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ケーゲルのカルミナ・ブラーナ
エアフルトでカフェの食事待ちを利用して買ったCDを聞いてみた。 ヘルベルト・ケーゲルが指揮するオルフの《カルミナ・ブラーナ》。 [tmkm-amazon]B000069JN5[/tmkm-amazon] 上記の amazon のリンクは Berlin Classics から出ているもののようだが、私が買ったのは東ドイツにあったレーベル ETERNA の録音を、ドイツの「Der Spiegel」という出版社(ちなみに本社はハンブルクにあります)が復刻したものらしい。ケーゲルは私の知る限り1959年と1974年に《カルミナ》を録音しているが、これは1959年の録音である。概ね、その古さを感じさせない瑞々しい録音である。 なんとなくケーゲルは「食わず嫌い」なところがあった。コラムなどで「凄絶」とか「緊迫」みたいな評が多かったからかも知れない。ただ、大学の先輩がケーゲルの新ウィーン楽派の作品集を絶賛していたし、確かにそこで聞かせてもらったヴェーベルンの《パッサカリア》は素晴らしかったという記憶がある。また、「究極の暗さ」ということで評価の高い(?)《アルビノーニのアダージョ》も怖いもの見たさ(聞きたさ)で聞いてみたいと思っているのだが、いまだに果たせていない。 で、この《カルミナ》であるが、音楽の作りは端正と言っていい。スプラッタ映画を見に行って意外にあっさりしていたので拍子抜けしたような感覚である。ただ、全般にバランスが高音に寄っているので、特に女声合唱や弦楽器の高音域がヒステリックに聞こえるのかも知れない。 あと、これは断言できないし、現在のレコーディングでも行われていて私が気付かないだけかも知れないが、曲の途中でかなり楽器間あるいは伴奏と合唱間のバランスを操作しているような気がする。まあ、そんなに不自然ではないので気をつけて聞かなければ気にはならないのであるが、今まで埋もれていた楽器が突然聞こえてきたりとか、音像全体のボリューム感が変わったりしたりする。 独唱がいまいち不安定なのが気になるが、合唱はうまい。基本的にはラテン語で歌っていると思うのだが、ドイツ語訛りが結構きつい。これも別に気にはならないが … オケもよくはないがよくがんばっている、という印象。 《カルミナ・ブラーナ》というとオイゲン・ヨッフム/ベルリン・ドイツ・オペラが名盤として知られているが、ちょっと優等生過ぎるかなという気もする。このケーゲルの演奏の少しデフォルメされた抑揚(デュナーミクやアゴーギク)が、私がこの曲に求めるある種の「破天荒さ」に合っているように思える。何度も繰り返されるオスティナートがだんだん強くなっていったり早くなっていったりすることには必然性があるわけで、ケーゲルの演奏を聴いていると「ううん、そうだよな、そうだよな」と思う瞬間が少なくない。最後のクライマックスとも言える “Ave formosissima” はかなり感動してしまった。
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オーストリア/チェコ/ドイツ旅行(その0)
昨年は春休みを利用してドイツ国内を車で縦断した。詳細な旅行記はこちら。 その1 その2 その3 その4 その5 今年はイースター(4/5〜4/9)が日本人学校の春休みと重なったため、少し長めの春休みを取ることができた。そこで、昨年よりも少し大回りをして、ハンブルクからミュンヘンまでAutozug(自動車も一緒に運んでくれる寝台列車)で行き、そこからオーストリア、チェコを経由して北上する、というプランで旅行することにした。 総走行距離は昨年よりも長いのだが、日程が長い分だけ一日あたりの移動は少なくなった。昨年の旅行では一日に300kmとか400kmとか移動してちょっと大変だったので … おおまかな旅程は以下の通り。 A: 自宅 B: ハンブルク・アルトナ駅 C: ミュンヘン東駅(B-C 間の移動のみ Autozug) D: ザルツブルク(ここからオーストリア) E: ザンクト・フローリアン F: リンツ G: チェスキー=クルムロフ(ここからチェコ) H: フルボカー=ナド=ヴルタヴォウ I: プラハ J: ザイフェン(ここからドイツ) K: ドレスデン L: ライプツィヒ M: エアフルト N: ヴェルニゲローデ O: ヒルデスハイム P: ツェレ Q: 自宅
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まごうことなき衝動買い
いろいろ届いた。 [tmkm-amazon]B006TX276C[/tmkm-amazon] そもそもはデヴィッド・シルヴィアンの30年間のキャリアを振り返るこのベストアルバムが欲しかったわけなのだが、つらつらウェブを眺めているうちに、最近価格を下げて再発されたチェリビダッケ・エディション(今年生誕100周年なのだそうだ)全4集、CDにして48枚を購入してしまった。 [tmkm-amazon]B005HYNCQ8[/tmkm-amazon] [tmkm-amazon]B005HYNCTA[/tmkm-amazon] [tmkm-amazon]B005HYNCTK[/tmkm-amazon] [tmkm-amazon]B005HYNCSG[/tmkm-amazon] 前の(結構な値段がする)ボックスが出たのは10年くらい前か?当時、ダリウス・ミヨーの《フランス組曲》の管弦楽版が聞きたくて、もう亡くなってしまった知人からこのボックスを借りたことを覚えている。 当時は、これらに収録されている、いかにも「大指揮者的な」レパートリーにはあまり興味がなかったので、それほど興味は湧かなかったのだが、最近の私の嗜好の変化から、ブラームスとかシューマンとか、それからリムスキー=コルサコフの《シェエラザード》などを彼の指揮で聞いてみたくなったのである。
