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演奏会その24: ハンブルク・フィル(第4回)

雨は夜更け過ぎに雪へと変わりました。

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4. Philharmonisches Konzert
Montag 14. Dezember 2009, 20:00 Uhr

Dirigent: Rafael Frühbeck de Burgos

Isaac Albeniz – Suite espanola (Orchesterfassung: Rafael Frühbeck de Burgos)
Igor Strawinsky – Suite aus “Der Feuervogel” (Fassung 1919)
Ottorino Respighi – Fontane di Roma
Ottorino Respighi – Pini di Roma

なんか、吹奏楽コンクールみたいなプログラムです。当初は予定になかったレスピーギの《ローマの噴水》も追加されたようなので、なおさらです。

指揮者のラファエル・フリューベック・デ・ブルゴスは1933年生まれとのことなので今年で76歳なのですが、ものすごくはつらつとした指揮をします。自身の編曲でもあったアルベニスの《スペイン組曲》の鋭いリズム感はいいですね。全体的な傾向として、速めのテンポで進み、聞かせどころでググッとテンポを落ち着ける、という作り方がどの曲でもみられました。あまり細かいことは気にせずにどんどんオケを引っ張っていき、肝心なところはしっかりコントロールする、という感じの指揮です。《ローマの松》以外はオーケストレーションも曲調も軽やかな感じなので、ぐんぐん前にいく感じは全然違和感ありませんでした。プログラム自体が多少短めのショーピース的な作品ばかりを集めたものだったので「こみ上げてくる感動」という感じではなかったのですが、どの曲も聞いていて楽しめる演奏でした。全体的な満足感は非常に高かったです。

《ローマの松》は、やはり燃えますね。ブラヴォーもたくさん出ました。ちなみに《カタコンブ》のトランペット・ソロはステージ上の奏者が舞台裏に移動して演奏していました。《アッピア》のバンダはステージの下手(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリンの後ろあたり)に座って演奏していました。一応、多少はオケ本体の奏者との掛け合いがステレオ的に聞こえていました。そういえば、《ローマの噴水》が終わったあとで指揮者は退場せず、そのまま拍手が終わったら間髪入れず、という感じで《ローマの松》を振り始めました。これにはちょっとびっくり。

演奏会その23: 小曽根真+NDR

Samstag, 12. Dezember 2009
20.00 Kampnagel K6

Dirigent John Axelrod
Makoto Ozone, Klavier

A HIGHWAY TO RHYTHM

Kurt Weill Suite aus de “Dreigroscheoper” – Ouvertüre, Moritat, Liebeslied, Ballade vom angenehmen Leben, Pollys Lied, Kanonen-Song
Leonard Bernstein Prelude, Fugue and Riffs
Michael Daugherty Dead Elvis
George Gershwin Rhapsody in Blue
(encore von Makoto Ozone) Three minutes waltz

(pause)

JAZZ mit Makoto Ozone und der NDR Bigband (Leitung: Jörg Achim Keller)

まさか、ハンブルクで小曽根真さんのピアノが聞けるのは思ってもいませんでした。ドイツに来た直後にチケットを買って楽しみにしていた演奏会です。てっきり Rolf-Liebermann-Studio でやると思っていたのですが、当日チケットを確認したら Kampnagel とのこと。ここはどの鉃道路線からも遠いので車で行くことにしました。以前来た時はなかなか車が停められなくて大変だったのですが、実は会場併設の有料駐車場があることに気付きました。まあ、ここに入れた方が余計な気を使わなくてすみます。

1曲目はクルト・ヴァイルの《三文オペラ》からの抜粋。管楽アンサンブルのために書かれた《小さな三文音楽》とも少し曲目構成が違っています。ヴァイルが意図したことなのかも知れませんが、弦楽が入るといわゆる「ムード音楽」っぽくなって緩くなってしまいます。個人的には《小さな三文音楽》の切れ味が好きなので、この楽譜を演奏して欲しかったような気もします。

2曲目はバーンスタインの《プレリュード、フーガとリフ》。何かに取り憑かれたかのようなテンションの高いクラリネット・ソロが素晴らしかったです。いい演奏だったのですが、どうせならビッグバンド編成のこの作品はNDRビッグバンドのメンバーで演奏した方がよかったと思います。特に「リフ」のフレージングがビッグバンドではなく、クラシックのそれだったので。

3曲目はマイケル・ドアティの《デッド・エルヴィス》。ファゴット・ソロと、ヴァイオリン、Ebクラリネット、トランペット、打楽器、トロンボーン、コントラバスという編成です。ドアティの金管+打楽器アンサンブル作品《モータウン・メタル》と、(吹奏楽にも編曲されている)《メトロポリス・シンフォニー》の終楽章《レッド・ケープ・タンゴ》を足して2で割ったような曲調です。(またしても例の)「Dies Irae(怒りの日)」をモチーフに、疾走感のあるリズムや時おり交じるロッカバラードの中でエルヴィスに扮して登場したファゴット奏者がソロを取ります。コントラバスがコル・レーニョでランニングベースを弾くのが印象的でした(途中でへたって失速してしまいましたが …)。ファゴット奏者の演技が面白くてかなり盛り上がりました。オケのメンバーも大部分が暇なわけで、ステージの端で見ながら拍手喝采していました。

4曲目が小曽根さんのソロによるガーシュウィンの《ラプソディ・イン・ブルー》。これだけ前の曲で「持っていかれる」となかなか大変かなあ、と感じたのですが、やりたいことをやりつつもエゴイスティックにならずに指揮者や奏者や聴衆の反応を見ながら「ニヤリ」とさせるようなソロで引き込んでいきました。個人的には中間部への導入の持って行き方が印象的でした。「動」のあとの「静」、あのパートであれだけ息が詰まるような緊張感が出せるのはすごいです。

