ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団」タグアーカイブ

演奏会その43: ハンブルク・フィル特別コンサート「Viva la France!」

Summertime: “Vive la France!”
Sonntag 4. Juli 2010, 11:00 Uhr

Dirigentin: Simone Young
Klavier: Di Wu

PROGRAMM

Paul Dukas: Der Zauberlehrling
Darius Milhaud: aus »Suite française«
Hector Berlioz: Königliche Jagd und Sturm aus »Les Troyens«
Camille Saint-Saëns: »Africa«, Fantasie für Klavier und Orchester op. 89
Camille Saint-Saëns: Danse macabre
Gabriel Fauré: aus »Pelleas et Mélisande«
Henri Duparc: Aux Étoiles
Claude Debussy: L’Isle joyeuse
Erik Satie: Nr. 3 aus »Trois Gymnopédies«
Jacques Offenbach: Ouvertüre zu »Pariser Leben«
Emmanuel Chabrier: España

und Encores…
ジュール・マスネ/タイスの瞑想曲
コール・ポーター(?)/I love Paris(?)

ハンブルク・フィルの2010/2011シーズン終了後の特別コンサートです。昨年は「黄金の20世紀」ということで20世紀に書かれた作品を集めたコンサートだったのですが、今年のテーマは「フランス万歳!」、フランスの作曲家の作品を集めたコンサートになりました。

比較的有名な作品が集められるだろうし、比較的演奏時間の短い作品が多いので息子の集中力も続くだろうと思い、妻や息子の分のチケットも予約しておきました。妻と息子にとってはハンブルクでの演奏会デビューでした … が、私自身も今まで体験したことがないくらいの過酷な条件でした。とにかく暑い。ドアは完全に締め切られるので空気はこもるし、天井の擦りガラスからは日光が差し込むし、指揮兼進行役のヤングはスコアでパタパタあおぎながら次に演奏する曲の紹介をするし、男性演奏者は途中からみんな上着を脱ぎ出すし、で大変でした。というわけで演奏者も聴衆も集中力を保つのがきつかった演奏会でした。

以下、各曲ごとの簡単な感想など。

デュカスの《魔法使いの弟子》は映画「ファンタジア」でミッキーマウスが文字通り魔法使いの弟子に扮したショートフィルムでも有名な作品です。息子にもかろうじてこの作品だけ予習させていました。いみじくも「全然違う曲だった」と息子が指摘したように、ヤングが振るとずいぶん腰が重い音楽になってしまいます。

ミヨーの《フランス組曲》は最初に吹奏楽編成で書かれ、後に作曲者自身によって管弦楽編曲が行われた作品なのですが、一般のクラシックファンにはどのくらい認知度があるんでしょうね?演奏会では全5曲中、最初の3曲が演奏されました。吹奏楽編成での演奏に比べるとオーケストレーションは全体的にすっきりしているように思います。吹奏楽だとまとまった楽器群で演奏されているフレーズが、例えば管楽器のソロと弦楽器のテュッティの対比など置き換えられていました。第3曲「イル・ド・フランス」は何かの間違いではないかと思われるくらい早めのテンポ指定がある(スコアは日本に置いたままなので具体的な数値は忘れてしまいましたが …)のですが、果敢にそのテンポに挑戦していました。で、崩壊しました …

ベルリオーズの歌劇《トロイの人々》より「王の狩りと嵐」は初めて聞きました。今回のプログラムの中に混じるとベルリオーズの音楽はかなり古典的な響きに聞こえます。今回のプログラムの中ではいちばんヤングの個性に合っていた作品かも知れません。堂々とした金管の鳴らしっぷりが印象的でした。

サン=サーンスのピアノと管弦楽のための幻想曲《アフリカ》ではソリストにディー・ウーが登場しました。後で調べてわかったのですが、ディー・ウーは日本で開催された「のだめ」関連のコンサートでショパンのピアノ協奏曲を弾いたらしいですね。ジャズ(あくまでもクラシックの範疇でいうところのジャズ)っぽいリズムとエキゾチックな旋律が印象に残っています。同じくサン=サーンスが書いた歌劇《サムソンとデリラ》の「バッカナール」を思わせるような曲想も登場します。

ピアニストのアンコールは何だったんだろう?曲目不明。ほぼ全編に渡ってトリルが演奏される、いささか暑苦しい曲でした(笑)。

休憩をはさんでサン=サーンスの《死の舞踏》。私はこの作品がパロディ的に引用されている《動物の謝肉祭》の方ばかり聞いていたので、この作品の方がパロディに聞こえてしまいます。休憩明けで少しすっきりしたのか、のれるリズムだったのか、息子はこの曲も気に入ったようでした。

フォーレの組曲《ペレアスとメリザンド》からは有名な「前奏曲」とフルートソロで有名な「シシリアーノ」が演奏されました。あまり印象に残っていません。フルート奏者である妻は「プロでもあんなところでブレスするんだ」とか言っていましたが、詳細は不明。

