R.I.P. 中村とうようさん

「音楽評論家、自殺か」というニュースのヘッドラインを見た時に、まさか中村とうようさんだとは思わなかった。

いかにもサヨク的な物言いはさておき、いわゆる「ポピュラー音楽」に対してこの方が持っていたパースペクティブ、つまり世界各地に根ざしている「ポピュラー音楽」を俯瞰するモノの見方が好きだったので、ちょっとショックである。「ポピュラー音楽」というのは、マーケットによって評価されている商業音楽という意味ではなく、世界各地の大衆の中から生まれた(そして育った、あるいは育っている、あるいはもっと言ってしまうと育っていた)音楽である。そういう意味では「大衆音楽」といった方がいいのかも知れない。

浜松市の事業報告を見ると、2000年10月に「大衆音楽の真実」という市民講座が開かれている。私はこの講座を聞きに行った。ちなみに中村とうようさんには同じタイトルを持つ著作もある。その著作とは違う本なのであるが、ちょっと前に岩波新書の「ポピュラー音楽の世紀」という本を読んで、かなり目から鱗が落ちたので、ご本人の語り口を聞いてみたかったのである。

ポピュラー音楽の世紀 (岩波新書)

雑誌(ご本人が関わった「ミュージック・マガジン」や「レコード・コレクターズ」など)での歯に衣を着せぬレビューなどに反感を持つ方も多かったようである。(マイケル・ジャクソンの「スリラー」に10点満点の0点をつけたことがあるのは有名な話。)私は批評などというものは主観的であるべきだと思うし、その一方で批評は批評でしかないと思っているので、そんなもので一喜一憂はしないが。

まあ、それはともかく、とうようさん自身が「ポピュラー音楽」と地平に対して愛着があるのか、あるいは「市民講座」というハイソな雰囲気に気圧されたのか(笑)、そういった毒や牙のない熱い語り口が印象的だった。

レクチャーのあとに上記の本を差し出したら、「僕なんかがサインしちゃっていいの?」とおっしゃりながらサインをしていただいたことを覚えている。(今度実家に帰ったら探してみようかな … と思ったけど、簡単に見つかりそうにないなあ、新書は …)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください