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リトル・ウィリーズ/マイケル・ジャクソン

相変わらずNaxos Music Libraryを聞きあさったり、iTunesの整理がてら忘却のかなたにあった音楽を聴いたりしているので、CDを買うのは久しぶり。

フォー・ザ・グッド・タイムス

ノラ・ジョーンズもメンバーであるカントリー・バンドの2作目。ノラ・ジョーンズが好きな私としてはちょっと食指が動く。

ううん、微妙。カントリーをやるのは音楽がスタイリッシュ過ぎないか?一杯5000円の牛丼を食べて(食べたことないけど)「うまいんだけど、何かが違う。」という感覚。泥臭ければいいというわけではないのだが、小奇麗過ぎるように思える。録音も妙にクリアで妙にデッドだし。

あと、ノラ・ジョーンズのヴォーカルについて。私はノラ・ジョーンズがちょっと力を抜いて歌っているスタイルが好きなのだ、とあらためて認識した。「ザ・フォール」に収録されている《チェイシング・パイレーツ》とか、「フィールズ・ライク・ホーム」に収録され、東日本大震災チャリティアルバム「SONGS FOR JAPAN」にも収録された《サンライズ》とか。

このアルバムだとテンポの速い曲にそういった歌い方が感じられるのだが、スローな曲では(私の耳には)ちょっと歌いこみ過ぎに感じる。

車の中で聞いただけだし、もうちょっと聞きこめば印象は変わるのかも知れないけど。

MICHAEL

ま、今さらですが、amazon.deで5ユーロで売られていたので。マイケル・ヴァージョンの《BEHIND THE MASK》を聞けるのなら安いものかなと。

この曲は「スリラー」に収録される予定だったのだが、マイケル側が作曲のクレジットと印税の50%を要求したためにYMO側が収録を拒否した、という逸話がある。ま、後日教授は逆輸入っぽくこのマイケル・ヴァージョンをセルフカバーしていますが。

その教授バージョンのバーナード・ファウラー(「未来派野郎」にも参加)のヴォーカルはかなりテンションが高かったのだが、マイケル・ヴァージョンはもうちょっと自然に歌っている。これが意外といえば意外だった。

 

 

12/11の徒然

朝早く目が覚めたので、先日買った “TALKING HEADS / CHRONOLOGY” を見る。これも「家族で見る」という類いのDVDではないので。

一応、トーキング・ヘッズの活動はクロノロジカルには押さえているつもりである。断片的な映像が並んで飽きてしまわないかなあ?という不安もあったのだが楽しめた。想像以上に、キャリアを通してかなり演奏スタイルが変わるのが見られる。

最初に登場する映像はメジャーデビュー前の1975年。まだジェリー・ハリスンが加入してない3人での演奏である。まだ、「ちょっと新しいことをやっているアマチュア」という感がある。

だんだん演奏が洗練され、だんだんシャイなデヴィッド・バーンが大胆にパフォーマンスしていくようになるのがわかる。

やはり、圧巻は外部ミュージシャンを入れてよりパワフルになった「Remain in Light」期のライヴ映像。

これは大好きなアルバムだし、1980年代を代表する傑作アルバムの一つだと思っている。

ただ、このライヴを見ていて、このアルバムおよびそれに付随するライヴは、バンドとしてのトーキング・ヘッズの許容量を超えてしまっているのではないかと感じてしまった。ここに来て大事なのはデヴィッド・バーンの感性とそれをサポートするブライアン・イーノのプロデュースであって、残念ながらその他のメンバーの存在感が希薄なのである。

ライヴが高揚している一方で、バンドの瓦解はこのあたりから始まっていたのかなあ、と思うと複雑な気分である。

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妻がドイツ語講座のお料理教室(夕食会)があるということで午後からは息子と二人。

事前に約束していたように午後2時にガブリエルの家に遊びに行ったのだが、すぐにガブリエルとその友人を連れて帰ってきた。ちょっとサッカーをやったあと、「カーズ2」を見たいということだったので3人で見ていた。ちなみに言語は英語で字幕スーパーを日本語にした。

夕飯は妻が作ったカレー。

 

12/10の徒然

夜更けから雪が降り出したようで、朝には少し積もっていた。

息子は早くかまくら or 雪だるまを作りたいようで、朝食を食べながら早く雪かきをしたいと言っている。そもそもそんなに降ってはいないし、気温はあまり下がっていないのでべしゃべしゃな雪なのだが …