デュパルクの《星たちへ》は作曲者も作品も初めて聞いた作品です。ドビュッシーにつながる印象主義的な作品で、とても繊細なオーケストレーションが印象に残りました。この作品は CD を買ってまた聞いてみたいです。

ドビュッシーの《喜びの島》。最近、近所でこの曲を練習している音が聞こえてきていたのは微妙にシンクロニシティ?もともとはピアノ曲で、これはドビュッシーに指示によってイタリア人指揮者のベルナルディオ・モリナーリが管弦楽編曲したものらしいのですが、まあ、派手な編曲はこの作品には向かないですね。確かに作品自体にもラテン的な雰囲気はあるのですが、私は原曲のまどろむような色彩感が好きです。(確か、マルティノンのドビュッシー管弦楽全集にも収録されていなかったような …)次に演奏されたドビュッシー編曲によるサティの《ジムノペディ第3番》のミニマムなオーケストレーションの方にセンスを感じます。

このあたりで集中力もほぼ限界 … オッフェンバックの《パリの喜び》から「序曲」、シャブリエの狂詩曲《スペイン》あたりはいい意味で力が抜けていてよかったのではないかと思います。

演奏会その41: ハンブルク・フィル(第9回)

9. Philharmonisches Konzert

Mon, 20:00 / Laeiszhalle / Großer Saal

Philharmoniker Hamburg
Deborah Polaski Sopran
Dirigentin Karen Kamensek

Sergej Rachmaninow: Die Toteninsel / Symphonische Dichtung op. 29
Arnold Schönberg: Sechs Orchesterlieder op. 8
Peter I. Tschaikowsky: Symphonie Nr. 5 e-moll op. 64

全然予習する暇がなくて臨んだハンブルク・フィルの第9回定期公演だったが、期待以上に楽しめた。プログラムはラフマニノフの《死の島》、シェーンベルクの《6つの管弦楽歌曲》、それからチャイコフスキーの交響曲第5番だった。

指揮者のカレン・カメンセクは1970年アメリカ生まれの女性指揮者。2000年ごろからドイツやオーストリアの主に歌劇場で活躍していて、ハンブルク歌劇場でも何度か振っているようである。レパートリーを見ると比較的現代ものが多い。

とにかく、この指揮者のオーケストラコントロールのうまさに惚れ惚れしてしまった。指揮法の的確さと、全体を見据えた構成力のバランスがとてもいい。ハンブルク歌劇場でも指揮経験があるということなので、このオーケストラとの付き合いも長いのだと思うが(ハンブルク・フィルはハンブルク歌劇場での演奏も担当している)、「オーケストラからこういう音を引き出したい」という明確な意思がある棒と、それに応えるオーケストラ、という構図がとても説得力のある演奏を生み出したように思える。

細かいところまで逐一コントロールしようとする姿勢はチャイコフスキーの交響曲のようなある意味大ざっぱな作品だと聴衆に息苦しさを感じさせる懸念もあるし、時としてその精密さがあざとさに聞こえてしまう可能性もあるが、まあこれも個性のうちなのだろう。いままであまり魅力的に思えなかったチャイコフスキーの交響曲第5番をここまで感動的に聞かせてくれたことがいちばんの収穫だったかも。

演奏会その40: ハンブルク・フィル(第8回)

8. Philharmonisches Konzert

Joseph Haydn – Sinfonie G-Dur Hob. 1:100 “Militär-Sinfonie”
Mauricio Kagel – Zehn Märsche, um den Sieg zu verfehlen
Richard Strauss – Ein Heldenleben op. 40

Sonntag 18. April 2010, 11:00 Uhr

Dirigentin: Simone Young

本来、行けるはずのなかったハンブルク・フィルの今シーズン8回目の定期公演なのですが、図らずも聞きに行くことができました。

ハイドンの交響曲第100番《軍隊》、カーゲルの《勝ちそこないのための10の行進曲》、リヒャルト・シュトラウスの《英雄の生涯》というプログラムで、テーマは「戦い」ですかね?

前半はハイドンの交響曲とカーゲルの行進曲が交互に配置されるという構成でした。カーゲルの行進曲はご存知の方はご存知かと思いますが、弦楽器を一切使わない、いわば吹奏楽曲です。そういえばハンブルク・フィルとメッツマッハーのコンビがやっていた「20世紀音楽なんか怖くない」シリーズでも取り上げられていました。タイトルからもわかるように少々諧謔的な作品で、ハイドンの交響曲の雰囲気に見事に「水を差していた」と思います。まず、トランペット奏者がファンファーレを演奏しながら入場したり、フルート奏者とクラリネット奏者がステージを歩き回りながら演奏したり、ピッコロ奏者が退場してしまったり、視覚的な要素もある作品です。

