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今日届いた本
日本から取り寄せた本が届きました。 モーツァルト全作品事典 というわけで、モーツァルト大全集を買ってちょぼちょぼ聞いているわけですが、今まで知っていた曲や気に入った曲ばかり聞いていて、なかなか消化が進みません。まあ、こういうカタログ的に全作品を俯瞰できるガイドがあれば少しは視野が広がるのかなと。 私はよく違いがわかっていないのですが「complete」ではなくて「compleat」であるのがミソなのだそうで、何を「全作品」として含めるかどうかをきちんと定義してから作業を進めたのだそうです。 で、いきなりぶち当たってしまった疑問。モーツァルトにはヴァイオリンと管弦楽のための《ロンド ハ長調 K.373》という作品があるのですが、これを移調してフルートのために編曲したK.Anh.184という作品もあります。どちらも例の「モーツァルト大全集」には収録されているのですが、後者はこの事典では全く触れられていません。定義を見ると「全作品」に収録されてもおかしくなさそうなのですが … 教えて、えらい人。 バッハ=魂のエヴァンゲリスト (講談社学術文庫) クラシック関連の書籍を探していて見つけた一冊。確か磯山雅さんがバッハについて書いた本は講談社現代新書で読んでいたのですが、ドイツには持って来ていなかったし、モーツァルトやブラームスと同じようにバッハについてもある程度のパースペクティブを持っていたかったので読んでみることにしました。 鍵盤曲や声楽曲はほとんど知らないし、敷居も高いし … バロック音楽名曲鑑賞事典 (講談社学術文庫) こちらも、かつて購入したDHMの50枚組ボックスの消化がなかなか進まないのでカタログ的な知識が欲しかったのでした。 プレイバック 制作ディレクター回想記 音楽「山口百恵」全軌跡 「なぜこの時期に?」という感はありますが、去年山口百恵作品に目覚めた私としては興味ある本です。山口百恵の楽曲のほとんど(全てではない)に立ち会った制作ディレクターによる回想(まさにプレイバックですね)です。上記のモーツァルトやバロック作品と同じように、こういう本を読むと山口百恵さんの諸アルバムを聞きたくなって、ひいては全録音作品(少なくともスタジオ録音作品)購入という事態になりはしないか恐れているところです(笑)。 ところで、私は自分自身「カタログフィリア(という言葉があるかどうかわかりませんが)」だと思っているのですが、息子が幼稚園の卒園記念文集の中で「好きな本」という項目で「レゴのカタログ」と書いていたことがわかり、軽くショックを受けるとともに遺伝とはかくなるものか(笑)と思いました。 他の子は「はれときどきぶた」とか「かいけつゾロリ」とか書いているのに … 息子も「かいけつゾロリ」がけっこう好きなのに …
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Home again
日本にちょっと帰っていた妻と息子が今日の夕方ハンブルクへ帰ってきました。 妻の荷物はほとんど食品で、なかなかハンブルクで買えないものを仕入れてきたようです。例えば、 錦松梅のふりかけ。ひょっとしてデュッセルドルフあたりに行けば売っているのかなあ? おいしい紅茶。 大量のふりかけ。 大量のおやつ。 ゴマすり器。普通のゴマは現地のスーパーマーケットでも売られているのですが、すりゴマはなかなか売っていないのだそうです。こちらのアジア食材店で見つけたゴマすり器がかなり高かったので、日本へ帰ったタイミングで買ってきたとのこと。 残念ながら「桃ラー」は見つけられなかったそうなので、パチモンというか二番煎じの商品を。それから自分で作るキットも売られていたそうなのでそれも買ってきたようです。 息子は息子で、新しい京成スカイライナーのチョロQとか、VooVというシリーズのおもちゃで新幹線が「関空特急 はるか」に変身してしまうやつとかにご満悦でした。 私が持って来てもらったものたち。 「黛敏郎の世界」(本)。氏の作品リスト、評論などがまとめられている。NAPPさん(作曲家の中橋愛生さん)が吹奏楽作品についての評論を書いているらしい。どうでもいい話ですが、若き日の黛さんって「さかなクン」に似ていませんか? 「芥川也寸志―その芸術と行動」(本)。こちらは芥川也寸志さんについて作曲だけではなく音楽教育、著作権保護なども含めた活動をまとめた本です。私のホームページからamazonのアフィリエイトで購入された方がいたのですが、けっこうとんでもない値段がついています(今日現在で39800円)。