それよりも早く、外からお隣のお子さんの声が聞こえる。お隣も同じように子供が雪かき(というか雪遊びというか)をしたがっているようだ。息子もうちの庭の掃除が終わった後、隣の子供たちに混じって遊んでいた。

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そんなわけで、今日は自宅でまったりモード。妻はガンダムのDVDの続きを見たがっているし、息子は届いたばかりの「カーズ2」を見たがっている。私はどちらでもいい(笑)、ということで「カーズ2」になった。

(以下ネタバレ)

「善」対「悪」の構図、それから「悪」の行動についての大義名分がわかりにくかったかな?息子に説明しつつも腑に落ちない点が多かった。ストーリーをひねり過ぎて中途半端になってしまった感も否めない。ただ、007シリーズに通じる、次から次へと手に汗握るエピソードが続くところはだれるところがなくてよかったかも。(という話を妻にしたら「007シリーズよりは面白い」と言っていましたが …)

やはり驚嘆すべきはグラフィック。ピクサーの作品を見るたびに毎回毎回よく進歩するなあ、と思っているのだが今回もすごい。イタリアのまばゆい太陽の風景(東京もパリもロンドンも実在する街が舞台なのであるが、明らかにモナコをモデルにしたポルト・コルサはなぜ架空の設定なのだろう?)のあとで舞台がロンドンに移動するのであるが、ちょっとどんよりしたロンドンならではの日差しが明らかにイタリアとは違う。なにか空気の質感の違いのようなものを感じた気がして感心してしまった。

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ハンブルガーSVはアウェイでマインツと対戦して0-0のスコアレスドロー。確かに監督が代わってから負けてはいないのだが、勝ち切れてもいないという印象。

ペトリッチが途中出場して久しぶりの復帰。前半戦最終戦(今年最後のブンデスリーガ公式戦)となるホームでのアウグスブルク戦(もちろん見に行きます)に間に合ったのがうれしい。

 

指環四部作

来年の3月に行われるハンブルク歌劇場の、いわゆるリング・ツィクルス—つまりワーグナーの楽劇《ニーベルンクの指環》一挙上演—を見に行くことにした。

2007/2008シーズンから年一作ずつ制作が進められていたこの4部作は、昨シーズンに《神々の黄昏》が初演され、その後に2回4部作の一挙上演が行われた。その時にチケットを取れなかったのですっかり諦めていたのだが、今シーズンも2回行われるようである。

1月末から2月にかけて行われる(今シーズン)第1回目の連続上演は毎週末の休日(つまり土曜日か日曜日)に行われる。さすがに家族との週末の夜が連続して失われるのは避けたかったので、これはやめた。第2回目は3月上旬に3/1(木)、3/4(日)、3/7(水)、3/11(日)と集中的に行われるし、リーズナブルなチケットも結構残っているのでこちらに行くことにした。

実はシモーネ・ヤングとハンブルク歌劇場のコンビの過去の演奏はすでにCDで出ていて、それらは Naxos Music Library でも聞くことができる。予習も兼ねて《ラインの黄金》から聞き始めている。

想像通り、かなりよい。拍手が入っているのでライブ収録のようだが、歌手とオーケストラのバランスもいいし、オーケストラの分離もクリアである。ヤングの持ち味である、重厚感と細かいところでのシャープさが共存して絵がなくても楽しめる。

… というか、音だけ聞いていた方が自分なりの情景を頭の中に思い描くことができていいのかな、と思ったしだい。自分が100%満足する演出はあり得ないだろうし、下手な演出はかえって全体的な印象を損ねることになりやしないか?という危惧もある。

というわけで、今回は舞台の見え方にあまりこだわらず(万が一寝てしまった時のリスクを低減するという意味もあるが …)なるべく安い席にしてみた。4公演トータルで100ユーロ以下。

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日本から取り寄せたブルーレイ/CDが到着。やはり20%くらいの関税を取られてしまう。

 

Talking Heads

会社の PC を Windows 7 にしたら通常業務に支障をきたすことがたくさん出て来てしまった。悪戦苦闘中。

今日もかなり雪が舞っているが、気温はそんなに下がっていないのですぐに溶けてしまう。積もるのはもう少し先か。

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とりあえず届いたもの。

【日本語字幕・テキスト完全対訳付】クロノロジー~グレイト・ライヴ1975-2002(デラックス盤)【初回生産限定48pハードバックカヴァー仕様】/トーキング・ヘッズ [DVD]

