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久しぶりにカンタベリーバカ
もはやカンタベリー・ミュージックの範疇をはみ出ているような気がするが … Ca Va 1998年にリリースされたスラップ・ハッピーの最新オリジナル・アルバム。1974年にヘンリー・カウとの共同名義で発表された「Desperate Straights」の直後にグループは解散したわけなので、アルバムとしては24年ぶりに作られたことになる。 (この間、1982年に一回だけライヴを行ったことがあるらしい。) 1970年代のアルバムはまだ入手可能だというのに(とか言っているくせにまだ私は買っていないのだが)このアルバムは廃盤。インターネット上の中古CDショップで探して入手した。 「Desperate Straights」以前のスラップ・ハッピーはまだ聞いたことがないのでよく知らないのであるが、その「Desperate Straights」の先鋭さに比べると、この「ca va」ではとんがったところが全然ない。1998年時点の同時代の音楽と比較してもオールド・スタイルな感じがする。 そのため、バックトラックのスタイルに多少のチープさを感じなくはないが、ダグマー・クラウゼのヴォーカルは「円熟」という他ない。全盛期のあの先鋭さがあるからこそ、この円熟味を感じられるのであろう。 そういうわけで年代順に聞くのがいいと思う。
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日本の行進曲
キングレコードから「The Best Collection of March」と題された行進曲シリーズが10枚リリースされた。とりあえず上記の4枚を購入した。 基本的には以前のシリーズを再編集したものなのであるが、何曲かはこのシリーズのために新録されたものもある。(どの作品が新録なのかちゃんと明記されているのが親切)中橋愛生さん(ネット上では NAPP さんという呼び方の方がわかりやすいか?)や福田滋さんが選曲に携わっているということもあって、旧シリーズの隙間にピンポイントで収まる秘曲を選んだという感じ。《行進曲「新潟」》(湯浅譲二)、《行進曲「信濃路」》(小山清茂)、近作では《行進曲「海辺の道」》(酒井格)、《コンセルト・マーチ「シンタックス・エラー」》(中橋愛生)など。 「コンサート・マーチ」と題されたCDは全日本吹奏楽コンクールの課題曲を中心に選ばれているが、課題曲からのセレクションとしては納得のいく選曲。吹奏楽コンクールでのある意味「歪な」演奏が残っていくよりは、こういう実直な演奏が残っていく方がいいと思う。 「戦前編」は各曲に個性が乏しい(と感じるのは私の修行が足りないから?)ので鑑賞するには少々辛いのであるが、この4枚はセットで聞いた方がいいと思う。歴史的にもスタイル的にも日本の作曲家による行進曲を俯瞰できる。
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テクノフィーバー
2月末からYMO関連の怒涛のリリースが始まる。2月はとりあえず周辺の作品群なのだが … 3月はメンバーの代表的なソロアルバムの紙ジャケ化がある。幻の「ディスアポイントメント・ハテルマ」(坂本龍一)、YMO 結成のきっかけとなったセッションが収録された「はらいそ」(細野晴臣)、YMO 絶頂期に制作された名盤「音楽殺人」(高橋幸宏)など。 4月は坂本龍一のコロンビア時代のソロアルバムの紙ジャケ化がある。初ソロアルバム「千のナイフ」や、渡辺香津美と組んでいた頃の「KYLYN」「KYLYN LIVE」など。(あれ半年前にコンプリート出したばっかりじゃん …) YMO 全盛期(1980年かな?)に NHK-FM の「サウンド・オブ・ポップス」という番組が1週間(5日間)YMO の特集を組んだ。司会は糸井重里。初日と最終日が YMO の話で、火曜日から木曜日は各メンバーにスポットを当てるという構成だった。(全部カセットテープに録音したんだけど確か消しちゃったんだよなあ …..) その中で YMO の周辺作品ということで紹介された曲の多くが、この「イエローマジック歌謡曲」に収録されている。《ユー・メイ・ドリーム》(シーナ&ザ・ロケッツ)とか《アイドル・エラ》(サンディー)とか《CARNAVAL》(大貫妙子)とか。 他の曲もベースラインやアレンジなんかを聞くと YMO の作品に似ていたりしてニヤリ。 