月別アーカイブ: 2010年3月

ウィーン日記その1: ウィーンはいつもウィーン

そういうわけで、今日から2泊3日でウィーンヘ出かけます。

オーストリア航空の直行便。フォッカー100なんて初めて乗りました。順調に2時間ほどでウィーンに到着。気温17℃ということですっかり春らしい天気です。空港で「ウィーン・カード」を購入。3日間ウィーン市内の交通乗り放題+各種美術館の割引 … なのですが、空港は「ウィーン市内」ではないらしいので、このカードだけでは中心部へ行けません(不正乗車になります)、1.80ユーロの差額を購入するように、と言われました。空港からウィーン・ミッテ駅までは30分弱といったところでしょうか。そこから地下鉄U3に乗り換えると観光の中心である Stephansplatz 駅まで行けます。そこで地上に出るとシュテファン教会のすぐそばです。

このシュテファン教会から国立歌劇場までの目抜き通りがケルントナー通り (Kärntner Straße) です。今回のホテル「ホテル・カイゼリン・エリーザベト」はこのケルントナー通りから少し脇道に入ったところ。歌劇場まで徒歩圏内という立地に関わらず意外に安い値段で出ていたので予約してみたのでした。あとから「地球の歩き方」を見てみたら非常に由緒あるホテルで、リストやワーグナーなども泊まったことがあるのだそうです。まあ「王妃エリーザベト」という名前をホテルに冠する許可を正式にもらったらしいので言わずもがななのですが。部屋は改装したばかりのようですし、フロントのスタッフも気さくだったし、よくある「由緒あるホテル」のデメリットを全く感じなかったホテルでした。

チケットのピックアップを兼ねて、念のため国立歌劇場と楽友協会ホール(ムジークフェラインザール)の下見へ。歌劇場は通りをまっすぐ南下したところにあります。

国立歌劇場の近くには地下のモール、というかトラム乗り場へ行くための地下通路に売店がいくつかあるようなところがあるのですが、その公衆トイレは「オペラ・トイレ」ということで《美しく青きドナウ》が鳴り響いていました。あいにく中には入ってみませんでしたが …

さて、国立歌劇場のすぐ裏には「ザッハー・トルテ」で有名なホテル・ザッハーがあります。なので、ちょっとお茶を。カプチーノとザッハー・トルテをいただきました。

まあ、混んでいるのはわかりますが「牛丼屋か?」というくらいの客のさばき方です。ちゃんとしたカフェの方に行けばよかったかなあ … 私が入ったのは売店に付随している方でした。

さて、歌劇場からもうちょっと南下して東に行くとムジークフェラインザールがあります。それから帰りに見つけた広告塔。今日の公演も告知されています。

ホテルへ戻ってくる道すがら、寄ってみたかったのが楽譜屋さんの「ドプリンガー」です。

さすがにフルスコアの蔵書は多く、ずっと見ていても飽きません。おそらくウィーンゆかりかと思われる知らない作曲家の作品も多数ありました。さすがにウィーンの出版社である Universal Edition のスコアは比較的安いのでそのあたりを中心に「ウィーン記念」ということで、《シンフォニエッタ》(ヤナーチェク)、《ヴァイオリン協奏曲》(ベルク)、《パシフィック231》(オネゲル)のミニスコアを買ってみました。

ちょっと早い夕飯はホテルの隣りのレストランで。さすがに午後5時だと誰もいませんが(笑)、ちゃんとサーヴしていただきました。待望のヴィーナー・シュニッツェルを。ドイツでもシュニッツェルは食べられるのですが、多くの場合牛肉ではなく豚肉ですし、比較的厚めですし、何かしらのソースがかかっています。牛肉を薄く叩いたものにレモンを絞って … というやつを食べたかったのです。

かなりイメージ通りのものが食べられて満足でした。あ、ちなみに演奏会前に満腹になるのも嫌だったのでシュニッツェルはハーフポーションです。

演奏会については次のエントリーに続く。

クセナキススキナクセニ

はあ、忙しい、忙しい。しかも明日休暇を取るので、いろいろな方に申し送りというか、業務の進捗に支障を来さないように自分のアウトプットを渡します。(… と書きながら思い出してしまいましたが、上司への週報を出してくるのを忘れたなあ …)「明日(注:明日からとは言っていません、念のため)会社休むんだけど …」という言い回しで申し送り事項を伝達するのですが、こちらで holiday とか言うと2〜3週間の大型連休を意味するのか、「え、そりゃ大変だ …」みたいな反応を示す人もいます。ううん、どう言えばいいんだろう?単に I will be absent tomorrow. の方がニュアンスが伝わるのかなあ?