トーキング・ヘッズの映像作品というと、ジョナサン・デミ(「羊たちの沈黙」でアカデミー監督賞を受賞)が撮った「ストップ・メイキング・センス」が有名だが、これはタイトルの通り、いろいろな年代のライブをピックアップしたものらしい。

ハードカバーの冊子がついた初回限定盤がなくなりそうだったので、急いで amazon.com で買ったのだが、日本盤もあるのか … まあ、オーディオコメンタリーとかはちゃんと見ないと思うから、字幕はなくても何とかなるかな …

 

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日本人学校小学1年生のクラスは息子を含めて男の子が3名いるのだが、年末年始のタイミングで1名はフランクフルトへ、もう1名は日本へ帰国することになってしまった。男の子がクラスで1名(あとは女の子が6名)になってしまうので、さすがに淋しいらしい。

とはいえ、明日は女の子が2名、初めてうちに遊びに来ることになっている。それについてはうきうきしているようで、プレゼントするためにそれぞれの得意なものをレゴで作っているようだ。

 

矢野顕子×上原ひろみ

ほぼ1ヶ月に渡った「おいでませハンブルク」強化月間も終了。4チーム計10名の方と打ち合わせを行った。

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先日、日本からガサッと書籍を取り寄せたのだが、それに合わせて注文した一枚。

Get Together ~LIVE IN TOKYO~(初回限定盤)(DVD付)

たまたま amazon で見つけて、初回限定でDVDが付いてくるということなので「とりあえず買っておくか」くらいの気持ちで買ってみた。

もともとアッコちゃんは比較的良く聞くが、上原ひろみはちゃんと聞いたことがないという立ち位置である。

何の気なしに車の中で聞き始めたのだが、かなり圧倒されてしまった。久しぶりに最初からインパクトがあるCDを聞いたような気がする。

ふだんのアッコちゃんの弾き語りに比べると、ヴォーカルも奔放になっているし、ピアノもかなり凄いことをやっている。

 

日本版とは違うのだよ、日本版とは

「ケロロ軍曹」のおかげで、日に日に(私と息子の)ガンダム熱が高まっている今日この頃。

日本に帰った時には「ガンプラ」を買ってみようという話をしていて、当然息子はまずガンダムを作りたいと言っていた。私としてはそんなに重要な要素ではないのだが、息子にとってはコアファイターがちゃんと分離/合体することが重要らしい。Gファイターを検索してウェブで見せたときにも狂喜乱舞していた。

ということで、日本に帰ったら劇場版3部作のDVDでも買ってみるか、と考えてウェブをつらつら眺めていたのだが、けっこうなお値段がする。どうしようかなあ?と思って amazon.de を見ていたら、3枚で20ユーロ(約2000円)で売られていたので、つい買ってしまった。

 

おそらく、アフレコの差し替えが行われた、いわゆる「特別版」だと思うのだが、細かいことは気にしない。

そういえば、劇場版第2作「哀・戦士編」が公開されたのは私が中学生だった頃で、友人数人と見に行った。第1作を見ないままに第2作を見ることに釈然としなかった私は、映画館の前で「やっぱ、俺『エレファント・マン』見るわ」ということで、一人でデヴィッド・リンチ監督の「エレファント・マン」を見に行った記憶がある。わがままというか、いけすかないというか、ゴーイング・マイ・ウェイというか … な奴だったんだなあ。

まあ、実際、個人的にはリアルタイムではあまり盛り上がっていなかった。(友人は学校の階段で「アムロ、いきま~す」とかやっていたが。)

個人的にはまったのは高校三年生の時にテレビで再放送されたあたり。毎日夕方から再放送されていた。受験間近ということで部活もすでに引退していたので、家に帰ってきて、「ガンダム」を見て、ちょっと仮眠して、夕食を取って、それから勉強を始めるというのが日課だった。さすがにこういうピリピリした時期には友人と「ガンダム」の話題を共有することもなかったと思う。

大学に入って、久しぶりに「ガンダム」シリーズが再開するということで、同じ研究室の友人が大騒ぎしていた。今までこれは「Zガンダム」だと思っていたのだが、ちょっと調べてみたらタイミング的には「ZZ」の方が正しいようだ。まあ、この時期にはすっかり興味はなくなっていたが。