当時も好きだったのだが、ラジの《ラジオと二人》という曲が妙に気に入っている。哀愁のあるメロディと歌詞がいかにも「歌謡曲」という感じがする。最近こういう「歌謡曲」っぽい曲って少なくなりましたね。 文献ではたびたび名前が挙がるテクノアイドル歌謡の傑作(といわれている)《ハートブレイク太陽族》(スターボー)は初めて聞いたが、眩暈がした(笑)。 姉妹品の「テクノマジック歌謡曲」は YMO のメンバーが直接絡んでいない歌謡曲のコンピレーションということだったのでとりあえず保留している。「電子音楽・イン・ジャパン」の著者でもある田中雄二さんのライナーノートを読んでみたい気もする。 3枚組55曲で4200円というのはかなりがんばった価格設定である。
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北欧吹奏楽作品集
RNCM ウィンドオーケストラは、イギリス、ドイツ、フランス、ロシアなど国別に作曲者を集めた作品集をリリースしている。 これは北欧の作曲家の作品を集めたCDである。確かリリースされた順番としてはフランスものとロシアものの間に位置するものだったと思う。遅ればせながらやっと買った。 Nordic Wind Banc Classics 例えば、イギリスものにはホルストやRVW、ドイツものにはヒンデミットの《交響曲》やシェーンベルクの《主題と変奏》、フランスものには《ディオニソスの祭り》や《フランス組曲》、ロシアものにはストラヴィンスキーの《サーカス・ポルカ》、プロコフィエフの行進曲集、リムスキー=コルサコフの《トロンボーン協奏曲》など、他のシリーズでは有名どころの作曲家や作品が収録されているが、この北欧作品集は極めて地味である。 作品として聞いたことがあったのはアウリス・サリネンの《コラーリ(コラール)》、作曲家としてかろうじて名前を聞いたことがあったのはラウタヴァーラやアルヴェーンといった具合。(ニールセンはもちろん聞いたことがあったが) 全般的な印象としては、いい感じで楽しめた。 個人的に昨今の、特にオランダ周辺の分厚い響きの作品はあまり好きではないので、このCDに収録されているような、声高にならない透明な響きはいかにも「管楽器がアンサンブルしている」という感じでほっとする。 上述のサリネンやラウタヴァーラは現代的な作風で、あまり地域性は感じられないのだが、アルヴェーンやトヴェイトといった作曲家の作品はシベリウスあたりからの影響が感じられる。 サリネンの《コラーリ(コラール)》は久しぶりに聞いたが、現代的で透明感あふれるオーケストレーション(ハープやチェレスタが使われている)が印象的である。トヴェイトの《シンフォニエッタ・ディ・ソフィアトーリ》はシベリウスに通じる作風の自然描写がコンパクトにまとまっている作品。これも気に入った。オーレ・シュミットの《ストラヴィンスキーへのオマージュ》はストラヴィンスキーの作風を踏襲しながら、《春の祭典》、それからなぜか《ボレロ》(ラヴェル)や《結婚行進曲》(メンデルスゾーン)まで引用しているパロディ的な作品である。 意外な収穫。
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グレインジャーの民謡集
HEARTOUTBURSTS/John Roberts and Tony Barrand にみにみさんのホームページ(http://nimi.dip.jp/)で紹介されていたCD。 「English Folksongs collected by Percy Grainger」という副題がついており、グレインジャーが収集したイングランド民謡を2人の歌手が歌っている。 《リンカンシャーの花束》で使われている6曲が収録されているし、RVWが《イギリス民謡組曲》の第1曲で使った「Seventeen Come Sunday」も収録されている。歌詞は全てこちらのページ(http://www.sover.net/~barrand/rgh/grainger.html)に掲載されているので見ることができるが、「Seventeen Come Sunday」は 17 歳になるという喜びを歌った歌と思いきや、実はある男が17歳の女の子に会ってゴニョゴニョ ….. という逢い引きの歌である(笑)。 どの曲も無伴奏あるいはシンプルな楽器での伴奏(スチールギターっぽい弦楽器、アコーディオンかリードオルガンのような鍵盤楽器、打楽器など)に留まっているし、和音が変わったり旋律に微妙な節回しが加わると、やはり古風なイングランド民謡という雰囲気になる。 購入したいというメールを何回か送ったのだがその時は全く返事が返ってこなかった。どうも、そのアドレスは使われていなかったようで、別のアドレスにメールを送ったらあっさりと購入できた。