ハイドンの方は、第1楽章でヤングの指揮に演奏者がついていけないところがあって、少々ぎくしゃくした感じで始まりましたが、徐々に修正されてきたと思います。ちょっともっさりした重めの響きがヤングっぽかったかな。

《英雄の生涯》はかなり人数も増えていますので響きも充実するのですが、強奏の部分でバランス的にトランペットや打楽器が突出してしまうところが気になりました。いわゆる「流している部分」の自然な響きの方が今日はよかったかなあ。「英雄の戦場」のテンポはかなり早め。リファレンスにしていたケンペ/シュターツカペレ・ドレスデンの演奏も早めだと思うのですが、それ以上に前のめりのテンポです。上記のようなバランスの不具合による荒さはありましたが、このアグレッシヴさはよかったと思います。

あとは必死に睡魔と戦っていました …

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ちょっと前に郵送でハンブルク・フィルの来シーズンの案内が来ていましたが、どこのオケも来シーズンのお客さん獲得の動きが出てきたようです。ハンブルク交響楽団のパンフレットがありました。メシアンの《峡谷から星たちへ》とか、ブラームスのピアノ協奏曲第1番と RVW の交響曲第5番を組み合わせたプログラムとか、このオケの選曲も個性的です。

それから、いよいよ2011年の3月と4月(ほぼ1年後ですが)にハンブルク歌劇場による《ニーベルンクの指環》の連続上演があります。どちらは聞きに行きたいのですが、まずは妻との交渉と、フランクフルト・ムジークメッセとの兼ね合いの調整だなあ …

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昼食は久しぶりに「EDEL CURRY」のカリーブルストを。電車で行ったので今日はビールを飲むことができました。早く家族と一緒にこのお店に来たいんですけどね。

来シーズンのハンブルク・フィル

引っ越し作業中の逃避行動 …

昨日、ハンブルク・フィルの来シーズンのプログラムを紹介する冊子が届きました。ご覧いただいてわかるようにグスタフ・マーラーのいろいろな作品にスポットを当てています。今年はマーラーの生誕150年のアニヴァーサリー・イヤーですし、1891年から1897年までハンブルク歌劇場の音楽監督を務めていたこともありました。

交響曲のみならず、第2番《復活》第1楽章の原型である交響詩《葬礼》、先達の作品のオーケストレーションを変更した編曲作品、交響曲以前に書かれていた若書きのカンタータ《嘆きの歌》などです。

そういえば、毎年レコーディングが続けられていたブルックナーの交響曲は次回シーズンでは一休みのようですね。

さすがに今シーズンのようにバカバカ聞きに行くわけにはいかなくなりそうですが、ベルクのヴァイオリン協奏曲や武満徹のブラスアンサンブル作品《シグナルズ・フロム・ヘヴン》はぜひ聞いてみたいです。

第1回(指揮:シモーネ・ヤング)

  • ベルク/ヴァイオリン協奏曲
  • マーラー/交響曲第1番《巨人》

第2回(指揮:シモーネ・ヤング)

  • シューベルト/水上の精霊の歌
  • マーラー/交響曲第2番《復活》

第3回

  • ベートーヴェン/交響曲第4番
  • ペーター・ルジツカ/… 島、孤立 …(訳は適当です …)
  • マーラー/交響詩《葬礼》

第4回(指揮:シモーネ・ヤング)

  • 武満徹/シグナルズ・フロム・ヘヴン
  • マーラー/交響曲第3番

第5回

  • オルガ・ノイヴィルト/Clinaman/Nodus(何語だ?これ?)
  • ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第3番
  • シューマン(マーラー編曲)/交響曲第3番《ライン》

第6回

  • ニールセン/パンとシリンクス
  • モーツァルト/交響曲第41番《ジュピター》
  • シベリウス/交響曲第1番

第7回(ピアノはバレンボイム、指揮はシモーネ・ヤング)

  • リスト/メフィスト・ワルツ第1番《村の居酒屋での踊り》
  • リスト/ピアノ協奏曲第2番
  • リスト/ピアノ協奏曲第1番
  • リスト/交響詩《マゼッパ》

第8回(指揮:シモーネ・ヤング)

  • ヘンツェ/夢の中のセバスチャン
  • マーラー/交響曲第7番

第9回(指揮:クリストファー・ホグウッド)

  • ウェーバー(マーラー編曲)/歌劇《3人のピント》間奏曲
  • シューベルト(マーラー編曲)/弦楽四重奏曲《死と乙女》(弦楽合奏版)
  • メンデルスゾーン/交響曲第5番《宗教改革》

第10回(指揮:シモーネ・ヤング)

  • グバイドゥーリナ/メルヘン・ポエム
  • マーラー/嘆きの歌

演奏会その36: ハンブルク・フィル(第7回)