… というわけで、私はファーストガンダム以外ほとんど知らないし、興味がない。

さっそく、家族で第1作から見始めた。

地球とスペースコロニーの関係、ジオン公国と連邦軍の関係などを小学一年生の息子に理解させるのはけっこう大変。さらにニュータイプという概念、シャア(キャスバル兄さん)とセイラ(アルテイシア)の関係、ダイクン家とザビ家の関係なども加わったら、もうわけがわからなくなるだろうな。また、「スーパー戦隊シリーズ」などに比べてリアルな戦闘シーンは「ちょっと怖い」とも言っていた。

絵は最近のモノに比べるとはるかに稚拙だが、やはりストーリーには引き込まれる。最初はそれほど興味がなかった妻も「早く続きを見たい」と言っているし。

 

シューマン再び+サッカースクール

聞いた曲メモ。

最近なぜかわからないがシューマンの交響曲にはまっている。以前のエントリーではサヴァリッシュ/ドレスデン・シュターツカペレの演奏はピンとこなかったと書いたのだが、名盤と言われているのでちょっと聞いてみようかと思った。

ちなみにEMIはインターナショナル版のnaxos music libraryでは聞けるのであるが、日本版では聞けないようだ。

ううん、いいじゃないですか(笑)。1972年録音ということなので今から40年前。アゴーギクがわざとらしかったり、クライマックスの音色が荒くなったりと演奏様式が多少古臭い気もするが、これは個人的な好みによるものかも知れない。そもそも200年前に書かれた作品の演奏様式を今の尺度で考えても仕方がないし、古い録音の方が多少なりともシューマンの時代の演奏様式に近い可能性もあるのかな?とも思う。

まあ、いずれにせよ、ダウスゴーのような小さな編成のすっきりしたサウンドで大まかな構成を把握してからこの演奏を聴くと、大編成でありながら細部まで神経が行き届いていることがわかる。

またまた交響曲第1番《春》の第3楽章を例にとるが、ちょっとためたアウフタクト、すみずみまで意図が感じられる最初の主題のフレージングなど、それだけで感心してしまう。

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息子のサッカースクールのお母さん同士のメールで「ハンブルガーSVのサッカースクールが来年ハルステンベックに来るわよ!」みたいな情報が送られてきた。2012年7月23日〜27日の5日間、毎日9:30〜15:30までハンブルガーSVのトレーナーの指導でみっちり鍛えられるらしい。

現在のサッカースクールは週に一回2時間なので何とかやっていけているのだが、こんなに長期間に集中してやって大丈夫だろうか?とか、ドイツ語の説明を聞いたり初対面の子供たちとコミュニケーションできるのだろうか?とか、そもそも来年のその時期にドイツにいるのだろうか?とか、いろいろな不安がよぎるのだが、息子は純粋に「やってみたい」と言っていたので、やらせてみることにする。

同じサッカースクールの子供たちもかなり参加するようなので、彼らに助けてもらえればなと。

 

Dirty Projectors + Bjork

今日届いた、ダーティー・プロジェクターズとビョークのコラボレーションEP。

Mount Wittenberg Orca

もともとはダウンロード販売のみのリリースだったが、今回初めてCDとしてリリースされたらしい。

国際海洋保護区を設けるためのプロジェクトへのチャリティというお題目、それからこのジャケット写真のイメージから、勝手にかなりアンビエントな雰囲気を想像していたのだが、まあ面子からしてもそうなるわけはなかったのであって …

1曲目の「ぐにゃり」としたコーラスワークは???だったのだが、それ以降はいつものビョークよりはかなりポップである。ダーティー・プロジェクターズはちゃんと聞いたことがなかったのだが、彼らの作風に引っ張られているのだろうか?特徴的な女声のコーラスワークや、シンプルな(いかにもエクスペリメンタルなバンド風な)サウンドは、あまりビョークっぽくない。

とはいえ、お互いが持つこの「ぶっ飛び具合」は、確かに呼応するところがあるのだろうなあ、と思う。(ビョークはダーティー・プロジェクターズのファンであることを公言している。)

 

 

演奏会その49: Ryuichi Sakamoto Trio Tour 2011 (Hamburg)

