2009ベルリン」カテゴリーアーカイブ

展覧会その2: モデル・バウハウス

ベルリン中央駅からハンブルクまで行く電車の発車時間は午後3時。うだうだ起きて、朝食を食べて、用意をしたら10時。あまり欲張って観光しても疲れるだけだと思ったので、ホテルの近くにある「ベルリンの壁」関連のスポットを見て、電車に乗ってハッケッシャー・マルクト駅まで行って、その駅の近くにあるという自家醸造の黒ビールを飲みながら昼食を食べて、ベルリン中央駅に行く、という計画を立てました。

最初に訪れたのはホテルから歩いて5分くらいのところにある「トポグラフィー・オブ・テラー(テロの地勢図)」。第2次大戦中にゲシュタポの本部があったところだそうで、ナチスのいろいろな所業がパネルで説明されています。近くにはかなりの長さの「ベルリンの壁」が保存されています。

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… と、ここまで見たところで雨が強く降ってきました。とりあえず近くの「グロピウス美術館」で雨やどりすることにしました(また、このパターンか …)。展示を見ようかどうしようか迷っていたのですが、どうも雨はすぐには止まない気配だったので、展示を見ることにしました。

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「Modell Bauhaus」

今年はバウハウス設立90周年だそうで、過去最大規模の展示内容です。ちなみにバウハウスの創立者であるヴァルター・グロピウスは、この美術館に名前が冠されている設計者のマルティン・グロピウスの甥にあたるのだそうです。バウハウスというと、主に家具だとかポスターデザインだとか建築デザインだとかが思い浮かびますが、絵画はもちろん、総合芸術としてのシアター作品なども創作の対象になっていたのが今回の展示を見た収穫といえます。バウハウスの歴史を時間に沿って追うような展示構成だったので、今まで漠然とイメージしていたバウハウスの歴史も再確認できました。生徒の習作などはちょっと凡庸な感じがしましたが、バウハウスの業績を隅から隅まで俯瞰しようという試みは非常に informative でした。ちらちら時計を見ながら展示を見ていたのですが、結局2時間くらい見続けていて、最後の方はほとんど駆け足になってしまいました。もう少し時間があったらもっとゆっくり見たかったです。

ということで、併催されていたル・コルビュジェの展示については素通り。1958年のブリュッセル万博のために建設されたフィリップス館の展示もあって、エドガー・ヴァレーズの《ポエム・エレクトロニック》が BGM で使われていました。

午後1時過ぎに外に出たところ雨があがっていたので、チェック・ポイント・チャーリーだけは行ってみることにしました。グロピウス美術館からは徒歩10分くらい、ベルリンが東西に分割されていた時代の国境検問所の跡地です。

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まあ、跡地にある検問所の建物自体がレプリカなので、跡地のリアリティについて云々するのは意味がないのかも知れませんが、見事に観光地化されています。すぐ近くには土産物屋が多数立ち並び、検問所の近くにはアメリカ兵やソ連兵の衣装を来た人たちが「1 picture 1 euro」みたいな札を持って立っています。「トポグラフィー・オブ・テラー」が寡黙に(しかし雄弁に)歴史の重みを物語っているのとは対照的に、限りなく形骸化されてしまった観光スポットを見て、なんか、とてもやるせない気持ちになってしまいました。近くにあった「ベルリンの壁博物館」に行った方がよかったのかな?

このあたりでタイムアップになってしまったのでベルリン中央駅へ。フードコートだと落ち着いて食事ができない(し、うまいビールが飲めない)と思ったので、ドイツ料理のレストランに入りました。久しぶりの白ソーセージとヴァイツェンビール。よく見たらヴァイツェンは昨日の夜飲んだものと同じ柄のグラスでした。チェーン店か?

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さて、帰りの電車。指定券を予約していたのですが、乗り込んだらすでに人が座っていました。聞いてみると「この電車は代替運行なので、指定券は無効だ。空いている席に座りなさい。」と言われました。よく考えたら ICE を予約していたのですが、乗った電車は IC でした。しょうがなく空いている席へ。往路の ICE はでかいドイツ人に通路側の席をブロックされて写真が撮れなかったので帰りに撮ろうかなと思っていたのですが … 検札の際には車掌さんが切符に何か書いていました。ハンブルクに着いて、その文字を調べたらどうやら「代替運行」と書かれているようで、ドイツ国鉄の窓口に持っていたら返金してくれました。無効になった予約券分の 2 ユーロだけですが。

ハンブルクからベルリンまでの旅行は浜松から東京へ出かけるのと同じような感覚です。列車のダイヤ的には不可能ではないので「ベルリンフィル日帰りツアー」とかやってみようかな。

演奏会その8: ベルリンフィル

ベルリンフィルの演奏会を聞くためにベルリンへ出かけました。ドイツに来てからは初めての「お泊まり」になります。

前の日にビールを飲んで早く寝たからなのか、ベルリンフィルの演奏会ということでワクワクしていたからなのか(笑)、夜中の3時頃に目が覚めてしまい、それから明け方まで眠れませんでした。それでもいつもの週末のように8時30分頃に起床、用意をして11時くらいにアパートを出ました。

12時頃の ICE を予約して、約1時間30分ほどでベルリンへ到着。まずは昼食ということで駅構内の簡単なシーフードのお店で鮭のソテーを食べました。もちろん、さっそくベルリンのピルスナーを。わりとドライな感じです。

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ベルリンを最初に訪れたのは1998年でした。その時のベルリン中央駅はまったく記憶に残っていないのですが、今の駅は新しい建物で、かなり機能的に作られています。(その時はプラハからベルリンに入ったのでひょっとして中央駅まで行かなかったのかも知れませんが。)