朝から不測の事態が続いて大変な一日でしたが、まあ何とか夕方までには収束させることができて無事演奏会へ。

7. Philharmonisches Konzert

Wolfgang Amadeus Mozart – Serenade G-Dur KV 525 “Eine kleine Nachtmusik”
Arnold Schönberg – Verklärte Nacht op. 4
Claude Debussy – Nocturnes
Karol Szymanowski – Sinfonie Nr. 3 op. 27 (Das Lied der Nacht) für Tenor, Chor und Orchester

Montag 15. März 2010, 20:00 Uhr

Dirigentin: Simone Young
Tenor: Stig Andersen
Chor: Tschechischer Philharmonischer Chor Brno

ハンブルク・フィルの今シーズン第7回目の定期演奏会です。わかりやすくテーマは「夜」。モーツァルトの《アイネ・クライネ・ナハトムジーク(直訳すると小夜曲)》、シェーンベルクの《浄められた夜》、ドビュッシーの《夜想曲》、シマノフスキの交響曲第3番《夜の歌》というプログラムでした。

プログラムが進むにつれて、だんだんステージ上の演奏者の人数が増えていくのが面白かったです。

《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》は小さめの弦楽合奏、それにさらに弦楽器が加わって《浄められた夜》は大規模な弦楽合奏、休憩後はそこに管楽器とハープと女声合唱が加わって《夜想曲》、最後はさらなる管楽器、オルガン、男声合唱、テノール独唱が加わって《夜の歌》となりました。

演奏の方は、最初の3曲があまりぱっとしませんでした。曲の作り込みが足りずに「手癖で何とかしてみました」といった感じの演奏。先週の歌劇場の初演などがあって、これらの曲への時間が足りなかったのかな?とも邪知してみたくなります。(ハンブルク・フィルはハンブルク歌劇場の伴奏も担当しているので)

《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》は意図的かどうかわかりませんが、各音のアタックを柔らかめにして真ん中をふくらませるようなサウンドの作り方でした。音の重なりは聞き取りやすくなると思うのですが、軽快さは失われてしまいます。私は軽快な溌剌としたサウンドを期待していたのですが …

《浄められた夜》は前半こそ大規模な編成ならではの彫りの深さ、例えばソロイスティックな部分と全合奏の部分の対照や少々誇張されたアゴーギクなど、が劇的でよかったのですが、曲の作り方というかアプローチが一本調子だったように思います。後半の長調が支配的になってくるあたりではちょっと辟易してきました。

《夜想曲》は編成的にも曲調的にもわかりやすいので上記の2曲よりは聞いていて面白く感じました。金管はいまいちでしたが全編を通して木管のソロが安心して聴けました。最終曲の「シレーヌ」はもう少し落ち着いて厳かな鳴りの方がよかったのではないかと思います。

で、やはりシモーネ・ヤングにはシマノフスキの《夜の歌》のような重厚な作品の方が合っているように思いました。(席のせいもあるかも知れませんが …)オケが飽和したようなサウンドで線的な動きが聞き取りにくい箇所もありましたが、この曲の雰囲気ではあまり違和感はありません。少々病的な雰囲気のある曲調にヤングが作り出すマッシヴな響きはよく合います。プログラムにはマーラーの《大地の歌》やツェムリンスキーの《叙情交響曲》に影響を受けたと書かれていましたが、個人的にはスクリャービンやシェーンベルクの《グレの歌》あたりとの距離の方が近いのではないかと感じます。

(余談ですが、この曲はカンタータ風の両端楽章と、それらにはさまれたスケルツォ的な楽章が切れ目なく演奏されます。このスケルツォ楽章のモチーフの一つが《ミシシッピ組曲》(グロフェ)の「ハックルベリー・フィン」に似ています。「アメリカ横断ウルトラクイズ」の勝ち抜けの音楽で使われていたのですが。)

一週間以内に同じ曲を別々のオケで聞く機会というのもなかなかないと思うのですが、今週の金曜日はウィーンフィルの演奏でこの《夜の歌》を聞きます。ウィーンフィルの密度の高い音色はこの作品に合っていると思うので楽しみです。

演奏会その31: ハンブルク・フィル(第6回)

「そういえば、そろそろ今月のハンブルク・フィルの定期があるはずだけど、いつだったっけ?」と思い出したのが昨日の夜でした。危ない危ない。

例によってライスハレの近くに路上駐車して、例によってライスハレの近くの「am Gänsemarkt」で軽く夕食をとろうと思ったのですが、何かいつもと雰囲気が違います。

天井から無数の紙テープが下がっていて、店員さんやお客さんの中にはコスプレ(というか変装というか)している人もいます。ふだんは80’sがまったりとBGMに使われているのですが、今日はダンスミュージックがガンガンにかかっています。途中で踊り出す人も出てきました。よくよくカレンダーを見てみると、今日はカーニヴァルのイベント「バラの月曜日(Rosenmontag)」ということでした。このお店はケルンのビール(ケルシュ)が飲める店で、ケルンで行われるカーニヴァルはけっこう有名らしいので、まあ疑似体験というところでしょうか。

