2009ロンドン」カテゴリーアーカイブ

ロンドン日記(その3)見つめる絵はターナー

昨日はシステムがよくわからずに頼みそびれたイングリッシュ・ブレックファストですが、今日はちゃんと注文できました。やはり、イギリスに来たらこれを食べないと。

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ロンドンを初めて訪れたのはおよそ10年前の年末年始。香港経由のキャセイパシフィックという、今なら絶対に利用しない超遠回りの格安チケットで行ったのでした。しかもロンドンでは体調を崩し(雨で冷え切った体で食べた生牡蠣が悪かったのではないかという説あり)妻は3日間ほど寝たきり、私はその時に初公開された「ジョン・レノンとポール・マッカートニーが初めて会った日のクォリーメン(ジョンが在籍していたグループ)の演奏」を聞くために文字通り這うような状態でこの展覧会まで行ったりとあまりいい思い出はないのですが、いまだに覚えている情景があります。

地下鉄の中で日本人の父親と男の子がいました。幼稚園くらいの子供はリュックサックを背負って、わくわくしているのが見てとれます。椅子に座っているのもじれったい感じでそわそわしながらお父さんと思しき男性に話しかけています。男性の方は何も言わずに軽く微笑んで子供の方を見ています。その時、自分にもこんなシチュエーションがやってくるのだろうかと漠然と考えました。

また地下鉄に乗りながら、本当に息子を連れてロンドンに来る日があるんだなあ、と思ったのでした。

息子と一緒では美術館に来てもゆっくり絵を見ることはできないと思ったので、この機会にげっぷが出るほどターナーを見てみたいと思い、ターナー・コレクションを有するテート・ギャラリーへ行ってみることにしました。ちなみにテート・ギャラリーはイギリス各地に点在する美術館群の総称で、ロンドンには古典から現代までのイギリス美術を俯瞰する「テート・ブリテン」と、現代美術を専門に扱う「テート・モダン」があります。

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テート・ブリテンでは、ちょうど「Turner and The Masters」という特別展示が開催されていました。ターナーの絵というと、モネなどの印象主義に通じる、あるいは抽象の先駆ともいうべき、にじんだ色彩やフォルムでよく知られていますが、実は先達の画家たちの構図や色彩から多くのものを学び取り、それを自分の作風として咀嚼していったという一面もあります。この特別展示では、そうした先達とターナー自身の作品が併置されて展示されていて、ターナーが誰から何を学んだのかわかるようになっています。レンブラントから学んだ光と闇(というか闇と光と言った方がいいですかね)とか、プーサンから学んだ風景画の構図とかです。他の美術館で展示されているターナーの絵も、この特別展示のためにテート・ブリテンに移されてきました。

それから、ターナー・コレクションへ。全般的な傾向は特別展示と同じような感じでした。私が好きな後期の抽象的な作品はナショナル・ギャラリーに行った方がいいのかなあ?(山下達郎さんの《ターナーの汽罐車》の題材になった「雨、蒸気、速力」はナショナル・ギャラリーにあります)

全然予習もせずに回っているので、どこに何の絵があるのかさっぱりわかりません。ちなみにターナーの絵はターナー・コレクション以外の一般展示でも見ることができますのでお忘れなく。とりあえずロセッティの「プロセルピナ」があるのを発見しました。

ちなみに美術館のカフェで軽い昼食を。モカ・マキアートとツナ・サンドウィッチです。

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その後、テート・モダンへ。テート・ブリテンからテート・モダンへは水上バスを使って行くことができます。

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こちらは「ポップ・ライフ」という特別展示が開催されていました。ロンドンに着いて早々に乗った地下鉄の構内に貼られていたジェフ・クーンズのうさぎのポスターにやられてしまったので、ぜひ行きたいと思っていました。まさにポップ・アートの総決算という展示で、アンディ・ウォーホール、ジェフ・クーンズ、ロイ・リキテンシュタイン、最近のものでは村上隆さんの作品も展示されていました。アキバ系の歌手が歌っているビデオが流されていて、それに合わせて踊っている子供、それを微笑ましく見ている展示係員、そこに立ちすくむ日本人の立場は微妙です(笑)。