購入備忘メモ。

Iannis Xenakis

ドイツのレーベル Edition RZ からリリースされているクセナキスの作品集。比較的コアな品揃えのドイツのオンラインCDショップのJPCから初めて買ってみました。「JPC」はジャズ、ポップ、クラシックの略だそうです。

タマヨちゃん(アルトゥール・タマヨ)とルクセンブルク・フィルによる管弦楽作品集にも含まれなかった大管弦楽作品《ノモス・ガンマ》と、リミックスされて聞きやすくなったらしいテープ音楽作品《ペルセポリス》を聞いてみたかったのです。

《ノモス・ガンマ》は聴衆と演奏者が混在して指揮者を取り囲んで演奏するという作品。実は一昨年に静岡のグランシップで演奏されたのだそうです。上記のような作曲者の意図通りの配置で演奏されるのはおそらく世界初だったのではないかということです。確かに普通のコンサートホールで試みるのは難しそうですね。「巨大な倉庫」(って誰が言っていたんだっけ?)のようなグランシップだからこそ実現できたのかも知れません。知っていたら聞きに行ったのになあ …

それからこちらのエントリーで紹介したYMOの怪し過ぎるライブCD。アマゾンでは速攻で取り扱い中止になり、JPCとは別のドイツのオンラインショップでこのCDを扱っているという情報を得て注文してみたのですが、本日正式に「取り寄せ不可」というメールが届きました。このCD、実際に入手した人っているんですかね?

*****

今日のハンブルガーSV。ラウンド16の第2戦でベルギーのRSCアンデルレヒトと対戦しました。今日は3-4で負けてしまったものの、第1戦は3-1で勝っていたのでどうにかベスト8に進出しました。対戦相手は明日(3/19)抽選が行われます。

オン・ザ・ライス・アゲイン

週の頭にいきなり仕事の回転数が上がったかと思ったら、そのまま持続中。締め切りが決まっている仕事もいっぱいあるし、来週からの出張もあるし、月末からは自分の引っ越しもあるし、で家族が引っ越してくるまではずっと落ち着かないのかなあ、という予感がします。

夕食を作るのもかったるいと思ったので、いつもの「Asia Lam」へ行きました。とりあえず、ここが生きたドイツ語を学べる絶好の場所になっています。以前は何を言われているのか全くわからなかったのですが、最近は少なくとも(ドイツ語の発音として)何を言っているのかわかることが多くなってきて、「あの時何を言っていたんだろう?」とあとから思い返して調べることができつつあります。今日はお店に入ったら「アライネ?」とたずねられました。あとで調べてみると「Alleine?」は英語で alone、日本語で「一人?」という意味のようです。そういえば、前回は日本からの出張者と先輩駐在員と一緒に来たのでした。

今日はイカと野菜のオイスターソース炒め(オン・ザ・ライス)。春巻をサービスしてもらったり、本来はイカだけのところを「エビも入れといたわよ」みたいな感じでサービスされたり、会計を済ませてチップを別に渡そうとしたら「いいわよ、そんなの」みたいな感じで受け取られなかったり、典型的な「料理屋のおばちゃん」のサービスですが、このお店で食事をすると「小確幸(小さいけれど確かな幸せ(c)村上春樹さん)」を感じられます。

Cleanup Time

今月末には今住んでいるアパートから新しい住居への引っ越しが始まります。今住んでいるアパートは4月上旬に引き払う予定なので、当然家主さんは次の入居者を捜すことになります。

今日、家主さんとのやり取りをお願いしている庶務担当から「家主さんが入居希望者に部屋を見せたいそうなんだけど問題ない?」と聞かれました。独身時代の私の部屋(あるいは自宅のオーディオルーム)を見たことがある方ならわかると思いますが、時として、とても人様に見せられる状態でなくなるので「今日は問題あるので明日以降ということにしてもらえる?」と返事してもらうことにしました。

ということで早めに仕事を切り上げて、帰ってから緊急大掃除を敢行しました。

とりあえず人様に見られても問題ないレベルまで綺麗になりましたが、問題は退去時までこれを維持できるかどうかですね。

演奏会その36: ハンブルク・フィル(第7回)