他の古書サイトで調べてみたらもっと安い値段(0が一つ取れるくらい)で出ていたので後学のために買っておくことにしました。 「スコラ 坂本龍一 音楽の学校」(DVD-R)。実家に頼んで録画しておいたもらったものをDVD-Rに落として持って来てもらったんですが … 見れないぞ … 「ハイパービートルズ 3 ノルウェーの森」(CD)。その昔、「ハイパービートルズ」というシリーズで4枚のCDが出ていました。ピアニストの高橋アキさんが内外の著名な作曲家にビートルズの作品のピアノアレンジを委嘱し、それをレコーディングするというものでした。2枚は持っていたのですが、まだ持っていないものが2枚あったので、この機にオークションで手に入れておこうと思ったわけです。数年前、確かお茶の水の三省堂の前で中古CDのワゴンセールが行われていて、この「ハイパービートルズ」シリーズ4枚が破格の値段で売られていました。「帰る時に買おう」と思って三省堂に入り、帰る頃にはすっかり忘れていたのは「人生における後悔ベスト10」に入るくらいの悔恨でした。欲しいものは見つけた時に買いましょう。 「ピタゴラスイッチ うたのCD」なぜ、この番組では「ピタ」と「ゴラ」と「スー」しかいなかったのか、謎がやっと解けました(笑)。おおむね満足ですが、収録時間がちょっと短いようなので「フレーミー」は歌なしのバージョンもあった方がうれしいなあ。まあ、「うたのCD」なのでしょうがないのかも知れませんが。 「大いなる秋田」東京公演のCD/DVD。勢いで買ってしまったのでした。経緯はこちら(http://www.akita-great-tokyo.org/)にありますが、この作品は秋田県が石井歓氏に委嘱した吹奏楽と合唱のための組曲です。 芥川也寸志―その芸術と行動
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Give me a cue (YMO x SUKITA)
というわけで、辛抱たまらずカッターナイフで切り開いて見てしまいましたよ。 Yellow Magic Orchestra×SUKITA もう購入された方はご存知でしょうが、この本は段ボール箱に入っていて、その上からステッカーで封印されています。何とかステッカーを切らなくても開封できる方法を探して、段ボール箱のふちを持ち上げてみたりもしましたが、本自体にダメージがあっては元も子もないので、素直にステッカー部分を切り開いて開封してしまいました。 個人的にいちばんインパクトがあったのはユキヒロさん(当時はまだカタカナ表記だった)のソロアルバム「音楽殺人」の加工前の写真でした。それから教授の女装姿が今までになくはっきり見られた「写楽祭」のスナップかなあ。 紙質については賛否両論ありますが、個人的にはどちらでもいいかなと。それよりも「書籍後半の白紙ページは、編集者とデザイナーの意図によるものです。」という注記が何だかなあ、です。言い訳のような注記を入れなければいけないのだとしたら、それは意図として失敗なのでは? で、本題なのですが、本の中に富士フイルムのカセットテープのデザイナーをやった方のコメントが載っていたのですが、全部で6作あるとのこと。ちょっと思い浮かべてみたのですが、5つしか思い出せません。ご存知の方がいらっしゃったら教えて下さい。以下は作られたポスターなのですが、例のネコが登場するCMもカウントするのかな?これはポスターを見たことがないのですが … コピー「音楽は増殖を始めた。」 たぶん、これが最初なのではないかと思うのですが、アルバム「SOLID STATE SURVIVOR」のアウトテイクのような写真が使われています。 コピー不明 カセットが浮かぶ宇宙空間をお三方が遊泳しているような写真が使われています。上記の本の中にも掲載されているヤツ。 コピー「音楽は磁性紀に入った。」 おそらく、これがいちばん有名ですね。のちに「∞増殖」のジャケットにも使われたもので、300体のYMO人形が整列しているものです。 コピー「音楽は104番目の元素だ。」 お三方がカセットテープを組み合わせて作られたロボットの中に入っているヤツ。これも本に載っています。 コピー「世紀末か、新世代か。」 お三方の顔のアップ。 当時、私はこれらのポスターが欲しくて富士カセットに手紙を書いてみました。そうしたら筒入りのポスターが送られてきました。記憶が定かではないのですが、上記5枚のポスターのうち上の4枚はまだ実家にあるはずです。
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おいでませハンブルクへ(第1日目)
