今のところ、今年の演奏会の聞き納めです。前日体調不良で会社を休んでしまったので、今日は残務処理に時間がかかると見込んで、会社から直接ライスハレへ向かうことにしました。路上駐車のスペースを探す手間も大変なので、2ブロック離れたところにある有料駐車場に車を入れました。
Mi, 16.12.2009 – 19:30 Uhr
Hamburg – Musikhalle
Jonathan Nott Dirigent
Vadim Repin Violine
Ludwig van Beethoven Konzert für Violine und Orchester D-Dur op. 61
Dmitri Schostakowitsch Symphonie Nr. 10 e-moll op. 93
バンベルク交響楽団はあまりよく知らないのですが、インゴ・メッツマッハーとのコンビでカール・アマデウス・ハルトマンの交響曲全集を録音したオーケストラです。指揮者のジョナサン・ノットはTELDECのリゲティ作品集でベルリン・フィルとのコンビで素晴らしい演奏を聞かせてくれた指揮者です。アンサンブル・アンタルコンタンポランの指揮者も務めたことがあるそうで、現代音楽の指揮には定評があります。ワディム・レーピンはロシア生まれのヴァイオリン奏者。ザハール・ブロンの門下生だそうです。
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。さんざん予習したのですが、まだこの曲のよさがあまり分かっていません。 レーピンのソロはかなり堅実な印象を受けました。大仰な表現を排除している半面、華がないといえば華がないのかな、という気もします。
ノットはかなり大きく動いてオーケストラをコントロールします。私は「指揮は基本的に上半身で振るもの。履いている靴の裏が聴衆に見えるような(下半身が安定しない)振り方をしてはいけない」と習ったのですが、ノットの靴の裏はかなり見えていました(笑)。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲には第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの掛け合いになるところがあって、しかも今回は下手からVn1、Vi、Vc、Vn2という配置だったので、左を向いて第1ヴァイオリンにキューを出した後、180度回転して右側にいる第2ヴァイオリンにキューを出す、といった場面がたびたびありました。メッツマッハーの指揮を見た時にも思ったのですが、「現代音楽が得意な指揮者はカチカチとした指揮をする」という勝手な先入観は捨てた方がよさそうですね(私だけでしょうか?)。
さて、メインはショスタコーヴィチの第10番です。彼の交響曲の中でもっとも有名であろう第5番同様に一応古典的な4楽章構成をとる交響曲です。あからさまなベートーヴェン的アウフヘーベンが展開される第5番に比べて、「スターリンの死を待って発表された」とか「自身のイニシャルをモチーフとした音形(D-Es-C-H)がそこかしこにあらわれる」とかいった要素から多少作曲者自身の本音が垣間見える第10番もけっこう好きな作品です。第1楽章で弦楽器の序奏から立ちのぼるクラリネットのソロとか、尋常じゃないスピード感の第2楽章のスケルツォとか、D-Es-C-H を含む旋律から始まる第3楽章のやるせなさとかがいいですね。
演奏はとてもよかったです。今年聞いた演奏の中でもかなり上位に位置します。もともと分離のいい、すっきりとしたサウンドを持つオーケストラだと思ったのですが、ノットの指揮はトータルなバランスに気を配りながらも、曲の中で際立たせるべき声部をきちんとコントロールしているように思いました。いわゆる「彫りが深い」表現といいましょうか、漫然と流れるところがなく、常に気が配られているようなサウンドでした。強奏部分はかなりヒステリックに聞こえる部分もあったのですが、それも必然だったのかも知れませんね。
このコンビはマーラー、ブルックナー、シューベルトの交響曲を録音しているようなので、まずはマーラーあたりを聞いてみたいと思いました。