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TOTO/ゆうがたクインテット
[rakuten]surprise-2:10131902[/rakuten] [rakuten]guruguru-ds:10395347[/rakuten] 某ブログで発売されていたことを知った「ゆうがたクインテット」のCDをさっそく購入。宮川彬良さんとアンサンブルベガによる室内楽で演奏される童謡やクラシックや歌謡曲。 子供向けとはいえ、とても誠実に作られている番組だと思う。媚を売って対象(この場合は子供たち)に近づくのではなく、対象が近づいてくるような姿勢。にも関わらず格式ばるのではなく、ユーモアも併せ持っている。こういうバランスの取り方は素晴らしいと思う。 こういった姿勢の番組は民放には作りにくいだろう。(ということで、私はちゃんと受信料払っています。) [rakuten]felista:10283456[/rakuten] [rakuten]hmvjapan:10207208[/rakuten] [rakuten]hmvjapan:10074839[/rakuten] [rakuten]guruguru-ds2nd:10363765[/rakuten] TOTOの紙ジャケ。リアルタイムに聞いたのは 3rd の「ターン・バック」と 4th の「聖なる剣」、それから今度出る 5th の「アイソレーション」あたりだったかな?
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ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
復活スルヤ演奏会’97 「スルヤ」といってもお店ではなくサンスクリット語で「太陽神」を意味する。 1927年に諸井三郎を中心に結成されたアマチュア音楽集団の名称である。 中原中也は「スルヤ」のメンバーではなかったが、非常に近しい存在であった。 最近、「昭和の作曲家たち―太平洋戦争と音楽」という本を読んでいるのだが(しかし分厚いなあ、読み終わるのはいつになることやら …..)、この本に「スルヤ」のことが書かれており、中原中也の詩に諸井三郎が詩をつけていたということを知って興味を持った。 このCDは1997年に中也の生誕90年没後60年に際して行われた演奏会の実況録音盤である。中也の詩による歌曲が集められているが必ずしも同時代の作曲家ばかりではない。また、スルヤの第一回発表演奏会で取り上げられた諸井三郎の《ピアノソナタ》も収録されている。 中也の詩というとどこか翳りのあるイメージがあるのだが、《サーカス》(清水脩作曲)あたりは妙に晴れ晴れとしていて違和感がある。やっぱり、あの 秀逸なオノマトペ「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」はほの暗いサーカス小屋の中で聞こえる音でなければいけないと思うのである。高らかに歌い上げてはいけないと思うのである。 中原中也記念館(http://www.chuyakan.jp/)からのみ購入可能。 蛇足ではあるが、諸井三郎は最近話題の西武グループ経営改革委員会委員長である諸井虔の父親である。作曲家諸井誠は諸井虔の弟。
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アメリカ空軍バンドのCD
Spirit of the Land(The United States Air Force Singing Sergeants) アメリカ空軍バンドの合唱隊「Singing Sergeants」の自主制作CD。 コンセプトはよくわからないが、コープランドの歌劇《テンダー・ランド》、合唱曲《シオンの壁》、バーンスタインの歌劇《キャンディード》、ジョン・ラターの《アメリカ年代記》などからの作品が収録されている。 密かにロン・ネルソンが編曲した合唱作品もある。
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BCL4
ブレーンから「BCL4」の情報をいただく。ついに「あの曲」がCDで聞けるらしい。