“This is three minutes waltz.” と言って弾き始めたアンコールは、ショパンの《子犬のワルツ》をモチーフにしたインプロヴィゼーション。(そういえばブログにショパンを録音したようなことが書かれていました。)

休憩をはさんだあとはビッグバンドによるステージ。ううん、あまりうまくないかも。PAのせいかも知れませんがバランスが悪いです。中盤で小曽根さんが出てきてピアノ・トリオ(ベースとドラムはNDRビッグバンドのメンバー)を3曲演奏しました。演奏前の司会者のトークで小曽根さんがジャズピアノを始めるきっかけとなったのはオスカー・ピーターソンのコンサートを見に行ったから、とあったので1曲目は《Dear Oscar》、2曲目はアントニオ・カルロス・ジョビンの曲だそうですが知らない曲でした。3曲目も聞いたことがあるので小曽根さんのオリジナルだったと思います(タイトル失念)。

「席、ここでいいんだっけ?」と聞かれたことをきっかけに隣りに座っている人と話をしました。日本食レストラン「あかり」の近くに住んでいるとのこと(笑)。ふだんライスハレにNDRを聞きに行っているんだけど、Kampnagel で聞くのは初めて、と言っていましたが、小曽根さんの演奏は本当に素晴らしかったと言っていました。

演奏会その22: フレットワーク

Di, 08.12.2009 | 20:00
Hamburg, Rolf-Liebermann-Studio

Fretwork
Solistin Clare Wilkinson, Mezzosopran

John Joubert „The Fellowship of the Stretched String“
Peter Sculthorpe „Djililie“
Elvis Costello „Put away forbidden playthings“
Henry Purcell Fantazia No. 8
Tan Dun „A Sinking Love“
Orlando Gough „Birds on Fire II“
Michael Nyman „If“
Henry Purcell Fantazy upon one note
Barry Guy „Buzz“
Stephen Wilkinson „The Garden“,  „At the Manger“
Henry Purcell „In Nomine“ in 6 parts
Gavin Bryars „In Nomine“ after Purcell
Duncan Druce „Three Poems of Henry Vaughn“

encore:

Benjamin Britten „O Waly, Waly“

北ドイツ放送(NDR)はいろいろなジャンルの演奏会を企画しています。お抱えオーケストラである北ドイツ放送交響楽団の演奏会はもちろん、ジャズ・バンド、合唱、室内楽、家族向け(つまりは子供も聞ける)演奏会などがあります。それらの中でも異色というか独自色を出しているのが、古楽を演奏する Das Alte Werk (古い作品という意味です)シリーズと、逆に新しい作品ばかりを演奏する das neue werk(新しい作品という意味です)シリーズです。先日聞きに行ったソフィア・グヴァイドゥリーナの個展も、実は後者に属する演奏会でした。

今日行ったのは、そのどちらにも属している演奏会です。今年はヘンリー・パーセルの生誕350周年だそうで、それにちなんだ演奏会なのですが、演奏曲目をみていただくとわかるように、マイケル・ナイマンあり、タン・ドゥンあり、ギャヴィン・ブライアーズあり、エルヴィス・コステロ(!)ありということで新旧入り混じった多彩さがあります。というか、パーセルの作品以外は20世紀~21世紀の作品ばかりだったのですが …演奏は教授の最新アルバム「out of noise」に参加し、その教授が主宰するcommmonsレーベルからアルバム「The Silken Tent」もリリースしたイギリスのヴィオール演奏グループのフレットワーク、ソリストはこの「The Silken Tent」でも共演しているメゾソプラノのクレア・ウィルキンソンというメンバーです。ヴィオールはヴァイオリンの兄弟というか従兄弟というか、の古楽器で、現在ではヴィオラ・ダ・ガンバがいちばん知名度があるのかな?大小さまざまな音域のヴィオールによるアンサンブルです。

チューニングがずれやすいのか、あるいは過度のヴィブラートを使わないのでヴァイオリン属の演奏に比べてピッチのずれが目立ちやすいのか、曲間でも頻繁にチューニングをしていました。ヴァイオリン属とは違っていちばん低音の楽器が基準音を出します。(関係ないけど、「リュート奏者は人生の半分をチューニングに費やし、残りの半分をピッチの狂った演奏に費やす」というジョークを思い出してしまいました。)

さて、作品ですが、近現代のものについては、この楽器属が活躍していた時代、つまり16世紀~18世紀の作風の換骨奪胎を意図したもの、それからあくまでも自分の作風をこの編成で表出しようと意図したもの、の2種類に大別されるように思いました。マイケル・ナイマンやタン・ドゥンの作品は明らかに後者に属する作品で、どこから聞いても彼らの作品に聞こえます。ナイマンの、四分音符による和声進行に朗々とした旋律がのるところとか、タン・ドゥンの平均律にとらわれない民族楽器風の扱いとか、お得意の叫び声(笑)とか。

気にいったのはピーター・スカルソープの《Djililie》(なんて読むんだ?《ジリリエ》?)とオーランド・ガフの《バーズ・オン・ファイアII》です。前者は「換骨奪胎」の部類に入る作品で、アルヴォ・ペルトの諸作品や吉松隆さんの《朱鷺によせる哀歌》のような静謐な響きが気に入りました。後者はそれとは対照的にビートの効いたリズミカルな音楽。ときおりブルーノートを使ったメロディも聞こえます。

あとはアンコールの《O Waly, Waly》。イギリスの古い民謡を編曲したものらしいです。想像できるように、とても親しみやすいメロディなのですが、繰り返されると全く違う和声がつくのが面白かったです。

他の作品はあまりピンときませんでした。ヴィオールのアンサンブルならではの響きがあまりいかされていないというか、この編成である必然性がないというか。これらの楽器が活躍した同時代の作品をもっと聞きたかったかな、という気がします。