朝から不測の事態が続いて大変な一日でしたが、まあ何とか夕方までには収束させることができて無事演奏会へ。

7. Philharmonisches Konzert

Wolfgang Amadeus Mozart – Serenade G-Dur KV 525 “Eine kleine Nachtmusik”
Arnold Schönberg – Verklärte Nacht op. 4
Claude Debussy – Nocturnes
Karol Szymanowski – Sinfonie Nr. 3 op. 27 (Das Lied der Nacht) für Tenor, Chor und Orchester

Montag 15. März 2010, 20:00 Uhr

Dirigentin: Simone Young
Tenor: Stig Andersen
Chor: Tschechischer Philharmonischer Chor Brno

ハンブルク・フィルの今シーズン第7回目の定期演奏会です。わかりやすくテーマは「夜」。モーツァルトの《アイネ・クライネ・ナハトムジーク(直訳すると小夜曲)》、シェーンベルクの《浄められた夜》、ドビュッシーの《夜想曲》、シマノフスキの交響曲第3番《夜の歌》というプログラムでした。

プログラムが進むにつれて、だんだんステージ上の演奏者の人数が増えていくのが面白かったです。

《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》は小さめの弦楽合奏、それにさらに弦楽器が加わって《浄められた夜》は大規模な弦楽合奏、休憩後はそこに管楽器とハープと女声合唱が加わって《夜想曲》、最後はさらなる管楽器、オルガン、男声合唱、テノール独唱が加わって《夜の歌》となりました。

演奏の方は、最初の3曲があまりぱっとしませんでした。曲の作り込みが足りずに「手癖で何とかしてみました」といった感じの演奏。先週の歌劇場の初演などがあって、これらの曲への時間が足りなかったのかな?とも邪知してみたくなります。(ハンブルク・フィルはハンブルク歌劇場の伴奏も担当しているので)

《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》は意図的かどうかわかりませんが、各音のアタックを柔らかめにして真ん中をふくらませるようなサウンドの作り方でした。音の重なりは聞き取りやすくなると思うのですが、軽快さは失われてしまいます。私は軽快な溌剌としたサウンドを期待していたのですが …

《浄められた夜》は前半こそ大規模な編成ならではの彫りの深さ、例えばソロイスティックな部分と全合奏の部分の対照や少々誇張されたアゴーギクなど、が劇的でよかったのですが、曲の作り方というかアプローチが一本調子だったように思います。後半の長調が支配的になってくるあたりではちょっと辟易してきました。

《夜想曲》は編成的にも曲調的にもわかりやすいので上記の2曲よりは聞いていて面白く感じました。金管はいまいちでしたが全編を通して木管のソロが安心して聴けました。最終曲の「シレーヌ」はもう少し落ち着いて厳かな鳴りの方がよかったのではないかと思います。

で、やはりシモーネ・ヤングにはシマノフスキの《夜の歌》のような重厚な作品の方が合っているように思いました。(席のせいもあるかも知れませんが …)オケが飽和したようなサウンドで線的な動きが聞き取りにくい箇所もありましたが、この曲の雰囲気ではあまり違和感はありません。少々病的な雰囲気のある曲調にヤングが作り出すマッシヴな響きはよく合います。プログラムにはマーラーの《大地の歌》やツェムリンスキーの《叙情交響曲》に影響を受けたと書かれていましたが、個人的にはスクリャービンやシェーンベルクの《グレの歌》あたりとの距離の方が近いのではないかと感じます。

(余談ですが、この曲はカンタータ風の両端楽章と、それらにはさまれたスケルツォ的な楽章が切れ目なく演奏されます。このスケルツォ楽章のモチーフの一つが《ミシシッピ組曲》(グロフェ)の「ハックルベリー・フィン」に似ています。「アメリカ横断ウルトラクイズ」の勝ち抜けの音楽で使われていたのですが。)

一週間以内に同じ曲を別々のオケで聞く機会というのもなかなかないと思うのですが、今週の金曜日はウィーンフィルの演奏でこの《夜の歌》を聞きます。ウィーンフィルの密度の高い音色はこの作品に合っていると思うので楽しみです。

春の雨

朝から静かに雨が降っています。(何回も言っていますが(笑))このまま春になってくれればいいのですが。

というわけで、ちょっと本格的に吹奏楽コンクールデータベースの改造に着手。本当にやらなければいけないことがある時に限ってこういう逃避行動に出ているような気もしますが …

