マイルス・デイヴィスの箱

例の MILES DAVIS / The Complete Columbia Album Collection 71枚組(52点のオリジナルアルバム計70枚とDVD1枚)を思案していたら、こんなのを思い出しました。

The Complete Live at the Plugged Nickel 1965

マイルス、ウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスという、いわゆる「黄金のクインテット」が1965年12月の22日と23日にシカゴのライヴハウス「プラグド・ニッケル」で行ったライヴ7セット(22日に3セット、23日に4セット)を完全収録したボックスです。22日の第2セットのみCD2枚に収録されているのでトータルでは8枚組です。

以前は断片的に3枚(あれ?4枚かな?)のアルバムがリリースされていたのですが、マイルスの死後、1992年にまず日本国内のみの発売で「コンプリート」と銘打たれた7枚組がリリースされます。最初にリリースされたボックスは黒色で私はこれを買いました。その後1994年に同内容で箱が青色になったものが再発されました。

…が、実はこれらは「コンプリート」ではなかったのです。ライヴを切れ目なく録音するために、マスターテープの交換時にはサブのテープレコーダーを使って録音していたのですが、上記のボックスをリリースした時には見つかっていなかったリールがあったので、不足部分のソロを編集でカットして収録していたのだそうです。

で、それらが無事見つかって正真正銘の「コンプリート」が発売されたのが1995年。さすがに似たような国内盤を3回出すわけにはいかなかったのか(しかも7枚組だったものが8枚組になっている)、日本国内盤はリリースされずアメリカ盤のみでした。国内盤ファーストプレスを持っている身としては、さすがに内容の90%が同じボックスを買い直すのは優先度を低くせざるを得なかったので見送っていました。

そんなこんなで気がついてみると廃盤。なくなると欲しくなるたちなので(笑)、いろいろ調べてみたのですが、結構なプレミアがついていたので、これまた様子見で買うのを控えていました。

で、先週、71枚ボックスを思案しながら amazon.de を眺めていたら、このプラグド・ニッケルのボックスが、中古ですがそこそこ納得できる値段で出ていたのでポチっとやってしまいました。そのボックスが今日到着。すでにリリースされてから10年以上経っているのでそれなりの経年変化は認められるのですが、大きな傷や汚れもないし、CDの盤質も問題ないし、まあ、いい買い物だったかなと思っています。

内容ですが、よく言われるようにジャズというフォーマットの極北に位置する演奏です。曲はもはや、テーマだけを残した最低限の入れ物に過ぎず、その中で限りなく自由なインプロヴィゼーションが繰り広げられます。(どこで読んだんだっけかな?)マイルス・グループの申し合わせ事項として「コードを無視しない」というのがあったらしいのですが、まさに「フリー・ジャズ」と「ジャズ」の境界線上でマイルスと他のメンバーがせめぎあっているように聞こえます。(「自由なインプロヴィゼーション」と「フリー・ジャズ」は決して同じ意味ではないので、念のため。)

あと、非常に臨場感溢れる録音も、小さなライヴハウスに充満する熱気のようなものをうまく表現していると思います。グループが緊張感みなぎる演奏をしている時でも、キャッシャーの音がするは、グラスのかち合う音がするは、客がだべっている声がするは、で面白いです。

… で、まだ71枚組の結論は出ていません …

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