いつものアルコールフライと、今日はこのお店で初めてカリーブルストを注文してみました。カリーブルストは可もなく不可もなく、といった感じです。

6. Philharmonisches Konzert

Ralph Vaughan Williams – Fantasie über ein Thema von Thomas Tallis
Edward Elgar – Konzert für Violoncello und Orchester e-Moll op. 85
Oliver Knussen – Ophelia dances, Book 1 op. 13
Edward Elgar – Enigma-Variationen op. 36

Montag 15. Februar 2010, 20:00 Uhr

Dirigentin: Simone Young
Violoncello: Alisa Weilerstein

今シーズン6回目のハンブルク・フィルの定期公演です。今回は、ヴォーン=ウィリアムズの《タリスの主題による幻想曲》、オリヴァー・ナッセンの《オフィーリアの踊り》、エルガーの《チェロ協奏曲》と《エニグマ変奏曲》というイギリスの作曲家の作品を集めた演奏会となりました。

チェロ協奏曲のソロを務めるのはアリサ・ワイラースタイン。実は2008年の1月にハンブルクに出張に来た時に北ドイツ放送交響楽団とドヴォルザークの《チェロ協奏曲》をやった演奏会を聞いています。

実は今までエルガーの作品をあまり聞いたことがなくて、行進曲《威風堂々》の第1番とか、《愛の挨拶》とか、吹奏楽コンクールで演奏される《エニグマ変奏曲》の抜粋(多くの場合「Nimrod」とフィナーレだと思います)くらいしか知りませんでした。《チェロ協奏曲》は夭折の天才女流チェリスト、ジャクリーヌ・デュプレがレパートリーにしていたということで、彼女とバルビローリ/ロンドン交響楽団の演奏で予習しました。

若手の女流チェリスト、そしてエルガーのチェロ協奏曲を演奏するとなれば、多かれ少なかれ演奏者も聴衆もデュプレの呪縛を意識せざるを得ないのではないでしょうか。デュプレの上をいこうとして、よりエモーショナルに演奏するというアプローチもあると思うのですが、一歩間違うと鼻白む自己満足に陥る危険性もあります。そうなったら嫌だなあ、と思っていたのですが、ワイラースタインはわりと客観的なアプローチでかちっかちっと弾いていたように思います。いわば実直なソロだったのですが、それでも感動的でした。前回聞いた時には柔らかい演奏をするという印象があったのですが、今回はがっちりとした骨太な演奏でした。

しかし、この曲はソリストとオーケストラが合わせるのが難しいですね。曲のラストも含めて微妙にアインザッツの呼吸が合わずに聞いていてハラハラする場面が何回かあったので、曲が終わった後の満足感が得られませんでした。ちょっと残念です。

《タリス》や《エニグマ》の弦楽器を朗々と歌わせる部分でオケをドライヴするヤングの音楽の作り方は本当にうまいです。ただ、(あまりこのドグマは持ち出したくないのですが)こういうイギリス音楽の歌い方としては、少し音が湿り気を帯びて重くなっているような気がしました。もう少しすっきり響かせてもいいのではないかと。それから《エニグマ》のテンポの速い部分がちょっと雑に聞こえて未整理だったかな。まあ、音楽全体の流れはよかったので最後は盛り上がりましたが。

ナッセンの《オフィーリアの踊り》は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ホルン、イングリッシュホルン、クラリネット、フルート、チェレスタ、ピアノのための音楽。10分程度の作品で前半はずっとテンポの速い変拍子が続き、後半は無拍子(指揮者のキューのみで音楽が進む)でホルンのソロを中心に展開します。演奏技術的には素晴らしかったのですが、音楽の内容はよくわかりませんでした。

演奏会その27: ハンブルク・フィル(第5回)

5. Philharmonisches Konzert

Johannes Brahms – Tragische Ouvertüre op. 81
Johannes Brahms/Detlev Glanert – Vier Präludien und Ernste Gesänge für Bariton und Orchester
Anton Bruckner – Sinfonie Nr. 1 c-Moll (Urfassung, “Linzer”)
Sonntag 24. Januar 2010, 11:00 Uhr

Dirigentin: Simone Young

今日はハンブルク・フィルの今シーズン(ちなみに第182シーズン目だそうです)5回目の定期公演。9月の第1回以来、久しぶりに音楽監督のシモーネ・ヤングが指揮台に立ちます。

1曲目はブラームスの《悲劇的序曲》。恥ずかしながら初めて聞いたと思います。というわけで他の演奏を聞いたわけではないので比較はできないのですが、冒頭のテンポは通常よりも早いんだろうなあ、と想像されます。オケも指揮者もかなり気負っていたようでちょっと慌てる感じでしたが、だんだん落ち着いてきました。

