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ロンドンBBCポップスオーケストラ

そういうわけで、「コンプリート・モントルー」を買って以来、少しマイルスにはまっています。マイルス・デイヴィス本人あるいは共演者など周辺にいた人へ のインタビューを通してマイルスの生涯を追うという本。クインシー・トループの「自伝」より本当のことが書かれているかも知れないという罠(笑)。

マイルス・デイヴィスの真実

ロンドンBBCポップスオーケストラを聴きに行く。全く聴きに行くつもりはなかったのだが、妻の知人が急遽行けなくなったということでチケットを譲ってもらった次第。席はバラバラだったのだが、私の隣に座ったのは同じ吹奏楽団の団員だった(笑)。

第1部はジョン・ウィリアムズの作品を中心とした映画音楽(《利家とまつ》も)、第2部はプロムスの再現ということで、ウォルトン、エルガー、RVWからビートルズまでイギリスの作曲家を中心としたプログラム。

率直に言って期待していた以上に楽しめた。よくよく考えてみると、オーケストラの演奏会でよく取り上げられる古典的なレパートリーに比べれば、映画 音楽などの方が遥かに管楽器が活躍するのである。弦楽器奏者も少ないので(例えば第1ヴァイオリンは8人だったので通常編成の半分?)、それぞれの管楽器 の音色を楽しむことができた。金管の強奏はかなり鳴らしていたのであるが、決してうるさくなく包み込むようなやわらかい響きだったのはイギリスならではの 鳴らし方だったのかな?木管は3管、金管はそれぞれトップにアシをつけていたようだ。木管はアルト・フルートやコントラ・バスーンがかなり活躍し、木管だ けのアンサンブルの部分でも充実した響きがあった。

吹奏楽的にはウォルトンの戴冠式行進曲《王冠》や、RVWの行進曲《海の歌》を聴けたのが収穫。このあたりの曲や《威風堂々第1番》などはもっと厳かに演奏されるのかと思ったら、行進曲っぽい拍子感を大事にし、あっさりとしたフレーズの歌わせ方だった。

あと、日本(というか浜松かな?)では、こういうセミ・クラシック的なコンサートに対して聴衆がどう振舞えばいいのか戸惑いがあるように思える。コ ンサートの後半では演奏者もリラックスしてきて(トロンボーン奏者は小さなユニオン・ジャックを振りながらスライドを動かして演奏していたし(笑))手拍 子なんかも自然に起こってきたのであるが、それまでは「一緒に演奏を楽しむべきか」「神妙に演奏を聞くべきか」という葛藤に多少居心地の悪さを感じた。日 本人の司会者を立てるだけで、このへんはかなり楽しいステージになると思うのだが。

5年くらい前にロンドンでロンドン交響楽団のニュー・イヤー・コンサートを聞いたことがあるのだが、指揮者はいろいろなおしゃべりをするし、子供は指揮台にあがるし、聴衆は歌を歌わせられるしで、演奏者と聴衆が一体になっていたということを思い出した。

伊藤康英さん三昧

会社を休んで(^_^;)伊藤康英さん漬けの一日。

まずは午後から行われたレクチャーコンサート。平日昼間ということでなかなかシビアな観客数であったが(^_^;)、その分ざっくばらんな話が聞けた。伊藤作品からは《抒情的「祭」ファンタジー》《歌》《木星のファンタジー》《琉球幻想曲》などを披露。《木星のファンタジー》のコード進行が V6 の「Take Me Higher」から取られたという話は意外だった。ご子息が「ウルトラマン・ティガ」が好きでよく見ていたそうで(笑)。そうそう、伊藤さんのレクチャーコンサートではお馴染みになったモーツァルト風《大きな栗の木の下で》は、ついに楽譜まで作られてしまった。

夜は航空自衛隊中部音楽隊の定期演奏会。第25回定期演奏会を記念して伊藤さんに委嘱された作品が初演される。《コラール幻想曲》。グレインジャーも吹奏楽編曲しているバッハのコラール《おお汝、その罪深きを悔い改めよ》を下敷きにした作品である。

この曲を最後にしばらく吹奏楽曲を書くのを止めるそうで、高校時代の思い出でもあるこのバッハのコラールを使おうと思ったそうである。吹奏楽のための、いわば区切りの作品でこのコラールを引用するあたり、「汝」とは誰なのか?「罪」とは何なのか?を詮索するとなかなか楽しい(笑)。まあ、私の詮索はそんなにうがった見方ではないと思っているのだが … また後日うかがったのであるが、伊藤さんが大学時代に作曲したオラトリオ《第七の封印》も引用されているとのこと。こちらは聴いたことがないのでどこでどういう風に引用されているのかわからなかったが …..