すっかり恒例となった「おいでませハンブルクへ」シリーズですが、今回は何回も来ている同期入社の友人たち2名、私の元上司、それからロンドンからも1名、計4名の出張者のサポートを1週間することになりました。 ということで、日本から持ってきてもらったDVDとCDと雑誌たち。(あ、1Q84 BOOK3 まだ読んでないや …) それから、普段は会社に缶詰めでミーティングを行うことが多いのですが、今回はわりと外回りが多い日程です。朝9時に会社に集まって事前ミーティング、そのあと社外に出て、また午後に帰って来る … というパターンでした。 ***** それから、アメリカの Mosaic Records に注文していた、生産中止になったブルーノートの1500/4000番台のCDが届きました。これらはルディ・ヴァン・ゲルダーのリマスタリングというわけではないんですね。だんだん、どうでもよくなってきています … 最近は、いわゆるハードバップ期から新主流派期までのクロスオーバーが特徴である4000番台よりも、素直でストレートアヘッドなジャズが聴ける1500番台の方が気に入っています。(4000番台は個性的なアルバムが多い分、全てが全て気に入るわけではないので …)例えば、今回買ったジャズ・ギタリスト、ケニー・バレルのアルバムあたりは約50年前に録音されたアルバムなのですが、そのサウンドはとてもコンテンポラリーです。
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久しぶりに本買いました
ほぼ一日を通じて快晴。珍しくコートなしで外出できるくらいの暑さ(暖かさ)になりました。 久しぶりにヘアサロンマツナガでヘアカット。ついでに息子もドイツに来てから初めて髪を切ってもらう予定だったのですが、例によって人見知りとか、耳とかうなじとかと触られるとくすぐったいとかで前髪だけちょっと切ってもらいました。そのくせ、髪の毛を切ってもらったお姉さんが気に入ったようで、何度も「バイバ〜イ」とか言っていましたが。 そのあと、隣りの OCS をのぞきました。今まで日本の雑誌は特に買おうと思っていなかったのですが、見たことがなかった「ミュージックマガジン」が売られていたので、おもわず買ってしまいました。特集は2000年〜2009年にリリースされた洋楽のベストアルバム。やはり、この時期になるとほとんど洋楽は聴いていませんねえ。聞いたことがあるアルバムも大ベテランであるボブ・ディランの「モダン・タイムス」とかブライアン・ウィルソンの「スマイル」だし … MUSIC MAGAZINE ( ミュージックマガジン ) 2010年 06月号 [雑誌] それから、旬が過ぎて1ユーロで売られていたバーゲンブックから一冊。 ヒラリー・クイーン――大統領への道 (光文社文庫) オチがひねられ過ぎていてどこが面白いのかさっぱりわからないネタもありますが、いしいひさいちが描く実在人物のデフォルメが時々ツボに入るのが楽しみなのです。今回はコリン・パウエルとかコンドリーザ・ライスがヒットかな。 昼食はおいしいカリーブルストのお店「EDEL CURRY」で。私と同じように妻も息子も気に入ってくれたようです。
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お留守番
息子は保育園、妻は仕事、ということで独りでせっせと荷物の片付けをしながら、新潟から送った荷物の引き取り待機。しかし、通常は「旦那の現地赴任」→「妻子の渡航」という順番になると思うのですが、奥さんは旦那の残った荷物を適切に処分してくれるのでしょうか?私の場合、最初の渡航時には最小限の荷物しか持って行かなかったので日本にはまだたくさんの荷物が残っています。幸い、何度か帰国する機会があって、そのたびに少しずつ整理(あらためてドイツに送るものと日本国内に置いておくものの仕分け)しているのですが、(ご想像通り)全然片付きません。私が妻の立場で、自分自身が渡航する前にこれらの(=自分のものでない)荷物を片付けろ、と言われたら、かなり嫌です。 まあ、それはそれとして、無事荷物を受け取ったので行動開始。街中に服や本を買いに行きました。昼食は絶対ドイツでは食べられないであろう「まぐろのやまかけ丼」を食べました。買った本たち。 ブラック・マシン・ミュージック―ディスコ、ハウス、デトロイト・テクノ 音楽のたのしみ〈2〉音楽のあゆみ―ベートーヴェンまで (白水uブックス) A18 地球の歩き方 スイス 2009~2010 で、息子には言っていなかったのですが、サプライズで息子を保育園に迎えに。期待通りに驚いてくれるのがうれしいです。 ***** 「ねえ、お父さん、いつドイツに帰るの?」 「水曜日だよ」 「土曜日に帰れば?」 今まで私の帰国スケジュールには何も言わずにしたがっていた息子が初めてみせたささやかな自己主張に少し心が痛んでしまいました。金曜日には保育園で今月生まれの子供たちのための誕生会があるので、それまで日本にいて欲しいということなのだと思います。微妙なタイミングで今年の息子の誕生日には一緒にいてあげることができなかったし。 まあ、もう少しなので我慢して欲しいものです。