2曲目はブラームスの《4つの厳粛な歌》。この作品はブラームスの死の前年に書かれたという最晩年の作品で、歌詞は聖書から取られているそうです。ちなみにこの歌曲の第1曲目の冒頭で歌われる旋律は童謡《黄金虫》にそっくりということで知られています。↓こんな感じで。

この作品、ブラームス自身による管弦楽伴奏のスケッチも残っているらしいのですが、結局それは完成せず、現在はピアノ伴奏だけが残っています。今日演奏されたのは、ドイツ生まれ(1960年)の作曲家デトラフ・グラナートが管弦楽編曲を行ったものです。4曲は続けて演奏され、それぞれの歌曲の冒頭にはグラナート自身が作曲した前奏曲が追加されており、また原曲にはないエンディング(後奏曲)も追加されています。

残念ながらバリトン独唱の歌手がキャンセルということでした。演奏会の最初にシモーネ・ヤングが説明していたのですが、当然ドイツ語なのでわかりません。ただ、説明の途中で聴衆が一斉にため息をついたので何となく察しはつきました。その代わりに、オケの首席チェロ奏者が独唱パートを演奏するという形になりました。せっかくプログラムにドイツ語の歌詞が書かれていたのに追えないし、チェロの音色は当然のことながらオケに埋没してしまうことがあるので声部として明確に聞こえなかったのがちょっと残念でした。作品としては歌の伴奏部分のオーケストレーションは比較的オーソドックスだったのですが、前奏曲に入ると全く語法が変わって現代的になるのが面白かったです。消え入るように終わる後奏も印象的でした。

ブラームスはそれほど聞き込んでいない作曲家だし、どちらも聞いたことのない作品だったし、途中で退屈してしまうのではないかと考えていたのですが、全然そんなことはありませんでした。意外にウマが合う作曲家なのかも知れません(笑)。

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休憩後はブルックナーの交響曲第1番。前回、ハンブルク交響楽団の交響曲第5番を聞いた時にくじけてしまったので、今回はかなり一所懸命予習しました。そういえばヤングとハンブルク・フィルのコンビは初稿によるブルックナー交響曲全集の録音が進行中ですが、探してみたところまだ第1番のCDは発売されていませんでした。今日はたくさんのマイクが立っていたのでこのライヴを録音しているのかも知れません。

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予習のかいあってか、あるいはまだブルックナーとしての個性が十分ににじみ出ていない初期の交響曲だからか、前回のような不本意なことにはなりませんでした。分厚いブルックナー的なオーケストレーションは見受けられますが、まだ古典的な4楽章交響曲の構成に多少なりとも固執しているのかなあ、という気がします。

オケの「鳴り」についてはもう少し洗練さが欲しい気もしましたが、全体としては非常にいい演奏だったと思います。例によってヤングは精密というよりは大きな流れで音楽をとらえているように思いましたが、その棒の動きが的確に音楽的に表出されるのは、さすがに音楽監督として自分のオーケストラをうまく引っ張っているという感じでした。私のリファレンスはインバル/フランクフルト放送響の演奏だったのですが、サウンドの構築感という意味ではインバル、曲全体の音楽的な構築感という意味ではヤングに軍配をあげたいです。

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昼食は、またまたライスハレ近くのカリーブルストのお店「EDEL CURRY」へ。イェーファーのピルス、ポテト付きカリーブルスト、ミックスサラダ(ちなみにです、これ)で満足です。

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お店にこんな張り紙があるのを見つけました。やはり、このお店は一般的にも評価されているんですね。自分の味覚センスにちょっと安心(笑)。

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しかし、本当に寒いです。午後2時過ぎで気温マイナス8℃。

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演奏会その24: ハンブルク・フィル(第4回)

雨は夜更け過ぎに雪へと変わりました。

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4. Philharmonisches Konzert
Montag 14. Dezember 2009, 20:00 Uhr

Dirigent: Rafael Frühbeck de Burgos

Isaac Albeniz – Suite espanola (Orchesterfassung: Rafael Frühbeck de Burgos)
Igor Strawinsky – Suite aus “Der Feuervogel” (Fassung 1919)
Ottorino Respighi – Fontane di Roma
Ottorino Respighi – Pini di Roma

なんか、吹奏楽コンクールみたいなプログラムです。当初は予定になかったレスピーギの《ローマの噴水》も追加されたようなので、なおさらです。

指揮者のラファエル・フリューベック・デ・ブルゴスは1933年生まれとのことなので今年で76歳なのですが、ものすごくはつらつとした指揮をします。自身の編曲でもあったアルベニスの《スペイン組曲》の鋭いリズム感はいいですね。全体的な傾向として、速めのテンポで進み、聞かせどころでググッとテンポを落ち着ける、という作り方がどの曲でもみられました。あまり細かいことは気にせずにどんどんオケを引っ張っていき、肝心なところはしっかりコントロールする、という感じの指揮です。《ローマの松》以外はオーケストレーションも曲調も軽やかな感じなので、ぐんぐん前にいく感じは全然違和感ありませんでした。プログラム自体が多少短めのショーピース的な作品ばかりを集めたものだったので「こみ上げてくる感動」という感じではなかったのですが、どの曲も聞いていて楽しめる演奏でした。全体的な満足感は非常に高かったです。

