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日・米親善吹奏楽演奏会

1999年7月15日(木) 18:30 浜松市教育文化会館(はまホール)

The Honor Band of America の来日公演である。

日本各地(当日の司会者によれば柏、清水、浜松、京都、大阪など)を回り、当地の高校の吹奏楽部と親善演奏会を行っているとのことである。少なくとも浜松では一般的な告知はほとんど行われておらず、私も出演者の御父兄から教えていただいて聞きに行った次第である。

この「The Honor Band of America」の前に、ホストバンドの演奏ということで、浜松市中学校選抜バンド、浜松商業高等学校吹奏楽部、浜松工業高等学校吹奏楽部、浜松江ノ島高等学校吹奏楽部の演奏が披露された。

The Honor Band of America(全米高校選抜バンド)

  • ジャック・スタンプ/ガヴォーナ・ファンファーレ
  • レナード・バーンスタイン(フランク・ベンクリシュト編曲)/交響曲第1番《エレミア》より「冒涜」
  • パーシー・グレインジャー/コロニアル・ソング
  • フランク・ティケリ/ヴェスヴィオス
  • マイケル・ドアティ/ナイアガラの滝

楽器編成は以下の通り。いわゆる「ウィンド・アンサンブル」的な編成である。

木管: ピッコロ/フルート5/オーボエ2/イングリッシュ・ホルン/バスーン2/クラリネット10(Eb クラリネットは持ち替え)/バス・クラリネット/コントラアルト・クラリネット/コントラバス・クラリネット/サックス(アルト3/テナー1/バリトン1)

金管: トランペット7/ホルン4/トロンボーン4/ユーフォニアム2/テューバ3

打楽器: 8(ピアノ含む)

やはり、こういうウィンド・アンサンブル的なサウンドは日本のバンドでは聞くことができない。4年前に浜松で行われた世界吹奏楽大会で聞いた、イギリスの北王立音楽大学の40人足らずのメンバーでの演奏で目から鱗が落ちてしまったのだが、今回もその時に似た印象を持った。

グレインジャーの《コロニアル・ソング》は、緊張感あるサウンドが悪い方に出てしまったように思える。この曲に関しては、弱音での緊張感に違和感を感じてしまった。グレインジャーの作品はもう少し柔らかい音質で聞きたい。

ティケリの《ヴェスヴィオス》は今回のツアーのために書かれた作品。作曲者自身による指揮で聞くことができたのはうれしいハプニングであった。基本的にはティケリの代表作の一つである《ポストカード》と共通する作風。どこで読んだのか失念してしまったのであるが、ポンペイを廃虚にしてしまったヴェスヴィオス火山を描写した曲らしい。ほぼ全編的に変拍子が用いられるリズミカルな曲であるが、その中でアルトサックスが抒情的なメロディを奏でる。このリズム感と叙情性が共存して曲が進行していくところがこの曲の魅力であろう。中間部ではグレゴリオ聖歌の「怒りの日(Dies Irae)」のモチーフ(ベルリオーズの《幻想交響曲》の第5楽章でテューバが奏するメロディと言えばおわかりになるだろうか)が用いられている。一聴しただけの感想であるが、技術的には《ポストカード》よりやや簡単、内容的には昨年アメリカで大ブレークした(らしい)《ブルー・シェイズ》よりやや密度が高いのではないかと感じた。さすが作曲者、とても軽やかに変拍子を振っていたのが印象に残っている。

時間の都合で、ここで演奏される予定だった《アメイジング・グレース》と《パリのアメリカ人》が割愛されてしまった。結果的に、《コロニアル・ソング》を除いて現代的な作風ばかりが続く、少々油っこいプログラムになってしまった(^_^;)。

ドアティの《ナイアガラの滝》は、ミシガン大学による委嘱作品。今回のツアーの指揮者であるH・ロバート・レイノルズが指導している大学である。ドアティはオーケストラの管楽器編成による、いわゆる管楽合奏作品である《デジ》と《ビザロ》、金管楽器と打楽器による《モータウン・メタル》などがあるが、通常の吹奏楽編成で書いた作品はこの《ナイアガラの滝》が初めてとなる。(ちなみに、この4作品はすべてCDで入手可能。)

私の友人はこのドアティを「ジミ・ヘンドリックスとカレル・フサを足して2で割ったような作曲家」と評したが、非常に的確な比喩だと思う。ジャズやポピュラー音楽のイディオムを借用しながらも、そこに現代的な和声を施して独自の音楽を形成している。冒頭に提示されるジャズ風の旋律が執拗に繰り返されながら発展していく形式の曲で、作風としては非常にわかりやすいのではないか。

アンコール

  • ジョン・フィリップ・スーザ/星条旗よ永遠なれ