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吹奏楽・電子音楽・坂本龍一・などなど
出張。例によってTOWER新宿店へ。 Journey グレインジャーの《リンカンシャーの花束》が入っていたので。近年の録音では珍しく第3楽章はバージョンA(ソプラノサックスではなくフリューゲルホルンがソロを吹くバージョン)だった。 マルティヌーの管楽合奏とチェロのための《コンチェルティーノ》は久しぶりに聞いたらなかなか面白かった。 Phantasticke Spirites 表題作はドナルド・グランサムの作品で、このCDの演奏が世界初演。他にもスティーヴン・シュミットの《スピン》、ラン・ゲイラーの《サマラ》も世界初演。他にもグランサムの《ケンタッキー・ハーモニー》(これは《サザン・ハーモニー》の続編のようなもの?)、ティケリの《アメリカン・エレジー》、ウィテカーの《オクトバー》など近年の注目作が多く収録されている。演奏は今一なのだが … Dances with winds(Royal Northan College of Music Wind Orchestra) RNCM ウィンドオーケストラのおそらく最新盤。舞曲を題材にした吹奏楽作品を幅広く集めている。近作ではともにイギリスの作曲家であるケネス・ヘスケスの《ダンスリーズ》、アダム・ゴーブの《イディッシュ・ダンス》(この作品だけ「初録音」と銘打たれているのがちょっと違和感あるが …)、他にはギリシャの作曲家ニコス・スカルコッタスの《9つのギリシャ舞曲》とアメリカの作曲家ジョン・コリリアーノの《ガゼボ・ダンス》が収録されている。 スカルコッタスのギリシャ舞曲はもともと管弦楽のために書かれた36曲の中から作曲者自身がギリシャの軍楽隊のために編曲したものなのであるが、これこそ全曲録音されるのは初めてなんじゃないのかなあ?ちなみに管弦楽版全曲は BIS から出ている模様。これも聞いてみたい。 French Ballet Music of the 1920’s 1920年代にフランスの作曲家の合作で作られた2つのバレエ音楽《ジャンヌの扇》と《エッフェル塔の花嫁花婿》が収録されている。 前者はラヴェル、フェルー、イベール、ロラン=マニュエル、ドゥラノワ、ルーセル、ミヨー、プーランク、オーリック、フローラン・シュミットの10人、後者はいわゆる「六人組」のオーリック、ミヨー、プーランク、タイユフェール、オネゲルの5人(デュレは「六人組」を脱退していたため参加しなかった)による合作である。 雲井雅人によるシューベルト「アルペジョーネ・ソナタ」あふれる歌へのオマージュ シューベルトの歌曲である《冬の旅》を、アルトサクソフォンとピアノと歌&ナレーションに編曲したものが収録されている。ピアノと編曲は伊藤康英さん、ナレーションのテキストはリンボウ先生こと林望さん、舞台演出は松本重孝さん。 康英さんとリンボウ先生のコラボレーションは歌曲《あんこまパン》に始まり、数々の歌曲や交響詩《時の逝く》なども生み出しているし、松本重孝さんは康英さん初のオペラ《ミスター・シンデレラ》の演出も手がけている。そういった多方面の人脈がここに結集したという感じか。ぜひ舞台で見てみたいものだ。 貴志康一 バレエ音楽「天の岩戸」 28才で夭折した作曲家・貴志康一の60分にもおよぶ大作、バレエ音楽《天の岩戸》の世界初演(2004年9月)を収めたCD。作曲されたのは1932年から1935年の間というから、およそ70年の間眠っていたわけだ。 貴志康一の名前は以前から知っていた。戦前にベルリンに留学して、25歳でベルリン・フィルの演奏で自作を指揮したらしい。どんな音楽を書いていたんだろう? 葵の上|湯浅譲二 OMEGA POINT からリリースされた湯浅譲二の電子音楽作品集。http://www.web-cri.com/ でいろいろ批評されていたので聞いてみたくなった。 Microphone デヴィッド・チュードアが制作した電子音楽の古典的作品。TOWERによると今回なくなったら入荷未定とのことなのでとりあえず確保。ちなみにチュードアはジョン・ケージの《4分33秒》の初演者(笑)である。 Moog シンセサイザーの生みの親であるロバート・モーグ博士のドキュメンタリー映画「MOOG」のサントラ盤。1枚目の方のメンツは STEREOLAB くらいしか知らないのだが、MOOG の旗の下に集まってきた人たちなのだから、きっと面白いのだろう。「CLASSIC TRACKS」と題されたボーナス・ディスクでは ELP とか、DEVO とか YES […]