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バルセロナ日記(その2) ガウディさんパート1+モンジュイック
バルセロナでの2日目。 前日のクラシコ観戦で2日目の午前中はグダグダになることが予想されたので、十分に睡眠を取ってから遅めに行動を開始しようと思っていたのだが、意外に家族全員すっきりと起きることができた。(多少のグダグダはいつものことだが(笑)) バルセロナといえばガウディ、ということで今日はガウディゆかりの地をたずねることにしていた。まずは比較的近いところに建てられているカサ・ミラとカサ・バトリョから。 その後、(例のごとく)息子が「ケーブルカーに乗りたい」と駄々をこね始めたので、地下鉄→ケーブルカー→ゴンドラを乗り継いでモンジュイック城へ。
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それはクラシコから始まった
朝、ふだんは寝起きの悪い息子が「ねえねえ、お父さん、昨日のクラシコどうだった?」と起きてきた。 8/15(日)の現地時間22:00から行われた、スーペルコパ・デ・エスパーニャ(スペイン・スーパーカップ)の第1戦、レアル・マドリー対FCバルセロナ。リーガ・エスパニョーラの開幕は今週末なのであるが、昨年のリーガ・エスパニョーラ(リーグ戦)の覇者であるFCバルセロナと、コパ・デル・レイ(スペイン国王杯、日本でいう天皇杯ですかね、カップ戦)の勝者であるレアル・マドリーが対戦する、いわゆる「エル・クラシコ」がリーガの前哨戦となった。 WOWOW も USTREAM で放送していたらしいが、昨日はワインを飲んでベロベロになってしまったので早めに寝た。朝起きてウェブで結果を確認した。 レアルはエズィル(そういえばドイツ代表のエズィルとケディラはレアルにいる)とシャビ・アロンソのゴール、バルサはビジャとメッシのゴールで2-2で引き分け。 そういうわけでバルセロニスタでもある我々は第2戦をカンプノウで観戦する予定。 カンプノウでのクラシコではむちゃくちゃ分がいいバルサなので気持ちのいい試合が見られることを期待しているのであるが、一方スーペルコパでバルサとレアルが対戦した時には(トータルで)必ずレアルが勝っているというちょっと不安なデータもある。 まあ、どうなりますことやら。
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2つで十分ですよ(でも5つ買いました)
amazon.com に注文していたブルーレイディスクが到着。 ブレードランナー アルティメット・コレクターズ・エディション [Blu-ray] ブレードランナーの「ファイナル・カット」「ワークプリント」「オリジナル劇場公開版」「インターナショナル劇場公開版」「ディレクターズ・カット」の5バージョンに特典映像が入った5枚組。 珍しくアメリカでも日本語字幕が入っているそうだし、安かったし(アメリカからの送料含めて $33 くらいだったから今のレートだと3000円弱)、未だにどのバージョンを個人的な決定版とするか判断に迷っているし、でこのセットを買ってみたわけである。 個人的にいちばん思い入れのある映画かも知れない。さすがに製品版ビデオテープは買わなかったが、レーザーディスク(これは「オリジナル劇場公開版」?)は買ったし、DVD も買ったし、今回のブルーレイディスクも買った。最初の劇場公開版(これは「インターナショナル劇場公開版」?)も見に行ったし、ファイナル・カットの劇場公開も見に行った。 古い映画をブルーレイディスクで見るのは初めての体験である。冒頭の、未来都市を遠巻きに眺めるシーンはなかなかのものなのだけど、今までの解像度の低い画面と比べると特撮部分と背景のマットペインティングの部分の境界がはっきり見えてしまう。まあ、映画を見進めてストーリーに没入していけばだんだん気にならなくなるのだけれど。 そういえば、「ファイナル・カット」を映画館で見た時には、それまであったデッカードのモノローグや後日談として実はレイチェルが死ななかったという説明がなかったことに違和感を感じたのであるが、今回はそんなに気にならなかった。どうやらファイナル・カットを個人的な決定版としてもよさそうだ。 さて、この映画、何といっても素晴らしいのは、ルトガー・ハウアー扮するレプリカント、ロイ・バティが死ぬ際のモノローグである。(ちなみに、それまで仲間の敵としてハリソン・フォード扮するブレードランナー、デッカードを追い詰めていたのであるが、最後の最後にあわや転落死、というデッカードの命を救うのである。)そして、このセリフ。一説によるとルトガー・ハウアーのアドリブなのだそうで。 I’ve seen things you people wouldn’t believe. Attack ships on fire off the shoulder of Orion. I’ve watched C-beams glitter in the dark near the Tannhauser Gate. All those moments will be lost in time, like tears in rain. Time to […]
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無題
Today, I have to say that I have nothing to say for today. I hope you can listen to Mr. Sergiu Celibidache and Mr. Carlos Kleiber conducting as much as you like there. May the peace be with you.