演奏会その21: ハンブルク交響楽団(その3)

Sonntag, 06. Dezember 2009
4. Symphoniekonzert     19.00     Laeiszhalle, Großer Saal
Dirigent: Philippe Jordan

Der Eroberer

Bartók Divertimento für Streichorchester
Schubert 5. Symphonie B-Dur
Bartók Konzert für Orchester

Der Eroberer(征服者)と題されたハンブルク交響楽団の今シーズン第4回目の定期公演です。第1回目は行かなかったので私自身はこのオケを聞くのは3回目ということになります。

指揮者のフィリップ・ジョルダンは、スイス・ロマンド管弦楽団を率いたアルミン・ジョルダンの息子だそうで、まだ35歳ですが主にオペラで活躍しており、今年からパリ国立オペラの音楽監督に就任しているそうです。けっこう癖のある振り方をします。

指揮者がオケをコントロールできなかったのか、オケが指揮者についていけなかったのか、非常に不満の残る演奏会でした。全般的に残念だったのが弦の合奏能力で、ヴァイオリンの高音のピッチの不安定さとか、アレグロなどのテンポの速い部分での発音の「荒れ」のようなものがどの曲でも気になってしまいました。テイトが振ったハイドンではとてもクリアな響きが聞けたのですが。

もっとも緩徐楽章でのヴィオラやチェロを中心とした響きはときおり美しいものがあって、バルトークの《弦楽のためのディヴェルティメント》第2楽章とかシューベルトの交響曲第5番の第2楽章とかはよかったと思います。

バルトークの《管弦楽のための協奏曲》は、なんか曲が漫然と流れていっただけのような印象です。この曲に限った話ではありませんが、指揮者はある意図を持って演奏者をコントロールしながら、演奏者と聴衆をある方向へ導いていく必要がある、というのが私の持論なので、この曲における近視眼的な曲の作り方はどうにも受け入れ難いです。(余談ですが、指揮者(Conductor)は「共に(con)」「導く(ducere)」人という意味です。半導体(semi-conductor)やツアーコンダクター(tour conductor)の意味もこの語源から説明できますね。)

ただ、第4楽章「中断された間奏曲」のような、曲の展開の切り替わり自体が音楽の面白さになっている場合にはこのアプローチは有効のようで、楽しめました。

フィリップ・ジョルダンはオペラなどで「スコアの深い読み」が評価されているようですが、少なくとも今日の演奏会を聞く限りでは「本当かよ?」と言いたくなるような出来でした。まあ、最初に書いたように(曲との相性も含めて)指揮者の問題なのか、オケの問題なのか、はよくわかりませんが …

演奏会その20: RYUICHI SAKAMOTO PLAYING THE PIANO EUROPE 2009

はい、そういうわけで続きです。このコンサートのチケットを予約したのは7月上旬のことでした。ドイツに赴任して、とある方にヨーロッパツアーの日程を教えていただいて、一日有休を取れば何とか行ける日程を探して、でこの日のロンドンに決めたのでした。その時点で残りはあと5席。日本で行ったコンサートでは目の前に誰もいない最前列の席だったのですが、この日は後ろに誰もいない(苦笑)2階最後列の席になってしまいました。

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それでもこんな感じの席だったので、見にくいことは全然ありませんでした。ちなみに私の席の左側、つまり2階中央にはF.O.H.用のスペースがあらかじめ確保されています。これも含めて、空間をとてもぜいたくに使ったホールだと感じました。とにかく音響は素晴らしかったです。

  • glacier
  • hibari
  • still life
  • in the red
  • nostalgia
  • composition0919
  • A Flower Is Not A Flower
  • 水の中のバガテル
  • amore
  • tango
  • energy flow
  • High Heels
  • women without men
  • the last emperor
  • 美貌の青空
  • behind the mask
  • tibetan dance
  • thousand knives
  • Merry Christmas Mr. Lawrence

コンサートは日本と同じように、《glacier》から始まる「out of noise」からの作品→いわゆる「playing the piano」ソロ編→もう一台のピアノを使った「playing the piano」一人デュエット編という流れで進みます。ただ日本公演と違い、前半には「out of noise」からの曲、それもピアノ以外の楽器が含まれた曲が多く置かれていました。こちらでは「out of noise」は発売されたばかり(ただし「Playing the Piano」との限定カップリング)なので、やはりプロモーション的な意味合いもあるのでしょうか。ヴィオールや笙の音が鳴らされるそれら3曲《still life》《in the red》《nostalgia》はかなり印象的でした。いまさら気付きましたが《in the red》はメシアンの《世の終わりのための四重奏曲》を連想しますね。「天国的な長さ」に引き伸ばされたピアノの連打。

日本公演と比べると、アレンジが変わっている曲が多かったです。目立つものでは《Flower Is Not A Flower》の冒頭の和音とか、《千のナイフ》の低音パートとか。あと、時々ルバートが過剰に感じる部分がありました。特に「ソロ編」で非常にスタティックな印象(イギリスのプレスではこれが否定的にレビューされていたようです)を受けたのはそのせいかも知れません。

なぜかわかりませんでしたが、《the last emperor》のあとで一旦教授が袖に引っ込み、すぐに戻ってきました。そこからが後半戦。《tibetan dance》ではスクリーン上にダライ・ラマ14世のメッセージが流されました。《千のナイフ》の後半ではサブのピアノに主旋律を弾かせて、教授はインプロヴィゼーションを繰り広げるというスリリングな展開がよかったです。

アンコールは《戦メリ》。もう何回も何回も聞いている(し、私は教授がこの曲をピアノで弾くのには少々否定的です)のですが、なぜかこの日の演奏が今まで聞いた演奏の中でいちばん感動しました。コンサート本編では違和感を感じていたルバートの感覚が、この曲では当日の私のコンディションにぴったり合ったのかも知れません。あとは自分が置かれている環境とか、12月を迎えようとするこのタイミングとか、当日のホールの音響とか、小雨がぱらつく当日の天候とか、そういったものが絡み合っていたのかも知れません。