自由曲作曲者を別データベースに分離して、もともとの団体別成績一覧のデータベースからは作曲者IDという形で参照するようにしました。このくらいの正規化は特に難しくないのですが、ファイルメーカー上でのデータ入力作業をなるべく楽にする方法を考える時点でちょっと難儀。使い方がよくわかっていないのかマニュアルが不親切なのかよくわかりませんが、望む方法とはちょっと違う方法で解決。まあ本質的な問題ではないのでこれはほっといて、データ構造変更に伴う各ページの手直しも。今月中くらいには更新できるかなあ …

*****

ハンブルガーSV(現在4位)は上位進出の望みを残して3位バイエル・レバークーゼンとの直接対決 … だったのですが、2-4で負けてしまいました。第26節終了時点での上位5チームの成績はこんな感じです。

Pl. Mannschaft Spiele +/- Pkt
1. Bayern München 26 53: 22 56
2. FC Schalke 04 26 42: 20 54
3. Bayer Leverkusen 26 56: 25 53
4. Bor. Dortmund 26 43: 33 45
5. Hamburger SV 26 46: 30 43

というわけで、今シーズンは終了かな … カップ戦はがんばろう。

冬(春?)のオペラグラス

今日は髪の毛を切るための予約をしていたので電車で中心部へ。

ちょっと時間があったので隣のOCS(日本関連の物品を扱っています)をのぞいて日本風のパンを確保。これらのパンはデュッセルドルフのパン屋さんが焼いたものを毎週金曜日に運んでくるのだそうです。土曜日にはあまり残っていない場合もあるのですが、今回は食パンが残っていたのでこれをゲット。実は普通のスーパーマーケットでは食パンは売っていません。それからアンパンやメロンパンなども多分ここでしか買えないと思います。

そういえば来週末ウィーンへ行くのですが、ガイドブックがありません。当初はドイツの書店に行って英語版の Lonely Planet などがあればいいな、と思っていたのですが、ここで「地球の歩き方」を見つけたので買ってしまいました。値段は日本で買う場合の倍近いのですが …

で、髪の毛を切ってもらった後は先週開店した「無印良品」の視察に。髪の毛を切ってもらっている時にもその話題になりました。ドイツ国内では4店舗目になるとのことです。間口が狭かったのでそれほど広くなさそう、と思っていたのですが奥行きが結構あって、地下のフロアもあり、想像よりもずっと広かったです。食材はおかれていませんが、それ以外の品目は日本にあるものとそんなに変わりがないような気がします。価格もおおむね日本の2~3割増しくらいでしょうか。(日本語の円表示のタグがついている商品もあってユーロと比較することができます(笑))

そういえば、この間のハンブルク歌劇場ではオペラグラスを持っていた人がいたなあ、と思い、たまたま見つけた双眼鏡を買ってみることにしました。来週のオペラ鑑賞用です。

お昼はお気に入りのカリーブルストの店「EDEL CURRY」に行きたかったのですが、何と満席で入れませんでした。人気が上がっているのかなあ?ということで時点候補のタイ料理屋「CHA CHA」へ。

左はよく見えませんが軽くミントでマリネしたチキンのサラダ、右はお気に入りのフルーツ風味のパドタイ(タイ風ライスヌードル)。これにビールを頼んだらかなりお腹いっぱいになりました。

その後食材を買いにカールシュタットへ。夕飯は軽く飲んでつまむ程度でいいなあ、と思っていたところ、ふと目に留まったのがハモン・セラーノ(スペインの生ハム)。夕飯はこれとワインとチーズとクラッカー。久しぶりに生ハムを食べましたがやはりうまかったです。すっかり気持ちよくなってしまい、ワーグナーの《ラインの黄金》を予習しながら爆睡してしまいました。

気がついたら午後10時、それからなかなか眠れずにデータベースをいじっていたら午前2時。これじゃ体にいいわきゃないよ …

2回目の…

交通違反通知書が会社に届きました。会社がリースしている車なので …

うちの近くでの駐車違反でした。たまたまその日は帰るのが遅くなって、たまたまいつもの駐車スペースが空いていなくてアパートのすぐ前に停めておいたところ、たまたま警察のパトロールがあって見つかってしまったようです。

前回と同じように運転者ではなく車の所有者への通知なので減点はなさそうで、15ユーロを銀行振り込みしておしまい、のようです。

*****

ふと思い立って吹奏楽データベースのデータ構造を変更することにしました。

このデータはふだんはMacBook上のファイルメーカー+MySQLで管理しており、それをいったんSQLファイルにエクスポートしてサーバーにアップロードしています。今までこのデータは正規化していなかったので少々冗長でしたし、5MBというアップロードできるファイルサイズの制限が近付いてきたので、何とかしなければいけないと思っていたところです。

