時差ボケで早く起きてしまったのでホテルの回りを散歩する。
仕事が終わってから、ドレスデン・バレエの公演を見に行く。 この公演が行われるゼンパーオーパーは由緒ある劇場で、ワーグナーが指揮者として招かれたり、リヒャルト・シュトラウスの主要な歌劇《サロメ》《エレクトラ》《ばらの騎士》などが初演されたりしている。
ドレスデンにおけるこの手の歴史的な建物の宿命である「1945年の空爆によって破壊され」、その後大金をかけて復旧されたそうである。 ロビーといい、客席といい、日本では絶対真似のできない歴史と優雅さを感じる。
この日の演目は、ジョン・ノイマイヤーの振り付けによる20世紀のバレエ作品、《ダフニスとクロエ》(ラヴェル)、《牧神の午後への前奏曲》(ドビュッシー)、《春の祭典》(ストラヴィンスキー)である。 これらの作品が一度に見れるのである。しかも伴奏は生オケ。
《ダフニスとクロエ》は前半と後半が1900年代前半の海岸の避暑地を思わせるようなちょっとレトロな設定。 鮮やかな海とまぶしい太陽をうまく表現しているステージである。 カミュの「異邦人」とか、ダリ&ブニュエルの映画「アンダルシアの犬」の一場面を思い出す。 中間部にあたるクロエが海賊に捕らわれる場面は原作に忠実な古代ギリシャのようなイメージで、それまでの部分と対照的に原始的。しかもかなりエロい。 夜明けの部分に戻ると、実はこれは夢だった ….. というような構成になっている。
《春の祭典》は、やはりベジャールの振り付け版との比較になってしまうのだが、ベジャールよりもさらにプリミティブな感じがする。 全体的に単調な印象。最後の「いけにえの踊り」は群集がいけにえの少女を賛美して高揚する ….. というイメージと思いきや、延々と続く少女のソロで、最後に疲れ果てて息絶える ….. というような構成が斬新だった。 変拍子が続く部分でトランペットが思いっきり間違えたので、どうなることかと思いきや、無事まとまった。 こういうスリルも生オケならでは(笑)。