内容は題名が示すようにバッハのコラールがほとんどそのままの形で引用され、それが自由に変奏されるような形式。突出した派手なクライマックスがないかわりに、(伊藤さんもおっしゃっていたように)緊張感のある音楽がずっと持続されていく。最終部では再びコラールが演奏されるが、これもバッハの音楽に対して手は加えられていないという。朗々と演奏されるコラールを聞いているうちに、伊藤さんが母校のために書いた《ジュビリー・シンフォニー》の第2楽章のタイトルである “Remembrance – Farewell” という言葉を思い出した。「回想 – 別離」。吹奏楽に対する伊藤さんの惜別の辞のように思えてならない。コラールが盛り上がったあと、金管楽器が次々とミュートをつけ、全合奏の ppp で曲を閉じるのが効果的。何ともいえない余韻を残す。

惜しむらくは、指揮者がおそらくこの作品を完全に消化していなかったと思われること。全曲の構成を考えると、もっと感動的に仕上げる余地を残していたと思う。(途中変拍子が続く部分はあるし、最後はかなり遅いテンポなので振るのは難しいそうだけどね …..)

その他の曲は樽屋雅徳《絵のない絵本》、セルジュ・ランセン《マンハッタン交響曲》、ビゼー(淀彰編曲)の《カルメン》組曲。しかし、毎回思うけど、このバンドは渋いプログラムだね(笑)。最初から最後までソロ吹きっぱなし、ハイトーン吹きっぱなしのトランペットのトップの方、ブラヴォー!

*****

ということで街へ出たついでに。

山下達郎 LP-BOX [12 inch Analog]

以前の日記にも書いた山下達郎の再発アルバムのアナログボックス。まずは「ぎりぎりで予約したので初回入荷できずに完売」という連絡が入った。他店で見つけたものの、この時は思いとどまって購入せず。「ま、いいか。」ということでこのために確保していた予算を別に使ってしまった。その後「入荷したのですが、どうされますか?」という連絡。以下の件でショップにご迷惑をかけてしまったのでさすがにキャンセルするわけにはいかんというわけで購入した次第。

やっぱり、CDと違ってアナログ盤には文字通りのボリューム感と「買った!」という充実感がある。おそらくCDとは異なる未収録曲が収録されたボーナスディスク以外は針を通さないと思うのだが(^_^;)。

テルミン コレクターズBOX [DVD]

すみません。コレクターズボックスが出ることを知りませんでした(_0_)。通常盤を予約しておきながら、再度コレクターズボックスを注文するというわがままなことをしてしまいました(_0_)。ごめんなさい、Mさん。

映画「テルミン」の DVD と、テルミン奏者といえばこの方たち、元女王クララ・ロックモアと現役女王リディア・カヴィナの演奏する映像を収めた DVD 「テルミン演奏のすべて」と、クララ・ロックモアの演奏を収めた CD の3枚組。かれこれ10年近く前、冨田勲さんの講演会を聴きに行った時に、若かりしクララ・ロックモアの映像を見たのがテルミンとの出会いだったと思うのだが、残念ながらこの映像は含まれていないようだ。(映画本編には使われているのかな?)

COMICA

「LIFE」の時にもやっていたけど、これはスケッチ的な位置付けなんだろうな。秋には「正真正銘の」オリジナル・ソロアルバムがリリースされるというし。(じゃあ、これは「正真正銘」ではないのか(笑)?)内容を希釈する方向でのバブリーなマーケティングに対して、まず抵抗を感じる。

全体に散漫な印象で、これで3000円はちょっとな … というのが正直な感想。ジャンルとしてはアンビエントといえるのだろうけど、ジャケットワークなども含めて何をやりたいのかよくわからない。