とにかく、最後の2曲でやられた、という感じでした。

*****

帰りは途中にあるパブで夕食を取ろうと考えました。まずはギネスを。生のギネスを飲むのも久しぶりです。食べ物を頼もうとメニューを見ていると、「悪いね。今日はもうキッチンは終わっちゃったよ。」とのこと。(出張でロンドンに来た時にも言われたことがあったなあ …)「本当に食べるものないの?」と聞いたところ「チップスならあるよ。」とのこと。しょうがないのでソルト&ビネガーのポテトチップス(これはこれでうまいのですが)をつまみながらギネスを飲みましたとさ。

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演奏会その19: ハンブルク・フィル第3回

Sonntag 22. November 2009, 11:00 Uhr

3. Philharmonisches Konzert

Aaron Copland – Quiet City
Christian Jost – Pietà – in memoriam Chet Baker, Konzert für Trompete in B und Orchester
Erich W. Korngold – Sinfonie Fis-Dur op. 40

Dirigent: Christian Jost
Trompete: Sergej Nakariakov

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珍しく、かれこれ2週間ほどライスハレへ行きませんでした。今日は毎月恒例のハンブルク・フィルの定期公演です。今回も月曜日の公演を日曜日のマチネに切り替えてもらいました。コープランドの《静かな都会》、クリスチャン・ヨストの自作自演によるトランペット協奏曲《ピエタ》、コルンゴルトの《交響曲嬰ヘ調》という地味なプログラムなせいか、いつもより心なしかお客さんが少ないような気がしました。

《静かな都会》はイングリッシュ・ホルンとトランペットに弦楽合奏という編成。タイトルからも連想されるように全編に渡ってゆったりとしたテンポで演奏されます。

《ピエタ》のトランペット・ソロはセルゲイ・ナカリャコフ。「うららイン・ザ・スカイ」ももう10年以上前のことなんですね。「バンドジャーナル」でよく見かけた頃はいかにも天才少年という風貌だったのですが、すっかり大人の雰囲気を醸し出していました。曲ですが、私の苦手なタイプの現代音楽でした。ソロは多くの部分でハーマン・ミュートをつけてちまちまとしたパッセージを吹きます。ときどきジャズっぽいリズムがクライマックスを気付いたり、スパニッシュ・モードっぽい感じのトランペット・ソロが出てきたりしますが、もう少しトランペットっぽい、あるいはソロっぽい役割があってもいいのではないかなと思いました。何につけてもひっかかるものがない作品でした。これもCDが出ているようなので解説を読みながら聞き直せばもう少し理解できるのかなあ?

メインのコルンゴルトの交響曲ですが、まあマイナーと言っていいですよね。ユダヤ人だったためにオーストリアからアメリカに亡命し、そこで映画音楽を書いて生計を立てていたコルンゴルトが、第2次大戦後にウィーン楽壇への復帰を画策して書いた作品です。私はヴェルザー=メスト/フィラデルフィア管の演奏でかなり予習して臨んだのですが、この交響曲を初めて聞いて50分聞き続けるのは結構大変なのではないかと思います。構造的には古典的な4楽章交響曲、つまりソナタ形式の第1楽章、スケルツォである第2楽章、緩徐楽章の第3楽章、アレグロの第4楽章という形を取っているのですが、無調的な旋律で始まる第1楽章がかなり取っつきにくいので、ここで挫折するとそのあとも何となく煙に巻かれてしまいます(私がそうでした)。第2楽章以降はかなりわかりやすく面白い音楽なのですが。

そういうわけで、各楽想のキャラクターを明確に示した今日の演奏は非常にわかりやすかったし、楽しめました。反面、視点が微視的になりがちで、楽想ごとのつながりがあまり感じられなかったのが欠点だったように思います。第3楽章などは大きな流れでとらえないとクライマックスまでの到達感が不自然になってしまいますし、第4楽章は同じような旋律が続くので曲が漫然と流れてしまいます。まあ、ヨストの指揮を見ていると、そこまでコントロールするバトンテクニックは持ち合わせていないのかな、と思いましたが。

終演後、久しぶりに中央駅前の「NAGEL」で昼食を。

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自家醸造らしい黒ビールはかなり苦みがあります。メインディッシュは、まだ試していなかったハンブルガー・パンフィッシュ。画像だとよくわかりませんが、フライパンの中ほぼ半分がジャガイモです。マスタードソースの下の魚も一種類だったのでちょっといまいちだったかな。

食事をしているとハンブルガーSVのレプリカを来た集団が入ってきて、試合前の景気付けをやっていました。今日の試合は小野伸二が所属するボーフム。完全に格下だったのですが、ハンブルガーSVは0-1で負けてしまいました。足踏みをしている間に5位まで交代してしまいました。(小野が先発フル出場したのだったら見に行けばよかったなあ …)

演奏会その18: ハンブルク交響楽団(その2)

予想通り二日酔い … 今晩は演奏会があるのですが、気分的に全然盛り上がりません。

一応、午前中にバンド・クラシックス・ライブラリーの原稿を仕上げて、午後から買い物に行きました。例によって肉と魚と野菜とパンと … という感じで。

夕食は前回と同じ「am Gänsemarkt」へ。今日はデュッセルドルフを中心に飲まれているというアルトビールを試してみることにしました。

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ケルシュほどのコクはなくて、かなり飲みやすいように思いました。

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これは「ケルシュ・バーガー」と書かれていたメニュー。どこが「ケルン風」なのかよくわかりませんが、いわゆるベーコン・バーガーです。ハンバーグというよりも、ドイツ特有のつなぎが入っていないハックステーキをパンをはさんだような感じで、かなり肉の歯応えがあります。かなりボリュームがあってお腹にたまります。ちなみに「バイエルン風」のハンバーガーもあるようなので、今度試してみたいです。