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お買い初め
息子の誕生日に日本にいることができないので、一足早く誕生日プレゼントを買ってあげることにしました。 仮面ライダーWのダブルドライバーと迷っていたようですが、この変身ベルトかなり品薄のようですね。本人はビックカメラのサンプルでひとしきり遊んでいたので、それで気が済んだようです。 仮面ライダーW 変身ベルト DXダブルドライバー で、結局買ったのはこちら。最近は普通のプラレールより、こちらの「ハイパーガーディアン」シリーズの方がお気に入りのようです。知らないうちに、自宅にも2つばかりありました … プラレール ハイパーガーディアン HGS-05 メカドックライナー 私はといえば、ちょうどセールのDMが来ていたブルックスブラザーズでちょっと買いだめ。それから防寒用の靴と。浜松から持っていた靴はほとんど防水されていないものなので、雪道を歩くのはちょっと辛いのです。 あとはすごく「今さら」な感じですが、例のベストテン総集編を見たので、ちょっと読みたくなった山口百恵さんの著書を。 蒼い時 (集英社文庫 126-A)
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買い納め
本棚を整理していたら「PLUTO」を発見。よくよく調べてみるとすでに完結していることがわかりました。買っていない巻を買いに書店へ。 ついでに店内をウロウロしていたら何冊か欲しい本を発見しました。 横溝正史読本 (角川文庫) 知る人ぞ知るプレミア付きの文庫本がついに復刊されました。(古本市場では数千円の値段がついていたこともあります) 21世紀版 ブルーノート・ブック―史上最強のジャズ・レーベルのすべて (ジャズ批評ブックス) やはり改訂版が刊行されました。 もういちど読む山川世界史もういちど読む山川日本史 かいじゅうたちのいるところ なんか映画化されたそうで。
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とりあえず一件落着
とりあえず、来週の打ち合わせのミーティングスケジュールが決まって、参加者への出席依頼も完了。まあ、ひとまず一件落着というところです。 ネタがないので最近読んでいる本をご紹介します。 M/D マイルス・デューイ・デイヴィスIII世研究 またプルーストの「失われた時を求めて」は挫折 … 禁煙が続かない人の心理状態もこんな感じなのでしょうか(笑)? それはそれとして、大昔に買ったマイルス・デイヴィス研究本です。「東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・歴史編 (文春文庫)」「東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・キーワード編 (文春文庫)」(いわゆる「青アイラー」と「赤アイラー」)と同じように東京大学での講義を本にまとめたものです。この「青」と「赤」が面白かったし、それらの中でもちらちらと言及されていたマイルス論が満を持して登場ということで。(確か、昨年末に買ったはいいがバタバタしていて読んでいる途中で時間が取れなくなったような …) ミュージシャンとしての菊地成孔さんはほとんど聞いたことがない(UAとのコラボくらいかな?)のですが、多少スノビッシュな語り口は結構好きです。ただ、文字で読んでいるから内容は追えているのですが、これを講義で耳で聞いたら果たしてついていけるのかと言う危惧もあります。(東大生なら大丈夫?) 200ページを越えましたが、まだ1/3か1/4くらいまでしか進んでいません。切り口が「あえて変化球」という感じなので、ある程度マイルス・デイヴィスの音楽的キャリアの全貌を把握しているとか、たびたび言質として引用される「マイルス・デイビス自叙伝〈1〉 (宝島社文庫)」「マイルス・デイビス自叙伝〈2〉 (宝島社文庫)」を読んでいるとかしないと、なかなか内容を理解しにくいのかな、という気がしました。まあ、もちろん「全ての受講者がマイルスをよく知っているわけではない」という前提で講義内容を決めているはずだと思うので、(私とは逆に)この本で初めてマイルスに触れた人が、読み終えたあとにマイルスに対してどのようなイメージを持つのか、興味があるところでもあります。