ナクソスの日本人作品集を聞いていたので《朱鷺に寄せる哀歌》がちょっと頭をよぎりました(笑)。

伊藤康英・藤井亜紀ピアノ連弾コンサート

2000年4月29日(土) 19:00 ユーフォニアム・ロッジ(長野県・飯綱高原)

バンドジャーナルに告知があったのでご存知の方も多いだろう。 4月28日から30日にかけて、飯綱高原のユーフォニアム・ロッジ(かのユーフォニアム奏者三浦徹さんの別荘である)で「マエストロ・フェネルのコンダクターズ・クリニック」というセミナーが開催された。 このコンサートは、そのプログラムの中で行われたもので、4月28日の夜、参加者/主催者合わせて30人ほどの聴衆の前で、きわめてアットホームな雰囲気で行われた。 もちろん、その聴衆の中にはマエストロ・フェネルもいらっしゃった。

伊藤康英/《ケニアン・ファンタジー》よりスピリチュアル
グスタフ・ホルスト(伊藤康英)/《吹奏楽のための組曲第一番》(ピアノ連弾版)

今回のセミナーのために康英さんが編曲したもの。康英さん自身も、なかなかうまく出来たと気に入っておられた。演奏後はマエストロから「ブラヴォー」の声も。

カール=マリア・フォン・ウェーバー/ピアノ連弾曲集より

  • 「八つの小品」作品60 第1曲 Moderato
  • 「六つの小品」作品10 第2曲 Andantino con moto
  • 「八つの小品」作品60 第7曲 Marcia

このコンサートの中で康英さんは「ピアノによる吹奏楽コンサート」をやってみたいとおっしゃっていた。康英さんが編曲したホルストの《第一組曲》のピアノ連弾版もそうだし、このコンサートで披露されなかったが《ディオニソスの祭》(シュミット)や《リンカンシャーの花束》(グレインジャー)なども作曲者自身によるピアノ連弾編曲がある。

そこで、このウェーバーのピアノ連弾曲集である。ここで演奏された3曲は、ヒンデミットの《ウェーバーの主題による交響的変容》のそれぞれ第1・第3・第4楽章のもとになった曲である。康英さん曰く「これを聞くとヒンデミットがいかに何もしなかったかわかる」ということである。確かに和音や構成に若干の違いがあるものの、これらの曲をそのまま管弦楽に編曲したと考えていい。

伊藤康英/抒情的「祭」ファンタジー

もともと吹奏楽曲として作曲された抒情的「祭」であるが、作曲者自身の編曲によるピアノ連弾版も存在する。そのピアノ連弾版からピアノ独奏版を作成しようとしたところ、新しい曲想が沸いていて別の曲として再構成したのがこの曲である。抒情的「祭」の作曲から10年以上経過して、ある程度客観的に向き合えるようになったからかも知れない、と康英さんはおっしゃっていた。

「津軽じょんがら節」から始まり、「津軽ホーハイ節」から「ねぶた」を経て再び「じょんがら」に戻って曲を閉じるという吹奏楽版の形式は踏襲しているものの、即興的なニュアンスが強くなっている。「じょんがら」における力強いシンコペーションのリズム感や、キース・ジャレットあたりを彷彿させる「ホーハイ節」の変奏などは、まさにジャズのアドリブに近い雰囲気がある。近年、康英さんはガーシュインの《ラプソディー・イン・ブルー》について研究を重ね、オリジナル編成に基づく編曲を完成させた。上記の即興的な部分には、この成果が反映されているのであろう。

伊藤康英/古典組曲(ピアノ連弾版)

  • 前奏曲
  • タンゴ風アルマンド
  • ハヴァネラ風ガヴォット
  • サパテアード風ジーグ

もともとは4本のユーフォニアムとアコーディオンのために作曲されたもの。各楽章のタイトルからも分かるとおり、古典的な組曲の形態を取りながら比較的新しい舞曲のスタイルを取り入れた、一種のパロディ的な面白さがある。

アンコール

伊藤康英/琉球幻想曲(ピアノ連弾版)

「吹奏楽版」「吹奏楽とピアノ版」「ピアノ独奏版」と聞いたことはあったが、ピアノ連弾版は初めて聞いたような気がする。やはり、ピアノ独奏版に比べるとダイナミクスの幅が大きくなり表現力が大きくなる。もともとは2台のピアノの8手連弾のために書かれたものなので、これにピアノ1台と演奏者2人が加わるわけである。ううん、何か凄そうだ。

