete Orchestral Works フランスの作曲家アンリ・デュティユーの管弦楽作品全集。 CD4枚組で、こちらはamazonではおよそ50ユーロちょっとの価格なのであるが、amazon.frのマーケットプレイスで新品が20ユーロくらいで出ていた。 デュティユーというと、吹奏楽ネタとしては2005年に秋田県立秋田南高校が《交響曲第1番》を自由曲として取り上げたとか、伊藤康英さんが学生時代にオーケストレーションを褒められたとか、がある。 また、パリ高等音楽院に留学していた三善晃に大きな影響を与えたことでも知られている。確かにそういう耳で聞くとデュティユーの《交響曲第1番》と三善晃の《交響三章》には近い部分もあるように思える。 Bernd Alois Zimmerman: Requiem Fur Einen Jungen Dichter 最近、耳が現代音楽づいているので、ベルント・アロイス・ツィマーマンのおそらくもっとも知名度の高い曲《若き詩人のためのレクイエム》を聞いてみることにした。 今入手できる音源としてはWERGOレーベルから出ているベルティーニ指揮ケルン放送交響楽団のもの(1996年録音)と、このコンタルスキー指揮オランダ・シンフォニアのもの(2006年録音)があった。(ソニーから出ていたギーレン盤は現在廃盤のよう) しばし迷ったのだが、録音も新しいし、(うちでは聞けないけど)SACDのマルチチャンネル対応らしいし、ということでコンタルスキー盤を買ってみた。そういえば、例の《ユビュ王》と同時期に買ったツィマーマンの歌劇《兵士たち(軍人たち)》のDVDもコンタルスキー指揮なのであった。 パリ国立高等音楽院

  • モダンを回想する

    その昔、ベルント・アロイス・ツィマーマンの吹奏楽曲(というか管楽アンサンブル曲)《ユビュ王の晩餐のための音楽》を聞きたいがために買った8枚組のボックス。ほとんど聞かずに放ってあったのだが、年末年始に帰省した時に発掘したのでとりあえずリッピングして持ってきたものである。 Ruckblicke Moderne: 20th Century Orch Music まず2枚目。収録曲はエドガー・ヴァレーズの打楽器アンサンブル作品《イオニザシオン》、ヴェーベルンの《管弦楽のための5つの小品》、マーラーの交響曲第2番第1楽章の原型となった交響詩《葬礼》、ジェルジ・クルターグの《…幻想曲風に…》、そしてバルトークの組曲版《中国の不思議な役人》。クルターグは個人的にあまり馴染みのない作曲家だったのであまりピンと来ていないが、それ以外はあまり「ゲンダイオンガク」っぽくなくて聞きやすい1枚である。 《葬礼》は初めて聞いたかも知れない。大まかな枠組みはほとんど《復活》の第1楽章と同じなのであるが、ところどころでオーケストレーションが違っていたり、曲の構成が違っていたり、といったところを耳にすることができる。 《中国の不思議な役人》はあまり激しない中庸な演奏だが、全体的な印象は悪くない。各楽器の音色の違いを強調してソノリティに変化を出しているのが面白い。吹奏楽コンクール以外で最終部にリタルダンドをかける演奏は初めて聞いたかも。 ***** 8枚目。アルフレート・シュニトケの《トリオ・ソナタ》(弦楽合奏版)とリゲティの《ラミフィカシオン》とショスタコーヴィチの《室内交響曲》(弦楽四重奏曲第8番の弦楽合奏版)ということで弦楽合奏作品ばかりを集めたCDである。 シュニトケの作品は1985年に弦楽三重奏のために作曲されたものをヴィオラ奏者のユーリ・バシュメットが弦楽合奏のために編曲したものらしい。シュニトケらしい多様式とか折衷主義とかといったものがあまり聞かれないので初期の作品かと思ったのであるが、作曲者後期の作品である。ショスタコーヴィチの作品の緩徐楽章を聞いているような、切なくて美しい感じ。 … と思って聞いていたら、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番の弦楽合奏版が聞こえてきて少々びっくりした。