Samstag, 07. November 2009
3. Symphoniekonzert 19.00 Laeiszhalle, Großer Saal

Dirigent Jeffrey Tate
Xavier de Maistre, Harfe

Der Klassiker

Haydn Konzert für Harfe (Original: Klavier) D-Dur Hob.XVIII:110
Bruckner 5. Symphonie B-Dur

ハイドンのハープ協奏曲はすっきりとした演奏でした。ハイドンはシンプルな分だけ、曲を作りこむ手加減が必要なのだと思います。あまり手を入れ過ぎてもやぼったくなるし、かといって何もしないとつまらない演奏になりそうだし。ちょっと早めのテンポで、ちょっと重心の高い音響で、軽やかに曲が流れていくような感じでした。テイトの指揮でハイドンの交響曲を聞いても面白いんじゃないかな、と思いました。

Xavier de Maistre (グザヴィエ・ドゥ・メストレ)はフランス生まれの若手ハープ奏者です。(ハーピストというと白いロングドレスを着た女性というイメージがありますが(私だけ?)彼は男性です。)そもそも室内楽も含めてハープの生演奏というものをあまり聞いたことがなかったのですが、ううん、すごいですね。このハイドンの作品は原曲がピアノ協奏曲なのですが、ということはハープもピアノ並みのパッセージを弾くということになるのです。あとから思うに、ペダルの切り替えとか残響の処理とかピアノとは違った難しさがあると思うのですが、そんなことは感じさせず、ピアノよりも柔らかいけれどクリアな粒立ちの音色が、テイトが引き出すすっきりとした弦の響きとよく調和していたように思います。

CD を買ってみようかと思ったのですが、通常のショップで買った方が安くなると思い、また今度、ということにしました。ちなみにハンブルク交響楽団の演奏会ではソリストのサインは CD にしかもらえません。他のオケだとプログラムなどにももらえるのですが。

ブルックナーですが … 予習が少なかったせいもありますが、私は、まだブルックナーの音楽を楽しむには早過ぎるようです。(もちろん、体調が最悪だったという要素も考慮しないといけませんが。)第4番を以前生で聞いた時にはそんなに感じなかったのですが、曲の展開が読めないというか、今、音楽の大きな枠組みの中のどのあたりにいるのか、ということがよくわかりません。「とにかく長い」という印象ばかりが頭に浮かんでいました。

あとは響き。金管楽器の分厚いコラールはブルックナーの聞きどころの一つなのだと思うのですが、バランスや音程は言わずもがな、各楽器の発音から処理までのコントロールなど、その和音としての音響設計が必要なのだと思います。音の抜き具合とか発音の硬軟とか、これが統一されていないと「ただ吹いているだけ」のように聞こえてしまいます。私のイメージのストライクゾーンが狭すぎるからかも知れませんが、ちょっと違和感を感じてしまいました。

3月にはマゼール/ウィーンフィルの演奏でブルックナーの交響曲第3番を聞くことになっています。この時までには万全の予習をしておかないと。(チケット代も3倍以上するし(笑))

演奏会その17: ハンブルク・フィル第2回

ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会は月に1回(正確に言うと同じ演目で日曜日と月曜日に2回開催されますが …)行われますが、今日は今シーズン2回目の公演です。

軽い夕食は、昨日見つけた「am Gänsemarkt」というお店で。ハンブルクではなかなかお目にかかれないケルシュを頼んでみました。「ケルシュ」と名乗れるのはケルン地方で醸造されたビールだけなのだそうです。

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シュタンゲと呼ばれる、くびれのないビアグラスに注がれます。これで300mlです。(ヴァイツェンなどの)上面発酵系の酵母を使って(ピルスナーなど)下面発酵系並みの低温で熟成させて作るのだそうで、爽やかというよりは後からコクが広がってくるような味でした。

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一応、軽く頼んだつもりです。グラーシュズッペ(グヤーシュ)とサラダ。やはりグヤーシュは本場ハンガリーのようにこってりとは作らないのがドイツ風なのかなあ?牛肉の細切れがたっぷり入っているので、それなりにお腹にはたまります。

軽く酔ったような気がしたので、食後にラテ・マキアートを飲んで少し落ち着けました。

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2. Philharmonisches Konzert
Montag 26. Oktober 2009, 20:00 Uhr

Alfred Schnittke – (K)ein Sommernachtstraum
Sergej Rachmaninow – Paganini-Rhapsodie für Klavier und Orchester op. 43
Dmitri Schostakowitsch – Sinfonie Nr. 5 d-Moll op. 47

Dirigent: Dmitrij Kitajenko
Klavier: Rudolf Buchbinder

会社から帰る車の中であらためて気付いたのですが、シュニトケもラフマニノフもショスタコーヴィチもロシア(あるいは旧ソ連)生まれですね。イメージされる曲想は三者三様なので全然注意していませんでした。

1曲目はシュニトケの《夏の夜の夢(ではなくて)》。今シーズンの第1回定期演奏会のメインだったメンデルスゾーンの《夏の夜の夢(ein Sommernachtstraum)》の冠詞 ein (英語だと a)を否定を表す kein (英語だと no)に変えた作品名です。こういう外国語での言葉遊びは日本語に訳すのが難しいですね。