《ローマの松》は、やはり燃えますね。ブラヴォーもたくさん出ました。ちなみに《カタコンブ》のトランペット・ソロはステージ上の奏者が舞台裏に移動して演奏していました。《アッピア》のバンダはステージの下手(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリンの後ろあたり)に座って演奏していました。一応、多少はオケ本体の奏者との掛け合いがステレオ的に聞こえていました。そういえば、《ローマの噴水》が終わったあとで指揮者は退場せず、そのまま拍手が終わったら間髪入れず、という感じで《ローマの松》を振り始めました。これにはちょっとびっくり。

演奏会その19: ハンブルク・フィル第3回

Sonntag 22. November 2009, 11:00 Uhr

3. Philharmonisches Konzert

Aaron Copland – Quiet City
Christian Jost – Pietà – in memoriam Chet Baker, Konzert für Trompete in B und Orchester
Erich W. Korngold – Sinfonie Fis-Dur op. 40

Dirigent: Christian Jost
Trompete: Sergej Nakariakov

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珍しく、かれこれ2週間ほどライスハレへ行きませんでした。今日は毎月恒例のハンブルク・フィルの定期公演です。今回も月曜日の公演を日曜日のマチネに切り替えてもらいました。コープランドの《静かな都会》、クリスチャン・ヨストの自作自演によるトランペット協奏曲《ピエタ》、コルンゴルトの《交響曲嬰ヘ調》という地味なプログラムなせいか、いつもより心なしかお客さんが少ないような気がしました。

《静かな都会》はイングリッシュ・ホルンとトランペットに弦楽合奏という編成。タイトルからも連想されるように全編に渡ってゆったりとしたテンポで演奏されます。

《ピエタ》のトランペット・ソロはセルゲイ・ナカリャコフ。「うららイン・ザ・スカイ」ももう10年以上前のことなんですね。「バンドジャーナル」でよく見かけた頃はいかにも天才少年という風貌だったのですが、すっかり大人の雰囲気を醸し出していました。曲ですが、私の苦手なタイプの現代音楽でした。ソロは多くの部分でハーマン・ミュートをつけてちまちまとしたパッセージを吹きます。ときどきジャズっぽいリズムがクライマックスを気付いたり、スパニッシュ・モードっぽい感じのトランペット・ソロが出てきたりしますが、もう少しトランペットっぽい、あるいはソロっぽい役割があってもいいのではないかなと思いました。何につけてもひっかかるものがない作品でした。これもCDが出ているようなので解説を読みながら聞き直せばもう少し理解できるのかなあ?

メインのコルンゴルトの交響曲ですが、まあマイナーと言っていいですよね。ユダヤ人だったためにオーストリアからアメリカに亡命し、そこで映画音楽を書いて生計を立てていたコルンゴルトが、第2次大戦後にウィーン楽壇への復帰を画策して書いた作品です。私はヴェルザー=メスト/フィラデルフィア管の演奏でかなり予習して臨んだのですが、この交響曲を初めて聞いて50分聞き続けるのは結構大変なのではないかと思います。構造的には古典的な4楽章交響曲、つまりソナタ形式の第1楽章、スケルツォである第2楽章、緩徐楽章の第3楽章、アレグロの第4楽章という形を取っているのですが、無調的な旋律で始まる第1楽章がかなり取っつきにくいので、ここで挫折するとそのあとも何となく煙に巻かれてしまいます(私がそうでした)。第2楽章以降はかなりわかりやすく面白い音楽なのですが。

そういうわけで、各楽想のキャラクターを明確に示した今日の演奏は非常にわかりやすかったし、楽しめました。反面、視点が微視的になりがちで、楽想ごとのつながりがあまり感じられなかったのが欠点だったように思います。第3楽章などは大きな流れでとらえないとクライマックスまでの到達感が不自然になってしまいますし、第4楽章は同じような旋律が続くので曲が漫然と流れてしまいます。まあ、ヨストの指揮を見ていると、そこまでコントロールするバトンテクニックは持ち合わせていないのかな、と思いましたが。

終演後、久しぶりに中央駅前の「NAGEL」で昼食を。

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自家醸造らしい黒ビールはかなり苦みがあります。メインディッシュは、まだ試していなかったハンブルガー・パンフィッシュ。画像だとよくわかりませんが、フライパンの中ほぼ半分がジャガイモです。マスタードソースの下の魚も一種類だったのでちょっといまいちだったかな。

食事をしているとハンブルガーSVのレプリカを来た集団が入ってきて、試合前の景気付けをやっていました。今日の試合は小野伸二が所属するボーフム。完全に格下だったのですが、ハンブルガーSVは0-1で負けてしまいました。足踏みをしている間に5位まで交代してしまいました。(小野が先発フル出場したのだったら見に行けばよかったなあ …)