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実家に帰らせていただきます
ということで、お盆、孫の顔見せ、日本食材の買い出し、私が買ったCD/DVD/書籍の運び屋、などの目的で妻と息子が日本に一時帰国しました。 毎週金曜日は会社の食堂が休みなので外に昼食を食べに行くことになるのですが、今回はいつもと違うメンバーでインド料理のレストランへ行きました。ランチはバイキングということで4種類ほどのカレーが食べ放題です。 味は満足。今までタイ料理やベトナム料理のお店には入ったことがあったのですが、本格的なインド料理のお店は初めてでした。予想通りカレー自体の辛さはそれほど強くありませんが、付け合わせの漬け物のようなもの(何て言うんだろ?)が辛いので、これで辛さを調節できます。家族を連れてくることもできそうです。 夕食は久しぶりに「Asia Lam」へ。日本からの出張者を連れて来た時にはお姉さんが給仕をしていたし、先月家族を連れて来た時には改装中で7月いっぱい休業ということで入れませんでした。この店のおばちゃんに会うのはかれこれ4ヶ月ぶりくらいになります。「5月に家族がハンブルクに来たので、うちで食事をしないといけなくなってねえ …」という話をしたら「それで長い間来なかったのね(推測)」みたいな話になりました。 例によってアルコールフライのHolstenと、久しぶりにフォーを。やっぱりフォーはうまいです。
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松平敬/モノ=ポリ
松平敬さん。バリトン歌手。今までウェブ上でその活動を垣間見ることはできていましたが、演奏に接することができずにいました。その松平さんのソロアルバムをようやく耳にすることができました。 MONO=POLI (モノ=ポリ) まず特筆すべきはこのCDに含まれる全ての音が松平さん自身によって発せられていること。ファルセットも含めた歌唱で、最大16声部の合唱曲(リゲティの《ルクス・エテルナ》)を多重録音によって実現しています。 それから、そのミキシングについても松平さんの意志が最大限反映されていること。DAWを使って、各曲に適した残響(リバーヴ)、それぞれの声部の定位、それから各声部のピッチの微妙な修正(Melodyne というその筋では有名なピッチ修正用プラグインを使っているそうです)にいたるまで松平さん自身が行ったのだそうです。 ライナーノートの中で言及されていますが、コンサート活動を拒否したグレン・グールドが目指した「現実的には存在し得ない理想的な演奏」との共通性もあります。とはいえ、楽器を介在した演奏には何かしら演奏者の手の届かない領域があるわけです。例えば、ピアノの調律であったり、管楽器や弦楽器を製作する技術であったり。 そう考えると、声楽というのは演奏者の意図を100%(により近く)具現化することができるジャンルであり、そのように演奏者の意図が極限まで反映されたアルバムというのは、少なくともクラシックの分野では今までなかったように思えます。(J-POPだと山下達郎さんの「ON THE STREET CORNER」シリーズがすぐに頭に浮かぶのですが …) そんなことを考えていると、このアルバムの「極上のマニエリズム」に対して深い敬意を表したくなります。通勤時の車の中で聞き始めたのですが、どんどんボリュームをあげていきたい衝動にかられました。このアルバムの白眉であろう上記の《ルクス・エテルナ》では、まさにこの世のものとは思えない響きが聞こえます。(実際、いかなる実演でもこの響きを再現することは不可能なのですが) 久しぶりにショッキングなCDに出会えました。 予断ですが、以前仕事でお世話になった方(副業の方ですが …)がプロデューサーに名を連ねていたのを見てうれしくなりました。
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RVG from the USA
廃盤になったRVGリマスター盤を集めておりますが、amazon.de になかったので amazon.com から買った一枚が届きました。 Smoke Stack ピアノトリオ(ピアノ、ベース、ドラム)にベースをもう一本加えた編成です。 ボウイングでソロを取るベースのメリスマがちゃんとしたスケールになっていなくて、この気持ち悪さが癖になりそうです。微分音好きなので。(単に音を外しているという可能性もなくはないですが …)