(後日付記:気になったので調べてみました。現在のベルリン中央駅はドイツワールドカップの開催に合わせて2006年に開業したのだそうです。見たことなかったわけだ。)

ドイツに持ってきた観光ガイドを見ると、ベルリン中央駅からブランデンブルク門まで行けるUバーン55号線は工事中ということになっていたのですが、2009年8月(つい先月ですね)に開業したそうです。今はまだベルリン中央駅→国会→ブランデンブルク門と3つの駅しかないのですが、今まで中央駅からブランデンブルク門まで行くにはちょっと迂回する路線しかなかったので、かなり便利になったようです。

ブランデンブルク門駅でSバーンに乗り換えると、次の駅がポツダム広場になります。ホテルはこのポツダム広場駅の一つ先のアンハルター駅の近くにあります。とりあえずチェックインして、部屋に荷物を置き、身軽になったところでまた電車に乗り、ポツダム広場周辺やブランデンブルク門周辺を歩いてみることにしました。

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11年前にポツダム広場を訪れたときは「ドイツ再開発のシンボル」のような形で大規模な工事が行われていました。近くに「INFO BOX」という建物があって、この工事計画を説明する展示がありました。ここも現在ではソニーセンターをはじめとする近代的な建物ばかりになっています。ポツダム広場駅からソニーセンターを抜けて行くと、その先にベルリンフィルハーモニーホールがあります。演奏会は8時からなので、明るいうちに行って写真を撮っておくことにしました。

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その後、また一駅戻ってブランデンブルク門駅へ。ここはかつて「ウンター・デン・リンデン(「舞姫」風に言うとウンテル・デン・リンデン)駅」と呼ばれていました。駅構内にもその名残りがあります。また、駅構内の壁ではブランデンブルク門にまつわる歴史もいろいろ書かれています。

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ブランデンブルク門から東にのびる通りがウンター・デン・リンデン通りです。実は11年前にはこの通り沿いのホテルに泊まったので、そのホテルを再確認しようと思って通りを歩いてみることにしました。
ということで、通りの東端の「博物館島」まで歩いてみたのですが、どうも見つかりません。あとで妻にその話をしたら「あんな、いかにも「東ドイツです」という雰囲気のホテルじゃ商売できるわけないからつぶれたんじゃない?」とのこと。そうなのかなあ?

バスで最寄りの駅まで行ってそこからホテルに戻ろうとしたのですが、なかなかバスが来ません。同じようにバスを待っていた人と話をしてみたところ「いろいろなところでデモをやっているからバスが遅れているみたいだ」とのこと。そういえば、ポツダム広場駅前でも何かやっていました。ドイツでは月末に総選挙があるようなので、そういうデモとか集会とかが多いのかも知れません。ということで、もう一度ウンター・デン・リンデン通りを逆方向に戻ってブランデンブルク門駅へ。なんか無駄に体力を使ったような …
ホテルで仮眠してからいよいよベルリンフィルハーモニーホールへ。軽く腹ごしらえということでポツダム広場駅近くのアーケード内でブラウニーとカフェラテをいただきました。

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7時30分くらいに入場。ロビーがとても広いです。キャパは2440席ということなのでホール自体はアクトシティ浜松より少し大きいという感じなのですが。また自分の席に通じる入り口がどこかよくわかりません。席は前から4列目で壁から7席目でした。ちょっと前かな。でも指揮者を見るにはいい席です。

Sat  12. September 2009  8 pm

Philharmonie

Berliner Philharmoniker

Sir Simon Rattle Conductor
Angela Denoke Soprano
Lars Vogt Piano

Alban Berg Lulu Suite: Adagio
Paul Dessau Les Voix for soprano, piano and orchestra
Dmitri Shostakovich Symphony No. 4

もう何と言ったらいいのでしょう?最高の体験でした。とにかくオーケストラの機動性の高さを感じます。ショスタコーヴィチの《交響曲第4番》。一所懸命予習しました(笑)。とにかくどの楽器も本気を出さないと曲にならない作品だと思うので熱演になるのは必然なのですが、だからこそベルリンフィルの底力を見ることができたのだと思います。特に4管編成にピッコロ2本とEbクラリネット、バスクラリネットを加えた(つまり総勢20人)木管セクションのアンサンブルが聞き物でした。

超細かい話で恐縮ですが、この曲はクライマックスのあと、弦楽器が弱音で演奏するハ短調の響きの中でチェレスタが分散和音を演奏しながら消えゆくように終わります。このチェレスタが最初はハ短調の構成音(C-Es-G)を演奏しているのですが、最後は(G→A→D)とハ短調から離れていったままで終わってしまいます。この放り出された感覚がものすごく後を引きます。

ワインヤード型のコンサートホールで聞くのはすごく久しぶりのような気がするのですが、いつも聞いているライスハレ(こちらは古式ゆかしいシューボックス)に比べると弱音の粒立ちがはっきり聞こえます。演奏者が発した音が空中に放り投げられてそれがそのまま自分のところに落ちてくるような。逆にフォルテが若干つぶれたというかマスクされた感じで聞こえるのは席がちょっと前だったからかも知れません。今度はもう少し後ろで聞いてみたいと思います。

やはり、ウィーンフィルもムジークフェラインザールまで聞きに行こうかなあ …..

余韻を楽しみたいと思ったので、ソニーセンターの中にあるビアレストランへ。しかし、ここは午後10時過ぎでも人がたくさんいます。自家醸造というヴァイツェンとジャガイモのスープを注文しました。

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ベルリン一日目の感想。やはりハンブルクと比べるとはるかに都会です。ハンブルクはドイツ第二の都市と言われますが、街の規模を見ればその差はものすごく大きいように思います。