ホテルに預けておいた荷物を引き取って空港へ。無事チェックインしたのは離陸スケジュールの50分前でした。微妙なタイミングですが、今回の旅行で食べられなかったフィッシュ・アンド・チップスを食べておこうと思い、レストランへ。(まあ、往々にして搭乗時刻は遅れるしね。)運よく早めにサーヴされたので、急いでかっ込んで搭乗口へ。案の定、まだ搭乗は始まっていませんでした。よかったよかった。

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機内食はハム・サンドウィッチとオレンジジュースでした。

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19時30分のフライトで22時頃ハンブルク到着(1時間の時差があります)。例によって旅行に行くと普段とは比べ物にならないくらい歩くので下半身はガタガタですが(明日以降もっと痛くなるんだろうなあ)、本当に浜松から東京へ行くような感覚でハンブルクからロンドンへ行けるのでした。まだまだ見たいけど見ていないものがたくさんあるので、ドイツにいる間にまた何回か行ってみたいと思います。

演奏会その20: RYUICHI SAKAMOTO PLAYING THE PIANO EUROPE 2009

はい、そういうわけで続きです。このコンサートのチケットを予約したのは7月上旬のことでした。ドイツに赴任して、とある方にヨーロッパツアーの日程を教えていただいて、一日有休を取れば何とか行ける日程を探して、でこの日のロンドンに決めたのでした。その時点で残りはあと5席。日本で行ったコンサートでは目の前に誰もいない最前列の席だったのですが、この日は後ろに誰もいない(苦笑)2階最後列の席になってしまいました。

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それでもこんな感じの席だったので、見にくいことは全然ありませんでした。ちなみに私の席の左側、つまり2階中央にはF.O.H.用のスペースがあらかじめ確保されています。これも含めて、空間をとてもぜいたくに使ったホールだと感じました。とにかく音響は素晴らしかったです。

  • glacier
  • hibari
  • still life
  • in the red
  • nostalgia
  • composition0919
  • A Flower Is Not A Flower
  • 水の中のバガテル
  • amore
  • tango
  • energy flow
  • High Heels
  • women without men
  • the last emperor
  • 美貌の青空
  • behind the mask
  • tibetan dance
  • thousand knives
  • Merry Christmas Mr. Lawrence

コンサートは日本と同じように、《glacier》から始まる「out of noise」からの作品→いわゆる「playing the piano」ソロ編→もう一台のピアノを使った「playing the piano」一人デュエット編という流れで進みます。ただ日本公演と違い、前半には「out of noise」からの曲、それもピアノ以外の楽器が含まれた曲が多く置かれていました。こちらでは「out of noise」は発売されたばかり(ただし「Playing the Piano」との限定カップリング)なので、やはりプロモーション的な意味合いもあるのでしょうか。ヴィオールや笙の音が鳴らされるそれら3曲《still life》《in the red》《nostalgia》はかなり印象的でした。いまさら気付きましたが《in the red》はメシアンの《世の終わりのための四重奏曲》を連想しますね。「天国的な長さ」に引き伸ばされたピアノの連打。

日本公演と比べると、アレンジが変わっている曲が多かったです。目立つものでは《Flower Is Not A Flower》の冒頭の和音とか、《千のナイフ》の低音パートとか。あと、時々ルバートが過剰に感じる部分がありました。特に「ソロ編」で非常にスタティックな印象(イギリスのプレスではこれが否定的にレビューされていたようです)を受けたのはそのせいかも知れません。

なぜかわかりませんでしたが、《the last emperor》のあとで一旦教授が袖に引っ込み、すぐに戻ってきました。そこからが後半戦。《tibetan dance》ではスクリーン上にダライ・ラマ14世のメッセージが流されました。《千のナイフ》の後半ではサブのピアノに主旋律を弾かせて、教授はインプロヴィゼーションを繰り広げるというスリリングな展開がよかったです。