というわけで、ハンブルクで開催された「Ryuichi Sakamoto Trio Tour 2011」を聞きに行った。
ハンブルクに住み始めてから、ピアノソロをロンドンに聞きに行ったり、Alta Noto とのコンサートをコペンハーゲンへ聞きに行ったりしたが、ハンブルクでのコンサートは初めてである。たまたまネットで見つけたのが発売直後だったようで、かなりいい席(最前列ど真ん中)をゲットすることができた。

   improvisation
    fukushima#01
    nostalgia
    aria for oppenheimer
    bibo no aozora
    seven samurai -end theme
    tango
    mizu no naka no bagatelle
    solitude
    sweet revenge
    merry christmas mr.lawrence
    the last emperor
    happy end
    m.a.y. in the backyard
    1919

    encore-1
    ichimei/harakiri – death of a samurai main theme

    encore-2
    parolibre

    encore-3
    aqua

正直、前半は「我慢大会」的なところもある。これは今回の演奏だけに限らないし前にも書いたことなのであるが、どうも個人的に煮過ぎたうどんのような rubato は受け付けない。ひたすら音楽が弛緩する方向に行ってしまう。まあ、これが意図したことなのであれば、それはそれで「あり」なのかも知れないが、ちょっとこのスタティックさはついていけない。

本編最後の5曲はよかった。前半のあまりにもスタティックな雰囲気と比べてコントラストをつけ過ぎ、という感もあるが、こういったビートの力強さもトリオの醍醐味だと思う。

《ラスト・エンペラー》は、かなり手垢がついた曲だと思うのだが、あらためて「いい曲だなあ」と思った。この曲だけではないが、オーディションで選ばれたというヴァイオリニストの旋律の弾き方が個人的にはとても合っている気がする。ピアノが醸し出す縦の動きに拮抗する横の動き、とでも言うのだろうか。

Twitter でもつぶやいたのだが《Happy End》の旋律にわずかに付加された装飾音(というかメリスマというか)に心かきむしられる思いがする。西洋的なものとも違う、日本的なものとも違う節回しに、時代を超えた、遠い昔からの哀しみを見るような気がするのである。

《1919》。この曲も接続部のミニマルな部分(というか、曲全体がミニマルですが)にちょっと仕掛けが加えられている。4/4 で演奏されている拍子から8分音符が一つずつ抜け落ちていって、それがまた一つずつ元に戻っていく、ということになっている。こんな感じ。
4/4(=8/8) * 4小節 → 7/8 * 4小節 → 3/4(=6/8) * 4小節 → 5/8 * 4小節 → 2/4(=8/4) * 4小節 →
5/8 * 4小節 → 3/4(=6/8) * 4小節 → 7/8 * 4小節 → 4/4(=8/8) * 4小節

アンコール1曲目は映画「一命」のメインタイトル。この曲を東京のスタジオでリハーサルしている時に東日本大震災に遭遇したというMCがあり、その後「原発を全て廃止するというドイツの判断を賞賛 (admire) する」というコメントもあった。

上にも少し書いたが、《Happy End》の雰囲気しかり、《Fukushima #01》という曲しかり、この《一命》を取り上げたことしかり、(「悲しみ」ではなく)「哀しみ」が色濃く反映されたコンサートだったように思える。少なくとも個人的にはそう捉えた。たとえば、以前のコンサートでは(MC によると)「重苦しい雰囲気を払しょくするために」《Put Your Hands Up》のような軽い雰囲気を持つ曲が選ばれたこともあったが、今回はそういうこともなかったし。

だとすれば、最後の2曲、トリオで演奏された《Parolibre》とピアノソロで演奏された《Aqua》は、そういった「哀しみ」を昇華する慈愛や祈りのようなものなのではないか、と思うのである。

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会場で「YELLOW MAGIC ORCHESTRA PHOTOGRAPHY BY MASAYOSHI SUKITA(英語版)」と、先日(といっても、もう5か月も前か …)発売されたベスト盤「YELLOW MAGIC ORCHESTRA」が販売されていたので、つい買ってしまった。あわせて40ユーロ(それぞれ30ユーロ、15ユーロのところを5ユーロ割引)ということなので、日本で買うよりはかなり割安だった。

(あ、でも日本盤は紙ジャケット仕様だったか …)

CDは「メンバー3人の合議による選曲の新編集ベスト盤」ということだが、個人的な経験から「合議」にすると、誰も推さず誰も否定しない中庸なものが選ばれてしまうのだなあ。