昼食は社長と先輩駐在員と。前に行ったRahlstedt駅前にあるアジア系の料理屋である。チキンナゲットのようなものが付け合わせについた焼きそばを注文する。チキンナゲットはスイートチリソースをつけて食べるのだがなかなか美味。
週末だし、そろそろ多少なりとも生活が落ち着いてきたし、町の中心部での運転も慣れてきたし、ということでコンサートに行ってみることにした。
北ドイツ放送交響楽団(NDR)による「China Spectacular」という演奏会。中国の作曲家による作品を中国人が指揮するコンサートである。(ただ、理由はよくわからないが指揮者の Long Yu は交代になっていて、代役のペーター・ルンデルが振っていた)。
場所はNDRのホームグラウンドのライスハレではなく、カンプナゲル(Kampnagel)というところ。多少覚悟はしていたが、やはり会場近くに駐車スペースはない。結局3ブロックくらい離れた住宅街に止めることができた。ドイツでは町中でも道路脇に駐車スペースが確保されていて、そこが空いていれば無料で停めることができる。有料駐車場に入れるのは「最終手段」らしい。なので、日本ではあまり必要のない縦列駐車のテクニックが必要とされるのである。ドイツに来てから日本での10年分くらい縦列駐車をしているような気がする。smart のような車がヨーロッパで売れるのはすごくわかる気がする。
で、そのカンプナゲルは倉庫を改造したようなところイベント施設のようだ。他のフェスティバルも行われているようで、芸術系大学の学園祭のような雰囲気がある。チケットは€16で全席自由。チケットを購入したあとで軽い食事。アップルシューレとトマトスープを食す。
入場してみると、会場は倉庫の中に仮設スタンドを作って観客席を作ったような感じ。スペースの半分をオーケストラが占め、もう半分が観客席になっている(なので、観客席はけっこう傾斜がきつい)。私が座ったのは前から2列目で中央からちょっと上手寄りだったのだが、指揮者までの距離は5mくらいである。
- 譚盾(タン・ドゥン)/The Intercourse of Fire and Water (Yi1)
- 陳其鋼(チェン・キガン)/ヴェールを取られたイリス(Iris devoilee)
タン・ドゥンの作品は1994年作曲(1995年改訂)ということなので比較的古い作品である。編成や奏法的にも(後年の作品に比べると)それほど奇抜なことはやっておらず、わりとオーソドックスなチェロ協奏曲である。「陰と陽の思想」がうんぬんかんぬんと解説には書いてあるみたいだがよくわかりません。
チェン・キガンの名前は初めて聞いたのだが(ちなみに会場に来ていました)、北京オリンピックの開会式のための音楽を書いたりして、最近注目されているらしい。北京からフランスに渡ってオリヴィエ・メシアンに師事したとのこと。この作品は2人の女性歌手(一人はクラシック的な唱法、もう一人は京劇かな?)と3つの民族楽器(琵琶、二胡、琴)のための協奏曲。
曲はというと、タン・ドゥンの作品がかなり楽しめた。知名度が高くなってからのタン・ドゥンの作品はシアトリカルな側面が強くなって、うさん臭いというか眉に唾をつけたくなるのですが、この作品は音楽的に面白い。チェロは予想通り非西洋的な奏法(ポルタメントとか音程感のない琵琶のような奏法とか)が多く引き込まれた。一方、チェン・キガンの方はこれだけのソリストを集めた必然性があまりないように思う。「中国的なもの」のショーピースのような感じ。全般的には穏やかな曲想で、そういったところの弦の持続和音は確かにメシアンに通じるものがあるのかな、という気がするが、曲全体を通して考えるといささか単調かなと。
これだけ近くでオーケストラの演奏を「見る」機会はそうそうないと思うのだが、特に弦楽器奏者の「動き」を感じられるのは面白い。タン・ドゥンの作品では各楽器のトップ奏者が細かいパッセージを掛け合いする部分があって、それがだんだんパート内でのユニゾン、それから弦全体でのユニゾンに広がって行くのである。この広がって行く様子が弦楽器奏者の「運動」として目に見えるのはかなり感銘を受ける。あと、うまいオケはちゃんと「鳴る」せいか、やはり音が大きい。うるさい大きさではなく、ちゃんと響いているという感じがするのである。
会場に置かれていた演奏会案内のパンフレットを見ると、鼻血が出そうな演奏会がたくさんある。楽しみ楽しみ。