アンコールは《戦メリ》。もう何回も何回も聞いている(し、私は教授がこの曲をピアノで弾くのには少々否定的です)のですが、なぜかこの日の演奏が今まで聞いた演奏の中でいちばん感動しました。コンサート本編では違和感を感じていたルバートの感覚が、この曲では当日の私のコンディションにぴったり合ったのかも知れません。あとは自分が置かれている環境とか、12月を迎えようとするこのタイミングとか、当日のホールの音響とか、小雨がぱらつく当日の天候とか、そういったものが絡み合っていたのかも知れません。

とにかく、最後の2曲でやられた、という感じでした。

*****

帰りは途中にあるパブで夕食を取ろうと考えました。まずはギネスを。生のギネスを飲むのも久しぶりです。食べ物を頼もうとメニューを見ていると、「悪いね。今日はもうキッチンは終わっちゃったよ。」とのこと。(出張でロンドンに来た時にも言われたことがあったなあ …)「本当に食べるものないの?」と聞いたところ「チップスならあるよ。」とのこと。しょうがないのでソルト&ビネガーのポテトチップス(これはこれでうまいのですが)をつまみながらギネスを飲みましたとさ。

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ロンドン日記(その2)鉄ちゃん in ロンドン

さて、前日と同じように地下鉄は止まっています。コンサートが開かれる Cadogan Hall の最寄り駅は Sloane Square なのですが、この駅にとまる Circle Line も District Line も動いていません。幸い、ホテルのある South Kensington 駅からは一駅分なので Sloane Square まで歩いてみることにしました。コンサートのチケットはオンラインで予約できたのですが、郵送はイギリス国内だけということだったので、会場の確認がてらチケットをピックアップしようと思ったわけです。

Sloane Square は高級ショップが立ち並ぶ広場のようなところです。会場の Cadogan Hall はそこから少し奥まった場所にあります。着いてみたらチケットオフィスは午後3時から開くとのこと。ちょうどピアノを搬入しているところでした。

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しかたがないので、Knightsbridge まで歩き、そこから地下鉄に乗って Covent Garden へ行き、交通博物館へ行ってみることにしました。日本の鉄道博物館よりは小規模ですが、馬車から始まって、地下鉄、バスなど、ロンドンの交通の歴史を時代順に見ていくことができます。日本とは違う意匠の乗り物がたくさんあって、かなり楽しめました。

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一回りした後お土産コーナーへ。主に息子のためにいろいろお土産を買い込みました。

雨も激しくなってきたので昼食は近くのパブ風のレストラン(?)へ。他のお客さんはそろそろハイティーを嗜もうという時間ですが、反射的にビールを注文してしまいました(文句あるか)。フィッシュ・アンド・チップスを食べたかったのですが、少しカジュアルなお店だったのでありませんでした。代わりに注文したのがフィッシュケーキなるもの。魚のすり身とジャガイモを混ぜて揚げたものです。

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メインディッシュの量が上品でしたし、雰囲気的にデザートを頼んだ方がよさそうだったのでエスプレッソとデザートを注文しました。(なんかカスタードの海に沈むゴン太くんみたいですが …)

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悲しい性のため、近くに CD ショップがあると入らずにはいられません。Covent Garden にあった HMV に入ってみることにしました。イギリス記念ということで。

Welcome to the Pleasuredome

懐かしいですね。リマスター盤が安く売られていたので買ってみました。同性愛を歌って放送禁止になったデビューシングル《Relax》、東西冷戦を茶化してこれまた放送禁止になった第2弾シングル《Two Tribes》の出来は素晴らしいのですが、それ以外の作品がこんなにもつまらなかったこと(笑)を再確認できました。やはり、この2曲の怒涛のバージョン/ミックス違いを集めた盤の方が楽しいかも知れません。

Odelay

これはイギリスではないのですが、上記の FGTH とあわせて10ポンドだったので。確か、ミュージックマガジン誌が選ぶ1990年代のベストアルバムに選ばれていたような気がするので聞いてみたかったのです。

Manafon

デヴィッド・シルヴィアンの最新アルバム。前作「Blemish」がえらく気にいったので。前作ではデレク・ベイリーが一人でバックを務めていたのですが、今作では大友良英さんやフェネスなどのアンサンブルがバックを務めています。作風は前作と変わっていません。ウェーベルンあたりの歌曲と並べておいても違和感がなさそうな、とにかく抑制された音数です。

