渡部謙一さんから北海道教育大学函館校吹奏楽団の演奏会の DVD を見せていただいた。今年の3月6日に行なわれた「吹奏楽的温故知新」と題された演奏会である。
第1部は現代の日本人作曲家による作品、第2部は渡部さん、国塩哲紀さん、伊左治直さんによるトーク、第3部はいろいろな国の行進曲という構成になっている。
第1部は国塩さんによる簡単な楽曲解説を実演を交えながら行い、そのあとで作品を演奏するというレクチャー・コンサートのような形式。例えば《プレリュード》(浦田健次郎)では、冒頭のティンパニソロを取り出し、《夕焼けリバースJB急行〜ハイドン・バリエーション・メタモルフォーゼ>伊左治直》(伊左治直)では変容された「聖アンソニーの主題」を取り出し、田村文生編曲によるドビュッシーの《海の微風、春の再来〜弦楽四重奏曲第4楽章》では原曲と聞き比べて編曲者がどのように原曲をオーケストレーションしたのかを説明している。非常に面白い試みだと思うが、ひょっとして会場で聞くと少し長すぎたのかなという危惧も感じる。
しかし、《夕焼けリバースJB急行〜ハイドン・バリエーション・メタモルフォーゼ》はすごい曲。一応、ブラームスの《ハイドンの主題による変奏曲》が下敷きになっているらしいのだが、ほとんど原型をとどめないくらい解体されている。かろうじて聖アンソニー・コラールのそれらしい響きは聞き取れるのであるが、中盤ではジャズっぽい曲想になりトランペットやらサックスやらがスタンドプレイを演じる。そして最後はぽんっと放り出されたように唐突に終わってしまう … もうちょっと聞いてみないとよくわからないなあ …
第2部のトークは比較的期待通りの内容であった。現代音楽と吹奏楽の両方を俯瞰している渡部さん、国塩さんに、どちらかというと現代音楽の立場からものを言っている伊左治さん。まあ、この方の場合はガチガチのクラシックではなく舞台作品やいわゆるポピュラー音楽にも足を突っ込んでいるわけだが。この3人が「現代の音楽」における吹奏楽の位置付けのようなものを語っている。このトークを聞いている人のバックグラウンド(こういう問題意識を持っていない)によっては「何を話しているか全くわからない」状況だったのかも知れない。
第3部は未見なのであるが、ロシア、フランス、日本、ドイツ、アメリカ、イギリスとそれぞれの国の代表的な行進曲が集められている。ちなみに日本からは間宮芳生の《マーチ「カタロニアの栄光」》が選ばれている。