  • 未来派の音楽

    備忘録。今日届いたCD。 妻に指摘されるまでもなく、最近「箱モノ」しか買っていないなあ。よく冗談で「じゃあ、次はモーツァルト全集の170枚組でも買うか」と言っているのだが、実はかなり欲しくて、今さら本当に買ってしまったら逆鱗に触れること間違いなし … という困った状況です。 Musica Futurista いわゆる「未来派」の音楽を集めた8枚組のアンソロジー。8枚組にしては安かった(amazon.itに注文して送料込みで30ユーロくらい)。 未来派というと個人的には作曲家ルイジ・ロッソロと、彼が考案した「騒音」楽器イントナルモーリくらいしか知らない … し、一度イントナルモーリが発する音を聞いてみたかった。 (もちろん、教授のアルバム「未来派野郎」のタイトルはこの芸術運動から採られていて、収録曲《Variety Show》では未来派の先導者であるマリネッティの演説がコラージュされている。) まあ当然イントナルモーリやそれに類する音楽が8枚に収録されているわけではなくて、わりと正統的なところではロシアのアレクサンドル・モソロフ、フランスのアルトゥール・オネゲル、アメリカのヘンリー・カウエルの作品なども収録されている。このCDは封も切っていないし、当然ライナーノーツも読んでいないので、どういうかかわりで収録されているのかはまだわからないのだけれど。 1枚目(ピアノ音楽とイントナルモーリなど)と3枚目(独唱曲)あたりから聞き始めたのだが、何の先入観もなく聞いた耳にはひたすら稚拙に響く。既存の価値観の否定とか、機械礼賛といったイデオロギーありきで曲が作られているような感じ。あるテーゼに対するアンチテーゼを標榜するなら、知識や教養において同等のバックグラウンドを持たないと太刀打ちできないんじゃないか?というのが第一印象。

  • デヴィッド・シルヴィアン/スリープウォーカーズ

    備忘メモ。本日購入したもの。 スリープウォーカーズ 最近のデヴィッド・シルヴィアンのゲスト参加作品や他者とのコラボレーションを集めたアルバム。 ソロアルバム最新作の「マナフォン」や、その前作「ブレミッシュ」は取っつきにくい作品ではあるが、本当に素晴らしい。実はジャパン時代や教授とのコラボレーションを頻繁に行っていた時代のヴォーカルは仰々しくてあまり好きではなかったのだが、最近は歌い方がもっと自然になってきたし、どういうバッキングをつければそのヴォーカルがもっとも耽美的に響くかをデヴィッド・シルヴィアン自身が知るようになってきたのではないかと思えるのである。 ソロアルバムではそういったバッキングが本当に研ぎ澄まされていて息苦しいまでの緊張感があるのだが、コラボレーションとなると他のアーティストの色も入ってきて、少し聞きやすくなっている。 もちろん、教授とのコラボレーションである《World Citizen – I won’t be disappointed》も収録。

  • コンドラシンのシェエラザード

    リムスキー=コルサコフ作曲の交響組曲《シェエラザード》について。 前にも書いたのであるが、もともとこの曲は好きでなかった。「好きでない」というよりはむしろ「嫌い」といっていいくらいに積極的には聞きたくない類いの曲だった … のだが、実演を聞いてから「ひょっとしてこの曲は感動的な演奏に出会える余地があるのではないか?」と漠然とイメージするようになった。(残念ながら、その実演や所有しているマゼール/ベルリンフィル盤はあまり面白いと思えなかったのである。) というわけで、世間で「名盤」との評価が高いコンドラシン/コンセルトヘボウ盤を買ってみることにした。ちょうどいい具合にカップリングもちゃんと聞いたことがなかったボロディンの交響曲第2番である。このあたりの作品が吹奏楽コンクールの自由曲として人気を博していた時代がありましたねえ。 R.コルサコフ:シェエラザード、ボロディン:交響曲第2番 コンセルトヘボウというオケにしてはかなりロシア的なサウンド。今までこういったロシア風の《シェエラザード》を聞いたことがなかったので、それはそれで納得感があるし、新鮮な感じがする。演奏の細部にはアンサンブルが合っていない部分などもあるのだが、曲全体を見通した音楽の作り方はかなりよくできていると思う。 ただ、私がこの曲に望む(と私が現在思っている)サウンドとは違うように思える。私はもっとドロドロにとろけて角が取れてしまった甘美な演奏を聴きたいのだと思う。ゴツゴツしたサウンドは求めていないように思える。 さらにアンビヴァレントなモヤモヤ感が増殖してしまった。やっぱりアンセルメとかデュトワとかを聞いてみるかなあ …

