月別アーカイブ: 2011年2月

衝動買い:ギーレンのマーラー

ミヒャエル・ギーレンが南西ドイツ放送(SWR)交響楽団を振ったマーラーの交響曲全集の評判がよろしいということでウェブをつらつら見ていたら、ドイツのCDショップjpc.deでダウンロード販売が9.95ユーロだった。(第1番から第9番まで全曲ですよ!)

この値段だったら「ちょっと聞いてみたい」というモチベーションで買うのも全然OKである。(CD棚のモノが増えるわけでもないので妻にもばれないし)

よく考えたら、このオーケストラは昨年買ったカンブルランの《春の祭典》でも最近聞いている「モダンを回想する」でも耳にしているオケである。

とりあえず第9番から聞き始めてみるが、醸し出される音色の多彩さに驚く。私のマーラーのリファレンスは主に(淡白と言われている)インバル/フランクフルト放送響のコンビなのであるが、それと比較して表現の幅が広い。とはいえバーンスタインのような感情的な表現ではなく、徹底的に客観的に意味付けを行っているように聞こえる。指揮者が語っているのではなく、音楽そのものに語らせているというか。

それから、このオーケストラで《春の祭典》を聞いた時にも感じたのであるが、オーケストラ自身が異質なものを異質なまま表現できる資質を持っているのではないかと思う。例えば楽器間のバランスとか、ソロで演奏する場合の音色とか、20世紀音楽が持っている「前時代の音楽とは違うもの」を慣習に抗ってそのまま提示できる能力を持っているのではないかと思う。

このオケが「現代音楽を得意にしている」というのは後付けの理由になってしまうかも知れないが、ふだんからそういう音楽に触れる機会が多いことで、マーラーの音楽が持つ分裂症的なところやグロテスクなデフォルメなどが説得力を持つのかなあ、と思ったしだい。

親善試合:ドイツ対イタリア

夜放送されたドイツ対イタリアの親善試合を見る。会場は現在ブンデスリーガで首位を走るボルシア・ドルトムントのホーム。

(イタリアは昨年のワールドカップで予選リーグ敗退だったので特に注意してみていなかった。知っている選手がブッフォンしかいない …)

ドイツはクローゼのワントップ、その下にポドルスキ、ウズィル、ミュラー、ボランチにシュヴァインシュタイガーとケディラ、ディフェンダーはラーム、メルテザッカー、バートシュトューバー、アオゴ、ゴールキーパーはノイヤー、というほぼベストの布陣。

とりあえず前半だけ見た。

久しぶりの代表試合ということもあってか、ドイツは連携がけっこう雑。特に左サイドのポドルスキとアオゴの意図がなかなか合わない。そのせいか、普段はあまりペナルティエリアに入ってこないポドルスキが切り込んでいく機会が多かったのが面白かったけど。中盤ではとりあえずウズィルにボールをあずけてから攻撃の形を作る展開。レアル・マドリードでの様子はなかなか伝わってこないのだけれど相変わらずいい動きをする。

ぎこちない流れの中でも、ウズィル→ミュラー→クローゼの絶妙のコンビネーションで先制。クローゼはそろそろマリオ・ゴメスにワントップの座を譲ってもいいのでは、と思っていたのだが、残念ながらゴメスは怪我で今回は欠場している。しかし、こういう一発のボールコンタクトでのクローゼの動きはすごい。

デュティユーかなりよい

というわけで、ヤン・パスカル・トルトゥリエ指揮BBCフィルハーモニー管弦楽団によるアンリ・デュティユー管弦楽作品全集を聞いている。

ちなみに「管弦楽作品全集」と銘打たれているものの、1916年生まれのデュティユーは存命で、この作品集は1992年から1998年にかけて録音されたものなので、それ以降に書かれた作品は収録されていない。最新作(らしい)《Le Temps L’horloge》いたっては90歳を超えてから書かれた作品である。

それはさておき、ディティユーの音楽はかなり気に入った。もちろん「ゲンダイオンガク」に属する音楽なのだが、作風は保守的といっていだろう。鍵盤打楽器も含めた打楽器の多彩さが特徴になっている部分はあるが、内容的にも形式的にも奇をてらうようなことはやっていない。

特徴的だな、と思ったのは和音の美しさとリズムの先鋭さ。

もちろん機能和声的な動きはほとんど聞き取れないのであるが、刹那刹那の響きと、それの移ろいゆくさまが官能的である。「旋律の美しさ」を聞くのではなく「組み合わせられた音の美しさ」を聞くという意味で、無調であることの必然性を感じる。しいて挙げればアルバン・ベルクに通じるところがあるのかな。

あと、最近何となく現代音楽ばかり聞いているのだが、多くがドイツの作曲家による作品である。ドイツの作曲家だけの傾向ではないのかも知れないけれど、作品が持っている律動(端的に言ってしまうとスピード感といえるのか?)があまり感じられない。かなりスタティックに音が推移していくような印象がある。デュティユーの作品には時間的に前へ前へ進もうとするダイナミズムが感じられるのである。

