第4回浜松吹奏楽大会親善交流コンサート

2000年3月25日(土) 15:00 アクトシティ浜松中ホール

伊藤康英さんひさびさの新曲がハワイのミリラニ高等学校によって初演された。 (吹奏楽のために書き下ろされた曲(既存の曲からの編曲や、自作の他編成への編曲を除く)としては、1998年の交響三頌《ラ・ヴィータ》以来ですかね?)

吹奏楽のための交響詩《ゴー・フォー・ブローク》
Symphonic Poem for Band “Go for Broke”

 

第二次大戦下のハワイの日系人部隊(アメリカ合衆国陸軍100大隊と442部隊)に捧げられた曲。 「ゴー・フォー・ブローク」とは「当たって砕けろ」とか「死ぬ気で頑張り通せ」という意味らしいが、英語のニュアンスとしては「がんばろうじゃないか」といった明るい意味合いを持っているらしい。

演奏時間は6分半ほど、構成は《ぐるりよざ》の第1楽章をコンパクトにして、《交響的典礼》の導入部とコーダをつけたような感じです。 また、委嘱団体が総勢120名という大所帯だったため、フルートが3パートに分かれているとか、康英さんの曲としては珍しくトランペット・パートとコルネット・パートが独立しているとかという編成上の特徴もあります。

曲は、まず前述したようなハイテンションの導入部で始まり、静かになったところでクラリネットの低音域による旋律が現れます。 これが康英さんが「君が代は千代に八千代に…」の歌詞にメロディをつけた歌曲《君が代は。》の旋律です。

これが何回かの変奏で盛り上がったあと、テンポが上がって突撃ラッパ風の音形が出てきます。 この部分も、この音形を繰り返しながら楽器が加わっていって混沌を極めていきます。 ここではサイレンを使っているのが特徴的ですね。 康英さんは消防署のサイレン(山形大学が《イーストコーストの風景》で使ったようなやつ)を想定していたらしいのですが、結局入手することができなかったそうで、本番ではアメリカン・パトカーのサイレンのような音が使われていました。 ここの部分は息の長い allargando で、だんだんテンポを落としながら力強くクライマックスを作っていきます(オネゲルの《パシフィック231》で機関車が止まる場面のような感じ)。裏拍で叩かれるバスドラムが気持ちいいです。

個人的には、この部分を初めて聞いたときに、少し諧謔的なニュアンスからショスタコーヴィチの作品に近い印象を持った(ショスタコーヴィチは《交響 曲第2番》でサイレンを使っているし)のですが、リハーサルの後で康英さんとお話ししたときには「《ピータールー》みたいでしょ?」と言われてしまいまし た。こちらの方が的確な描写かもしれません(笑)。

このあとは、(《ピータールー》のように(笑)静かな)オーボエのソロから、前半部の《君が代は。》の旋律が回想されます。オーボエのソロはちょっと音域が高くて大変かも。本番ではフルートを重ねていました。

初演は、アクトシティ浜松中ホールという残響の多い室内楽用ホールで、120人もの人数で演奏したものですから細かいところが聞き取りにくかったのがちょっと残念です。 40〜50人くらいのバンドでも十分演奏可能だと思いますので、すっきりした編成でどこかの(できれば上手い(笑))バンドが再演してくれることを期待します。 技術的/体力的にもそれほと無理はないと思いますし、内容としてもわかりやすいし、かなり親しみやすい作品ではないかと思います。

 

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