残りの3夜

amazon.de に注文した《ニーベルンクの指環》の残り三作《ラインの黄金》《ヴァルキューレ》《ジークフリート》が到着しました。

息子の質問(というか、ほとんど茶々)に答えながら部分的に見ているのですが、私はかなり楽しめました。大型のディスプレイを使った状況描写はオーソドックスなオペラ(というべきか楽劇というべきか)としては邪道なのかも知れませんが、ワーグナーが想定した情景を舞台上で再現するためには、こういった技術を持ってくることは否定できないのではないかと思います。私は歌手の出来やオーケストラの出来よりも楽劇としてのストーリーを楽しみたいので、それらがある程度の水準に達していれば細かいことはあまり気にせずに舞台の上で繰り広げられている情景が面白ければ、とりあえずはそれで満足できます。そういった意味で、(誤解を恐れずに言えば)テーマパークやハリウッドのブロックバスター映画的なスペクタクルさを持つこのステージ演出については肯定的です。

例えば《ラインの黄金》の巨人がほとんどロボットのようないでたちであったりとか、ギービヒ家の人たちの衣装にあからさまに資本主義を象徴する円マークとかユーロマークなどが貼り付けられていたりとか、細かい部分でのギミックはありますが、全般的にはワーグナーが描こうとした世界に忠実なのではないかと思います。最終部分、CGによって描写されるめくるめく炎の中で神々の世界が終焉するさま(これは《ラインの黄金》で組み体操のように作られた人間によるヴァルハラがばらばらになることによって表現されています)、その下で再びライン川の3人の乙女のもとに指環が返ってくるさまはかなり見応えがありました。

個人的にはブーレーズ/バイロイト→サヴァリッシュ/バイエルン国立歌劇場→レヴァイン/メトロポリタン歌劇場を経て、やっと(ある程度)満足する《指環》に出会えたかな、と思っています。

2 thoughts on “残りの3夜

  1. おっさん

     「天竜川下り 船転覆」というのが、浜松市中区での静岡新聞朝刊のヨコ見出しです。

     ローレライは人を川に引き込むということですが、この事故は盆送りの日程であり、軽々に霊を扱うわけではないのですが、地元の伝説(らしい、勤務先の人の話)で「八月十七日はおしょろさま(精霊様)が帰る日だから川に近づいたらいかん」というとおりになってしまったということでしょうか。
     
     いまだかつてない事故だそうです。

     ブリュンヒルデの自己犠牲のあとライン川は氾濫して指輪の呪いを消し去ったことを思い出しました、天竜川のかつての怖さがクローズアップされると思います。

  2. musicabella 投稿作成者

    おっさんさま:

    ニュースで見ました。

    実は天竜川下りを実際に見たことはないのですが、正直、あのへんの様子からは死亡事故が起こるほど危険な場所だとは思っていませんでした。安全対策が徹底されていなかったという報道も出てきているみたいですが、自然を甘く見てはいけませんね。

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