以前から読みたいと思っていた平野啓一郎の「決壊」を読む。
案の定、帰省に持って帰った上巻はすぐに読み終えてしまい、自宅に下巻が待っているにもかかわらず、帰省先で下巻を買ってしまった。
噂には聞いていたが、本当に救いがない。引きこもり、無差別殺人、闇サイトなど、現代社会が抱える「闇」の部分を凝縮したような状況設定である。そのような状況の中で、被害者、加害者、それらを取り巻く人たちが「壊れていく」さまが描かれている。
読んでいて暗澹たる気持ちにある。しかし、作者が素材として選んだこういった事象はすでに実社会を生きる私たちのすぐ隣にあるのである。そういう社会でも、我々は生きていかなければいけないのである。登場人物の台詞を通して、作者はその意味を執拗に読者に問いかけてくる。重い、しかし考えさせられる作品である。読み終わった直後は、もう決して読み直すことはないだろうと思ったのだが、やはりもう一度読まなければいけないのかなという気になる。
余談。ここまで同時代性が強い描写(2ちゃんねるとか、グーグルとか、お台場のフジテレビとか)が多い作品は、例えば10年後や20年後にどういう読まれ方をするのだろう?