(ああ、語りたいことが多すぎて収拾がつかん …)
珍しく、ライスハレで行われた非クラシックのコンサートへ行って来ました。1月に発売されたニューアルバム「オーケストリオン」をひっさげてのパット・メセニーのコンサートです。コンサートの日程は彼のホームページで見ることができますが、まずヨーロッパを回り、それからアメリカ、その後6月頃に日本へ行くようです。
チケットを取るのが遅れたので、あまりいい席ではありませんでした。1階席の後ろの方で2階席のバルコニーの下。ステージは遠いわ、前の人と重なってステージが見えないわ、でいまいちでした。
ちなみにパット・メセニーのシャツは横縞ではなく、かなりシックな感じの単色シャツでした。まあ、どうでもいい話ですが。
「オーケストリオン」についてはかいつまんで説明するのが難しいので、彼のホームページにあるヴィデオを見て下さい。
要するに「ヤマハのディスクラヴィアのように」(と、パット・メセニー自身がMCで言っていました)MIDIでソレノイドをコントロールして、鍵盤を叩いたり、打楽器を叩いたりしているようです。また「ステージ上にはおよそ400個のソレノイドがある」とも言っていました。まあピアノ、ヴィブラフォン、グロッケンなどの鍵盤打楽器のそれぞれの鍵盤に対して1個ずつ割り当てないといけないと思うので、あっという間にそのくらいの数になってしまいますね。
これらの楽器が基本的には伴奏に徹しているのですが、ギターからの出力に合わせてメセニーがこれらの楽器を演奏することもできるようでした。例えばギターとヴィブラフォンのユニゾンなどもできます。
それから、これはオーケストリオンとは直接関係ありませんが、リアルタイムで自分の音を積み重ねていってループを作り、その上でソロを取るという文字通りの「一人バンド」もやっていました。これも文字で説明するのが難しいので以下のヴィデオを参考にして下さい。ジョニ・ミッチェルのライヴのサポートメンバーだった伝説のベーシスト、ジャコ・パストリアスがやっています(1:00 くらいから)。ちなみにパット・メセニーも参加しています。
【ニコニコ動画】Jaco Pastorius ''Slang''
で、今回のツアーの構成は、まずギター・ソロで始まり、3曲目(だったかな?)くらいからオーケストリオンのメンバーである Mr. フィンガー・シンバル(とMCで紹介されていました)が加わり、そこから徐々にオーケストリオンが使われていきます。で、アルバム「オーケストリオン」の収録曲の演奏。
2曲目のソロで使っていたのは「ピカソ・ギター」や「シタール・ギター」に似ていましたが、ネックが一つしかなかったようなので違うギターだったと思います。左手はネックをタッピングしてベースラインを演奏し、右手はギターのボディに張られている弦を演奏します。ボディ側の弦は何十本も張られていますが、何本かで一つのグループになっていて、そのグループが4つくらいボディの周囲に配置されています(ああ、これも文字で説明するのが難しい …)。
それぞれグループごとに特定のスケールにチューニングされているようなので、左で弦を押さえる必要がなく、コードに合わせてそれぞれのグループの弦を弾くことによってある程度コードに沿ったアドリブができます。
ここまでが前半。このあとはメセニーのMCを交えながら「オーケストリオン講座」のような形で進んでいきます。上で書いたようなことをメセニーが口頭で説明して、「あとは実際に聞いてみて下さい」ということで曲を演奏する、という流れです。
アンコールはやはり静かにソロで締めくくられました。トータル約2時間30分。
演奏を聴きながら「なぜメセニーはバンドではなく機械と演奏することを選んだんだろう?」とか「演奏者間のインタラクションの否定?」とか、いろいろなことを考えてみたのですが、よくわかりません。そもそも、最近のメセニーの活動はよく知らないし。ということで、いろいろな記事を読んでみて出した結論は「子供の頃に見て面白そうだった。だから一緒に演奏してみたかった。」ということに尽きるのではないかと考えました。
アルバムを聴いた時に感じたのですが、率直に言って音楽よりもアイデアが先行しているという印象は否めないと思います。とはいえ、これだけの機材を抱えてツアーに出ようという意欲(30年くらい前のYMOのツアーより大変かも)、「楽しくてしょうがない」といった感じのメセニーのMC、これだけの複雑な構成を破綻せずに演奏し切る技術、などには脱帽せざるを得ません。