伊藤康英/たんじょうびおめでとう

アンコールの最後は康英さんが歌を披露。数多い康英さんの歌曲の中で唯一ご自身の詩に曲をつけた作品で、二人目のご子息の誕生を祝って作られた曲である。シンプルな曲であるがメロディからも詩からも優しさが感じられる作品で、個人的にはとても好きな作品である。

第12回全日本高等学校選抜吹奏楽大会

2000年3月26日(日) 10:00 アクトシティ浜松大ホール

寝坊とか、ランチタイムとかで全ての団体を聞くことができませんでした(_0_)。正直言って、曲目を見た時は変わり映えのしないレパートリーであまり期待していなかったのですが、演奏の「上手」「下手」に関係なく感動できるバンドが多かったです。(いやあ、やっぱり若いっていいですね(笑)。)

狭山ヶ丘高等学校(埼玉)

  • クロード・T・スミス/華麗なる舞曲
  • マイ・フェイバリット・シングス(私のお気に入り)

まとまりのある演奏だったけど、反面、もっと羽目を外してもらっても面白かったと思う。《華麗なる舞曲》をノーカットで演奏してもらったのはうれしかったけど、この曲を聞かせるにはもっと精度の高いアンサンブルが必要かな。ちゃんと「演奏を聞かせられるバンド」なんだから《マイ・フェイバリット・シングス》の踊りは要らなかったかも。

福井県立武生東高等学校(福井)

  • モーリス・ラヴェル(天野正道)/ラ・ヴァルス
  • That’s the Way of the World
  • That’s the Way (I like it)

《ラ・ヴァルス》も吹奏楽だと聞かせるのは大変な曲。ストレートな演奏なんだけど、もう少し艶めかしさがあった方がよかったかな。

ポップスでのステップのかっこよさは相変わらず。《That’s the Way (I like it)》でメロディを割り当てた楽器がホルン、ユーフォニアム、フリューゲルホルン、トロンボーン、バスーン、テナーサックスのユニゾン、そのあとのソロがフルートとバスクラリネットのユニゾンというアイデアにセンスを感じます。

福岡工業大学附属高等学校(福岡)

  • フランツ・フォン・スッペ(三戸知章)/「軽騎兵」序曲
  • ステファン・ブラ/ハイ・フライト
  • 合唱(曲名何だっけ?)
  • エル・クンバンチェロ
  • ムーン・リバー

まさに「高校選抜大会における傾向と対策」を完璧に遂行した構成。クラシックの編曲あり、トランペットをフィーチャーした曲あり、合唱あり、ビッグバンド風の演奏あり。MALTAの講評じゃないけど「もう少し下手でもいいのに」と感じるくらい完璧な演奏。それだけに堅苦しさというか息が詰まりそうな雰囲気もある。金管の鳴りは快感。トランペットのトップの女の子はブラヴォー!

北海道旭川商業高等学校(北海道)

  • グリエール(林紀人)/バレエ音楽「青銅の騎士」より
  • バーバー(カルヴィン・カスター)/アニュス・デイ(弦楽のためのアダージョ)
  • マイ・フェイバリット・シングス
  • エル・クンバンチェロ

下手に踊りを入れなくても音楽だけでエンターテインメントを感じさせてくれた演奏。《アニュス・デイ》の合唱の音程が終始不安定だったのが残念(特に男声)。マイ・フェイバリット・シングスは基本的にサックス四重奏+コントラバス+ドラムという編成。サックス四重奏で始まったところにコントラバスを持って行って演奏に加わるという演出がかっこよかった。《エル・クンバンチェロ》は真ん中にマレット・パーカッション(シロフォン・ヴィブラフォン・マリンバ)による《ティコ・ティコ》をフィーチャーした構成。何をするのかと思ったら、途中から目隠しをして《ティコ・ティコ》を演奏。「見せる」という意味では面白い演出でした。《アニュス・デイ》がもうちょっとよければ、(私が聞いた中では)文句なくナンバーワンでした。

淀川工業高等学校(大阪)