  • 魔笛

    「のだめカンタービレ」に影響を受けたのと、昨年買ったホグウッドによるモーツァルト交響曲全集が思いのほか面白かったので、年末年始で帰国した際にモーツァルトのオペラ《魔笛》のDVDを買ってみた。行ったのが「TSUTAYA」というか「蔦屋書店」というか、だったので、選択肢はこれしかなかった。 魔笛 Die Zauberflote― DVD厳選コレクション珠玉の名作オペラ vol.1 モーツァルト作曲 (DVD厳選コレクション 珠玉の名作オペラ) イヴァン・フィッシャー指揮、パリ国立歌劇場での演奏。 そういえば、私が見たことがあるオペラのレパートリーは非常に限られていて、プッチーニの《トスカ》とか(考えてみれば、これも「動物のお医者さん」の影響かもしれない)、リヒャルト・シュトラウスの《サロメ》とか、ベルクの《ヴォツェック》とか、ワーグナーの《指環》とか、そんな感じである。(なんか病的といえば病的だなあ …) そんなバックグラウンドで《魔笛》を見ると、展開が早い早い(笑)。「のだめ」で読んだり、Wikipedia であらすじを読んだりした限りではストーリーは少々複雑そうなのだが(考えてみれば、上記の《トスカ》や《サロメ》や《ヴォツェック》はかなり登場人物が少ない)、まあ、楽しめそうである。 疲れていたのか、最初に夜の女王が登場するところで意識を失いそうになったので、続きはまた今度。

  • 今年の初出社

    まだ少し時差ボケが残っているのか、息子も私も午前6時前に起床(妻はいつももっと前に起きている)。それゆえ、いつもより早く出社することができた。 ドイツでの愛車に乗るのはほぼ2週間ぶり。日本では実家の車や妻の実家の車に乗っていたのだが、久しぶりに愛車に乗ってみるとハンドル、アクセル、ブレーキ、何もかもが重い。あらためてドイツの「ものづくり」の質実剛健さを認識した。 ところで、昨年帰国した時には車を運転しなかったので、日本での運転は1年半ぶりくらいだったのだが、意外に右側通行/左側通行の違いによる混乱は少なかった。ただ、ワイパーとウィンカーがドイツ車と日本車では逆についているのでこれは混乱する。ドイツでも、いまだに本当にとっさの時はウィンカーを出すつもりでワイパーを「ぐいーん」と動かしてしまったりしますが。 Fantasma(初回限定盤) 今日の通勤ミュージックはコーネリアスの「ファンタズマ」。昨年の秋に砂原良徳のリマスターで再リリースされたものである。もちろん、男は黙って初回限定の3枚組 … なのであるが、出足が遅かった(というか、予約するのを忘れていた)ので手に入れるために少々のプレミア価格を払うことになってしまった。 私がコーネリアスをちゃんと聞いたのは2006年に発表された「Sensuous」が初めてだったので、1997年に発表されたこの「Fantasma」は後追いという格好になる。冒頭は「Sensuous」と同じような方法論だなあ、と思ったのであるが、曲が進むにつれ、フリッパーズ・ギターに近いポップな曲想も感じられるようになる。情報量過多で「ごった煮」的なところは中期ビートルズに通じる猥雑さもあるのかな。 結局、ここで吸い込みたいものを吸い込めるだけ吸い込み、それを吐き出して残ったものが「Sensuous」なのかな。2つのアルバムの間に発表された「Point」を聞けば、その印象も変わるのかも知れないが。 ***** 会社に行くと、今年初めて顔を合わせるということでいろいろな人から「Happy New Year」という挨拶をもらう。日本だと「松の内」を過ぎると「あけましておめでとう」とは言わないような気がするのだが、新年初めてということでこういう挨拶をするのだろうか? 休み中もメールはチェックしていたのだが、内容をチェックする程度でよほどの急用でない限り返事はしなかった。ということで、まずはメールチェックと然るべきアクションを。今日が日本の休日でよかった。 ***** 夕方、会社を少し早く抜けて歯医者へ。いわゆる「クラウン治療」の最終仕上げ。

  • 帰国第五日目

    自宅で行動開始。 大きな目標は2つ、「CDの追加リッピング」と「バンドジャーナル誌のバックナンバーなどを参照して吹奏楽コンクール支部大会の過去データ入力」なのだが … 膨大な段ボールの山脈を見て途方に暮れる … 帰国前に分類して箱詰めしてくれた妻に本当に感謝だわ、これは … とりあえず開けやすい箱から手をつけ、100枚ほどリッピングした。 作曲者本人とアンセルメが振ったストラヴィンスキーの作品集、先日買った(そして無事到着していた)ハチャトゥリアンの管弦楽作品集、チッコリーニのサティピアノ作品全集、マイルス・デイヴィスのセラードア・セッションBOX、ブーレーズ/ドメーヌ・ミュジカルのライヴ集、そしてビリー・ジョエルなどなど。