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ちなみにモーツァルト大全集170枚組の方はというと、内容をチェックしながらMacに取り込み中。昨年買ったホグウッドのモーツァルト交響曲全集(11枚組)でダブりがあったので、やはりチェックせずにはいられないのである。

「今までにもそんなこと(ボックスでのダブり)があったの?」と聞いて、少し考えた後「あ、全部聞いてなきゃ分かんないよね」と鼻で笑った妻。はいはい、DG111枚もブラームス大全集46枚組もCHANDOS30枚組もDHM50枚組もちゃんとチェックしますよ(そのうち)。

ベルリン日記その2

午前中はペルガモン博物館へ。ベルリンの観光名所(特に子連れで行けるところ)については全く予備知識がなかったので教えを乞うたらここを薦められた。ベルリンの壁に関する史跡はやはり歴史的な背景を踏まえてから息子に見せた方がいいと思うので、まだちょっと早いかなと。

まあ屋内にこういった巨大な遺跡の展示があると大人でもインパクトがある。

しかし、久しぶりに博物館へ行って体力が落ちていることを実感。半日(というか実際には2時間くらいか)歩き回っただけでへばってしまう。

その後ポツダム広場に移動して昼食。ホテルで朝食をがっつり食べたのでヴァイスブルスト(白ソーセージ)とレバークヌーデル(肉団子)スープ(ともちろんビール)で。

その後、二手に分かれて妻と息子はポツダム広場内にあるレゴランドへ。入り口になっているレゴショップはそんなに大きくないのだが、そこから地下に降りていくとかなり広いアミューズメント施設があるのだそうだ。

そして、私はコンサートを聞きに行った。これについては別エントリーで。

午後6時過ぎにベルリン中央駅を発車するICEでハンブルクへ。当然と言えば当然であるがこの時間(日曜日の夕方)の列車は激込みだった。

ベルリン日記その1

ドイツの中もいろいろ回ってみようということで一泊二日のベルリン旅行。ハンブルクからベルリンまではICE(ドイツの特急列車)で2時間ほどなので、浜松から東京あるいは大阪へでかける感覚である。

私は昨年ベルリンフィルを聞きに来たので、そんなに久しぶりという感じはないのだが、息子はもちろん初めてだし、妻は東西ドイツ統一後の再開発真っ只中に訪れて以来である。

例によってとても細かい霧雨が降っている。

10時30分くらいにハンブルクを出て、12時30分くらいにベルリン中央駅へ到着。中央駅からホテルの最寄り駅まではブランデンブルク門駅で乗り換えないといけないので、途中でちょっと寄り道して(とはいっても地上に出ればそこが門の正面なのだが)ブランデンブルク門を見に行く。かろうじて門の向こうに戦勝記念塔(Siegessaule, ジーゲスゾイレ)が見える。

ホテルにチェックインしてから今日は何をしようかと考える。当初は博物館や美術館に行こうかと思っていたのだが、博物館や美術館は日曜日でも行ける、でもお店は土曜日しか開いていない場合が多い、というわけで買い物に行くことにした。

行ったのは「アンペルマン・ショップ」。アンペルマンはドイツ語で「信号の人」という意味で、東ドイツ時代に信号のシンボルとして使われていたらしい。今でもベルリンの街中で見ることができる。

で、これらをキャラクターにしたグッズを売っているショップがある。ピンバッジ、エコバッグ、傘、エプロン、マウスパッド、クッキー型、ポスター、Tシャツ、しおり、などなど、よくまあこれだけ思いつくわ、というくらいの種類の商品が売られている。

そのあと、夕食までに少し時間があったのでカイザー・ヴィルヘルム教会を見に行ったのであるが、残念ながら修復中でこんな感じだった。

夕食はガイドブックにも載っている正統ドイツ料理のお店「トゥホルスキー」へ。もっとガヤガヤした雰囲気のお店を想像していたのだが、地元の人の溜まり場のような感じで落ち着いた雰囲気である。

まずメインはアイスヴァイン(ちなみに小サイズ)、ベルリン風ハンバーグ、ロールキャベツ。

デザートはクレープのアイスクリーム添え、(何だったっけ?)ベリーの手作りゼリー、アプフェルシュトゥルーデル。

見た目は垢抜けない、いかにもドイツ料理!!という感じなのだが、味付けは洗練されていてとても美味。この味付けの違いはお店の違いなのか、あるいはハンブルクとベルリンという風土の違いなのか …

モーツァルト/デュティユー/ツィマーマン

届くときはまとめて届くの法則。

Complete Edition

予想通り手を出してしまったモーツァルト大全集170枚組。

ヨーロッパのamazonではおよそ100ユーロ弱で売られていたのだが、amazon.deのマーケットプレイスで送料込み79.80ユーロで出ていたのでついポチッ。

2006年に発売されたものの内容を少し入れ替えて2010年に再リリースされたもの。

Complete Orchestral Works

フランスの作曲家アンリ・デュティユーの管弦楽作品全集。

CD4枚組で、こちらはamazonではおよそ50ユーロちょっとの価格なのであるが、amazon.frのマーケットプレイスで新品が20ユーロくらいで出ていた。

デュティユーというと、吹奏楽ネタとしては2005年に秋田県立秋田南高校が《交響曲第1番》を自由曲として取り上げたとか、伊藤康英さんが学生時代にオーケストレーションを褒められたとか、がある。