  • 行進曲「立派な青年」
  • 幻想曲「シルクロード」
  • ヒットパレード2000

「偉大なるワンパターン」なんですが(笑)、毎年入れ替わる生徒を相手に同じことを続けていくという難しさ、大変さもあるのではないでしょうか。ヒットパレードのラストは、おなじみ「We are the World」。知っている人は知っていると思いますが、一階席のお客さんは生徒が配った蛍光ミニスティック(正式名称は何ていうんでしょう、あれ?)を曲に合わせて振ります。これに合わせるようにバルコニー席のお客さんが携帯電話の照明をつけて振っているのを見てちょっと感動。

金光学園中学高等学校(岡山)

  • 音楽物語「窓ぎわのトットちゃん」より

このバンドの演奏は初めて聞きましたが、素直に感動しました。コンクールに出ていないそうですが、ともするとコンクールバンドが陥ってしまう「おしつけがましいサウンド」でなく、聞き手を惹きつけることができるデリケートな表現が感じられました。バンドの演奏もさることながら、ストーリーを進めるナレーションの女の子も素晴らしかったです。

日・米親善吹奏楽演奏会

1999年7月15日(木) 18:30 浜松市教育文化会館(はまホール)

The Honor Band of America の来日公演である。

日本各地(当日の司会者によれば柏、清水、浜松、京都、大阪など)を回り、当地の高校の吹奏楽部と親善演奏会を行っているとのことである。少なくとも浜松では一般的な告知はほとんど行われておらず、私も出演者の御父兄から教えていただいて聞きに行った次第である。

この「The Honor Band of America」の前に、ホストバンドの演奏ということで、浜松市中学校選抜バンド、浜松商業高等学校吹奏楽部、浜松工業高等学校吹奏楽部、浜松江ノ島高等学校吹奏楽部の演奏が披露された。

The Honor Band of America(全米高校選抜バンド)

  • ジャック・スタンプ/ガヴォーナ・ファンファーレ
  • レナード・バーンスタイン(フランク・ベンクリシュト編曲)/交響曲第1番《エレミア》より「冒涜」
  • パーシー・グレインジャー/コロニアル・ソング
  • フランク・ティケリ/ヴェスヴィオス
  • マイケル・ドアティ/ナイアガラの滝

楽器編成は以下の通り。いわゆる「ウィンド・アンサンブル」的な編成である。

木管: ピッコロ/フルート5/オーボエ2/イングリッシュ・ホルン/バスーン2/クラリネット10(Eb クラリネットは持ち替え)/バス・クラリネット/コントラアルト・クラリネット/コントラバス・クラリネット/サックス(アルト3/テナー1/バリトン1)

金管: トランペット7/ホルン4/トロンボーン4/ユーフォニアム2/テューバ3

打楽器: 8(ピアノ含む)

やはり、こういうウィンド・アンサンブル的なサウンドは日本のバンドでは聞くことができない。4年前に浜松で行われた世界吹奏楽大会で聞いた、イギリスの北王立音楽大学の40人足らずのメンバーでの演奏で目から鱗が落ちてしまったのだが、今回もその時に似た印象を持った。

グレインジャーの《コロニアル・ソング》は、緊張感あるサウンドが悪い方に出てしまったように思える。この曲に関しては、弱音での緊張感に違和感を感じてしまった。グレインジャーの作品はもう少し柔らかい音質で聞きたい。

ティケリの《ヴェスヴィオス》は今回のツアーのために書かれた作品。作曲者自身による指揮で聞くことができたのはうれしいハプニングであった。基本的にはティケリの代表作の一つである《ポストカード》と共通する作風。どこで読んだのか失念してしまったのであるが、ポンペイを廃虚にしてしまったヴェスヴィオス火山を描写した曲らしい。ほぼ全編的に変拍子が用いられるリズミカルな曲であるが、その中でアルトサックスが抒情的なメロディを奏でる。このリズム感と叙情性が共存して曲が進行していくところがこの曲の魅力であろう。中間部ではグレゴリオ聖歌の「怒りの日(Dies Irae)」のモチーフ(ベルリオーズの《幻想交響曲》の第5楽章でテューバが奏するメロディと言えばおわかりになるだろうか)が用いられている。一聴しただけの感想であるが、技術的には《ポストカード》よりやや簡単、内容的には昨年アメリカで大ブレークした(らしい)《ブルー・シェイズ》よりやや密度が高いのではないかと感じた。さすが作曲者、とても軽やかに変拍子を振っていたのが印象に残っている。