メンデルスゾーンの《夏の夜の夢》はほとんど忘却の彼方なので、ここからの引用があるのかどうか不明なのですが、ハイドンやモーツァルトあたりのメヌエットを思わせる楽想(3拍子)から始まります。このあたりは折衷主義のシュニトケならでは。この楽想が繰り返されるたびにいろいろな現代的な要素が混じってきて「ぐにゃり」と屈折した音楽になります。これ、笑っていいんですよね(笑)?弦楽器の各プルトの右の人と左の人が別々に演奏する、つまり1列ごとにボウイングが違う箇所があります。これ、初めて見ましたがかなり異様です。その他、ほとんどクラスターに聞こえるアイヴズを思わせる混沌、突然金管と打楽器が行進曲を始めてしまう脈絡のなさ、面白いです。確か、クレーメルが弾いた《コンチェルト・グロッソ》の CD を持っているのですが、この《コンチェルト・グロッソ》がかなり深刻な曲想だったのに対して、明るさに満ちた音楽でした。

2曲目はラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》、この間も聞いたばっかりなのですが、前回のコンビに比べると「老練」という感じの演奏でした。アリス=紗良・オットがかなりきらびやかなピアノを弾いてオケとの対照が強調されていたのに比べると、ルドルフ・ブーフビンターはオケと相まって音楽を作っているように感じました。キタエンコのオーケストラ・コントロールもうまく、決めるところはしっかり決めた、という感じです。

ショスタコーヴィチの交響曲第5番は、特に第1楽章の前半や第3楽章の緊張感が見事でした。キタエンコは極力無駄な動きを排して、演奏者はもちろん、聴衆の緊張感も途切れないように指揮していました。あんな緊張感の中で演奏する演奏者も大変だと思いますが、演奏者の集中力も素晴らしかったと思います。第1楽章の後半、ホルンや弦楽器がユニゾンで演奏するところ(ああ、スコアが手元にあれば …)で今まで聞いたことがないくらいにテンポを落としていたのがかなり衝撃的で印象に残っています。正直、ロシアの指揮者って「どっかーん」系が多いと思っていたので多少の先入観があったのですが、キタエンコの指揮はとても気に入りました。今まで聞いた限りでは、常任指揮者のシモーネ・ヤングの音楽は比較的自由な感じが多いのですが、今日のキタエンコのような厳しい音楽だからこそ、このオケの底力が垣間見えたような気がしました。

あ、前回は都合により月曜日→日曜日に変更したので別の席だったのですが、今シーズンはここが定期会員としての私の席になります。

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演奏会その16: ハンブルク交響楽団

やはり体内時計は正確です。サマータイムが終了したので今日から時間がずれたのですが、午前7時30分(昨日までの午前8時30分)に目が覚めました。ちなみに部屋の中にあるパソコン、テレビのチューナーは自動的に補正されました。炊飯器が補正しないのは当たり前なのですが、iPhone は逆に時計が1時間進んでしまいました。標準時の設定が間違っているのかなあ?

昼食はご飯を炊いて、昨日買ってきた材料でチリ・コン・カルネを作りました。「作った」とは言っても、挽き肉を炒めて水とソースの素を入れて、缶詰のキドニービーンズを混ぜて煮込むだけなので包丁すら使いませんでした。IH 調理器の火加減(IH 加減?)もだんだんわかってきました。ガスに比べて暖まるまでにかなり時間がかかって、一定の温度になってからは安定しているような気がします。

チリ・コン・カルネは想像よりスパイシー。ドイツは日本と比較して辛さが控えめなので、辛くなかった場合に備えてチリパウダーを買ってみたのですが必要なかったようです。(しかし、香辛料だけが充実していっているような気がするなあ …)

*****

さて、今さらですがおさらいを。ハンブルクには3つの主要なオーケストラがあります。「主要な」というのは、ハンブルク随一のコンサートホールであるライスハレで定期演奏会を開催している、という意味です。

一つはハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団(Philharmoniker Hamburg)。ハンブルク歌劇場やハンブルク・バレエでの演奏も担っています。常任指揮者はシモーネ・ヤング。

それから北ドイツ放送交響楽団(NDR Sinfonieorchester)。北ドイツ放送(NDR)が運営するオーケストラで、通常の定期演奏会の他に、ジャズバンドの形態での演奏会、現代作品をとりあげる演奏会(NDR das neue werk シリーズ、先日のグバイドゥーリナの作品展もこのシリーズです)など多彩な活動を行っています。常任指揮者はクリストフ・フォン・ドホナーニ。

もう一つがハンブルク交響楽団(Hamburger Symphoniker)。活動の規模は上記2つのオーケストラに比べると小さいですが、独自のプログラムで定期演奏会を開催しています。常任指揮者はイギリス人のジェフリー・テイト。

というわけで、今日は初めてこのハンブルク交響楽団の演奏会を聞きに行きました。

Sonntag, 25. Oktober 2009
2. Symphoniekonzert     19.00     Laeiszhalle, Großer Saal

Dirigent: Dmitri Jurowski

Andreas Brantelid, Violoncello
Stephen Beus, Klavier
Trompetenklasse Matthias Höfs

Die jungen Wilden

Janáček / Sinfonietta für grosses Orchester
Dvořák / Violoncellokonzert h-moll
Janáček / Concertino
Dvořák / Scherzo capriccioso

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「Die jungen Wilden (若き蛮勇)」と題された演奏会。ヤナーチェク、ドヴォルザークというチェコ生まれの作曲家の作品を集めています。地下鉄の構内に貼られていたポスターには「1人の指揮者、2人のソリスト、14人のトランペット」と書かれていました。なかなか秀逸なコピーだと思います。まあ、やはりこの演奏会に行きたいと思ったのは11本のトランペット(うち2本はバストランペット)で演奏されるヤナーチェクの《シンフォニエッタ》の第1楽章と第5楽章を生で聞いてみたかったからなので(オケの編成に含まれる3本のトランペットは第1楽章では演奏しません)。ドヴォルザークのチェロ協奏曲ではもちろんチェロが、それからヤナーチェクのコンチェルティーノではピアノがソリストとして活躍します。

