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手塚治虫80歳

手塚治虫さんが生きていれば今日が80歳の誕生日だそうな。

最新号の「芸術新潮」誌で特集が組まれていたのはそういうことだったのね。ちょっと立ち読みしたら収録されている図版が素晴らしかったので購入してしまった。

手塚さんが亡くなったのは1989年の2月9日。ちょうど卒業論文を提出して、あとは発表会を終えるのみ、というタイミングだった。大学の研究室でだべっていたとき、同じように修士論文を書き上げた先輩が「手塚治虫ってさあ、毎週が修論提出の締め切りみたいだったみたいよ。」と言っていたのが記憶に残っている。

大学に入るくらいまでは手塚治虫を意識して読んだことはなかったのだが、大学時代の友人に借りて読んだ「アドルフに告ぐ」がとても面白かった。第二次大戦前後という設定が私の好みに合っていたということもあるのだが、この漫画が週刊誌(「文藝春秋」)に連載されていたということにも驚いた。なぜって、まずオープニングの回想シーンがぴったりとラストシーンに重なるのである。それからタイトルにもなっている「アドルフに告ぐ」、この言葉が重大な意味を持って登場するのはストーリーがかなり終盤に差しかかってからなのである。つまり、連載が開始された時点で、すでに手塚治虫の頭の中には遠く先にあるストーリーの結末がきちんと見えていたということなのだろう。

で、この「芸術新潮」を買った、ある意味最大の収穫は「田中圭一」という人を知ったこと。

以前から、会社の隣の席に座っているエンジニアのパソコンに手塚治虫調のイラストが貼ってあるのが気になっていた。

「バ、バグじゃない! … 仕様だ!」

「思ったとおり、とんでもないスケジュールだわ!」

てっきり、手塚治虫の過去の漫画に台詞を貼り付けただけだと思っていたのだが、そういう画風の漫画家がいるらしいことを以前教えてもらっていたのだ。(「だって、この女の子(上記の台詞をしゃべっている)の髪留め、よく見るとCD-Rになっているでしょ」との指摘があった。)

その田中圭一さんが「芸術新潮」の中で手塚治虫の画風について解説している。夏目房之介さんも同じようなことをやっているが、画力は圧倒的に田中圭一さんの方がすごい。

この画力でひたすら下ネタに徹しているコミックがあるらしいので、読んでみたいなあ … アマゾンには「才能の無駄遣い」という評価があった(笑)。

ベリオ二題

(もうだいぶ戻ってしまったが)円高だったのでガツンと輸入盤を買おうと思って思案中。

前から買いたいと思っていて、きっかけがなくて買えていなかったのがルチアーノ・ベリオのセクエンツァ集。独奏楽器のために書かれた超絶技巧を必要とする作品である。いくつか聞いたことがあるのだが、聞きやすいといえば聞きやすい部類の現代音楽と言えるのではないかな。

トランペットのために書かれた《X》はホーカン・ハーデンベルガーの演奏を持っている。独奏楽器のために書かれたといいながら、この作品ではピアノが必要である。このピアノは共鳴のために使われる、つまり演奏者は音を出さずに鍵盤を押さえるわけである。

トロンボーンのために書かれた《V》はリンドベルイの演奏。例によってすごい。苦もなく演奏して超絶技巧に聞こえないところがすごい。

で、グラモフォンからアンサンブル・アンタルコンタンポランのメンバーによる録音が出ていて、NAXOS からも例によってリーズナブルな全集が出ていることは知っていたのだが、アメリカの現代音楽専門レーベル(と言っていいよな)である mode から本当の全集が出ているらしいことを最近知った。ちょっと整理してみたのが以下の表である。基本的には14曲なのだが、作曲者本人や他の演奏者によって他の楽器のために編曲されたものもいくつかある。番号にbとかcとか振られているものである。作曲者がアルト・サクソフォンのために編曲したIXb(もともとはクラリネットのための)は結構有名なレパートリーのようで、いろいろなサクソフォン奏者が録音している。須川展也さんもかつて録音していた。

番号バンゴウ 楽器ガッキ 編曲者ヘンキョクシャ mode dg naxos
I フルート
II ハープ
III 女声
IV ピアノ
V トロンボーン
VI ヴィオラ
VIb チェロ ロハン・デ・サラム
VII オーボエ
VIIb ソプラノ・サクソフォン クロード・ドゥラングル
VIII ヴァイオリン
IX クラリネット
IXb アルト・サクソフォン 作曲者
IXc バス・クラリネット ロッコ・パリシ
X トランペット
XI ギター
XII ファゴット
XIII アコーディオン
XIV チェロ
XIVb コントラバス ステファノ・スコダニッビオ

で、まあ「全集」とかに弱い私はmode盤を買ってしまうんだろうなあ。他にもソロ楽器のために書かれた作品が全部収録されているらしいし、解説も豊富らしいし。


それから、最近タワーレコードからシャイー指揮によるベリオの《シンフォニア》が再発された。1000円。このCDの素晴らしいところは、例の、マーラーの交響曲第2番の第3楽章をベースにして、古今東西の名曲がコラージュされた第3楽章の詳細な解説がついているところである。どこで何の曲が引用されているかがわかるのである。交響詩《海》(ドビュッシー)とか、《春の祭典》(ストラヴィンスキー)とか、《ラ・ヴァルス》とかはわかりやすいのだが、全部が全部わかるわけではない。確か「演奏会で次にやる曲」も引用の指定があったはず。ということで、この解説のために買ってみるのもいいかなと。

BCL10などなど

朝、とりあえずBCL10の曲目紹介原稿を脱稿。ブレーンに送付する。

私の場合、曲目紹介を書くときには、まずはとにかく資料をありったけかき集めて(だから、毎回パソコンの周りはCDやら書籍やらコピーやらで大変なことになる)、それからそれを整理して文章にするという手法を取っている。なので、まず資料を集め切って一段落、それから文章を整えて一段落、ということになるのである。作品の好き嫌いとは関係ないと思うのだが、わりとすらすらと流れが見える曲があったり、なかなか規定字数が埋まらなくて大変だったりする曲があったりする。毎回、妻に校正を頼んでいるので、このあたりが見えてくるらしい(笑)。

まあ、そんなわけで一応晴れ晴れとした連休を迎えているのである。バンドジャーナルの自由曲集計もあるのだが、こちらはもうちょっと締め切りが先なので、とりあえず基礎的な集計だけして寝かしておく。

その後、買い物へ。某ショップで服を買う。メンバーズカードを見たら最後にこのお店で買い物をしたのは3年半前らしい。そういえば、息子が生まれてから小さいうちは怖くてとてもニットなんて着られなかった。抱っこしているときに引っ張られても嫌だし、鼻水とかよだれとかいろいろなものをつけられるのも嫌だし、と思って、なかなか「いい服」は買えなかったのである。

そろそろ大丈夫だろうと思って買いに来てみたのであるが、やはり物欲が刺激されるものがある。「必要に迫られて」ではなく、気持ちよく服を買えたのは本当に久しぶりだなあ。