とりあえず自由曲の作曲者を別のデータベースにまとめようかなと思っていますが、さて、どうなることやら …

ヨーロッパリーグ2009/2010

UEFAヨーロッパリーグのベスト8を決める「ラウンド16」の第1戦が行われました。

ハンブルガーSVはホームでベルギーのRSCアンデルレヒトと。生中継はおそらく有料放送と契約しないと見れませんが、HSVのホームページでほぼリアムタイムのレポートを見ることができます。

ファンニステルローイのゴールなどもあって3-1で勝利。次は3/18のアウェイ戦ですがベスト8は可能性高そうです。

ブンデスリーガは残り9節。現在4位のハンブルガーSVは、次回は3位のバイヤー・レバークーゼンと、その次は1位のシャルケと対戦します。3位までに入ればチャンピオンズリーグ出場の可能性があるのでがんばって欲しいものです。

演奏会その35: ハンブルク歌劇場「女たちの三部作」

Arnold Schönberg “Erwartung” Op.17
Oscar Strasnoy “Le Bal”
Wolfgang Rihm “Das Gehege”

久しぶりのハンブルク歌劇場です。

アルノルト・シェーンベルクのモノドラマ《期待》、ハンブルク歌劇場の委嘱作品であるオスカー・ストラスノイの《舞踏会》、ヴォルフガング・リームのこれまたモノドラマ《檻》という、女性を主人公とした3つのオペラが一挙に上演されました。アルゼンチン生まれのフランス人作曲家オスカー・ストラスノイ(1970年生まれ)に委嘱した作品にあわせて、20世紀のオペラ2作を上演する、といった形です。

《期待》と《檻》は「モノドラマ」というだけあって登場人物は一人だけです。今回の上演では演出の関係で歌わない登場人物も何人か舞台に登場しますが、歌うのは主人公の女性だけです。しかし、どちらも夢見が悪くなりそうな題材です。事前にあまり予習できなかったので歌劇場でもらった英語のあらすじを読んだり、表示される字幕(どちらもドイツ語のオペラですがドイツ語の字幕も出ます)をかろうじて追いかけたりしただけですが …

《期待》は、ある女性が自分が殺してしまった恋人に語りかけるというモノローグ。舞台は病院の個室なので錯乱した状態での妄想ととらえることもできるようです。それから、《檻》は、檻の中に住む鷹を挑発して最後には殺してしまうという話。今回の演出では鷹が象徴するものとして男性(当然セリフはありません)が登場します。

実はシェーンベルクの大編成の管弦楽作品はちょっと苦手で、手持ちの《期待》の音源を聞いていてもあまりピンと来ませんでした。でも実演で聞くと細かい音色の操作がわかったりして多少は面白く聞けました。ヴォルフガング・リーム(1952 – )の作品をちゃんと聞くのは初めてのような気がしますが、シェーンベルクのオーケストレーションの新しさに比べると、作品全体の印象としては伝統的というか重厚な感じがします。まあ、シェーンベルクもリームも、いわゆる「表現主義」的な作品の範疇に入ると思うので、いきなりのフォルティシモや歌手の叫び声などがあるわけで、気分的にはとても疲れますね。歌唱は、表現力については(本当に怖かった)《期待》の、声の豊かさについては《檻》の、がよかったです。

《舞踏会》はアウシュヴィッツで殺されたユダヤ人女流作家イレーヌ・ネミロフスキーの同名小説を原作にしたオペラ。出版直後の1931年に早くも映画化されました。主人公は株で成功した(いわゆる成金)カンプ家の娘アントアネット。家が裕福になって居場所がなくなったアントアネットは、両親から託された舞踏会の招待状を投函する気になれず、郵便局へ行く途中で川に捨ててしまいます。それを知らずに豪勢な用意をして客を迎える準備をする両親 … といったストーリーです。近代/現代のオペラというと上記の《期待》や《檻》のように人間の精神を深くえぐった、ある意味ドロドロした題材が多いように思う(のは偏見?)のですが、この《舞踏会》は比較的コミカルな雰囲気でそういったプチブルジョアを揶揄しているように思えます。

最後、壮絶な「ブーイング」対「ブラヴォー」の応酬がありました。ブーイングは歌手やオーケストラではなく指揮者のシモーネ・ヤングへのものだったと思います。ブーイングがあったのが第3部にあたる《檻》の前から始まったので、何に対するブーイングだったのかよく理解ませんでしたし、そもそもブーイングしているのは一人だけだったような気がするのですが。