指揮者のドミトリ・ユロフスキはロシア生まれです。全般的にどっしりとした、いい意味で洗練されていない音楽を作り出します。ヤナーチェクやドヴォルザークの音楽には合っているのかなと思いました。《シンフォニエッタ》は少し傷はありましたが、今までに聞いた演奏の中でいちばん濃密だったように思います。第5楽章の後半、一発のシンバルをきっかけに別働隊のトランペットがユニゾンで登場するところは、やはりゾクゾクします。下にも書いていますが、CD ではなかなか感じることができなかったヤナーチェクのオーケストレーションの、ある種の歪さを生演奏から感じることができたのが収穫でした。

ドヴォルザークの《チェロ協奏曲》は、オケの濃密さと、ソリストであるアンドレアス・ブランテリードのすっきりとした演奏がミスマッチかなと思いましたが、楽章が進むにつれ、オケに引っ張られて(?)ソロがどんどん奔放になっている印象を持ちました。アンコールはバッハの無伴奏チェロ組曲(何番だろ?)のサラバンドでした。

休憩後はヤナーチェクのコンチェルティーノ。ピアノ、2本のヴァイオリン、ヴィオラ、クラリネット、ファゴット、ホルンという編成で、指揮者はいませんでした。《シンフォニエッタ》でも感じましたが、ヤナーチェクのオーケストレーションは相当変です。例えば、あくまでも従的なパッセージに演奏しにくい音域を当てるとか、目立たないところで執拗にモチーフを繰り返させるとか、どう考えても噛み合わない楽器を組み合わせるとか。それが作曲家としての独自性を際立たせているのだと思いますが。

ドヴォルザークの《スケルツォ・カプリツィオーソ》はそれほど有名な作品ではないと思いますが、代表作である《スラヴ舞曲集》に雰囲気が似ています。スラヴ舞曲集第1集の第1番や第8番に見られるフリアントのリズムをはじめとするボヘミア地方の舞曲スタイルをベースにした音楽です。

演奏会のテーマと指揮者のスタイルが同じ方向を向いていて、非常に楽しめる演奏会でした。今回もまた全然違う席で聞いたので単純比較はできませんが(ちなみにこんな席でした。↓)、このオケ、音がでかいです。特に木管楽器の存在感の大きさが記憶に残りました。

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ライスハレの最寄り駅は Gänsemarkt なのですが、今日は少し時間に余裕があるのと、乗り換えが面倒臭かったので、Jungfernstieg から歩いていくことにしました。その結果、こちらのブログで紹介されていて気になっていた、ケルンのビールが飲めるというお店を見つけることができました。明日行ってみようかな。

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今日のハンブルガー SV。シャルケ相手に常に先行していたにもかかわらず、最後に追いつかれて結局 3-3 の引き分けでした。得失点差はかなり詰めたのですが、依然としてバイエル・レバークーゼンに次いで2位です。

演奏会その15: グバイドゥーリナ作品展(その2)

午前中はまったりと洗濯をしながらちょぼちょぼと「バンド・クラシック・ライブラリー」の原稿書き。自宅や実家と Skype をしていたのであまり進まなかったのですが …

ええと、どうでもいいことですがお役に立つかもしれないのでメモしておきます。実家の PC で Skype を 4.0.0 から 4.1.0 にアップデートしたらビデオが片方向しか通らなくなったそうです。最初は実家からの絵がこちらに届かなかったのでカメラが壊れたのかと思っていたのですが、別の日にはこちらの声だけが実家に届いてビデオが届かないということがありました。実家の PC は Celeron 2GHz / 2GB RAM / Windows XP SP3 らしいのですが、どうもこのスペックだと処理が追いつかないのでどちらかのビデオだけを処理しているのではないか、という結論に至りました。とりあえず Skype のバージョンをもとに戻したら解決したようです。Skype の旧バージョンは例えばこちらからダウンロードできます。

http://www.filehippo.com/download_skype/

それから、私は MacBook(何世代前だ? …)に Mac OS X と Windows XP をインストールして使っているのですが、妻によると Mac の Skype より Windows の Skype の方がビデオが安定しているそうです。ということで、できるだけストレスを減らすべく最近は Skype を使う時は Windows を立ち上げるようにしました。

午後からはぼちぼち買い出しへ。今日は曇り空ですが、何とか雨にはならずに済んでいます。明日も明後日も演奏会なので夜は外食予定です。ですので、あまり買う物もなかったのですが、ふとチリ・コン・カルネを作ってみようと思い、材料 … とはいってもインスタントのソースの素とキドニー・ビーンズと牛挽き肉だけですが … を買ってみることにしました。

ということで、今日もロルフ・リーバーマン・スタジオで演奏会です。今日はちゃんと夕食を食べてから演奏会へ出かけようと思い、余裕を持って5時30分くらいにアパートを出ました(開演は午後8時)。時間も読めるし、あわよくばお酒でも飲みたい、と思い、今日は電車で行くことにしました。夕食は以前も行ったことのあるリストランテ「toto」です。

黒板書きのメニューを見せてもらったのですが、突然「あれ?タリアテッレとトルテローニって、どっちがどっちだったっけ?」と訳がわからなくなってしまいました。そこで給仕のお姉さんに「タリアテッレってどんなんでしたっけ?」と聞いたところ、まず「スパゲッティ。」と言って両手の手のひらを 1 cm くらいの間隔で平行にしました(「小さく前ならえ」の格好を想像してみて下さい)。そして「タリアテッレ。」と言って、その手を 10 cm 幅くらいに広げました。素晴らしくわかりやすいです(笑)。ちなみに「トルテローニは?」と聞いたら、親指と人差し指で◯を作ってくれました。タリアテッレにしようと決めたのですが Spargel(アスパラガス)はわかっても Flusskrebs がよくわかりません。「魚介類でー、イカじゃなくてー …」みたいな感じで説明してくれます(あとで調べたら川海老でした)。なんか連想ゲームみたいになってしまってすみません、ということでこれを注文しました。まあ、普通は白ワインも頼みますよね(笑)というわけで。