The Official BBC Children in Need Medley

やはり、サージェント・ペパーのパロディ・ジャケットには反応してしまいます。BBC がやっている、恵まれない子供のための募金活動へのチャリティ・シングルです。もちろん、全てのキャラクターを知っているわけではないのですが、機関車トーマス、スポンジ・ボブ、サンダーバード、テレタビーズ、ピングーなどなどが登場します。ビデオは以下で見ることができます。

やはり、昼間からビールを飲むと眠くなりますし、いい加減歩き疲れたので、いったんホテルに戻って休むことにしました。

コンサートは別エントリーで書くことにします。後半へ続く。

ロンドン日記(その1)ロンドンは今日も雨だった

多忙な一週間も無事終わり、今日から2泊3日(月曜日は有給休暇)でロンドンへ遊びに行きます。

そもそもの目的は坂本龍一さんのヨーロッパツアーを聞きに行くことです。ドイツ国内でもコンサートは開催されたのですが、どこも平日だったのでなかなか行きにくい日程ばかりでした。ロンドン公演は日曜日と月曜日に開催されるので、日曜日にコンサートを聴いて、月曜日に帰ってくればいいと思ったわけです。そうすれば週末を利用して観光もできますし。

それから、会社の同期入社の友人がロンドン駐在なので、この機会に一緒に食事でもできれば、ということで。

案の定、多少の二日酔いをともなって午前7時に起床。朝食を食べて、洗濯をしながらゆっくりと荷造りをして午前11時半くらいに家を出ました。アパートの最寄り駅の Hasselbrook からは S バーン1本で20分ほどでハンブルク空港まで行けます。便利です。

チェックイン後、サーモンサンドとアプフェルショーレの軽い昼食を取りながら時間をつぶしました。ちなみに機内食はチーズサンドとアップルジュースでした。

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1時間30分ほどのフライトでヒースロー空港へ。浜松から「ひかり」で東京へ行くくらいの所要時間です。なんか、表示が全て英語ってとても新鮮です(笑)。地下鉄用のオイスターカードを購入して市内へ。前もって友人から聞いていたのですが、毎週末を利用して地下鉄の改修工事をしているらしく、特に今週末は主要な路線である Circle Line と District Line が止まっていました。

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ホテルは友人の紹介でサウス・ケンジントン(South Kensington)駅近くの Regency を予約しました。

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荷解きをしたらすぐに友人との待ち合わせ場所の Turnham Green 駅へ。本当なら South Kensington から Turnham Green までは District Line 一本で行けるのですが、South Kensington 付近の District Line は動いていないので、Hammersmith まで Piccadilly Line で行って、そこで District Line に乗り換えないといけません。特に時間を見積もって移動していたわけではないのですが(そもそも予測不可能)、ほとんどゴルゴ13なみの正確さで待ち合わせ時間の午後5時に Turnham Green 駅に到着、待ち合わせた友人からもびっくりされました。

夕食にはインド風のカレー料理を所望していたのですが、残念ながらこの日は休業していたようで、タイ風のカレー料理のお店に行きました。前に出張に来た時に、当時駐在していたレルラ島さんに連れてきてもらった店かな?そのレルラ島さんおすすめの London Pride などを飲みました。

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会話はお互いの近況報告に始まって、自分たちの仕事のこと、日本との仕事のこと、などなど。お互いに全然違う業務を担当しているのですが、やはり日本と現地との些細なコミュニケーション・エラーで双方にフラストレーションがたまってしまうよね、みたいな話になりました。同じような苦労があるのかな。

ちなみに海外赴任情報(笑)。ドイツでは入国してからビザを取得することになっているのですが、イギリスはビザを取得してからでないと入国できないそうです。また、いつビザが発行されるかわからないので、発行されたらすぐに着任できるようにあらかじめ用意しておかないといけないそうです。彼は金曜日にビザが発行されて、その翌々日の日曜日には離日していたそうです。

油断して傘を持って来なかったら帰りはどしゃぶり。(はい、そうですね、このへんの天気の変わりやすさはハンブルクと一緒ですね)駅まで傘に入れてもらいました。