また、パリ高等音楽院に留学していた三善晃に大きな影響を与えたことでも知られている。確かにそういう耳で聞くとデュティユーの《交響曲第1番》と三善晃の《交響三章》には近い部分もあるように思える。

Bernd Alois Zimmerman: Requiem Fur Einen Jungen Dichter

最近、耳が現代音楽づいているので、ベルント・アロイス・ツィマーマンのおそらくもっとも知名度の高い曲《若き詩人のためのレクイエム》を聞いてみることにした。

今入手できる音源としてはWERGOレーベルから出ているベルティーニ指揮ケルン放送交響楽団のもの(1996年録音)と、このコンタルスキー指揮オランダ・シンフォニアのもの(2006年録音)があった。(ソニーから出ていたギーレン盤は現在廃盤のよう)

しばし迷ったのだが、録音も新しいし、(うちでは聞けないけど)SACDのマルチチャンネル対応らしいし、ということでコンタルスキー盤を買ってみた。そういえば、例の《ユビュ王》と同時期に買ったツィマーマンの歌劇《兵士たち(軍人たち)》のDVDもコンタルスキー指揮なのであった。

無題

Today, I have to say that I have nothing to say for today.

I hope you can listen to Mr. Sergiu Celibidache and Mr. Carlos Kleiber conducting as much as you like there.

May the peace be with you.

モダンを回想する

その昔、ベルント・アロイス・ツィマーマンの吹奏楽曲(というか管楽アンサンブル曲)《ユビュ王の晩餐のための音楽》を聞きたいがために買った8枚組のボックス。ほとんど聞かずに放ってあったのだが、年末年始に帰省した時に発掘したのでとりあえずリッピングして持ってきたものである。

Ruckblicke Moderne: 20th Century Orch Music

まず2枚目。収録曲はエドガー・ヴァレーズの打楽器アンサンブル作品《イオニザシオン》、ヴェーベルンの《管弦楽のための5つの小品》、マーラーの交響曲第2番第1楽章の原型となった交響詩《葬礼》、ジェルジ・クルターグの《…幻想曲風に…》、そしてバルトークの組曲版《中国の不思議な役人》。クルターグは個人的にあまり馴染みのない作曲家だったのであまりピンと来ていないが、それ以外はあまり「ゲンダイオンガク」っぽくなくて聞きやすい1枚である。

《葬礼》は初めて聞いたかも知れない。大まかな枠組みはほとんど《復活》の第1楽章と同じなのであるが、ところどころでオーケストレーションが違っていたり、曲の構成が違っていたり、といったところを耳にすることができる。

《中国の不思議な役人》はあまり激しない中庸な演奏だが、全体的な印象は悪くない。各楽器の音色の違いを強調してソノリティに変化を出しているのが面白い。吹奏楽コンクール以外で最終部にリタルダンドをかける演奏は初めて聞いたかも。

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8枚目。アルフレート・シュニトケの《トリオ・ソナタ》(弦楽合奏版)とリゲティの《ラミフィカシオン》とショスタコーヴィチの《室内交響曲》(弦楽四重奏曲第8番の弦楽合奏版)ということで弦楽合奏作品ばかりを集めたCDである。

シュニトケの作品は1985年に弦楽三重奏のために作曲されたものをヴィオラ奏者のユーリ・バシュメットが弦楽合奏のために編曲したものらしい。シュニトケらしい多様式とか折衷主義とかといったものがあまり聞かれないので初期の作品かと思ったのであるが、作曲者後期の作品である。ショスタコーヴィチの作品の緩徐楽章を聞いているような、切なくて美しい感じ。

… と思って聞いていたら、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番の弦楽合奏版が聞こえてきて少々びっくりした。

今日から2月

2月1日付けの辞令で、また日本人が送り込まれてくるようで「全社で日本人一人」状態はとりあえず脱却したわけだ。最近はやりの言い方だと、私が「3号」で新しく来る方が「4号」というわけである。

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さて、今シーズンは「1000年に一度の厳しい冬」と言われていたのだが、正月明けにドイツに帰国してからちょっと雪が舞っただけで積もる気配が全くない。そろそろイチゴも売られ始めているようだし、このまま春になってしまうのだろうか?

帰り道は気温マイナス2℃くらいで小雨。小雨が降るなんてますます春が近いのかなあ、と思っていたら、このくらいの気温だと小雨はあっという間に氷になってしまう。アウトバーンの出口レーンで後輪が豪快に横滑りしてちょっと焦った。

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昨日から一緒に仕事をしている技術者が日本出張。セントレアから浜松駅まで高速バスで行く方法を指南したのであるが(英語のページは日本語のページに比べて明らかに情報不足)、無事着いたとの連絡を受けて一安心。

今週いっぱいがんばってほしい。