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「ノルウェイの森」再読
バンド・クラシックス・ライブラリーの曲目解説も無事ブレーンに送付し、穏やかな気分で週末を過ごしています。今回の収録曲の目玉は、あなたにもあげたい組曲でしょうか。 先週から読んでいた村上春樹さんの「ノルウェイの森」を読了しました。こちらのブログエントリーのコメントにも書きましたが、この作品の冒頭は主人公が乗った飛行機がハンブルク空港に着陸する場面から始まります。読み返そうと思った理由は、単純にこの冒頭をハンブルクで読むのはどんな気分なのだろう、と思ったからです。まあ、このシーンは一瞬で終わるので別にどうということはありませんでしたが(笑)。そもそも、ハンブルクである必然性もそんなにないような気がしますし。 あと、この前読んだのがいつか全然覚えていないのですが、最初に読んだ時にはピンと来なかったので、それ以降いくつもの村上作品を読んだ後に、その印象がどのように変わるのかも興味がありました。 (以下、「ノルウェイの森」を未読で細かいストーリーを知りたくない方は読まないで下さい。) (前にも書いたように思いますが)この時期、私は村上さんのファンだったので、「ノルウェイの森」は新聞広告で見て、書店に予約して買いました。その数年前に読んだ「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」が圧倒的に素晴らしかったので、その延長を期待して読んだらちょっと期待はずれだったことを記憶しています。今ではよく言われることですが、これは村上さんが初めてリアリズム文体で書いた作品で、主人公にも初めて名前が与えられます。今になって思い返すと、たぶんそういう表層的な違和感によって、作品の細かいところまで踏み込めなかったのではないかと思っています。 さて、この小説のタイトルは「ノルウェイの森」で、もちろん、ビートルズのナンバーからの引用です。ビートルズファンには有名なトリヴィアですが、このタイトルは「Knowing she would」というフレーズを似たような語感を持つ「Norwegian Wood」に変えた、というのが定説になっています。if 節が省略された仮定法過去の用法で、しかも後に続く動詞も省略されているので、直訳すると「彼女が … だろうことを知っている」という意味ですが、以下の歌詞から、以下の内容を推測するのは容易です。 I once had a girl, or should I say, she once had me. She showed me her room, isn’t it good, knowing she would? かつて、僕がモノにした彼女がいて、いや、彼女が僕をモノにしたと言うべきかな 彼女が僕に部屋を見せてくれたんだ、やらせてくれそうだってわかるだろ? (下世話な表現ですみません …) やはり、村上春樹さんはこのことを知っていてこの作品に「ノルウェイの森」というタイトルをつけたのではないか、と私は思います。もちろん、「Knowing she would」は「Knowing she (= 直子) would (die)」(直子が死んでしまうことを知っていた)ということになります。 いや、久しぶりに読んでみると、ことのほか切ないです。全編を覆う静謐な雰囲気、その中にあって際立つ緑の明るさ、今になれば村上さんが意図的に(実験的に)こういう書き方をしたというのは知識として知っているのですが、それを知っていてもなお、この雰囲気にはのめりこんでしまいます。発売当時に読んだ時には、いままでの(羊3部作や「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」)小説とは全く異質な感触を抱いたのですが、これも今になってみれば、以降の作品で展開される「あちら側」と「こちら側」の世界が、この「ノルウェイの森」でもしっかりと描かれていることを再確認できました。 実はビートルズの《ノルウェイの森》には「This bird has flown(この鳥は飛んで行ってしまった)」という副題がついています。この「鳥」が直子なのだとしたら、ジョン・レノンは《ノルウェイの森》が収録された「Rubber Soul」の次のアルバム「Revolver」に収録されている《And You […]