日別アーカイブ: 2012 年 4 月 10 日

ケーゲルのカルミナ・ブラーナ

エアフルトでカフェの食事待ちを利用して買ったCDを聞いてみた。

ヘルベルト・ケーゲルが指揮するオルフの《カルミナ・ブラーナ》。

[tmkm-amazon]B000069JN5[/tmkm-amazon]

上記の amazon のリンクは Berlin Classics から出ているもののようだが、私が買ったのは東ドイツにあったレーベル ETERNA の録音を、ドイツの「Der Spiegel」という出版社(ちなみに本社はハンブルクにあります)が復刻したものらしい。ケーゲルは私の知る限り1959年と1974年に《カルミナ》を録音しているが、これは1959年の録音である。概ね、その古さを感じさせない瑞々しい録音である。

なんとなくケーゲルは「食わず嫌い」なところがあった。コラムなどで「凄絶」とか「緊迫」みたいな評が多かったからかも知れない。ただ、大学の先輩がケーゲルの新ウィーン楽派の作品集を絶賛していたし、確かにそこで聞かせてもらったヴェーベルンの《パッサカリア》は素晴らしかったという記憶がある。また、「究極の暗さ」ということで評価の高い(?)《アルビノーニのアダージョ》も怖いもの見たさ(聞きたさ)で聞いてみたいと思っているのだが、いまだに果たせていない。

で、この《カルミナ》であるが、音楽の作りは端正と言っていい。スプラッタ映画を見に行って意外にあっさりしていたので拍子抜けしたような感覚である。ただ、全般にバランスが高音に寄っているので、特に女声合唱や弦楽器の高音域がヒステリックに聞こえるのかも知れない。

あと、これは断言できないし、現在のレコーディングでも行われていて私が気付かないだけかも知れないが、曲の途中でかなり楽器間あるいは伴奏と合唱間のバランスを操作しているような気がする。まあ、そんなに不自然ではないので気をつけて聞かなければ気にはならないのであるが、今まで埋もれていた楽器が突然聞こえてきたりとか、音像全体のボリューム感が変わったりしたりする。

独唱がいまいち不安定なのが気になるが、合唱はうまい。基本的にはラテン語で歌っていると思うのだが、ドイツ語訛りが結構きつい。これも別に気にはならないが … オケもよくはないがよくがんばっている、という印象。

《カルミナ・ブラーナ》というとオイゲン・ヨッフム/ベルリン・ドイツ・オペラが名盤として知られているが、ちょっと優等生過ぎるかなという気もする。このケーゲルの演奏の少しデフォルメされた抑揚(デュナーミクやアゴーギク)が、私がこの曲に求めるある種の「破天荒さ」に合っているように思える。何度も繰り返されるオスティナートがだんだん強くなっていったり早くなっていったりすることには必然性があるわけで、ケーゲルの演奏を聴いていると「ううん、そうだよな、そうだよな」と思う瞬間が少なくない。最後のクライマックスとも言える “Ave formosissima” はかなり感動してしまった。