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Spargel はてっきり白アスパラガスだと思いこんでいて「まあ、季節外れだけどいいか …」と思っていました。なので、白アスパラガスと何かの魚介類をクリームソースででも和えたものが出てくるのかなあ、と思っていたら全然予想とは違うものが。プチトマトとグリーンアスパラとポロネギと先ほどの川海老を、塩コショーとハーブ(何だろ?)と白ワインのソースで和えたものでした。先週も思いましたが、やはりイタリア人が作るイタリア料理を食べるとすごくおいしいし、ほっとします。

また、このお店はこじんまりとしていて、過剰じゃない給仕がとても心地よいです。ということで調子に乗ってクレーム・ブリュレ(イタリア語では何と言うのだろう?)とエスプレッソを注文しました。

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さらにさらに、お勘定のあとに「何か食後酒飲む?アマレットとか何とかとかグラッパとかあるよ?」と言われたので、後先考えずにグラッパをもらってしまいました。お勘定のあとなのでサービスのようでした。

(息子にも教育しているのですが、私のモットーは「おいしい時にはおいしいと言おう。何かいいことがあるかも知れない。」です。)

12月に小曽根真さんと NDR の演奏会が同じロルフ・リーバーマン・スタジオであります。その時にもぜひ来たいお店です。ちなみに入ったことはないのですが、すぐ隣にもイタリアン・レストランがあるんですよね … 競合しないんだろうか?

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ということで、とても演奏会前とは思えない食べっぷり飲みっぷりになってしまいましたが、今回は余裕を持って7時20分頃に入場しました。昨日とは違い、当日券を求めるかなり長い列ができています。昨日の演奏会の反響があったのでしょうか?

Samstag, 24. Oktober 2009, 20.00 Uhr
Rolf-Liebermann-Studio, Hamburg
Konzert 2

Mitglieder des NDR Sinfonieorchesters
Leitung: Stefan Geiger
Solisten:
Hildegard Wiedemann, Sopran
Vytautas Juozapaitis, Bariton
Christopher Franzius, Violoncello solo
Sofia Gubaidulina, Aquaphon

  • Quattro für zwei Trompeten und zwei Posaunen (2本のトランペットと2本のトロンボーンのための四重奏曲)
  • “Am Rande des Abgrunds” für sieben Violoncelli und zwei Aquaphone (7つのチェロと2つのアクアフォンのための《破滅に瀕して》)
  • Risonanza für drei Trompeten, vier Posaunen, Orgel und sechs Streichinstrumente (Deutsche Erstaufführung) (3本のトランペット、4本のトロンボーン、オルガン、6つの弦楽器のための《レゾナンス》(ドイツ初演))

(pause)

  • Perception für Sopran, Bariton und sieben Streichinstrumente (ソプラノ、バリトン、7つの弦楽器のための《パーセプション》)

昨日の管弦楽作品に続いて、今日は室内楽作品を集めた演奏会です。ええと、入場して席に着いたとたん爆睡してしまいました … 幸い、今日は演奏が始まる前に客席にいるグバイドゥーリナさんを紹介する MC があったので、それで目が覚めました。おかげでかなり意識はすっきりしました。

1曲目のトランペットとトロンボーンのための《四重奏曲》は以前の演奏会でも聞いた作品なのですが、さすがに今回の方が安定していました。

2曲目の《破滅に瀕して》が今回の演奏会の白眉かなあ。ちなみにアクアフォンは以下のような楽器だそうです。中に水を入れてアンテナみたいな部分を弓で弾いて音を出します。ウォーターゴングの簡易版みたいな感じでしょうか、「ひゅいひゅい」といった感じの不思議な音がします。

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7人のチェロ奏者はソリストを中心にして、3人ずつ対象に配置されます。アクアフォンもその両外側に配置されます。昨日の《声 … 沈黙 …》もそうでしたが、こういうシンメトリカルな配置はよく使うようですね。この作品では、例の「怒りの日(Dies Irae)」の旋律が引用されていて、最初はバルトーク・ピチカートのような奏法で提示されます。メリスマの効いた(あるいは非西洋的と言ってもいいのでしょうか)線的な旋律を演奏するソリスト、それに時には寄り添い、時には対峙する他のチェリストたち、というような感じで構成されています。ソリストの演奏も素晴らしかったですし、ソリストの動きに的確に反応する他の奏者たちのアンサンブル能力も楽しめました。(アクアフォンは本当に効果音的な使われ方なのでアンサンブル的にはあまり重要ではありませんでした。)これも WERGO から録音が出ているようなので、あらためて聞いてみたいと思います。

あとの2曲は指揮者がいたのですが、はっきり言って指揮者が音楽を作れていなかったと思います。(あまり偉そうなことは言えませんが)指揮法的にはほとんど素人です。指揮が音楽に反映されるのではなく、奏者が作り出す音楽が指揮に反映されているような見え方でした。《レゾナンス》は楽器も多いですし曲自体の起伏も大きいので、楽譜通りに音にできればそれなりに聴ける音楽になると思うのですが、《パーセプション》の方は編成も弦楽器だけですし曲想もスタティックなので、各楽器へのキュー出しやミクロなレベルでのデュナーミクの指示だけでは音楽にならないと思いました。ソリスト(特にソプラノ)が素晴らしかったので余計に残念でした。

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ハンブルガー SV 情報です。今日は試合がありませんでしたが、1位のバイエル・レバークーゼンが引き分けたので、明日の試合に勝てば単独首位です。対戦チームは3位のシャルケです。なので、負けたりするとシャルケと順位がひっくり返ってしまいます …