演奏会その17: ハンブルク・フィル第2回

ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会は月に1回(正確に言うと同じ演目で日曜日と月曜日に2回開催されますが …)行われますが、今日は今シーズン2回目の公演です。

軽い夕食は、昨日見つけた「am Gänsemarkt」というお店で。ハンブルクではなかなかお目にかかれないケルシュを頼んでみました。「ケルシュ」と名乗れるのはケルン地方で醸造されたビールだけなのだそうです。

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シュタンゲと呼ばれる、くびれのないビアグラスに注がれます。これで300mlです。(ヴァイツェンなどの)上面発酵系の酵母を使って(ピルスナーなど)下面発酵系並みの低温で熟成させて作るのだそうで、爽やかというよりは後からコクが広がってくるような味でした。

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一応、軽く頼んだつもりです。グラーシュズッペ(グヤーシュ)とサラダ。やはりグヤーシュは本場ハンガリーのようにこってりとは作らないのがドイツ風なのかなあ?牛肉の細切れがたっぷり入っているので、それなりにお腹にはたまります。

軽く酔ったような気がしたので、食後にラテ・マキアートを飲んで少し落ち着けました。

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2. Philharmonisches Konzert
Montag 26. Oktober 2009, 20:00 Uhr

Alfred Schnittke – (K)ein Sommernachtstraum
Sergej Rachmaninow – Paganini-Rhapsodie für Klavier und Orchester op. 43
Dmitri Schostakowitsch – Sinfonie Nr. 5 d-Moll op. 47

Dirigent: Dmitrij Kitajenko
Klavier: Rudolf Buchbinder

会社から帰る車の中であらためて気付いたのですが、シュニトケもラフマニノフもショスタコーヴィチもロシア(あるいは旧ソ連)生まれですね。イメージされる曲想は三者三様なので全然注意していませんでした。

1曲目はシュニトケの《夏の夜の夢(ではなくて)》。今シーズンの第1回定期演奏会のメインだったメンデルスゾーンの《夏の夜の夢(ein Sommernachtstraum)》の冠詞 ein (英語だと a)を否定を表す kein (英語だと no)に変えた作品名です。こういう外国語での言葉遊びは日本語に訳すのが難しいですね。

メンデルスゾーンの《夏の夜の夢》はほとんど忘却の彼方なので、ここからの引用があるのかどうか不明なのですが、ハイドンやモーツァルトあたりのメヌエットを思わせる楽想(3拍子)から始まります。このあたりは折衷主義のシュニトケならでは。この楽想が繰り返されるたびにいろいろな現代的な要素が混じってきて「ぐにゃり」と屈折した音楽になります。これ、笑っていいんですよね(笑)?弦楽器の各プルトの右の人と左の人が別々に演奏する、つまり1列ごとにボウイングが違う箇所があります。これ、初めて見ましたがかなり異様です。その他、ほとんどクラスターに聞こえるアイヴズを思わせる混沌、突然金管と打楽器が行進曲を始めてしまう脈絡のなさ、面白いです。確か、クレーメルが弾いた《コンチェルト・グロッソ》の CD を持っているのですが、この《コンチェルト・グロッソ》がかなり深刻な曲想だったのに対して、明るさに満ちた音楽でした。

2曲目はラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》、この間も聞いたばっかりなのですが、前回のコンビに比べると「老練」という感じの演奏でした。アリス=紗良・オットがかなりきらびやかなピアノを弾いてオケとの対照が強調されていたのに比べると、ルドルフ・ブーフビンターはオケと相まって音楽を作っているように感じました。キタエンコのオーケストラ・コントロールもうまく、決めるところはしっかり決めた、という感じです。

ショスタコーヴィチの交響曲第5番は、特に第1楽章の前半や第3楽章の緊張感が見事でした。キタエンコは極力無駄な動きを排して、演奏者はもちろん、聴衆の緊張感も途切れないように指揮していました。あんな緊張感の中で演奏する演奏者も大変だと思いますが、演奏者の集中力も素晴らしかったと思います。第1楽章の後半、ホルンや弦楽器がユニゾンで演奏するところ(ああ、スコアが手元にあれば …)で今まで聞いたことがないくらいにテンポを落としていたのがかなり衝撃的で印象に残っています。正直、ロシアの指揮者って「どっかーん」系が多いと思っていたので多少の先入観があったのですが、キタエンコの指揮はとても気に入りました。今まで聞いた限りでは、常任指揮者のシモーネ・ヤングの音楽は比較的自由な感じが多いのですが、今日のキタエンコのような厳しい音楽だからこそ、このオケの底力が垣間見えたような気がしました。

あ、前回は都合により月曜日→日曜日に変更したので別の席だったのですが、今シーズンはここが定期会員としての私の席になります。

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