日別アーカイブ: 2010 年 7 月 4 日

演奏会その43: ハンブルク・フィル特別コンサート「Viva la France!」

Summertime: “Vive la France!”
Sonntag 4. Juli 2010, 11:00 Uhr

Dirigentin: Simone Young
Klavier: Di Wu

PROGRAMM

Paul Dukas: Der Zauberlehrling
Darius Milhaud: aus »Suite française«
Hector Berlioz: Königliche Jagd und Sturm aus »Les Troyens«
Camille Saint-Saëns: »Africa«, Fantasie für Klavier und Orchester op. 89
Camille Saint-Saëns: Danse macabre
Gabriel Fauré: aus »Pelleas et Mélisande«
Henri Duparc: Aux Étoiles
Claude Debussy: L’Isle joyeuse
Erik Satie: Nr. 3 aus »Trois Gymnopédies«
Jacques Offenbach: Ouvertüre zu »Pariser Leben«
Emmanuel Chabrier: España

und Encores…
ジュール・マスネ/タイスの瞑想曲
コール・ポーター(?)/I love Paris(?)

ハンブルク・フィルの2010/2011シーズン終了後の特別コンサートです。昨年は「黄金の20世紀」ということで20世紀に書かれた作品を集めたコンサートだったのですが、今年のテーマは「フランス万歳!」、フランスの作曲家の作品を集めたコンサートになりました。

比較的有名な作品が集められるだろうし、比較的演奏時間の短い作品が多いので息子の集中力も続くだろうと思い、妻や息子の分のチケットも予約しておきました。妻と息子にとってはハンブルクでの演奏会デビューでした … が、私自身も今まで体験したことがないくらいの過酷な条件でした。とにかく暑い。ドアは完全に締め切られるので空気はこもるし、天井の擦りガラスからは日光が差し込むし、指揮兼進行役のヤングはスコアでパタパタあおぎながら次に演奏する曲の紹介をするし、男性演奏者は途中からみんな上着を脱ぎ出すし、で大変でした。というわけで演奏者も聴衆も集中力を保つのがきつかった演奏会でした。

以下、各曲ごとの簡単な感想など。

デュカスの《魔法使いの弟子》は映画「ファンタジア」でミッキーマウスが文字通り魔法使いの弟子に扮したショートフィルムでも有名な作品です。息子にもかろうじてこの作品だけ予習させていました。いみじくも「全然違う曲だった」と息子が指摘したように、ヤングが振るとずいぶん腰が重い音楽になってしまいます。

ミヨーの《フランス組曲》は最初に吹奏楽編成で書かれ、後に作曲者自身によって管弦楽編曲が行われた作品なのですが、一般のクラシックファンにはどのくらい認知度があるんでしょうね?演奏会では全5曲中、最初の3曲が演奏されました。吹奏楽編成での演奏に比べるとオーケストレーションは全体的にすっきりしているように思います。吹奏楽だとまとまった楽器群で演奏されているフレーズが、例えば管楽器のソロと弦楽器のテュッティの対比など置き換えられていました。第3曲「イル・ド・フランス」は何かの間違いではないかと思われるくらい早めのテンポ指定がある(スコアは日本に置いたままなので具体的な数値は忘れてしまいましたが …)のですが、果敢にそのテンポに挑戦していました。で、崩壊しました …

ベルリオーズの歌劇《トロイの人々》より「王の狩りと嵐」は初めて聞きました。今回のプログラムの中に混じるとベルリオーズの音楽はかなり古典的な響きに聞こえます。今回のプログラムの中ではいちばんヤングの個性に合っていた作品かも知れません。堂々とした金管の鳴らしっぷりが印象的でした。

サン=サーンスのピアノと管弦楽のための幻想曲《アフリカ》ではソリストにディー・ウーが登場しました。後で調べてわかったのですが、ディー・ウーは日本で開催された「のだめ」関連のコンサートでショパンのピアノ協奏曲を弾いたらしいですね。ジャズ(あくまでもクラシックの範疇でいうところのジャズ)っぽいリズムとエキゾチックな旋律が印象に残っています。同じくサン=サーンスが書いた歌劇《サムソンとデリラ》の「バッカナール」を思わせるような曲想も登場します。

ピアニストのアンコールは何だったんだろう?曲目不明。ほぼ全編に渡ってトリルが演奏される、いささか暑苦しい曲でした(笑)。

休憩をはさんでサン=サーンスの《死の舞踏》。私はこの作品がパロディ的に引用されている《動物の謝肉祭》の方ばかり聞いていたので、この作品の方がパロディに聞こえてしまいます。休憩明けで少しすっきりしたのか、のれるリズムだったのか、息子はこの曲も気に入ったようでした。

フォーレの組曲《ペレアスとメリザンド》からは有名な「前奏曲」とフルートソロで有名な「シシリアーノ」が演奏されました。あまり印象に残っていません。フルート奏者である妻は「プロでもあんなところでブレスするんだ」とか言っていましたが、詳細は不明。

デュパルクの《星たちへ》は作曲者も作品も初めて聞いた作品です。ドビュッシーにつながる印象主義的な作品で、とても繊細なオーケストレーションが印象に残りました。この作品は CD を買ってまた聞いてみたいです。

ドビュッシーの《喜びの島》。最近、近所でこの曲を練習している音が聞こえてきていたのは微妙にシンクロニシティ?もともとはピアノ曲で、これはドビュッシーに指示によってイタリア人指揮者のベルナルディオ・モリナーリが管弦楽編曲したものらしいのですが、まあ、派手な編曲はこの作品には向かないですね。確かに作品自体にもラテン的な雰囲気はあるのですが、私は原曲のまどろむような色彩感が好きです。(確か、マルティノンのドビュッシー管弦楽全集にも収録されていなかったような …)次に演奏されたドビュッシー編曲によるサティの《ジムノペディ第3番》のミニマムなオーケストレーションの方にセンスを感じます。

このあたりで集中力もほぼ限界 … オッフェンバックの《パリの喜び》から「序曲」、シャブリエの狂詩曲《スペイン》あたりはいい意味で力が抜けていてよかったのではないかと思います。