ときどき書いていることであるが、基本的にいわゆる「同曲異演」、つまりある曲をいろいろな指揮者/演奏者で聞き比べるという趣味はない。
「基本的に」なので、好きな曲で、なおかつ決定的な演奏が見つからない場合には、理想的な演奏を求めて、あるいは自分が理想しているアプローチとは別の可能性を求めて、いろいろな音源に手を出してみる。吹奏楽だとホルストの《第一組曲》やグレインジャーの《リンカンシャーの花束》は30種類くらいの音源を持っているはずだ。
吹奏楽以外のクラシック音楽についてはそれほどパースペクティヴが広がっているわけではないので、同曲異演を聞くよりはいろいろな作品を聞いて見識を広げたいと思っているのであるが、ストラヴィンスキーの《春の祭典》に関しては、「好きな作品であるが決定的な演奏に巡り合っていない」という意味で、興味がある盤があればちょっと聞いてみようという気になる。
今回買ってみたのは、シルヴァン・カンブルラン指揮南西ドイツ放送交響楽団による演奏。
- HMVのオンラインショップでなかなか評判がよい
- バレエ・リュス(ロシアバレエ団)の委嘱によって書かれた作品を集めてシリーズ、ということで気になった。
のだが、付随的かつ実利的な理由として、
- ドイツのオンラインショップjpc.deから、誕生月ということで5ユーロのクーポンが送られてきた。
- しかも、同時にjpc.deが送料無料キャンペーンをやっていた。
というのもある(笑)。ちなみにカンブルランは読売日本交響楽団の常任指揮者に就任しているらしい。
収録曲は、その《春の祭典》、ドビュッシーの《遊戯》、デュカスの《ペリ》。《ペリ》は比較的珍しい舞踏詩本編と、比較的ポピュラーなファンファーレである。
《春の祭典》は冷静さと凶暴さが共存した演奏とでもいえようか、とてもダイナミクスの広い演奏。(だから車の中で聞くのにはちょっと向かない)各楽器の音色を生かしたアンサンブルの妙とか、重めのテンポでありながら鋭いリズムなどが聞ける。
惜しむらくは、この曲のキモであろう複合拍子の部分、具体的には第2部の《生贄への賛美》と《生贄の踊り》がリズム的に著しく不安定に聞こえるのである。複合拍子なので感じ方に個人差があるのだと思うが、私としてはかなり崩壊して聞こえてしまう。拍子の頭を打つべき低音や打楽器が前に行こうとしてタイミング的に少しフライングしているように感じる。
《遊戯》や《ペリ》は上に書いたような弱点が目立たず、長所が活きるような曲想なので面白く聞けた。
ということで、手放しで絶賛するには若干不安要素はあるが、もう少し他の曲も聞いてみたい、という微妙な評価になってしまった。
この指揮者は現代音楽も得意にしているらしく、メシアンのボックスもあるし、リームの管弦楽作品もまとめて録音しているようだ。とりあえず《トゥランガリラ交響曲》あたりを聞いてみたいのだが、そのために8枚組ボックスを買うのもリスキーだし …
機会があれば実演を聞けるといいのだが、その名の通りこのオーケストラはドイツの南西部にあるバーデン=バーデンやフライブルクを本拠地にしており、ハンブルクからは約700km …