時間の都合で、ここで演奏される予定だった《アメイジング・グレース》と《パリのアメリカ人》が割愛されてしまった。結果的に、《コロニアル・ソング》を除いて現代的な作風ばかりが続く、少々油っこいプログラムになってしまった(^_^;)。

ドアティの《ナイアガラの滝》は、ミシガン大学による委嘱作品。今回のツアーの指揮者であるH・ロバート・レイノルズが指導している大学である。ドアティはオーケストラの管楽器編成による、いわゆる管楽合奏作品である《デジ》と《ビザロ》、金管楽器と打楽器による《モータウン・メタル》などがあるが、通常の吹奏楽編成で書いた作品はこの《ナイアガラの滝》が初めてとなる。(ちなみに、この4作品はすべてCDで入手可能。)

私の友人はこのドアティを「ジミ・ヘンドリックスとカレル・フサを足して2で割ったような作曲家」と評したが、非常に的確な比喩だと思う。ジャズやポピュラー音楽のイディオムを借用しながらも、そこに現代的な和声を施して独自の音楽を形成している。冒頭に提示されるジャズ風の旋律が執拗に繰り返されながら発展していく形式の曲で、作風としては非常にわかりやすいのではないか。

アンコール

  • ジョン・フィリップ・スーザ/星条旗よ永遠なれ

 

第9回全日本高等学校選抜吹奏楽大会

1997年3月30日(日) 10:00 アクトシティ浜松 大ホール

恒例になった感のある吹奏楽の「選抜大会」。今年は以下の16校が出場しました(出演順)。

  • 静岡県立静岡商業高等学校 (静岡県)
  • 北海道旭川商業高等学校 (北海道)
  • 土佐女子高等学校 (高知県)
  • 玉川学園高等部 (東京都)
  • 福岡県立嘉穂高等学校 (福岡県)
  • 関東第一高等学校 (東京都)
  • 福島県立磐城女子高等学校 (福島県)
  • 島根県立出雲高等学校 (島根県)
  • 東海大学第一高等学校 (静岡県)
  • 福岡県立鞍手高等学校 (福岡県)
  • 聖カタリナ学園光ヶ丘女子高等学校 (愛知県)
  • 柏市立柏高等学校 (千葉県)
  • 聖徳大学附属聖徳高等学校 (茨城県)
  • 福井県立武生東高等学校 (福井県)
  • 秋田県立新屋高等学校 (秋田県)
  • 大阪府立淀川工業高等学校 (大阪府)

以下に印象に残ったバンドを。

旭川商業高等学校

管楽器の編成を小さくして合唱を加えたバーバーの「弦楽のためのアダージョ」を取り上げました。(バーバーは「弦楽のためのアダージョ」を無伴奏合唱に編曲した「アニュス・デイ」という作品を残しています。)ちょっと合唱の音程が不安定だったのが残念でしたが意欲的な試みとして印象に残りました。

玉川学園高等部

かつて全国大会で五年連続金賞という輝かしい実績を残している玉川学園高等部。演出に凝る団体が多い中で「演奏そのもの」を聞かせる意欲が伝わってきました。

福岡県立嘉穂高等学校

グラズノフの「ライモンダ」は少ない人数(プログラムによると40人)にも関わらずスケールの大きい演奏でした。審査員の一人だったデ・メエイ氏も「ウィンドアンサンブルの響き」ということで高く評価していました。この日に操業を停止した地元福岡の三池炭鉱に寄せた「炭鉱節」では指揮者の竹森先生が美声(?)を披露。

東海大学第一高等学校

ステージは木管五重奏からスタート。昨年のコンクールの自由曲「インフェルノ」や十八番の「カッポレ」など手慣れたレパートリーを披露しました。この団体はかなり個性的な演奏/解釈が気になるときがあるのですが、今回は自然体のリラックスした雰囲気でよかったと思います。
今大会のグランプリは納得できるものです。

福井県立武生東高等学校

一躍有名になった「日本一のファンキーバンド」。武生市が委嘱した小長谷宗一の「紫式部幻想」のあとにお待ちかねのポップスステージ。
最初はちょっと植田先生が突っ走りすぎて生徒がついていけないようなところもありましたが、やはりポップスにおいては揺るがない個性を持っていると思います。